管理不全空家とは?判断基準・特定空家との違い・勧告後の対応

親が亡くなったり施設へ入居したりして実家が空き家になると、すぐに売却や解体を決められず、しばらく空き家のまま保有することがあります。

その間に管理が行き届かなくなると、自治体から「管理不全空家」と判断され、改善を求められる場合があります。

管理不全空家は、すでに重大な危険が生じている「特定空家」と同じものではありません。適切な管理がされず、このまま放置すると特定空家になるおそれがある段階を対象とする制度です。

2023年12月に施行された改正空家法によって新たに設けられ、2026年9月時点でも市区町村による指導・勧告が実際に行われています。

注意したいのは、「古い家だから管理不全空家になる」「雑草が生えたら即指定される」という単純な仕組みではないことです。建物や敷地の状態だけでなく、周辺へどの程度の悪影響を及ぼすおそれがあるかなどを含めて判断されます。

目次

管理不全空家とは?

空家法では、適切な管理が行われていないため、そのまま放置すると「特定空家等」に該当するおそれがある状態の空家等を「管理不全空家等」としています。

分かりやすくいえば、周囲への悪影響がさらに深刻になる前の段階で、所有者へ管理改善を促す仕組みです。

国土交通省の一般向け案内では、管理不全空家を特定空家になる前段階の空き家として説明しています。

法律上は「管理不全空家等」という名称ですが、検索や自治体の案内では「管理不全空家」と表記されることも多いため、この記事では両者を同じ意味で使用します。

管理不全空家と特定空家の違い

項目管理不全空家特定空家
状態適切に管理されず、そのまま放置すると特定空家になるおそれがある倒壊・衛生・景観・生活環境などの面で、すでに著しい悪影響またはそのおそれがある
主な目的状態が深刻化する前の早期改善周囲への重大な悪影響の解消
空家法上の主な措置指導・勧告助言・指導、勧告、命令、代執行等
住宅用地特例勧告を受けると対象外になる勧告を受けると対象外になる
行政代執行管理不全空家の段階では法13条の措置ではない一定の場合に対象となり得る

「管理不全空家になったらすぐ行政代執行で解体される」という制度ではありません。

一方、管理不全空家の状態を改善せず、さらに劣化や周辺への影響が進めば、特定空家としてより強い行政措置の対象になる可能性があります。

管理不全空家は何を見て判断される?

国土交通省のガイドラインでは、建物の状態だけでなく、衛生、景観、周辺の生活環境への影響など、複数の観点から管理状態を確認する考え方が示されています。

建物の安全性

  • 基礎や構造部材に破損・腐朽などがある
  • 屋根材や外壁が破損している
  • 雨どいや看板などが破損・腐食している
  • 窓などの開口部が壊れている
  • 塀や擁壁などに劣化がある
  • 立木に腐朽・折れなどが見られる

衛生状態

  • 排水設備が破損している
  • 敷地内に水たまりが常態化している
  • 腐敗したごみなどが放置されている
  • 害虫や動物が住み着きやすい状態になっている
  • 動物の糞尿などが放置されている

景観

  • 屋根や外壁などの破損・汚損が放置されている
  • 看板などが破損したままになっている
  • 敷地内にごみや物品が大量に残されている

周辺の生活環境

  • 壊れた窓などから不特定の人が侵入しやすい
  • 樹木の枝が道路や隣地へはみ出している
  • 動物の住み着きによる騒音などが発生するおそれがある
  • 積雪地域で雪下ろしなどが行われていない

これらのうち一つに該当したから自動的に管理不全空家になるわけではありません。

市区町村は、空き家そのものの状態に加え、周囲の建物や道路、通行人などへどの程度影響する可能性があるかも含めて判断します。

「雑草が生えた」「屋根が壊れた」だけで管理不全空家になる?

