空き家の解体で不安になりやすいのが、「見積もりでは150万円だったのに、工事が始まってから追加費用を請求されるのではないか」という点です。
解体工事では、見積もり時点で確認できるものがある一方、建物を壊したり地面を掘ったりして初めて分かるものもあります。
そのため、追加費用が発生した=すべて不当な請求とは限りません。
一方で、現地調査をすれば分かるはずの残置物や塀、庭木などが最初の見積もりから外れていたため、工事後に大きく金額が増えるケースはできるだけ避けたいところです。
重要なのは、追加費用を完全にゼロにすると考えることではなく、
- 契約前に分かる費用をできるだけ見積もりへ入れる
- 事前に分からない費用は、発生した場合の確認方法を決めておく
- 勝手に追加工事を進めず、金額を確認してから承認する
ことです。
この記事では、解体工事で追加費用が発生しやすい7つの原因と、追加請求を受けたときの確認方法まで整理します。
解体工事の追加費用に全国共通の相場はない
「追加費用はいくらですか」と知りたい人も多いですが、全国共通で「追加料金は平均○万円」と言える公的な相場はありません。
例えば地中埋設物でも、
- 小さなコンクリート片だけなのか
- 大きな古い基礎なのか
- 浄化槽なのか
- 大量の廃材なのか
で撤去量が違います。
アスベストも、含まれている建材の種類・面積・除去方法等で必要な作業が変わります。
したがって、追加費用については一つの金額を覚えるより、何が追加対象になり、その場合に数量・単価をどう確認するかを決める方が重要です。
追加費用は「事前に分かるもの」と「壊して初めて分かるもの」に分ける
| 種類 | 代表例 | 契約前の対応 |
|---|---|---|
| 事前に把握しやすい | 残置物、塀、庭木、物置、狭い道路 | 現地調査で確認し見積書へ入れる |
| 調査で判明する | アスベスト | 事前調査費と含有時の対応を確認 |
| 工事後でなければ分かりにくい | 地中埋設物、古い基礎、浄化槽等 | 発見後の追加見積もり・承認方法を決める |
| 所有者側の変更 | 途中で撤去範囲を増やす | 変更前に追加見積もりを取る |
この分け方をすると、追加請求をすべて同じように扱わずに済みます。
原因1|地中埋設物・古い基礎・コンクリートガラ
解体工事で代表的な追加費用の原因が、地中埋設物です。
建物を解体し、基礎や土を掘ったあとに、
- 以前建っていた家の基礎
- コンクリート片
- レンガ
- 古い配管
- 過去の工事で埋められた廃材
などが見つかることがあります。
地表から確認できない物は、通常の現地調査だけでは数量まで確定できない場合があります。
「地中埋設物は別途」だけで契約しない
見積書に、
「地中埋設物 別途」
とだけ書かれている場合は、追加費用そのものより、発見後の手順を確認します。
例えば、
- 地中埋設物を発見したら工事会社から連絡
- 写真・動画を送ってもらう
- 何がどの程度あるか確認する
- 撤去が必要な理由を確認する
- 数量・単価を含む追加見積もりを受け取る
- 所有者が承認する
- その後に撤去する
という流れです。
「見つかった物は業者判断ですべて撤去して後から請求」という形を避けます。
原因2|井戸・浄化槽・杭・地下構造物
古い実家では、現在使っていない設備が地下に残っている場合があります。
例えば、
- 古い浄化槽
- 井戸
- 杭
- 地下室
- 地下タンク
- 大きな地中梁
などです。
所有者自身が存在を知らないケースもあります。
以前の図面や、親から聞いていた情報があれば、見積もり前に業者へ伝えてください。
固定資産税資料だけでは地下設備まで分からない
建物の登記や固定資産税資料から構造・面積を確認できても、古い浄化槽や井戸の存在まですべて分かるわけではありません。
可能であれば、
- 建築図面
- 古い工事資料
- 給排水図面
- 親・近隣から聞いている情報
も共有します。
原因3|アスベストが確認された
アスベストは、解体工事の追加費用を考えるうえで特に重要です。
現在、建築物等を解体・改修する場合は、工事規模の大小にかかわらず石綿含有の有無について事前調査が必要です。
建築物については、一定の資格を持つ調査者が調査を行います。
厚生労働省は、解体・改修工事の発注者に対して、仮見積もりの段階から石綿の事前調査費用が計上されているか確認するよう案内しています。
アスベスト関連費用は3段階で確認する
見積もりでは、次を分けて考えます。
- 事前調査費
- 必要になった場合の分析調査費
- 石綿含有が判明した場合の除去・処理費
「アスベスト調査込み」と書かれていても、分析や実際の除去工事まで含むとは限りません。
石綿がある場合は工期も変わる可能性がある
