空き家はいつまで放置できる?法律上の期限と放置前に確認したい3つの期限

親が施設へ入り実家に誰も住まなくなったり、親が亡くなって空き家を相続したりすると、「いつまでならこのままにしておいてよいのか」と考えることがあります。

1年くらいなら大丈夫なのか。

3年経つと何か問題があるのか。

何年で特定空家になるのか。

こうした疑問に対して、最初に分けて考えたいことがあります。

空家法には、「空き家になってから○か月・○年までは放置してよい」という全国共通の猶予期間はありません。

一方、親が亡くなって実家を相続した場合には、相続放棄、相続登記、一定の税特例など、別の制度に具体的な期限があります。

「家を管理する期限」と「相続手続きの期限」を混同しないことが重要です。

目次

空き家は何年まで放置できる?全国共通の期限はない

空き家について、「1年まで」「3年まで」といった全国共通の放置可能期間が定められているわけではありません。

空き家になった時点から、所有者や管理者には周辺へ悪影響を及ぼさないよう適切に管理することが求められています。

つまり、

「まだ半年だから何もしなくてよい」

という考え方にはなりません。

反対に、5年間空き家だからという理由だけで、自動的に特定空家になるわけでもありません。

見るべきなのは経過年数だけではなく、建物や敷地が現在どのような状態になっているかです。

何年経つと管理不全空家・特定空家になるという決まりもない

管理が不十分な空き家については、「管理不全空家」や「特定空家」として市区町村による措置の対象になることがあります。

ただし、

  • 1年で管理不全空家になる
  • 3年で特定空家になる
  • 5年経てば必ず勧告される

といった全国共通ルールはありません。

例えば、管理不全空家は、適切な管理が行われていないため、そのまま放置すれば特定空家になるおそれがある状態の空き家です。

自治体では、

  • 建物の傷み
  • 屋根や外壁の状態
  • 庭木・雑草
  • 衛生状態
  • 周囲への影響
  • これまでの指導経過

などを見ながら判断します。

同じ2年間の空き家でも、毎月管理されている家と、窓が割れ、屋根材が落ち、庭木が道路へ伸びている家では状態がまったく違います。

空き家になった直後から最低限の管理は始める

今後どうするか決まっていなくても、空き家になった直後に一度確認しておきたいことがあります。

  • 玄関・窓の施錠
  • 鍵を誰が持つか
  • 郵便物
  • 雨漏り
  • 漏水
  • 外壁・屋根等の大きな破損
  • 庭木
  • 重要書類・貴重品
  • 現在の所有者・登記名義

親が施設へ入った場合には、本人の所有物を家族だけで大量に処分しないよう注意します。

親が亡くなった場合には、家財処分を進める前に相続関係も確認します。

最初の1か月程度で「誰がどう管理するか」を決める

1か月という期間は法律上の期限ではありません。

ただ、空き家になってから何となく時間が過ぎるのを防ぐため、実務上は早い段階で継続管理の仕組みを決めておく方が進めやすくなります。

例えば、

  • 誰が定期的に見に行くか
  • どの程度の頻度で巡回するか
  • 換気・通水をどうするか
  • 郵便物をどうするか
  • 庭・雑草を誰が見るか
  • 電気・水道を残すか
  • 遠方なら管理サービスを利用するか

を決めます。

売却や解体を決めていなくても、その判断が終わるまで家を管理する担当は必要です。

数か月以上空き家にするなら定期管理を続ける

数か月空き家にすること自体が禁止されているわけではありません。

必要なのは、空き家の状態を確認し続けることです。

定期管理では、

  • 施錠
  • 換気
  • 通水
  • 郵便物
  • 室内の雨漏り・カビ
  • 外壁・屋根
  • 庭木・雑草
  • 不法投棄
  • 動物・害虫の痕跡

などを確認します。

また、通常の巡回とは別に、台風、大雨、大雪、大きな地震などの後には状態を確認する意味があります。

1年以上持つ場合も「1年経過」が法律上の境目ではない

空き家が1年以上になったとしても、それだけで違法になったり、特定空家になったりするわけではありません。

ただし、長期保有するほど、管理にかかる費用と手間は積み上がります。

例えば、

  • 固定資産税等
  • 電気・水道
  • 空き家管理サービス
  • 交通費
  • 草刈り・剪定
  • 保険
  • 修繕

などです。

1年以上保有することになったら、単に「まだ売らなくてもいい」と考えるだけではなく、

  • 家族が将来使う予定は本当にあるか
  • 年間管理費はいくらか
  • 現在の建物状態はどうか
  • いくらで売却できそうか
  • 貸すことは現実的か
  • 解体費はいくらか

