誰も住んでいない空き家を売ろうとすると、「まず家の中を全部片付けるべきか」「古い建物は解体してから売った方がよいのか」と迷うことがあります。
しかし、売却方法が決まる前に家財撤去や解体へ費用をかける必要があるとは限りません。
古い建物でも中古戸建として売れる場合があります。
建物そのものの価値が小さくても、古家付き土地として売れる場合があります。
不動産会社による買取であれば、家財が残った状態で相談できることもあります。
そのため空き家売却では、最初に現況のまま査定し、「そのまま売る・解体して売る・買取」の条件を比べてから費用をかける順番が合理的です。
空き家を売却する基本的な流れ
空き家売却は、次のような順番で進めると整理しやすくなります。
- 所有者・登記名義を確認する
- 相続・共有状態を確認する
- 重要書類・貴重品だけ先に確保する
- 現況のまま複数の不動産会社へ査定を依頼する
- 中古戸建・古家付き土地・更地・買取を比較する
- 必要な家財撤去・修繕・解体だけ実施する
- 仲介または買取で売却する
- 引渡し後に税金・確定申告を確認する
特に重要なのは、4番の査定より前に高額な工事を決めてしまわないことです。
空き家を売る前に所有者を確認する
空き家だからといって、現在管理している人がそのまま売主になれるわけではありません。
まず登記上の所有者を確認します。
例えば、
- 亡くなった親の名義のまま
- 相続登記済み
- 兄弟姉妹の共有
- 親が存命で親名義
では必要な手続きが違います。
相続後なら、相続人や遺産分割、相続登記を確認します。
共有不動産であれば、空き家全体を売るためには共有者間の調整も必要です。
空き家の売り方は大きく4つ
空き家だからといって、必ず解体するわけではありません。
大きく次の4つを比較します。
| 売り方 | 特徴 | 向いているケース |
|---|---|---|
| 中古戸建として売る | 建物も住宅として売却 | 建物がまだ利用できる |
| 古家付き土地として売る | 古い建物を残したまま土地中心で売却 | 建物価値は低いが先に解体したくない |
| 解体して更地で売る | 建物を撤去して土地だけ売却 | 建物状態が悪く、更地需要が見込める |
| 不動産会社へ買取 | 不動産会社が直接買主になる | 早く手放したい、残置物や老朽化がある |
1.建物が使えるなら中古戸建として売る
築年数が古いからといって、必ず土地としてしか売れないわけではありません。
立地や建物状態によっては、購入後にリフォームして住みたい人が見つかる可能性があります。
中古戸建として売却できれば、売主が解体費を負担する必要もありません。
建物価値が残っている可能性があるなら、解体前に中古戸建としての査定も確認します。
2.古い建物は「古家付き土地」として売れることがある
建物を住宅として高く評価しにくい場合でも、建物を残した状態の土地として売却できます。
一般に「古家付き土地」と呼ばれる方法です。
この方法なら、売主が売却前に解体費を負担しなくて済む可能性があります。
買主側も、
- そのまま利用する
- リノベーションする
- 購入後に解体する
といった選択ができます。
「古いから売れない」と決める前に、古家付き土地としてどの程度の需要があるかを不動産会社へ確認します。
3.解体して更地で売る
建物の傷みが激しく、購入希望者が建物を利用できない状態なら、解体して更地にする方法もあります。
更地にすると、
- 土地の形状が分かりやすい
- 買主がすぐ建築計画を検討できる
- 老朽建物への不安をなくせる
といった利点があります。
ただし、解体にはまとまった費用が必要です。
解体したからといって、その費用分だけ高く売れる保証もありません。
また、住宅が建っていることで適用されていた土地の固定資産税等の住宅用地特例についても、解体時期によって扱いが変わる可能性があります。
そのため、解体業者へ依頼する前に、
- 現況の査定額
- 古家付き土地としての売却可能性
- 解体費
- 更地にした場合の想定売却価格
- 解体後の税負担
を比較します。
査定前に解体する必要はない
古い家を見ると「不動産会社へ見せる前に壊した方が印象がよい」と考えることがあります。
しかし、一度解体すると元には戻せません。
古家のまま欲しい買主がいる可能性や、不動産会社が現況のまま買い取る可能性もあります。
したがって、
- 現況のまま査定する
- 古家付き土地で売る場合の価格を確認する
- 買取価格を確認する
- 解体費を確認する
- 更地にした場合の想定価格を確認する
という順番で比較します。
4.不動産会社へ直接買い取ってもらう
空き家は、一般の購入希望者を探す仲介だけでなく、不動産会社へ直接売る「買取」も選択肢です。
買取では、不動産会社が買主になります。
そのため一般的には、
- 一般の買主を探す販売期間を短縮しやすい
- 何度も内覧対応をする必要が少ない
- 古い建物でも相談できる場合がある
- 残置物を残した状態でも対応する会社がある
といった特徴があります。
一方、不動産会社は購入後の解体・修繕・再販費用や事業上の利益も考えて価格を提示するため、仲介で一般の買主へ売る場合より提示価格が低くなることがあります。
ただし、「必ず市場価格の○割」という全国共通の割合があるわけではありません。
物件ごとに仲介査定と買取価格を比較します。
仲介と買取の違い
| 比較 | 仲介 | 買取 |
|---|---|---|
| 買主 | 一般の個人・法人等 | 不動産会社 |
| 販売活動 | 必要 | 基本的に不要 |
| 一般向け内覧 | 行うことが多い | 基本的に不要 |
| 売却期間 | 買主が見つかるまで必要 | 条件が合えば短縮しやすい |
| 残置物 | 撤去を求められることが多い | 残したまま対応する会社もある |
| 価格 | 市場で買主を探す | 再販費等を踏まえた買取価格 |
価格を優先するなら仲介を中心に比較し、時間・家財・建物状態などの負担を減らしたいなら買取も比較するという考え方があります。
家財・残置物は全部片付けてから査定する?