厚生労働省は、石綿が使用されていることが明らかになった場合、発注者に対して、施工業者が法令を守って作業できるだけの費用、工期、作業方法を確保するよう求めています。
単に除去費が増えるだけでなく、工期や工事方法にも影響します。
80㎡未満でも調査は必要
80㎡という数字は、建築物の解体において事前調査結果の報告が必要となる基準です。
80㎡未満なら事前調査不要という意味ではありません。
原因4|家具・家電などの残置物
実家の解体で追加費用につながりやすいのが、家の中に残っている物です。
例えば、
- 家具
- 衣類
- 布団
- 食器
- 本
- 生活用品
- 家電
- 物置の中身
などです。
「家を壊すのだから、中にある物も一緒に処理できる」と考えやすいですが、建物を壊して発生する廃材と、家庭に残された家財は法的な扱いが異なります。
環境省は、一般家庭の残置物について、解体前に建物所有者等が市町村のルールに沿って適正に処理する必要があるとしています。
解体工事業の許可だけでは家庭ごみを自由に回収できない
家庭の残置物は一般廃棄物となります。
環境省は、
- 産業廃棄物処理業の許可
- 解体工事業の許可
- 古物商の許可
だけでは、家庭の一般廃棄物を処理できないと案内しています。
解体会社が家財処分も手配すると説明した場合は、
「実際に家庭の残置物を収集・運搬するのは誰ですか?」
と確認します。
残置物は着工前に量を確定する
見積もり時には空だった家へ、着工直前になって別の家財を持ち込んだり、処分予定だった物を残したりすると、見積もり条件が変わります。
家財を業者側で処理する場合は、着工前に最終的な量を確認します。
原因5|塀・庭木・物置・庭石などの付帯物
建物本体以外の物が見積もりに含まれていないことで追加費用になるケースがあります。
例えば、
- ブロック塀
- 門扉
- フェンス
- カーポート
- 物置
- ウッドデッキ
- 庭木
- 庭石
- 土間コンクリート
などです。
これらは現地を見れば確認できるものが多いため、正式見積もりの前に、残す物・撤去する物を一つずつ確認します。
敷地内にある物を全部壊すとは限らない
「解体一式」と書かれていても、敷地内の物をすべて撤去する契約とは限りません。
例えば、境界にある塀は隣地との関係で勝手に撤去できない場合があります。
工事前に写真を見ながら、
- 撤去
- 残す
- 別途
を分けます。
原因6|道路が狭く重機・トラックが使えない
解体費用は建物だけでなく、現場までのアクセスでも変わります。
例えば、
- 前面道路が狭い
- 大型トラックが入れない
- 敷地まで長い通路がある
- 重機を搬入できない
- 交通誘導員が必要
場合です。
重機で短時間に進められる作業を手作業で行えば、人員・工期が増える可能性があります。
ただし、道路幅や接道状況は現地調査で確認しやすい条件です。
正式な現地調査を受けているにもかかわらず、契約後に突然「道路が狭いので全額追加」と言われた場合は、見積もり時にどの条件を前提としていたのか確認します。
原因7|契約後に所有者が工事内容を変更した
追加費用は、業者側の事情だけで発生するものではありません。
工事開始後に所有者が、
- やはり塀も撤去してほしい
- 庭木も全部抜いてほしい
- 別棟も壊してほしい
- 駐車場コンクリートも撤去してほしい
- 整地方法を変更したい
と依頼すれば、契約内容が変わります。
この場合は追加費用が発生する可能性があります。
口頭で追加工事を依頼しない
「ついでにこれもお願いします」と現場で伝えるだけでは、後で金額について認識がずれる可能性があります。
追加・変更を依頼する場合は、
- 変更する工事内容を確認
- 追加・減額金額を確認
- 工期への影響を確認
- 書面・メール等で合意
- その後に施工
という順番にします。
追加費用が発生しても不当請求とは限らない
解体工事の追加請求には、正当な理由があるものと、契約前の説明不足が問題になるものがあります。
例えば、解体後に初めて大量の地中廃材が発見された場合は、最初の見積もりへ正確な数量を入れることが難しいケースがあります。
一方で、現地に大きな物置があることを確認しているのに、見積もりでは説明せず、工事開始後に「物置は別なので追加です」と言われた場合は、契約時の工事範囲を確認する必要があります。
追加費用の妥当性は、
- 契約範囲
- 追加になった理由
- 事前に確認できたか
- 追加金額の根拠
- 所有者が追加工事を承認したか
などで判断します。
契約前に「追加になるもの」を一覧で聞く
見積書を受け取ったら、業者へ次の質問をします。
「この見積金額以外に追加になる可能性がある項目を、すべて教えてください」
そのうえで、
- 地中埋設物
- 石綿
- 残置物
