親が亡くなったり施設へ入居したりして実家が空き家になると、建物だけでなく庭や敷地の雑草も管理し続ける必要があります。
数か月ぶりに実家へ行ったら草が伸びて道路や隣家にはみ出していた、近隣から連絡が来た、遠方なので自分では草刈りに通えない、といった問題は珍しくありません。
ただし、「空き家は年○回草刈りをすればよい」という全国共通の法定回数があるわけではありません。
雑草の伸び方は地域、季節、日当たり、雨量、敷地の状態などで大きく変わります。重要なのは回数を固定することではなく、道路や隣地への越境、枯れ草、害虫、火災などの問題が生じる前に状態を確認し、必要な時期に手入れすることです。
空き家の草刈りはなぜ必要?
雑草が伸びても建物そのものがすぐ壊れるわけではありませんが、空き家では庭の管理不足が近隣から最も見えやすい問題の一つになります。
国土交通省は空き家を適切に管理する項目として庭木の手入れを挙げ、放置した空き家では庭木のはみ出し、害虫やねずみ、不法侵入などが近隣トラブルにつながると案内しています。
- 道路や隣家へ草木がはみ出す
- 落ち葉や種が周辺へ飛ぶ
- 害虫や害獣が住み着きやすくなる
- ごみを捨てられやすくなる
- 敷地内が見えにくくなり防犯上の死角が増える
- 枯れ草など燃えやすい物が増える
- 管理されていない印象が強くなり近隣から苦情が来る
庭の状態だけで直ちに管理不全空家や特定空家になるわけではありませんが、雑草・樹木を含めて適切な管理が行われず、周辺への悪影響が大きくなれば行政対応につながる可能性があります。
草刈りは年何回必要?全国共通の回数はない
空き家管理について「年2回」「年3回」「毎月」などの回数が紹介されることがありますが、全国一律に決められた草刈り回数ではありません。
草の伸び方は季節によって大きく変わるため、回数ではなく現地の状態を基準に判断します。
特に次のような状態が見られたら、予定していた時期を待たずに対応した方がよいでしょう。
- 雑草が道路や隣地へ入り始めている
- 門や通路が草で通りにくくなっている
- 隣家へつる植物が伸びている
- 庭木の枝が道路や隣地へ越境している
- 枯れ草や落ち葉が大量にたまっている
- 虫や動物の発生が目立つ
- 近隣や自治体から連絡を受けた
遠方の実家なら、草刈りに行く回数だけ決めるより、「現地を確認する人」を確保して、繁茂状況に応じて作業する方が管理しやすくなります。
春から秋は特に雑草の状態を確認する
雑草の成長速度は一年中同じではありません。
一般に気温や降水量が高い時期は草が伸びやすく、同じ敷地でも冬と夏では必要な確認頻度が変わります。
そのため、年間の予定を一度決めて終わりではなく、草が伸びる時期は現地写真などで状態を確認し、必要なら予定を前倒しします。
反対に、草がほとんど伸びない時期まで機械的に毎月作業する必要があるとは限りません。
雑草を放置すると火災リスクもある
草刈りは見た目だけの問題ではありません。
大阪府は空き家の火災予防として、雑草や庭木を定期的に手入れし、落ち葉や枯れ草を放置しないよう案内しています。
敷地内に枯れ草、段ボール、古い家具など燃えやすい物が増えると、火災が起きた際に周囲へ燃え広がるリスクも考える必要があります。
- 枯れ草や落ち葉をためない
- 段ボールや木材などを庭へ放置しない
- 灯油缶・スプレー缶などを放置しない
- 窓や扉が壊れている場合は補修・施錠する
草刈りをするときは、敷地内のごみや可燃物も一緒に確認すると効率的です。
雑草と庭木の越境は別々に確認する
空き家の庭では、雑草だけでなく庭木や竹、つる植物が隣家や道路へ伸びることがあります。
特に庭木の枝については、2023年4月施行の改正民法233条により、越境された土地の所有者が一定の条件を満たした場合に枝を自ら切り取れるルールが設けられています。
たとえば、枝の所有者へ切除を求めたにもかかわらず相当期間内に対応しない場合、所有者や所在を知ることができない場合、急迫の事情がある場合などです。
空き家所有者側としては、近隣が法的対応を検討する状態になる前に、境界付近の庭木を確認して剪定しておく方がトラブルを防ぎやすくなります。
なお、雑草やつる植物、越境物の扱いは状況によって異なるため、「境界を越えた物は近隣が自由に切ってよい」と一律には考えないようにしてください。
草刈りと草むしりは使い分ける
空き家の雑草管理には、主に草刈りと草むしりがあります。
| 方法 | 向いている場所 | 特徴 |
|---|---|---|
| 機械による草刈り | 広い敷地、草が大量に伸びた場所 | 短時間で処理しやすいが、石などの飛散や刈払機の事故に注意 |
| 手作業の草むしり | 狭い庭、建物・車・設備の近く | 細かく除草しやすいが、面積が広いと時間がかかる |
| 庭木の剪定 | 枝が道路・隣地へ伸びる場所 | 雑草とは別に樹木管理が必要 |