を一度比較してみると、その後の方向性を決めやすくなります。

期間より「今の状態」で判断する

空き家をあと何年持てるか判断するときは、経過年数だけを見るより、現在の状態を確認します。

状態 考え方
定期的に管理され、目立った劣化がない 保有を続ける選択肢もある
庭木・雑草が管理できなくなっている 管理方法の見直しが必要
雨漏り・外壁破損等がある 修繕・売却・解体を含めて早めに検討
道路や隣地へ影響が出ている 期間に関係なく優先して対応
自治体から指導等を受けている 期限を確認し、通知を放置しない

空き家が半年か5年かより、すでに周囲へ危険を及ぼしているかの方が重要な場合があります。

相続した空き家には「放置期限」とは別に3つの期限がある

親が亡くなって実家が空き家になった場合は、空家法とは別に期限のある制度があります。

特に確認したいのが次の3つです。

1.相続放棄は原則3か月以内

相続放棄をする場合は、原則として、自分が法律上相続人となったことを知った時から3か月以内に家庭裁判所へ申述します。

「家を売るかどうかまだ決めていないから」と判断を先送りしている間にも、この期間は進む場合があります。

借金の有無が分からない、相続放棄を検討している、といった場合は、家財の売却・処分を急ぐ前に確認します。

なお、事情によっては熟慮期間の伸長申立てなどが関係する場合があります。

2.相続登記は原則3年以内

2024年4月1日から相続登記が義務化されています。

相続によって不動産を取得したことを知った日から、原則3年以内に相続登記を申請する必要があります。

正当な理由なく義務を履行しない場合は、10万円以下の過料の対象となる可能性があります。

また、2024年4月1日より前に発生した相続も義務化の対象です。

2024年4月1日より前から相続したことを知っていた未登記不動産については、原則として2027年3月31日までに対応する必要があります。

「まだ空き家として持っているから名義はそのままでよい」という制度ではありません。

3.相続空き家の3,000万円特別控除にも期限がある

相続した実家を売却する場合、一定の要件を満たせば、被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除を利用できることがあります。

現在の制度では、一定の場合に譲渡所得から最高3,000万円を控除できます。

ただし、適用には多くの要件があり、その一つとして、原則として相続開始の日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに譲渡する必要があります。

また、現行制度自体は2027年12月31日までの譲渡が対象です。

相続人が3人以上の場合には、控除上限が1人あたり2,000万円となるなど別条件もあります。

「相続から3年間は放置してよい」という意味ではありません。

売却する可能性があるなら、利用できる制度があるか早めに税務署や税理士等へ確認します。

親が施設へ入った空き家では別の3,000万円控除が関係する場合もある

親が亡くなったのではなく、施設へ入居したことで実家が空き家になった場合は、相続空き家の特例とは状況が違います。

家の所有者本人が以前住んでいた自宅を売却する場合、通常の居住用財産の3,000万円特別控除が利用できる場合があります。

以前住んでいた家については、原則として住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却するなどの要件があります。

相続空き家の特例とは別制度なので、混同しないようにします。

「3年」という数字が多くても意味はそれぞれ違う

空き家に関する制度を調べると、「3年」という数字が何度も出てきます。

しかし、意味はそれぞれ違います。

制度 主な期限
相続放棄 原則3か月
相続登記 不動産取得を知った日から原則3年
相続空き家3,000万円特別控除 原則、相続から3年経過年の12月31日までに譲渡
以前住んでいた自宅の3,000万円特別控除 原則、住まなくなってから3年経過年の12月31日までに譲渡
管理不全空家・特定空家 「3年で認定」という期限はない

