親が施設へ入ったり、亡くなって実家を相続したりすると、それまで人が暮らしていた家が突然「空き家」になります。
すぐに売るべきなのか。
しばらく残しておいてもよいのか。
解体した方がよいのか。
家財は全部片付けるべきなのか。
判断することが多いため、とりあえず鍵を閉めたまま何か月も経ってしまうこともあります。
実家が空き家になったからといって、すぐに売却や解体を決める必要はありません。
一方で、今後の方針が決まるまで何もしなくてよいわけでもありません。
名義・相続、家財、建物の状態を確認し、当面の管理体制を作ったうえで、売却・活用・解体・保有を比較するのが基本的な順番です。
実家が空き家になったら、最初に確認すること
空き家になった直後は、家をどう処分するかより、現在の状態を把握します。
確認したいのは大きく4つです。
- 家の所有者・名義
- 家の中に残っている重要書類・家財
- 建物と敷地の状態
- 当面、誰が管理するか
この4つが分かれば、その後の選択肢を比較しやすくなります。
1.まず家の名義と相続状態を確認する
親が施設へ入っただけで、親本人が所有している家なのか。
親が亡くなり、これから相続する家なのか。
すでに相続人間で誰が取得するか決まっているのか。
まずここを確認します。
固定資産税の通知書、登記事項証明書などから現在の名義を確認できます。
親が亡くなり相続した場合には、相続登記も関係します。
2024年4月から相続登記は義務化されており、相続によって不動産を取得したことを知った日から原則3年以内に申請する必要があります。
家をすぐ売らない場合でも、「空き家として保有するから登記は後でよい」という扱いにはなりません。
2.家財を捨てる前に重要書類・貴重品を確認する
空き家になると、「誰も住まないなら家財を全部処分しよう」と考えがちです。
しかし、先に確認したい物があります。
- 通帳
- 印鑑
- 不動産関係の書類
- 保険関係の書類
- 契約書
- 年金・税金関係の資料
- 現金・貴金属
- 鍵
- 写真・手紙など家族が残したい物
親が施設へ入居している場合は、本人へ確認せず家財を大量処分しない方がよいでしょう。
親が亡くなった後で、相続放棄を検討する可能性がある場合も、価値のある財産を売却・処分する前に個別確認が必要です。
家財を実際に整理する場合は、実家・家財整理のガイドから状況に合う進め方を確認してください。
3.建物と敷地の状態を一度確認する
次に、現在の実家がどんな状態か確認します。
室内だけでなく、建物の外も見ます。
- 窓や玄関の施錠
- 雨漏り
- 屋根・外壁の破損
- 水回り
- カビ・湿気
- 庭木
- 雑草
- 郵便受け
- 害虫・ネズミなどの痕跡
- 敷地内への侵入の形跡
特に長期間誰も入っていない家では、一度現地を確認してから今後の方針を考えます。
遠方にあり自分で確認できない場合は、家族・親族に頼むほか、空き家管理サービスを利用する方法もあります。
4.今後を決めるまでの管理担当を決める
売却するか解体するかを決めるまでにも、家は存在し続けます。
その間、誰が確認するのかを決めます。
例えば、
- 近くに住む家族が管理する
- 兄弟姉妹で交代する
- 親族へ頼む
- 空き家管理サービスへ委託する
といった方法があります。
「今後どうするか決まっていないから、誰も管理しない」という状態は避けます。
空き家を保有する間に行う管理
人が住まなくなった住宅は、住んでいる家とは違う管理が必要になります。
代表的な確認事項は、
- 戸締り
- 室内の通風・換気
- 水回りの確認
- 郵便物・チラシの整理
- 室内の清掃
- 庭の草取り・剪定
- 建物の傷み・雨漏りの確認
- 台風・地震などの後の見回り
です。
何をどの頻度で行うべきかは、建物・地域・季節・距離によって変わります。
「月1回なら必ず十分」といった一律の頻度で判断せず、建物の状態に応じて管理します。
実家が空き家になった後の選択肢は大きく4つ
当面の管理を確保したら、家を今後どうするか考えます。
