誰も住まなくなった実家をしばらく残す場合、売却や解体を決めるまでの間も家の管理は続きます。
空き家管理というと「たまに換気へ行けばよい」と考えがちですが、確認したい場所は室内だけではありません。
玄関や窓の施錠、郵便物、雨漏り、外壁、庭木、雑草、水回りなど、家の内外を定期的に見て、異常を早い段階で見つけることが中心です。
一方で、「必ず毎月○日に行く」と全国一律で決められているわけでもありません。
建物の状態、季節、周辺環境、実家までの距離に合わせて、無理なく継続できる管理方法を決めます。
空き家管理で行うこと
国土交通省の空き家管理チェックリストでは、定期的な管理として次のような項目が示されています。
- 通気・換気
- 排水設備の通水
- 敷地内の清掃
- 庭木の枝の剪定
- 郵便物等の確認・整理
- 建物外観の点検
- 室内の雨漏り・腐朽等の確認
- 門・塀・擁壁等の確認
- 動物の棲みつき等の確認
一度だけ行えば終わるものではありません。
同じ場所を繰り返し確認し、前回から変化していないかを見ることが管理になります。
空き家はどのくらいの頻度で管理する?
空き家の巡回について、全国共通の「月○回」という法定回数があるわけではありません。
国土交通省は定期的な換気・清掃・点検を求め、東京都はできるだけこまめに管理し、大雨・台風・地震の後には点検するよう案内しています。
自主管理や民間の空き家管理サービスでは、月1回程度を一つの目安としている例が多くあります。
そのため、特に事情がなければ、
月1回程度の巡回を出発点にし、家の状態や季節によって増減する
という考え方が現実的です。
ただし、次のような場合は通常の巡回を待たずに確認した方がよいでしょう。
- 台風の通過後
- 大雨の後
- 大きな地震の後
- 大雪の後
- 近隣から異常の連絡があったとき
また、庭木の成長が速い季節や、湿気の多い時期は確認回数を増やすこともあります。
巡回したら、最初に家の外から確認する
空き家へ着いたら、すぐ室内へ入る前に家の周囲を一度確認します。
- 屋根材が落ちていないか
- 外壁が剥がれていないか
- 窓ガラスが割れていないか
- 雨どいが外れていないか
- 門・塀が傾いていないか
- 庭木が道路や隣地へ伸びていないか
- 不法投棄がないか
- 侵入された形跡がないか
特に台風・大雨・地震の後は、前回までなかった破損が発生していないか確認します。
屋根の上など危険な場所へ自分で上がる必要はありません。
地上から異常が見える場合や、安全に判断できない場合は専門業者へ点検を依頼します。
玄関と窓の施錠を確認する
室内へ入る前後には、玄関や窓の状態を確認します。
- 玄関鍵が正常に開閉するか
- 鍵穴に異物がないか
- 窓が破損していないか
- 施錠されているか
帰るときも各窓と玄関をもう一度確認します。
空き家だと分かる状態は防犯面でも好ましくないため、郵便物やチラシの放置と合わせて確認します。
郵便物・チラシをためない
郵便受けにチラシや郵便物が大量にたまると、外から見ただけでも長期間人が来ていないことが分かります。
巡回時には、
- 郵便物を回収する
- 不要なチラシを処分する
- 重要な郵便物を家族へ渡す
- 郵便受けが壊れていないか確認する
といった対応をします。
今後も長期間空き家になる場合は、必要に応じて郵便物の転送なども検討します。
室内では窓と収納を開けて換気する
閉め切った住宅では湿気がこもりやすくなります。
巡回時は、天候や安全を確認したうえで、各部屋の窓を開けます。
押し入れやクローゼットなど収納部分の扉も開け、内部にも空気を通します。
東京都の空き家管理例では、すべての窓や収納扉を開け、換気扇を60分程度運転する方法が紹介されています。
これは全国一律の義務時間ではありません。
家の大きさ、窓の位置、天候などで換気効率は変わります。
「5分だけ窓を一か所開ければ管理完了」と考えるより、家全体へ空気が流れる状態を作ることを意識します。
水道を使えるなら通水する
水回りも確認します。
長期間水を流さないと、排水トラップの水が減り、下水からの臭いや虫の侵入につながることがあります。
水道を使用できる状態なら、
- キッチン
- 洗面台
- 浴室
- トイレ
- その他の排水口
を確認します。
東京都の管理例では、水道を1分程度流し、各排水口にも水を流す方法が紹介されています。
同時に、
- 蛇口から漏れていないか
- 水道メーターが異常に動いていないか
- 床へ水漏れしていないか
も確認します。
天井・壁・床・押し入れを見る