空き家の中に大量の家具・家電・衣類が残っていても、査定前に全部処分する必要があるとは限りません。
先に確認したいのは、
- 権利関係の書類
- 購入時の契約書
- 通帳・印鑑
- 現金・貴金属
- 家族が残したい物
です。
重要品を確保したら、その状態で不動産会社へ相談します。
仲介の場合
一般の購入希望者が室内を見るため、最終的には家財を撤去した方が売却活動をしやすい場合があります。
ただし査定時点から完全に空にする必要があるとは限りません。
買取の場合
残置物を残した状態でも買い取る不動産会社があります。
片付け費用を売主が先に支払うか、残置物込みの買取条件を選ぶか比較できます。
残置物と解体工事のごみは同じ扱いではない
解体する予定でも、「家具や生活用品を家の中に残しておけば、建物と一緒に全部壊して処分できる」とは限りません。
家庭で使っていた家具や生活ごみなどと、解体工事によって発生する建設廃棄物では廃棄物としての扱いが異なります。
家財撤去が必要な場合は、解体会社の見積もりに何が含まれているか、家庭から出た不要品を誰が適法に収集・処理するのかを確認します。
売却前のリフォームは先に決めない
「きれいにすれば高く売れる」と考えて、空き家を先にリフォームするケースもあります。
しかし、リフォーム代をそのまま売却価格へ上乗せできるとは限りません。
買主が自分好みにリフォームしたい場合もあります。
まず現状査定を取り、
- 現況での売却価格
- 修繕すべき最低限の箇所
- リフォーム後に期待できる価格
- リフォーム費用
を比較します。
建物の状態を確認したいならインスペクションという方法もある
空き家の建物状態が分からない場合には、建物状況調査(インスペクション)を利用する方法があります。
専門家が建物の基礎、外壁など一定の範囲を確認し、劣化や不具合の状況を調べます。
国土交通省も、空き家を売却・賃貸するときにインスペクションを利用することで、購入希望者の判断材料になり、売却後のトラブルを減らすことにつながると案内しています。
すべての空き家で必須というわけではありません。
中古戸建として売りたい場合などに、不動産会社と必要性を相談します。
売却先が見つかりにくい場合は自治体の制度も確認する
立地や建物状態によっては、一般的な不動産会社の仲介では買主を見つけにくいことがあります。
その場合は、
- 空き家を扱う不動産会社
- 買取会社
- 自治体の空き家相談窓口
- 空き家バンク
なども確認します。
自治体によっては、売却・賃貸希望者と利用希望者をつなぐ空き家バンクや、専門家との相談制度を設けています。
空き家を売り出している間も管理は必要
不動産会社へ売却を依頼したからといって、引渡しまで管理が不要になるわけではありません。
買主へ引き渡すまでは所有者側で管理します。
売却活動中も、
- 戸締り
- 郵便物
- 庭木・雑草
- 雨漏り
- 台風・地震後の破損
- 不法侵入
などを確認します。
売却まで数か月かかる場合は、不動産会社が管理まで行うのか、自分で管理するのかを決めておきます。
相続した空き家なら3,000万円特別控除を確認する
相続または遺贈によって取得した一定の空き家を売却する場合には、譲渡所得から最高3,000万円を控除できる特例があります。
2026年4月1日現在の制度では、2027年12月31日までに行われる一定の譲渡が対象です。
相続人が3人以上の場合は、1人当たりの控除上限が最高2,000万円になります。
ただし、
- 建築時期
- 区分所有建物でないこと
- 被相続人の居住状況
- 相続後の使用状況
- 売却期限
- 売却代金
など複数の要件があります。
相続空き家特例のために必ず売却前に解体しなければならないわけではない
相続空き家の3,000万円特別控除では、以前は売却時までに耐震基準への適合や取り壊しが必要になるケースが中心でした。
現在は、2024年1月1日以後の一定の譲渡について、売却時点で要件を満たしていない建物でも、譲渡の日の属する年の翌年2月15日までに、一定の耐震基準へ適合させるか、家屋の全部を取り壊すことで特例の対象となり得る制度があります。
したがって、税特例を理由に「査定前に絶対解体しなければならない」と判断する必要はありません。
ただし、その他の適用要件もすべて満たす必要があるため、売買契約前に税務署・税理士等へ確認します。