大きく分けると次の4つです。
1.管理しながら保有する
将来自分や家族が住む可能性があるなど、すぐ処分したくない場合は保有できます。
ただし、保有するという判断は「何もしない」という意味ではありません。
固定資産税、管理、修繕、草木の手入れなどが続きます。
また、「いつまで保有するか」「何が起きたら方針を見直すか」も家族で決めておくと、そのまま何年も判断が延びるのを防ぎやすくなります。
2.売却する
今後家族が使う予定がなく、管理を続ける理由もない場合は売却が候補になります。
売却を考えるときは、家財をすべて撤去してから相談する必要があるとは限りません。
物件の状態や売却方法によっては、残置物を残した状態で相談できる場合があります。
そのため、家財処分へ大きな費用をかける前に、一度不動産会社へ査定・相談してから片付け範囲を決める方法もあります。
3.貸す・活用する
建物の状態や立地によっては、賃貸、事業利用などの活用を検討できる場合があります。
ただし、貸すために修繕費が必要になることもあります。
「空き家だから貸せば収入になる」と単純に決めず、
- 建物の状態
- 修繕費
- 周辺の賃貸需要
- 管理方法
を確認して判断します。
4.解体する
建物の老朽化が進んでいる、今後使用する予定がないなどの場合は解体も候補になります。
ただし、
「誰も住まないからすぐ壊す」
と決める必要はありません。
古家付き土地として売る方法との比較、解体費用、自治体の補助制度、家財撤去などを確認してから判断します。
「売る・貸す・解体・保有」は何を見て決める?
判断するときは、気持ちだけでなく条件を並べてみます。
| 確認すること | 考え方 |
|---|---|
| 今後家族が使う可能性 | 具体的な利用予定があるか |
| 建物の状態 | そのまま使えるか、修繕が必要か |
| 立地 | 売却・賃貸需要が見込めるか |
| 管理負担 | 距離、時間、草木、修繕などを継続できるか |
| 維持費 | 固定資産税、保険、修繕、管理など |
| 売却価格 | 現在どのくらいの価値があるか |
| 解体費 | 更地にする場合いくら必要か |
| 家財 | 処分にどの程度の費用・時間がかかるか |
特に「売却価格を知らない」「解体費も知らない」という状態では比較できません。
すぐ契約する必要はありませんが、必要な数字を集めてから判断します。
実家を空き家のまま放置するとどうなる?
誰も住んでいないだけで、直ちに問題になるわけではありません。
問題になるのは、管理されない状態が続くことです。
管理されていない空き家では、
- 建物の劣化
- 倒壊
- 屋根材・外壁の落下
- 庭木の越境
- 害虫・ネズミ
- 悪臭
- 不法侵入
- 近隣への影響
などにつながる可能性があります。
「空き家を何か月放置したらアウト」という全国共通の単純な期限があるわけではありません。
建物の状態や管理状況によって問題の発生時期は違います。
「管理不全空家」「特定空家」になる可能性もある
空家法では、周囲へ著しい悪影響を及ぼす空き家が「特定空家」として行政による指導・勧告等の対象になる仕組みがあります。
さらに法改正によって、特定空家になる前の段階でも、適切な管理が行われていない空き家が「管理不全空家」として指導対象になる仕組みが設けられました。
市区町村から改善の勧告を受けた場合には、土地に適用されている住宅用地の固定資産税等の軽減措置を受けられなくなる可能性があります。
そのため、使い道が決まっていなくても、管理を止めてよい理由にはなりません。
相続した実家なら相続登記も忘れない
親が亡くなって空き家を相続した場合は、家の使い道だけでなく不動産の登記も確認します。
2024年4月1日から相続登記が義務化されています。
相続によって不動産を取得したことを知った日から原則3年以内に相続登記を行う必要があります。
遺産分割で不動産の取得者が決まった場合にも、遺産分割成立後の登記義務があります。
「売るときにまとめて登記すればよい」と考えず、現在の登記状態を早めに確認します。
