実家を売る可能性が出てきたとき、最初に知りたいのは「この家はいくらくらいで売れそうか」ということです。
ただし、不動産会社へ査定を依頼すると、同じ実家でも会社によって金額が違うことがあります。
そのため、査定では一番高い数字だけを見るのではなく、
- なぜその査定額になったのか
- どのような売り方を想定しているのか
- どのくらいの期間で売れると考えているのか
- 古い建物や残っている家財をどう評価しているのか
まで確認します。
実家の査定は「一番高い会社を探す作業」ではなく、実家をどの条件で売れるのかを比較する作業と考えると分かりやすくなります。
実家の査定はどこに頼む?
売却を検討している実家の査定は、基本的には不動産会社へ依頼します。
ただし、不動産会社ならどこでも同じというわけではありません。
会社によって、
- 得意な地域
- 戸建て・土地の取引実績
- 古家・空き家への対応
- 一般の買主を探す仲介
- 自社で購入する買取
- 残置物・解体への対応
などが違います。
実家のある地域で戸建て・土地の売却実績がある会社を中心に、複数社を比較します。
実家の査定には「机上査定」と「訪問査定」がある
不動産の売却査定には、大きく机上査定と訪問査定があります。
机上査定
現地を訪問せず、主に、
- 住所
- 土地面積
- 建物面積
- 築年数
- 間取り
- 周辺の取引事例
- 地価等の情報
から概算価格を出す査定です。
「売るかまだ決めていないが、まずどのくらいの価値があるか知りたい」という段階では使いやすい方法です。
ただし、実際に現地を見ていないため、建物状態や土地の細かな条件までは十分に反映できない場合があります。
訪問査定
不動産会社の担当者が現地を確認したうえで査定する方法です。
例えば、
- 建物の傷み
- リフォーム状況
- 日当たり
- 土地の形状
- 接している道路
- 高低差
- 境界
- 周辺環境
- 家財・残置物
など、机上査定だけでは判断しにくい条件を確認できます。
実際に売却を進める可能性が高くなった段階では、訪問査定を受けた方が売却条件を具体化しやすくなります。
机上査定と訪問査定はどちらを使う?
| 状況 | 向いている査定 |
|---|---|
| まだ売るか決めていない | 机上査定 |
| おおよその価格を知りたい | 机上査定 |
| 売却を具体的に検討している | 訪問査定 |
| 古い一戸建て・空き家 | 訪問査定を受けた方が判断しやすい |
| 土地形状・道路・境界が複雑 | 訪問査定 |
最初に机上査定で候補を比較し、その中から売却相談を進めたい会社へ訪問査定を依頼する方法もあります。
実家の査定は何社に頼む?
不動産査定を何社へ依頼しなければならない、という決まりはありません。
ただ、1社だけでは、
- その査定額が高いのか低いのか
- 地域の相場をどう見ているのか
- どのような販売方法を考えているのか
を比較できません。
そのため、複数社から査定を取ります。
初めて実家を査定するのであれば、まず2〜3社程度から比較すると、説明を聞き分けやすいでしょう。
これは公的に定められた必須社数ではなく、比較するための実務上の目安です。
あまり多くの会社へ一度に依頼すると、各社との電話・メール・訪問対応が増えるため、実際に比較できる数に絞ります。
査定額が会社によって違うのはなぜ?
不動産には定価がありません。
同じ実家でも、不動産会社がどの取引事例を比較するか、建物をどの程度評価するか、どの購入層を想定するかによって査定額が変わります。
例えば、一戸建てでは、
- 土地価格
- 建物の築年数
- 建物状態
- 土地の形
- 接道状況
- 駅・商業施設等への距離
- 近隣の成約事例
- リフォーム履歴
などが査定に影響します。
また、古い実家について、
- 中古戸建として売る
- 古家付き土地として売る
- 解体を前提に土地として見る
のどれを想定するかでも考え方は変わります。
査定額は「その金額で必ず売れる」という意味ではない
査定額は、売却を検討するために不動産会社が提示する価格の目安です。
実際にその金額で買う人がすでにいるという意味ではありません。
最終的な成約価格は、
- 売り出し価格
- 買主からの申込み
- 販売期間
- 値下げ交渉
- その時点の市場状況
などによって決まります。
そのため、査定額そのものだけでなく、
「この価格を、どの事例とどの売却方法から算出したのか」
を確認します。
一番高い査定額の会社を選べばいい?