親が存命中に空き家になった家は別の税制度を確認する
親が老人ホーム等へ入り、以前住んでいた家が空き家になったケースでは、相続空き家特例ではなく、親本人の居住用財産3,000万円特別控除が関係する場合があります。
以前住んでいた家については、原則として住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却するなどの要件があります。
「空き家」という状態が同じでも、親が存命なのか、相続後なのかによって税制は分けて確認します。
空き家の査定で比較したいこと
空き家の査定では、価格だけでなく売却方法も確認します。
- 中古戸建として売れるか
- 古家付き土地としていくらか
- 買取ならいくらか
- 解体した場合の想定価格
- 家財はどこまで撤去する必要があるか
- 修繕は必要か
- 売却までどの程度の期間を想定するか
複数の不動産会社へ同じ条件で確認すると、各社の考え方を比較しやすくなります。
空き家売却で先に大きなお金を使わない
空き家を見ると、
- 家財を全部処分する
- リフォームする
- 建物を解体する
ことから始めたくなることがあります。
しかし、これらはすべて費用が発生します。
売却方法によって不要になる作業もあります。
そのため、
重要品の確保 → 現況査定 → 売り方の比較 → 必要な作業だけ実施
の順番にすると、売却前の不要な出費を抑えやすくなります。
よくある質問
古い空き家でもそのまま売れますか?
売れる場合があります。建物が利用できれば中古戸建、建物価値が小さくても古家付き土地として売却できる可能性があります。不動産会社による現況買取も候補になります。
空き家は解体してから売った方がよいですか?
一律には決められません。更地の方が売りやすい物件もありますが、解体費が必要で、古家付きのまま購入したい買主がいる可能性もあります。現況と更地の査定条件を比較してから判断してください。
家財が残っていても査定できますか?
査定できる場合が多くあります。査定前は重要書類・貴重品を確保し、家財撤去については売却方法を確認してから決める方法があります。
残置物がある空き家でも売却できますか?
仲介では引渡しまでに撤去を求められることがありますが、不動産会社の買取では残置物がある状態でも対応する会社があります。撤去費込みの条件かどうかを確認してください。
仲介と買取のどちらがよいですか?
市場で一般の買主を探したい場合は仲介、売却期間や内覧・家財撤去などの負担を抑えたい場合は買取も候補になります。仲介査定と買取価格を両方確認すると比較しやすくなります。
売却前にリフォームした方が高く売れますか?
リフォーム費以上に売却価格が上がるとは限りません。買主自身がリフォームしたい場合もあるため、まず現況査定を取り、修繕費と価格差を比較してください。
空き家の査定は何社に頼めばよいですか?
1社だけで決めず複数社を比較する方法があります。査定額だけでなく、そのまま売る場合・解体する場合・買取の場合の条件を聞くと判断しやすくなります。
相続した空き家なら3,000万円控除を使えますか?
一定の要件を満たした場合に利用できます。相続した空き家すべてが対象になる制度ではありません。建築時期、相続後の利用、売却期限、売却代金等を確認してください。
空き家を売り出したら管理しなくてもよいですか?
引渡しまでは所有者側で必要な管理を続けます。売却期間中に雨漏り、庭木、外壁破損などが悪化すると取引へ影響する可能性もあります。
空き家売却は「きれいにしてから査定」ではなく「査定してから必要なことをする」
空き家は、古い、物が残っている、誰も住んでいないという理由だけで売れないわけではありません。
中古戸建として売る。
古家付き土地として売る。
解体して土地を売る。
不動産会社へそのまま買い取ってもらう。
物件によって適した方法は違います。
先に片付け・修繕・解体へ何十万円、何百万円と支払ってしまうと、その費用を回収できない場合もあります。
所有関係を確認し、重要な物だけ確保して、まず現在の状態で査定を取ります。
その査定結果を基に、家財撤去や解体へ費用をかける価値があるのか判断する方が、空き家売却の選択肢を残しやすくなります。
実家・家財全体をどう整理するかについては実家・家財整理のガイドも参照してください。