親が施設に入った場合は、すぐ家を処分する必要はない
親が施設へ入居して実家が空き家になった場合と、親が亡くなって相続した場合では状況が違います。
施設入居後でも、
- 一時的に自宅へ戻る可能性
- 本人が家を残したい意向
- 施設生活が長期になる見込み
- 家を維持する費用
などを確認する必要があります。
子ども側の判断だけですぐ家を売却・処分するのではなく、本人が意思を示せる状態なら本人の意向を確認します。
一方、誰も住まない期間が続くなら、その期間中の管理方法は別に決めておきます。
遠方の実家なら、自分で管理できるか最初に考える
実家まで片道数時間かかる場合、自分で定期的に管理し続けるのは大きな負担になります。
最初の数回は対応できても、何年も続けるのが難しい場合があります。
遠方なら、
- 近くに管理を頼める家族がいるか
- どの程度の頻度で現地へ行けるか
- 草木や積雪など地域特有の管理があるか
- 空き家管理サービスを使うか
を確認します。
方針を決めるまで数か月〜年単位になる可能性があるなら、管理を続けられる仕組みを先に作ります。
実家が空き家になった直後のチェックリスト
- 現在の名義を確認した
- 相続が発生している場合は相続人を確認した
- 相続登記の必要性を確認した
- 重要書類・貴重品を確保した
- 鍵を管理している人を決めた
- 窓・玄関の施錠を確認した
- 雨漏り・破損などを確認した
- 庭・草木の状態を確認した
- 郵便物の状態を確認した
- 当面の管理担当を決めた
- 家族が今後使う予定があるか話した
- 売却・賃貸・解体・保有を比較する準備をした
よくある質問
実家が空き家になったら最初に何をすればよいですか?
家の名義・相続状態、重要書類・家財、建物状態を確認し、今後を決めるまで誰が管理するのかを決めます。売却や解体の契約を急ぐより、現在の状態を把握することを先に行います。
親が施設へ入った後の実家はすぐ売った方がよいですか?
一律には決められません。本人が戻る可能性や意向、維持費、家族が使う可能性などを確認します。ただし、保留している期間も空き家の管理は必要です。
相続した実家を空き家のまま持っていてもよいですか?
保有すること自体は可能ですが、適切な管理が必要です。また、相続した不動産については相続登記の義務も確認してください。
実家の空き家は売る・貸す・解体のどれがよいですか?
建物状態、立地、売却価格、賃貸需要、修繕費、解体費、管理負担、家族の利用予定によって異なります。必要な金額や条件を確認して比較します。
空き家はどのくらい放置しても大丈夫ですか?
全国共通の「○か月なら放置してよい」という基準はありません。建物の状態や季節、周辺環境で劣化やトラブルの進み方は変わります。空き家になった時点から管理担当を決めてください。
遠方で空き家を管理できません。どうすればよいですか?
近隣にいる家族・親族へ頼む方法のほか、空き家管理サービスを利用する方法があります。売却や解体をすぐ決めない場合でも、管理だけは継続できる仕組みを作ります。
管理不全空家になると固定資産税がすぐ高くなりますか?
管理不全空家に認定されただけで直ちに住宅用地特例が外れるという単純な仕組みではありません。市区町村から指導を受け、それでも改善せず勧告を受けた場合には、住宅用地特例の対象から外れる可能性があります。
実家が空き家になったら、「決めるまで放置」ではなく「管理しながら決める」
実家が空き家になると、売るか残すかをすぐ決断できない家庭もあります。
それ自体は問題ではありません。
ただし、判断を保留することと、家を放置することは別です。
名義と相続を確認する。
重要な家財を確保する。
建物の状態を見る。
管理する人を決める。
そのうえで、売却・活用・解体・保有を比較する。
この順番なら、判断を急ぎすぎず、空き家を管理されない状態のまま残すことも避けやすくなります。
実家・家財全体の整理については実家・家財整理のガイドから確認してください。