親が施設へ入居したり亡くなったりして実家が空き家になると、電気や水道をそのまま契約しておくべきか迷います。
使わないなら全部止めた方が固定費は下がります。一方、空き家を管理するために照明を使う、清掃をする、排水口へ水を流す、防犯設備を動かす、売却の内覧や修繕工事で使う、といった場面もあります。
そのため、空き家の電気・水道は「必ず残す」「すぐ止める」と一律に決めるものではありません。
国土交通省の空き家管理に関するガイドラインでも、電気・水道の通電・通水を維持するか使用中止するかは、物件の状態や管理方法によって判断する考え方が示されています。
まず「空き家で何をするのか」を整理し、その作業や設備に電気・水道が本当に必要かを確認してから契約を決めるのが基本です。
空き家の電気・水道は何を基準に決める?
最初に次の5点を確認します。
- 今後も定期的に室内へ入って管理するか
- 電気を必要とする設備があるか
- 水を使う清掃・通水などを行うか
- 近いうちに売却・賃貸・修繕・解体する予定があるか
- 漏電・漏水や凍結などを誰が確認できるか
同じ空き家でも、月1回程度家族が訪問する家と、1年間ほぼ誰も入らない家では必要なライフラインが異なります。
| 状況 | 電気 | 水道 | ガス |
|---|---|---|---|
| 定期的に室内管理する | 必要設備があれば維持を検討 | 清掃等で使うなら維持を検討 | 通常は停止を検討 |
| 外観確認だけ | 不要なら停止を検討 | 不要なら停止も選択肢 | 停止を検討 |
| 売却活動中 | 内覧・設備確認の必要性を不動産会社と相談 | 内覧・清掃等の必要性を相談 | 使用予定がなければ停止を検討 |
| 近く解体する | 解体会社と停止・設備撤去時期を確認 | 工事で必要か確認してから停止 | 原則として停止・撤去時期を確認 |
| 長期間まったく使わない | 必要設備がなければ停止を検討 | 管理方法を決めた上で停止を検討 | 停止を検討 |
この表は全国共通の義務ではありません。実際の契約条件や停止・再開方法は、電力会社・水道事業者・ガス会社によって異なります。
空き家の電気を残した方がよいケース
電気を残す理由は、「空き家だから電気が必要」ということではなく、管理や設備に電源が必要だからです。
たとえば次のような設備を使う場合があります。
- 室内・屋外照明
- 防犯カメラ
- 警備設備
- インターネット回線・通信機器
- 電動シャッターや電動門扉
- ポンプ類
- 管理上必要なその他の電気設備
国土交通省も、電気の供給が必要な設備がある場合には通電しておくことが考えられるとしています。
売却活動中の物件では、室内が暗い時間帯の内覧や設備確認、修繕作業などで電気を使うこともあります。売却を予定しているなら、不動産会社へ「電気を止めても問題ないか」を確認してから停止する方がよいでしょう。
電気を止めることを検討しやすいケース
電気を使う設備がなく、室内管理にも電源が不要であれば、契約を停止する選択肢があります。
- 長期間誰も室内へ入らない
- 防犯カメラなどの設備も使わない
- 近く解体する
- 建物がかなり老朽化している
- 電気設備の状態に不安がある
通電したままにしておくと電気料金がかかるだけでなく、設備状態によっては漏電などのリスクも考える必要があります。
一方で、契約だけ残して一部のブレーカーを切るなどの方法が適切かは、電気設備や使用機器によって異なります。古い配線や分電盤に不安がある場合は、自己判断だけで長期間通電せず、必要に応じて電気工事業者等へ相談してください。
空き家の水道は必ず残す必要がある?