| 防草シート | 今後頻繁に利用しない場所 | 草刈り後の再繁茂を抑える方法の一つ |
国分寺市も、空き家・空き地で一度除草しても翌年再び繁茂するケースがあるとして、除草後の防草シートを再発防止策の一つとして案内しています。
ただし、防草シートも敷けば永久に管理不要になるものではありません。破れ、めくれ、シートの上に堆積した土からの発芽などがないか定期的に確認します。
自分で草刈りするか、業者へ頼むか
自宅から近く、敷地が狭く、作業を継続できるのであれば自分で行う方法があります。
一方、次のような場合は業者へ任せた方が現実的です。
- 実家が遠方にある
- 敷地が広い
- 草が腰丈以上まで伸びている
- 斜面や段差がある
- 石や障害物が多い
- 窓・車・隣家が近い
- 庭木の剪定や伐採も必要
- 高齢などで機械作業が難しい
- 毎年何度も通うことが負担になっている
「自分でやれば無料」と考えがちですが、遠方なら交通費、高速代、ガソリン代、宿泊費、草刈機や保護具の購入費、刈った草の処分時間もかかります。
年間で何度も往復するなら、業者へ依頼した場合の年額と比較した方が判断しやすくなります。
刈払機を使う場合は安全対策を優先する
草刈り機・刈払機は広い敷地では便利ですが、高速回転する刃を使うため事故リスクがあります。
消費者庁や国民生活センターは、刈刃への接触、巻き込み、飛散物、キックバックなどによる事故について注意喚起しています。
- 取扱説明書を確認する
- 保護メガネなど適切な装備をする
- 作業前に石・枝などの異物を取り除く
- 周囲に人がいないことを確認する
- 車や窓が近い場合は飛散防止を行う
- 刈刃へ絡んだ草を取るときは必ず機械を止める
国民生活センターの試験では、刈払作業で飛散物が周囲へ飛ぶことも確認されています。
斜面、石の多い場所、車や隣家の窓が近い場所などで、経験がないまま無理に作業する必要はありません。
空き家の草刈りはどこに頼む?
主な依頼先には次のような選択肢があります。
| 依頼先 | 向いているケース | 確認点 |
|---|---|---|
| シルバー人材センター | 一般的な除草・草刈りを費用を抑えて依頼したい | 対応地域、危険作業の可否、処分費、予約待ち |
| 造園・庭管理業者 | 庭木剪定、伐採、広い敷地もまとめたい | 剪定・伐採費、処分費 |
| 空き家管理サービス | 草刈りだけでなく建物点検も任せたい | 基本プランに草刈りが含まれるか、追加料金 |
| 地域の草刈り業者・便利業者 | 単発で早く対応したい | 作業範囲、処分、出張費、損害保険 |
シルバー人材センターは地域ごとに料金・受付方法・作業可能範囲が異なります。また、高齢者の就業という性格上、急斜面、高所、危険な場所などは依頼できない場合があります。
空き家の草刈り費用はいくら?
空き家の草刈りについて、全国共通の公的な平均料金はありません。
費用は、面積だけでなく、草丈、作業方法、斜面、障害物、機械を使えるか、刈った草の処分、出張距離などによって変わります。
2026年度に各地のシルバー人材センターが公開している料金を見ると、地域によって料金体系そのものがかなり異なります。
| 公開例 | 2026年度の料金例 | 注意点 |
|---|---|---|
| 大田区シルバー人材センター | 除草 1回6,790円〜、夏季7,900円〜 | ごみ処分は依頼者。作業できない場所あり |
| 調布市シルバー人材センター | 機械刈り 2,090円/時間・人、手刈り1,540円/時間・人 | 別料金が必要な項目あり |
| 長野シルバー人材センター | 機械刈り1,975円〜/時間、または26円〜/㎡ | 状況により異なり、事務費別 |
これらは同じ作業条件を比べた全国相場ではありません。あくまで各地域の公式公開例です。
見積もりでは作業料金だけでなく、次の項目を確認します。
- 草刈りか手作業の草取りか
- 何㎡・何坪まで含まれるか
- 草丈による追加料金
- 刈った草の集積
- 草の搬出・処分
- 機械使用料
- 出張費
- 事務費
- 庭木剪定の料金
- 作業後の写真報告
遠方の実家では、作業後の写真を送ってもらえるかも重要です。
安さだけで業者を選ばない
草刈りは価格差が出やすいサービスですが、見積額だけで選ぶと、刈草処分や出張費が後から追加されることがあります。
依頼前には、同じ条件で見積もりを比較します。
- 対象範囲を写真や図で共有する
- 刈草を持ち帰るか確認する
- 庭木の剪定は別料金か確認する
- 追加料金が出る条件を確認する
- 窓・車などへの飛散対策を確認する
- 作業前後の写真を依頼する
草刈りを年に何度も依頼するなら、単発料金だけでなく年間総額で比較してください。
防草シートを使えば草刈りを減らせる?