室内では掃除だけでなく、建物の変化を確認します。
毎回見たいのは、
- 天井のシミ
- 壁のシミ
- カビ
- 床の腐食・沈み
- 柱・梁の異常
- 押し入れ内部の湿気
- 動物や害虫の痕跡
などです。
雨漏りは、小さいうちに気づけば対応範囲を抑えられることがあります。
「前回このシミはあったか」と分からなくならないよう、気になる場所は毎回同じ角度から写真を撮っておくと比較しやすくなります。
室内を簡単に清掃する
人が住んでいなくても、室内にはほこりや虫などがたまります。
巡回時に、
- 床を掃く
- 目立つほこりを取る
- 虫の死骸を処分する
- ごみを残さない
程度の清掃を続けておくと、次回の点検もしやすくなります。
清掃中に家財を大量に整理する必要はありません。
空き家管理と実家片付けは目的を分けた方が作業しやすくなります。
庭木・雑草・敷地を確認する
空き家の外回りは、近隣へ影響しやすい場所です。
確認するのは、
- 雑草が伸びすぎていないか
- 庭木が道路へ出ていないか
- 隣地へ枝が越境していないか
- 枯れ枝が落下しそうになっていないか
- 敷地へごみを捨てられていないか
- 悪臭が発生していないか
などです。
庭木は季節によって成長速度が変わるため、巡回頻度とは別に剪定・草刈りの時期を考えます。
高木など危険を伴う作業は無理に自分で行わず、造園業者等へ依頼します。
門・塀・擁壁も忘れず確認する
建物本体だけでなく、敷地内の構造物も確認します。
- 門や塀が傾いていないか
- ひび割れがないか
- 屋外階段が腐食していないか
- 擁壁にひび割れがないか
- 擁壁の水抜き穴が詰まっていないか
倒壊や落下につながる可能性がある異常を見つけた場合は、触らず専門業者へ相談します。
冬は凍結・積雪も管理項目に入れる
寒冷地では、冬季の管理内容も変わります。
国土交通省のチェックリストでは、冬期について、給水管の元栓の閉栓や、積雪状況に応じた雪下ろしも管理項目として示されています。
水道管凍結のリスクがある地域では、その地域の水道事業者等の案内に従って水抜き等を行います。
屋根の雪下ろしなど危険な作業を、空き家管理のために所有者自身で無理に行う必要はありません。
電気・水道・ガスは全部止めればよいわけではない
空き家になった後、電気・水道・ガスをどうするか迷うことがあります。
これも一律の正解はありません。
電気
管理作業や設備の維持に電気が必要なら、契約を残す選択肢があります。
一方、通電を続ければ基本料金等がかかり、漏電等のリスクも考える必要があります。
水道
通水管理を続けるなら、水道契約を残す方法があります。
ただし、寒冷地では冬季に閉栓・水抜きが必要になる場合があります。
管理方法によっては、水道を止めた状態でも巡回時に水を持参して排水トラップへ補水する方法があります。
ガス
空き家管理だけを目的とする場合、ガスを使用する必要がないケースが多くあります。
国土交通省の空き家管理受託ガイドラインでは、管理上ガス供給が必要でない場合は通常閉栓し、プロパンガスではボンベを取り外すことが一般的としています。
電気・水道・ガスについては、今後の利用予定、建物設備、地域の気候を確認したうえで決めます。
近隣へ連絡先を伝えておく
実家が空き家になることが分かった段階で、可能であれば近隣へ一声かけておきます。
特に隣接する住宅には、緊急時に連絡できる電話番号等を伝えておくと、
- 庭木が倒れた
- 窓が割れた
- 不審者がいる
- 水が漏れている
など、自分が現地にいないときの異常を早く知れる場合があります。
個人情報をどこまで伝えるかは家庭で判断しますが、少なくとも誰が管理している家なのか分からない状態は避けた方がよいでしょう。
巡回ごとに写真と記録を残す
空き家管理は、毎回その場だけ確認して終えるより記録を残した方が役立ちます。
簡単な記録で構いません。
- 巡回日
- 担当者
- 天候
- 換気・通水をしたか
- 郵便物
- 庭木・雑草
- 雨漏り・カビ
- 外壁・屋根
- 異常箇所
- 修繕が必要か
- 次回確認日
気になる場所は毎回同じ位置・角度から写真を撮ります。
ひび割れや雨漏り跡が広がっているかを後から比較できます。
自分で直そうとせず専門業者へ回す場所もある
管理とは、自分ですべて修理することではありません。
例えば、
- 屋根の破損
- 大きな外壁の剥離
- 柱や梁の腐朽
- 擁壁の大きなひび割れ
- 高木の危険な枝
- 漏電の疑い
- 大規模な漏水
などは専門業者へ相談します。
所有者が定期点検する目的は、こうした異常を早く見つけることです。