「空き家では定期的な通水が必要だから、水道契約は必ず残す」と説明されることがありますが、必ずしもそうとは限りません。
国土交通省のガイドラインでは、管理作業で必要な水量が排水トラップの封水程度であれば、水道を使用中止していても、管理巡回時に水を持参することで対応できる例を示しています。
つまり、必要なのは「契約を残すこと」そのものではなく、建物の状態に応じた管理を続けることです。
水道を残した方が便利なケース
次のような管理を行う場合は、水道を利用できる状態にしておくと作業しやすくなります。
- 室内の清掃
- トイレや洗面所などの確認
- 排水口への通水
- 庭木への散水
- 売却前の清掃
- 修繕工事
ただし、水道を使える状態にする場合は漏水にも注意が必要です。
人が住んでいる家なら漏水に比較的早く気づけますが、空き家では次回の訪問まで発見できないことがあります。
水道を維持するなら、定期巡回時にメーターや蛇口、トイレ、給排水設備などに異常がないか確認する管理方法も決めておきましょう。
水道を止める場合でも排水口の封水は確認する
長期間水を流さないと、洗面所・キッチン・浴室などの排水トラップにたまっている水が減ることがあります。
排水トラップの水は、下水管側からの臭気などを室内へ入りにくくする役割があります。
水道契約を止める場合でも、管理時に必要量の水を持参して排水口へ補充する方法があります。
どの程度の管理が必要かは、建物の設備や訪問頻度によって異なります。
水道を止めれば基本料金を抑えられる場合がある
水道料金の仕組みは地域によって異なりますが、契約を残していると使用量がゼロでも基本料金がかかる地域があります。
たとえば東京都水道局は、家の改築や長期間留守にする場合に一時的な使用中止手続きができ、中止の届出をしなければ水を使っていなくても基本料金がかかると案内しています。
そのため、長期間水を使わないことが明確なら、水道事業者へ使用中止制度を確認する価値があります。
逆に数か月以内に売却・清掃・修繕を予定しているなら、停止と再開の手間や管理方法まで含めて判断します。
長期間使わない水道はメーターの扱いも確認する
長期の空き家では、水道の契約を止めるだけでなく、水道メーターの扱いについて確認が必要になる地域もあります。
東京都水道局は2026年、空き家や解体予定建物などでおおむね1年程度水道を使用しない場合、水道メーターの撤去について連絡するよう案内しています。これは東京都の取扱いであり、全国共通制度ではありません。
長期間使用予定がない場合は、実家所在地の水道事業者へ「使用中止後にメーターはどうなるか」まで確認しておくとよいでしょう。
寒冷地では水道を残すことが逆にリスクになる場合もある
冬に気温が大きく下がる地域では、水道管の凍結や破損に注意が必要です。
国土交通省のガイドラインでも、寒冷地などで凍結による水道管破損のおそれがある場合には、冬季だけ閉栓して水抜きを行うことも必要としています。
「空き家管理には水道が必要だから冬も常に開けておく」と機械的に決めるのではなく、地域の気候と設備に合わせて対応します。
水抜き方法は住宅設備によって異なるため、寒冷地では水道事業者、設備業者、管理会社などへ確認してください。
ガスは使わないなら停止を検討する
メインの検索は電気・水道ですが、実際にはガスも同時に整理することになります。
国土交通省の空き家管理ガイドラインでは、空き家の管理上ガス供給が必要な場合は少ないと想定されるため、通常は供給を行わず閉栓することが一般的としています。
LPガスについては、ガスボンベを取り外すことが一般的との整理です。
給湯器を使う予定がある、短期間で再居住するなど事情がある場合は契約会社へ確認しますが、誰も住まず管理にも使わないなら、電気・水道より停止を判断しやすいライフラインです。
親が施設へ入った直後は全部止めない方がよいこともある
親が施設へ入居した直後は、実家を売るのか、本人が戻るのか、家族が使うのか決まっていないことがあります。
この段階で電気・水道をすべて停止すると、その後の片付け、重要書類の捜索、家財整理、清掃などがしにくくなる場合があります。
今後の方針が決まるまで数週間から数か月程度必要なら、まず管理に必要なライフラインだけ維持し、方針決定後に再判断する方法もあります。
ただし、使わない設備やガス契約まで漫然と何年も残し続ける必要はありません。
親が亡くなった後は契約名義も確認する
相続で実家が空き家になった場合、電気・水道・ガスの契約が亡くなった親名義のままになっていることがあります。
契約を維持する場合でも停止する場合でも、事業者へ死亡・相続後の名義や支払方法について確認してください。
特に口座振替が亡くなった人の銀行口座に設定されている場合は、相続手続きによって引落しできなくなる可能性があります。
料金未払いによって意図せず供給停止になることを防ぐためにも、早めに請求先と支払方法を確認しておきます。
売却する空き家は電気・水道をいつ止める?