全国共通で「雑草が何cm以上なら管理不全空家」「屋根が1枚壊れたら該当」といった単純な数値基準があるわけではありません。

同じ外壁の破損でも、周囲に建物がない場所と、人通りの多い道路沿いでは周辺への影響が異なります。

また、自治体によって具体的な調査方法や判断基準を定めている場合があります。

「自分の実家は管理不全空家に当たるのか」を正確に確認したい場合は、所在地の市区町村の空き家担当窓口へ確認するのが確実です。

管理不全空家になるまでの流れ

自治体が管理状態に問題のある空き家を把握した場合、現地の状況などを確認し、管理不全空家等に当たると判断すれば、空家法13条に基づいて所有者へ対応を求めることがあります。

1.市区町村が空き家の状態を確認する

近隣住民からの相談、自治体による調査などをきっかけに、建物や敷地の状態が確認されることがあります。

2.管理不全空家として指導を受ける

適切な管理が必要と判断された場合、市町村長は所有者等に対して必要な措置を行うよう指導できます。

通知が届いた場合は放置せず、自治体が問題としている箇所と、求められている改善内容を確認します。

3.改善されない場合は勧告へ進むことがある

指導を受けても状態が改善されず、そのまま放置すると特定空家になるおそれがあると認められる場合、市町村長は必要な措置をとるよう勧告できます。

この「勧告」が固定資産税の住宅用地特例との関係で重要です。

勧告を受けると固定資産税の住宅用地特例が外れる

一般の住宅が建っている土地には、一定の要件を満たすと住宅用地特例が適用されます。

区分固定資産税の課税標準
小規模住宅用地
住宅1戸につき200㎡以下
価格の1/6
一般住宅用地
200㎡を超える部分
価格の1/3

管理不全空家について自治体の指導に従わず、勧告を受けた場合、その敷地は住宅用地特例の対象から外れます。

ただし、「管理不全空家と判断された瞬間に固定資産税が6倍になる」という理解は正確ではありません。

住宅用地特例との関係で重要なのは勧告であり、実際の納税額も土地の評価額、面積、負担調整などによって変わります。

税負担がどの年度からどの程度変わるかは、所在地の市区町村の資産税担当窓口へ確認してください。

管理不全空家になったら罰金や解体費を請求される?

管理不全空家について法13条に基づく指導や勧告を受けただけで、全国一律の「指定料」や解体費が課される制度ではありません。

必要になる可能性があるのは、実際に状態を改善するための費用です。

  • 屋根・外壁の修繕
  • 窓や扉の補修
  • 樹木の剪定・伐採
  • ごみ・残置物の処分
  • 害虫・害獣への対応
  • 塀などの修繕
  • 空き家管理サービスの利用

修繕して保有し続けるより、売却や解体の方が合理的なケースもあります。

ただし、自治体から指導を受けたからといって「必ず解体しなければならない」とは限りません。問題となっている状態を改善できるのであれば、修繕や管理による対応も考えられます。

自治体から通知が来たら何をする?

1.通知を放置せず担当部署へ連絡する

まず、どの部分が問題とされ、何を改善する必要があるのかを確認します。

「空き家を全部きれいにしてください」という話ではなく、屋根、外壁、樹木、廃棄物など具体的な問題が示されている場合があります。

2.現地の状態を自分でも確認する

遠方の実家であれば、現地を確認できる家族、空き家管理業者、建築・修繕業者などに写真を撮ってもらう方法もあります。

問題箇所だけでなく、建物全体、庭、塀、物置、道路側、隣地側などを記録しておくと、その後の対応を検討しやすくなります。

3.修繕・清掃・剪定などで改善できるか確認する

屋根の部分補修、開口部の補修、樹木の剪定、残置物の撤去などで状態を改善できる場合があります。

自治体から改善期限などが示されている場合は、その期限を優先してください。

4.今後も保有するのかを同時に決める

修繕だけを繰り返しても、今後誰も住まないのであれば問題を先送りするだけになる可能性があります。

管理不全空家の指摘を受けたことをきっかけに、次の選択肢を比較するとよいでしょう。

  • 適切に管理しながら保有する
  • 修繕して使用・賃貸する
  • 古家付きのまま売却する
  • 不動産会社へ買取を相談する
  • 解体して土地を売る

5.改善後は自治体へ確認する

修繕や剪定などを行った場合は、改善後の写真、工事内容、領収書などを保管しておくと状況を説明しやすくなります。

必要な措置が完了したと自己判断するのではなく、通知を出した市区町村へ対応状況を伝え、今後必要な手続きがあるか確認してください。

空き家はどのくらいの頻度で管理すればいい?