遠方なら「自分で続けられるか」で判断する
最初の数か月は自分で管理できても、何年も片道数時間かけて通うことが難しくなる場合があります。
国土交通省の空き家所有者に関する調査でも、所有者が遠方に住むほど管理頻度が低下する傾向が確認されています。
自主管理を続けるなら、交通費と時間も管理コストとして考えます。
例えば、
- 遠方で定期的に通えない
- 家族で担当者が決まらない
- 庭の管理量が多い
- 高齢になり作業が難しい
- 災害後すぐ現地へ行けない
という場合は、管理サービスを検討する理由になります。
全部を委託する必要はなく、外観確認・郵便だけを頼む方法や、室内の換気・通水まで依頼する方法があります。
空き家管理を誰かへ依頼するときに確認すること
管理サービスの詳しい比較は別記事で扱いますが、依頼前には少なくとも次を確認します。
- 月に何回巡回するか
- 外観だけか室内にも入るか
- 換気を行うか
- 通水を行うか
- 郵便物をどう扱うか
- 庭・雑草の確認を含むか
- 写真付き報告があるか
- 台風・地震後の臨時確認に対応するか
- 異常発見時に修繕まで勝手に進めるのか、事前承認が必要か
- 鍵をどのように管理するか
「空き家管理一式」とだけ書かれているサービスでも、中身は会社によって違います。
空き家管理の巡回チェックリスト
| 場所 | 確認すること |
|---|---|
| 外観 | 屋根・外壁・窓・雨どい・破損・侵入痕跡 |
| 玄関 | 鍵・施錠・破損 |
| 郵便受け | 郵便物・チラシの回収 |
| 室内 | 換気・清掃・カビ・雨漏り・床 |
| 水回り | 通水・排水口・漏水・臭い |
| 収納 | 押し入れ・クローゼットの換気と湿気 |
| 庭 | 雑草・越境枝・枯れ枝・ごみ |
| 門・塀 | 傾き・破損・ひび割れ |
| 擁壁 | ひび割れ・水抜き穴 |
| 全体 | 写真記録・前回との変化 |
よくある質問
空き家は月1回管理すれば十分ですか?
月1回程度は自主管理や管理サービスで使われる一つの目安ですが、全国一律の法定回数ではありません。建物の状態、季節、周辺環境によって調整し、大雨・台風・地震などの後は通常の巡回とは別に確認する方がよいでしょう。
空き家の換気は何分すればよいですか?
全国一律の決まりはありません。東京都の空き家管理例では、すべての窓・収納扉を開け、換気扇を60分程度運転する方法が紹介されています。天候や家の構造に合わせて、室内全体へ空気を通します。
空き家の通水はどのくらいしますか?
東京都の管理例では、水道が使用できる場合は1分程度水を流し、各排水口にも水を流す方法が紹介されています。漏水がないか、水道メーターの状態も確認します。
空き家の水道は止めない方がよいですか?
一律には決められません。通水管理のため契約を残す方法もありますが、漏水リスクや料金が発生します。寒冷地では冬季の閉栓・水抜きが必要になる場合もあります。建物と管理方法に合わせて判断します。
空き家の電気は止めてもよいですか?
管理作業や設備維持に電気が必要かで判断します。契約を残す場合は料金や漏電リスクも考慮します。
ガスは残しておいた方がよいですか?
空き家管理だけではガスを使用しないケースが多く、国土交通省の管理受託ガイドラインでは、管理上必要がない場合は通常閉栓する考え方が示されています。今後の利用予定がある場合は供給会社等へ確認してください。
台風や地震の後は見に行った方がよいですか?
東京都は、大雨・台風・地震の後には点検するよう案内しています。屋根・外壁・窓・庭木などに異常がないか、安全を確保したうえで確認します。
遠方で月1回も実家へ行けません
家族・親族で担当を分けるほか、空き家管理サービスを利用できます。無理な頻度を決めて結局管理しなくなるより、継続できる方法を選ぶ方が重要です。
空き家管理は「一度きれいにする」ことではなく、変化を見つけ続けること
空き家の管理は、大掃除を一度行えば完了するものではありません。
施錠を確認する。
空気を入れ替える。
水を流す。
郵便物を回収する。
室内外の傷みを見る。
庭木や雑草を確認する。
そして前回と違う場所がないか記録する。
この繰り返しが基本になります。
売却・解体など今後の方針が決まっていなくても、決まるまで管理を止める理由にはなりません。
自分や家族だけで継続するのが難しくなった段階で、管理サービスや修繕業者を利用する方法へ切り替えます。
実家全体を今後どうするかまだ決まっていない場合は、実家・家財整理のガイドから状況を整理してください。