売却予定だからといって、売り出した直後に必ず停止する必要はありません。
中古住宅として内覧してもらう場合や、室内の確認・清掃・修繕を行う場合は、電気や水道を使うことがあります。
反対に、古家付き土地として建物を利用しない前提で売却する場合は、ライフラインを維持する必要性が低いこともあります。
不動産会社へ次の点を確認してから決めるとよいでしょう。
- 内覧で電気を使うか
- 設備の動作確認をするか
- 清掃や修繕で水道を使うか
- 売却完了までの想定期間
- 古家付きで売るか、解体を予定するか
解体予定なら停止前に解体会社へ確認する
家を解体することが決まっていても、自己判断ですぐ電気・水道を止めるのではなく、まず解体会社へ工事で何が必要か確認してください。
工事内容によっては一時的に水や電気を使うことがあります。また、単なる契約停止とは別に、引込線・メーターなど設備の撤去手続きが必要になる場合があります。
たとえば東京電力エナジーパートナーは、家屋解体に伴う電気設備の撤去について、通常のWeb使用停止ではなく事前の連絡が必要と案内しています。
水道やガスについても地域・事業者によって解体時の手続きが異なるため、「契約を止めれば終わり」と考えず、解体会社と各事業者の両方へ確認します。
電気・水道を残す場合の主なリスク
ライフラインを残せば管理しやすくなる一方で、負担やリスクもあります。
| 項目 | 主な注意点 |
|---|---|
| 電気 | 基本料金等、漏電、古い設備の異常、使用しない機器の通電 |
| 水道 | 基本料金等、漏水、凍結、発見が遅れる可能性 |
| ガス | 管理で不要なら契約を残す意味が小さい場合が多い |
特に遠方の空き家では、漏水が起きてもすぐ現地へ行けないことがあります。
「管理に便利だから残す」という場合は、誰が・どの頻度で異常を確認するかまで決めておきましょう。
基本料金だけでなく年間コストで考える
空き家のライフラインを残すか判断するときは、1か月分の基本料金だけを見るのではなく、年間で計算すると判断しやすくなります。
- 電気の年間基本料金・最低料金等
- 水道・下水道の基本料金等
- ガスを維持する場合の料金
- 空き家管理サービス費
- 実家までの交通費
- 庭木・草刈り費
- 火災保険
- 固定資産税
- 修繕費
年間の維持費が大きくなっているのに誰も使う予定がないのであれば、電気・水道だけを細かく節約するより、売却・解体を含む実家全体の方針を見直した方が効果が大きい場合があります。
遠方で管理できない場合はライフラインより管理体制を先に決める
実家が遠方にある場合、「水道を残すべきか」という問題よりも、誰が建物の状態を確認するのかの方が重要です。
電気や水道を契約したままにしていても、何か月も誰も確認しなければ、漏電・漏水・建物の劣化などを早期に発見できません。
自分で継続して訪問できない場合は、家族、近隣の協力者、空き家管理サービスなどを使い、管理方法を先に決めます。
その管理内容に合わせて、必要なライフラインだけ残す方が合理的です。
空き家の電気・水道を決めるチェックリスト
- 空き家になった理由を整理した
- 今後誰かが住む可能性を確認した
- 売却・賃貸・解体の予定を確認した
- 管理で電気を使う設備を書き出した
- 管理で水を使う作業を書き出した
- 防犯設備・通信設備の電源を確認した
- 漏電・漏水を誰が確認するか決めた
- 寒冷地なら凍結・水抜きを確認した
- ガスを使う予定があるか確認した
- 各契約の名義と支払方法を確認した
- 停止後の再開方法を確認した
- 解体予定なら設備撤去手続きを確認した
よくある質問
空き家の電気と水道はすぐ止めた方がいいですか?
一律にはいえません。国土交通省も、電気・水道を維持するか使用中止するかは物件の状況によるとしています。管理作業や必要設備、漏電・漏水リスク、料金、売却・解体予定を確認して決めます。
水道を止めたら空き家の通水はできませんか?
水道契約を停止していても、管理巡回時に水を持参し、排水トラップの封水などに利用する方法があります。国土交通省のガイドラインでもそのような例が示されています。
空き家の水道は使わなくても料金がかかりますか?
地域の料金制度によります。東京都水道局では、使用中止の届出をしなければ水を使っていなくても基本料金がかかると案内しています。実家所在地の水道事業者へ確認してください。
空き家の電気を残すメリットは何ですか?
照明、防犯カメラ、警備設備、通信機器、電動設備などを使えることです。一方、料金と漏電等のリスクもあるため、使う設備がなければ停止も選択肢になります。
ガスも残した方がいいですか?
空き家管理でガスが必要な場面は一般に多くありません。国土交通省のガイドラインでは、通常は閉栓し、LPガスならボンベを取り外すことが一般的としています。再居住予定など事情がある場合は契約会社へ確認してください。
解体する家の電気・水道はすぐ解約していいですか?
解体会社へ先に確認してください。工事で一時的に必要になることがあるほか、電気の引込線・メーター、水道設備などは通常の使用停止とは別の撤去手続きが必要になる場合があります。
冬だけ水道を止めてもいいですか?
寒冷地では、凍結による水道管破損を防ぐため冬季に閉栓・水抜きを行う方法があります。住宅設備や地域によって方法が異なるため、水道事業者や設備業者等へ確認してください。
電気・水道は「使う目的」があるものだけ残す
空き家のライフラインは、「空き家なら全部停止」「管理するなら全部残す」という二択ではありません。
電気を必要とする設備があるなら電気を残す。清掃などで水を頻繁に使うなら水道を残す。ガスを使わないなら停止を検討する。水道を止めても、管理巡回時に必要な水を持参できる場合があります。
一方、通電・通水を残す場合には基本料金だけでなく、漏電・漏水、寒冷地の凍結なども考える必要があります。
何年も使う予定がない実家なら、ライフラインをどう節約するかだけでなく、管理を続けるのか、売却するのか、解体するのかという出口まで一緒に検討した方が、長期的な負担を整理しやすくなります。
実家全体の方針から整理したい場合は、実家じまいの進め方もあわせて確認してください。