全国共通で「必ず月1回点検しなければならない」という管理義務が定められているわけではありません。

国土交通省は、空き家は不具合を発見しにくく傷みが進みやすいため、一定の頻度で点検し、破損などがあれば修繕することを管理の考え方として示しています。

実際に必要な頻度は、建物の築年数、状態、地域の気候、庭木、積雪、台風の影響、遠方かどうかなどによって異なります。

特に台風、大雨、大雪、地震などの後は、屋根材・外壁・塀・樹木などに新たな損傷がないか確認した方がよいでしょう。

遠方の実家で自分で管理できない場合

実家が遠方にあり、定期的な訪問が難しい場合は、自分ですべて管理する必要はありません。

空き家管理サービスなどでは、外観確認、換気、通水、郵便物確認、庭の確認などを依頼できる場合があります。

ただし、管理サービスを契約すれば建物の修繕まで自動的に行われるとは限りません。

点検内容、緊急時の連絡、修繕が必要になった場合の対応、庭木管理の範囲などを契約前に確認します。

修繕するか、売却・解体するかを判断する

管理不全空家への対応で重要なのは、目の前の問題を直すことだけではありません。

今後その家を使う予定がない場合は、維持し続ける総コストと、売却・解体した場合を比較します。

選択肢確認したいこと
管理を続ける固定資産税、保険、管理費、修繕費、交通費
修繕して活用する修繕費、今後の使用予定、賃貸需要
古家付きで売る現況査定、建物の状態、買主需要
不動産会社へ買い取ってもらう買取価格、仲介売却との差
解体して売る解体費、更地査定、固定資産税、再建築条件

解体は元に戻せないため、売却を考えている場合は、解体前に古家付きの状態でも査定を受けることが重要です。

実家を残す・売る・解体するという全体の判断から整理したい場合は、実家じまいの進め方もあわせて確認してください。

よくある質問

管理不全空家とは簡単にいうと何ですか?

適切な管理がされておらず、そのまま放置すると特定空家になるおそれがあると市区町村が認める空き家です。2023年12月施行の改正空家法で新たに設けられました。

管理不全空家に指定されたらすぐ固定資産税が6倍になりますか?

「指定されたら即6倍」という仕組みではありません。住宅用地特例との関係で重要なのは市町村からの勧告です。また、特例が外れた場合でも実際の納税額が必ず6倍になるとは限りません。

管理不全空家と特定空家は同じですか?

異なります。管理不全空家は、そのまま放置すると特定空家になるおそれがある段階です。特定空家では、状態によって命令や代執行など、より強い措置へ進む可能性があります。

自治体から指導されたら必ず解体しなければなりませんか?

必ず解体というわけではありません。屋根・外壁の補修、樹木の剪定、ごみの撤去など、問題となっている状態を改善できる場合があります。何を求められているか自治体へ確認してください。

遠方で実家の管理ができない場合はどうすればいいですか?

家族だけで対応できない場合は、空き家管理会社、修繕会社、不動産会社などを利用する方法があります。今後使わない家であれば、管理サービスを続ける費用と売却・解体を比較することも重要です。

一度管理不全空家になったら元に戻せませんか?

必要な修繕・管理を行い、問題となっていた状態を改善できる場合があります。ただし、改善後の行政上の扱いや住宅用地特例への反映時期などは個別事情によるため、所在地の市区町村へ確認してください。

管理不全空家は「特定空家になる前に対応する」ための制度

管理不全空家は、危険な空き家をすぐ強制的に解体するためだけの制度ではありません。

建物や敷地の管理状態が悪化し、さらに放置すれば周囲へ深刻な影響を与える状態になる前に、所有者へ改善を促す仕組みです。

自治体から連絡が来た場合は放置せず、まず問題となっている箇所を確認します。そのうえで、修繕・清掃・剪定などで管理を続けるのか、売却するのか、解体するのかまで一緒に考えることが重要です。

まだ自治体から指導を受けていなくても、屋根や外壁の破損、樹木の繁茂、害虫・動物、ごみの放置などが目立ち始めているなら、状態が悪化する前に対応した方が選択肢を残しやすくなります。

参考資料

この記事を共有する
  • URLをコピーしました!
目次