査定額が高いこと自体が悪いわけではありません。
その会社だけが把握している購入希望者や、その地域で強い販売網があることもあります。
一方で、査定額は成約価格の保証ではないため、数字だけで決めない方がよいでしょう。
例えば、3社から、
- A社:3,000万円
- B社:3,100万円
- C社:3,600万円
という査定が出たとします。
C社を候補から外す必要はありません。
ただし、
- 3,600万円の根拠となる成約事例
- 想定する売り出し価格
- どのくらいの期間で売る想定か
- 売れない場合の価格変更方針
を確認します。
説明に納得できれば有力候補になりますし、根拠が弱ければ数字だけで選ぶ必要はありません。
査定を比較するときは「売却価格」以外も見る
| 比較する項目 | 確認内容 |
|---|---|
| 査定額 | いくらで売れると考えているか |
| 査定根拠 | どの取引・成約事例を参考にしたか |
| 想定売出価格 | 実際にはいくらから売り出す提案か |
| 想定期間 | どのくらいで成約を目指すか |
| 販売方法 | 広告・購入希望者への紹介方法 |
| 地域実績 | 近隣の戸建て・土地を扱っているか |
| 古家対応 | 中古戸建・古家付き土地・解体をどう考えるか |
| 家財 | いつまでにどこまで撤去する必要があるか |
| 担当者 | 質問への説明が具体的か |
国土交通省の取引価格も自分で確認できる
不動産会社の査定だけでなく、自分でも周辺の取引価格を確認できます。
国土交通省の「不動産情報ライブラリ」では、土地・建物の取引価格や、一戸建て・マンション等の成約価格情報などを検索できます。
実家と同じ地域で、
- 土地と建物
- 似た面積
- 近い築年数
- 近い時期
の取引がないかを見ると、査定説明を理解する材料になります。
ただし、近所で同じ広さの家が3,000万円で売れたからといって、実家も3,000万円になるとは限りません。
土地形状、道路、建物状態などが違えば価格は変わります。
戸建てと土地では査定の考え方も違う
公益財団法人不動産流通推進センターが提供する価格査定マニュアルでは、既存戸建住宅には原価法、住宅地には事例比較法を用いる方式が採用されています。
例えば住宅地であれば、近隣の取引事例と比較して土地価格を考えます。
一方、建物は築年数だけでゼロと決めるのではなく、建物の状態や各部位等を確認しながら評価する考え方があります。
実家の場合、土地と建物の両方を見るため、不動産会社によって前提条件が異なれば査定額に差が出ます。
仲介査定と買取査定は同じ金額ではない
空き家や古い実家では、不動産会社から、
「仲介なら3,000万円前後」
「当社買取なら2,300万円」
のように二つの数字を提示されることがあります。
この二つは意味が違います。
仲介査定
一般の購入希望者を市場で探す場合に、どの程度の価格で売却を目指せそうかという査定です。
その価格で買主が必ず見つかるわけではありません。
買取査定
不動産会社自身が買主になった場合に、その会社が実際に購入できる金額です。
会社側では、購入後の修繕、解体、販売、事業利益等も考えて価格を決めます。
そのため、仲介査定3,000万円と買取査定2,300万円を見て、「同じ家なのに査定が700万円違う」と考えるのは適切ではありません。
売却方法そのものが違います。
実家の査定前に準備しておく情報
すべての書類が揃っていなくても相談できますが、分かる範囲で次の情報を整理しておくと話が進みやすくなります。
- 所在地
- 現在の登記名義
- 土地面積
- 建物面積
- 築年数
- 間取り
- 現在空き家か、親が住んでいるか
- 相続済みか
- 共有者がいるか
- 家財が残っているか
- リフォーム・修繕履歴
- 売却希望時期
あると役立つ書類
- 登記事項証明書
- 固定資産税の納税通知書
- 購入時の売買契約書
- 建築確認関係資料
- 測量図・境界関係資料
- リフォーム関係資料
ただし、「書類が全部揃っていないから査定を頼めない」と考える必要はありません。
分からない情報があることも含めて不動産会社へ伝えます。
家財が残っていても査定を取れる
実家の場合、親の家具・衣類・食器などが大量に残っていることがあります。
査定前にすべて処分する必要があるとは限りません。
まず、
- 通帳
- 印鑑
- 不動産関係書類
- 親が購入したときの売買契約書
- 現金・貴金属
- 家族が残したい物
を確保します。
その状態で査定してもらい、仲介なら家財をいつまでに撤去するか、買取なら残置物を残したまま対応できるか確認します。
解体する前に査定する
古い実家の場合、「建物を壊して更地にしてから査定した方が高くなる」と考えることがあります。
しかし、解体は査定前に必須ではありません。
まず現在の状態で、
- 中古戸建として売れるか
- 古家付き土地として売れるか
- 現況買取ならいくらか
- 解体した場合にどの程度の土地価格が想定されるか
を確認します。
その後で、解体費を負担する価値があるか判断します。
査定前にリフォームする必要もない
査定額を上げるために、先に壁紙交換や大規模リフォームをする必要があるとは限りません。
リフォーム費用以上に売却価格が上がる保証はありません。
まず現況査定を受け、どこまで修繕すると売却しやすくなるかを不動産会社と確認します。
通常の「売却査定」と「不動産鑑定」は別
「不動産の査定」と「不動産鑑定評価」は同じものではありません。
実家を一般市場で売却するために不動産会社が提示する査定額は、売却価格を検討するための価格提案です。
一方、「不動産の鑑定評価」は、不動産の経済価値を判定して価格として示す専門業務で、不動産鑑定士が行います。
通常の実家売却で、必ず不動産鑑定士へ正式な鑑定評価を依頼する必要があるわけではありません。
ただし、相続人間で不動産価値をめぐって争いがあるなど、客観的な鑑定評価が必要な場面では、不動産鑑定士への相談が選択肢になります。
実家の査定で不動産会社へ聞きたい8つの質問
- この査定額の根拠となる取引・成約事例は何ですか?