「空き家は3年間なら大丈夫」とまとめてしまうと、制度を誤解する原因になります。

空き家になった後の時間軸

空き家になった直後

売却や解体より先に、鍵、郵便、重要書類、漏水、雨漏り、外回り、名義を確認します。

今後の判断が決まるまで誰が管理するかも決めます。

最初の1か月程度

法律上の期限ではありませんが、定期管理の方法を決めます。

自分たちで通うのか、家族で分担するのか、管理サービスを利用するのかを決めます。

数か月以上保有する場合

換気、通水、郵便、庭、建物状態などの確認を継続します。

遠方で管理できない状態を、そのまま数か月続けないようにします。

1年以上保有する場合

管理を続けながら、年間の維持費、建物状態、家族の利用予定を再確認します。

将来使う予定がなければ、売却・賃貸・解体との比較を始めてもよいでしょう。

ただし、「1年で売らなければならない」という意味ではありません。

何年放置するかではなく「次に確認する日」を決める

空き家について考えるとき、「あと何年置いておけるか」を決めても、実際の管理にはつながりません。

代わりに、

  • 次に現地を確認する日
  • 誰が確認するか
  • 次に家族で今後を話す時期
  • 売却査定を取る時期

を決めておく方が実務的です。

例えば、今は売却しないと決めても、半年後にもう一度「本当に保有を続けるか」を家族で見直すことができます。

自治体から連絡が来たら「まだ○年だから」と考えない

市区町村から空き家の状態について連絡、指導、勧告等を受けた場合は、経過年数に関係なく通知内容を確認します。

特に、

  • 落下しそうな外壁
  • 倒壊のおそれ
  • 庭木の越境
  • 衛生上の問題
  • 周辺への悪影響

などを指摘されている場合には、期限内の改善を求められる場合があります。

「まだ空き家になって1年しか経っていない」ということは、対応しなくてよい理由にはなりません。

よくある質問

空き家は何年まで放置できますか?

空家法に全国共通の「○年までは放置してよい」という期限はありません。空き家になった時点から適切に管理することが求められます。管理不全空家・特定空家も放置年数だけで自動的に判断される制度ではありません。

1年間放置しても大丈夫ですか?

1年以内だから安全とは言えません。雨漏り、窓の破損、庭木の越境などがすでに起きていれば期間に関係なく対応が必要です。一方、1年以上でも適切に管理された空き家を所有すること自体が禁止されているわけではありません。

何年で特定空家になりますか?

全国共通の年数はありません。建物・敷地の状態、衛生面、周辺への影響、行政からの指導経過などによって判断されます。

管理不全空家になるまで何か月ですか?

「○か月で管理不全空家」という制度ではありません。適切な管理がされておらず、そのまま放置すれば特定空家になるおそれがある状態かどうかで判断されます。

相続した空き家は3年間放置しても大丈夫ですか?

いいえ。「3年」という数字は相続登記や一定の税特例など別制度で出てくる期間です。3年間の放置を認める期間ではありません。空き家自体の管理は相続後も必要です。

相続放棄はいつまでですか?

原則として、自分が法律上相続人になったことを知った時から3か月以内です。相続放棄の可能性がある場合は、実家の財産を売却・処分する前に早めに確認してください。

相続登記はいつまでですか?

原則として、相続により不動産を取得したことを知った日から3年以内です。2024年4月1日より前から相続を知っていた未登記不動産については、原則2027年3月31日までです。

相続した空き家の3,000万円控除はいつまでですか?

一定の要件を満たす場合、原則として相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までの譲渡が必要です。現行制度では2027年12月31日までに行われる譲渡が対象です。個別の適用要件は税務署や税理士等へ確認してください。

空き家には「放置できる期限」ではなく「管理しながら判断する期間」がある

空き家になった実家を、その日に売るか解体するか決める必要はありません。

数か月考えることもできます。

何年か保有する選択肢もあります。

しかし、その期間を「放置してよい期間」と考えないことが重要です。

鍵を確認する。

郵便物を整理する。

建物を点検する。

庭を管理する。

必要なら換気・通水をする。

そして、家族の利用予定と維持費を定期的に見直します。

空き家になってからの時間は、「何もしなくてよい猶予期間」ではなく、必要な管理を続けながら、その家の次を決める期間と考えると整理しやすくなります。

空き家になった実家の全体的な判断は実家が空き家になったときのガイド、管理方法は空き家の管理方法、管理をせず放置した場合の問題は空き家を放置するリスクを参照してください。

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