今後庭を使う予定がなく、毎回草刈りを続けることが負担なら、防草シートなどで雑草の再発を抑える方法があります。
特に遠方の空き家では、毎年草刈り費と交通費を払い続けるより、初期費用をかけて管理量を減らす方が合理的なことがあります。
ただし、すでに大きな庭木や竹がある場合、防草シートだけですべて解決できるわけではありません。
- 敷く前に既存の草を処理する
- 庭木・竹・根の対応を分けて考える
- シートの端やつなぎ目を確認する
- 破損やめくれがないか定期点検する
今後売却や建て替えを予定しているなら、その土地の利用予定も考えて施工方法を決めます。
近隣から草について苦情が来たら
近隣から「草が伸びている」「枝が越境している」と連絡を受けた場合は、放置せず現地の状態を確認します。
- どの場所が問題になっているか聞く
- 写真を送ってもらうか現地確認する
- 道路・隣地への越境部分を優先して対応する
- 草刈り・剪定の日程を決める
- 作業後に必要なら近隣へ連絡する
自治体がすべての雑草を代わりに刈ってくれるわけではありません。
自治体の案内でも、空き家・空き地の雑草や樹木は基本的に所有者等が管理するものとされている例が多くあります。
苦情が来てから初めて草を刈る状態が毎年続くなら、定期管理を外注するか、空き家自体を今後どうするか見直した方がよいでしょう。
遠方の実家は草刈りだけでなく写真確認をセットにする
遠方の空き家では、草刈りのためだけに何度も往復するのは負担になります。
外注する場合は、草刈りと同時に次の場所も写真で確認してもらえると管理しやすくなります。
- 建物全景
- 道路側
- 隣地との境界
- 庭木の越境
- 郵便受け
- 窓や扉
- 屋根・外壁の目立つ破損
- 不法投棄
草刈り業者が建物点検まで行わない場合は、空き家管理サービスと組み合わせる方法もあります。
毎年の草刈りが負担なら空き家の出口も考える
草刈り自体は空き家管理の一部にすぎません。
誰も住む予定のない実家を何年も保有すると、草刈りのほかにも固定資産税、火災保険、建物修繕、電気・水道、交通費などがかかります。
毎年の草刈りが負担になっているなら、一度年間維持費をまとめて計算してみてください。
- 草刈り・庭木剪定
- 空き家管理サービス
- 固定資産税・都市計画税
- 火災保険
- 電気・水道
- 修繕費
- 交通費・宿泊費
今後使う予定がないのであれば、管理を続ける費用と、古家付きで売却する場合、買取を利用する場合、解体して土地を売る場合を比較した方が、長期的な負担を判断しやすくなります。
実家全体の進め方から整理したい場合は、実家じまいの進め方もあわせて確認してください。
よくある質問
空き家の草刈りは年何回すればいいですか?
全国共通の法定回数はありません。地域、季節、敷地、草の種類によって伸び方が違うため、道路・隣地への越境や枯れ草などが問題になる前に状態を確認して作業します。
雑草を放置すると管理不全空家になりますか?
雑草があるという一点だけで自動的に管理不全空家になるわけではありません。ただし、適切な管理がされず、庭木の越境、害虫、衛生・生活環境への悪影響などが生じれば、自治体から改善を求められる可能性があります。
草刈りの費用はいくらですか?
全国共通の相場はありません。料金は面積、草丈、機械作業か手作業か、処分量、出張距離などによって変わります。2026年度のシルバー人材センター公式料金でも、時間制、面積制、1回料金など地域によって料金体系が異なります。
シルバー人材センターへ空き家の草刈りを頼めますか?
草刈り・除草を受け付けているシルバー人材センターは多くあります。ただし、対応地域、予約状況、斜面や危険箇所、草の処分などの条件が地域ごとに異なるため、実家所在地のセンターへ確認してください。
防草シートを敷けば草刈りは不要になりますか?
草の再繁茂を減らす方法として有効ですが、永久に管理不要になるわけではありません。シートの破損・めくれ、庭木や竹、シート上への土の堆積なども確認する必要があります。
隣の家へ枝が伸びたら勝手に切られますか?
2023年4月施行の改正民法では、越境された土地所有者が一定の条件を満たす場合に、越境した枝を自ら切り取れるようになりました。ただし無条件ではありません。所有者側としては越境する前に剪定しておく方がトラブルを避けやすくなります。
刈払機を買って自分で作業した方が安いですか?
近くの小規模な庭なら費用を抑えられる場合があります。一方、刈払機には切創・飛散物などの事故リスクがあります。遠方、広い敷地、斜面、石や障害物が多い場所、車や窓が近い場所では、外注も含めて判断してください。
草刈りは回数ではなく「近隣へ影響が出る前に管理できる仕組み」で考える
空き家の草刈りには、全国一律の「年○回」という正解はありません。
大切なのは、雑草・庭木が道路や隣家へ越境する前に状態を確認し、必要な時期に対応できる管理方法を作ることです。
自分で継続できるなら定期的に現地を確認し、遠方や広い敷地ならシルバー人材センター、造園業者、空き家管理サービスなどへの外注を検討します。
そして、毎年の草刈り費・交通費・空き家管理費が積み上がっているのに今後使う予定がないのであれば、空き家を保有し続けること自体が適切かも一度見直してみてください。