- 実際にはいくらから売り出す提案ですか?
- その価格ならどのくらいの期間で売れる想定ですか?
- この地域の戸建て・土地を最近扱っていますか?
- 建物は中古戸建・古家付き土地のどちらで売る想定ですか?
- 家財はいつまでに撤去すればよいですか?
- 解体やリフォームは本当に必要ですか?
- 仲介だけでなく買取ならいくらですか?
これらを同じ条件で複数社へ聞くと、査定額以外の違いが見えやすくなります。
査定会社を選ぶときに見るポイント
最終的に売却を任せる会社を考えるときは、
- 実家と近い条件の売却実績
- 査定額の根拠
- 販売戦略
- 想定売却期間
- 古家・空き家への対応
- 家財や解体についての提案
- 担当者の説明
を確認します。
「大手だから」「地元だから」という一点だけでも決めません。
実家の条件に対して具体的な売却方法を説明できる会社かを見る方が重要です。
よくある質問
実家の査定はどこに頼めばよいですか?
実家のある地域で戸建て・土地の売却実績がある不動産会社を中心に比較します。大手・地元会社のどちらか一方に限定する必要はありません。
実家の査定は何社に頼めばよいですか?
必須社数はありませんが、1社だけでは比較できないため複数社を検討します。初めてなら2〜3社程度から始めると、各社の説明を比較しやすいでしょう。
机上査定と訪問査定はどちらを選べばよいですか?
まず概算を知りたい段階なら机上査定、売却を具体化して価格や売り方を詳しく知りたい段階なら訪問査定が向いています。
一番高い査定額の会社を選んだ方がよいですか?
査定額だけで決める必要はありません。高い査定には高いなりの根拠があるか、想定売出価格、販売期間、比較事例まで確認してください。
家財が残った実家でも査定できますか?
査定できる場合があります。重要書類・貴重品だけ先に確保し、残りの家財は売却方法を確認してから撤去範囲を決める方法があります。
古い実家は解体してから査定した方がよいですか?
解体前でも査定できます。中古戸建、古家付き土地、現況買取、更地にした場合の条件を比較してから解体を判断した方が選択肢を残せます。
仲介査定と買取査定の違いは何ですか?
仲介査定は一般の買主を探す場合の売却価格の提案、買取査定は不動産会社自身が実際に購入する価格です。売却方法が違うため、数字だけを横並びにして比較するものではありません。
査定と不動産鑑定は同じですか?
別です。一般的な売却査定は不動産会社が売却のために価格を提案するものです。不動産鑑定評価は国家資格である不動産鑑定士が不動産の経済価値を判定する専門業務です。
実家の査定は「一番高い金額」を決めるためではなく「売り方」を決めるために使う
実家の査定では、会社によって金額が違うことがあります。
その差を見ること自体にも意味があります。
ただし、本当に比較したいのは数字だけではありません。
なぜその価格なのか。
中古戸建として売るのか。
古家付き土地として売るのか。
家財や解体をどうするのか。
どのくらいの期間で売却を目指すのか。
こうした提案を複数社から聞くことで、実家に合う売り方が見えてきます。
査定前に家財を全部捨てたり建物を解体したりせず、まず現在の状態で査定を取り、その結果を見てから必要な費用をかける順番にすると、売却の選択肢を残しやすくなります。
実家・家財全体の整理については実家・家財整理のガイドも参照してください。