- 井戸・浄化槽
- 杭
- 外構
- 庭木
- 道路条件
について一つずつ確認します。
見積書の「別途」「実費」「協議」を確認する
追加費用を確認するときは、見積書の金額欄だけでなく備考も読みます。
注意したい表現は、
- 別途
- 実費
- 発見時別途
- 必要に応じて追加
- 協議の上精算
- 数量変更時精算
などです。
これらの表現自体が問題というわけではありません。
ただし、何が起きたら、どのように金額を決めるのかを質問します。
追加費用の単価を事前に決められる場合もある
追加になる可能性は分かっていても、数量だけが分からない場合があります。
その場合、契約前に単価や精算方法を決められることがあります。
例えば、
- 重量
- 体積
- 車両台数
- 作業員数・日数
などです。
単価を決められるかは工事項目によりますが、「発生したらその場で業者が金額を決める」より、算定方法を決めておく方が確認しやすくなります。
追加工事は事前承認なしに進めないルールを決める
契約前に、追加作業が必要になった場合は、所有者の承認を得てから施工するよう確認しておきます。
国土交通省は、建設工事の請負契約について、契約内容が不明確・不正確な場合は後日の紛争の原因になり得るとして、民間工事用を含む標準請負契約約款を整備しています。
個々の解体工事契約にこの標準約款がそのまま適用されるとは限りませんが、追加・変更工事について内容・代金・工期を明確にするという考え方は、契約確認の参考になります。
追加請求されたら、まず工事を止めるべき?
危険防止のため止められない作業もあるため、一律に「全部止める」とは言えません。
ただし、追加工事そのものをまだ始めていない場合は、金額と理由が分からないまま進めないようにします。
業者から追加費用の連絡が来たら、次を確認します。
- 何が見つかったのか
- 当初見積もりの対象外なのか
- なぜ撤去・追加作業が必要なのか
- 写真・動画はあるか
- 数量はどのくらいか
- 単価はいくらか
- 追加総額はいくらか
- 工期は変わるか
地中埋設物なら写真を送ってもらう
遠方の実家では、追加対象を自分で現地確認できない場合があります。
その場合は、
- 全体が分かる写真
- 大きさが分かる写真
- 撤去中の写真
- 撤去後の写真
などを送ってもらいます。
大量の地中障害物なら、可能な範囲で数量の根拠も確認します。
「もう撤去したので払ってください」と言われた場合
追加工事がすでに完了した後で初めて高額請求された場合は、
- 契約書
- 見積書
- 発注書
- メール
- メッセージ
- 工事写真
を確認します。
契約時に追加工事についてどのような取り決めをしていたか、所有者が追加作業を依頼・承認した記録があるかを整理します。
金額や契約上の扱いで大きなトラブルになった場合は、消費生活センター、法律専門家等への相談も検討します。
追加費用を減らす方法1|現地調査を受ける
住所、写真、坪数だけの概算では確認できることに限界があります。
契約前には現地調査を受け、
- 道路
- 重機搬入
- 塀
- 庭木
- 物置
- 残置物
- 隣家との距離
などを見てもらいます。
現地で分かるものを先に見積もりへ入れることで、追加項目を減らせます。
追加費用を減らす方法2|同条件で複数見積もりを取る
複数社へ同じ条件を伝えると、見積もりから抜けている項目に気づきやすくなります。
例えば、
- A社は石綿調査費を計上
- B社は記載なし
- C社は「別途」
なら、それぞれへ確認できます。
総額の比較だけでなく、抜けている項目を探すためにも相見積もりを利用します。
追加費用を減らす方法3|残置物を先に整理する
実家に家財が大量に残っている場合、着工直前まで量が変わると見積額も変わりやすくなります。
可能なら、
- 残す物
- 買取へ回す物
- 自治体で処分する物
- 家電リサイクル対象
- 適切な一般廃棄物処理へ依頼する物
を整理し、最終的に残る物を確定します。
追加費用を減らす方法4|過去の図面・資料を共有する
古い図面や工事記録があれば、
- 増築
- 基礎
- 浄化槽
- 井戸
- 地下設備
などの手掛かりになる場合があります。
持っている資料は解体業者へ共有してください。
追加費用を減らす方法5|工事範囲を写真で残す
契約時に、
- この塀は残す
- この物置は撤去
- この木は残す
- ここまで整地する
という範囲を写真と一緒に残すと認識違いを減らせます。
追加費用を減らす方法6|契約変更は必ず金額確認後に行う
工事中に気が変わって撤去範囲を広げたい場合は、追加作業の金額を聞いてから依頼します。
少額に見える変更でも、廃材処分や重機作業まで含めると金額が変わることがあります。
追加費用を減らす方法7|「追加なし保証」という言葉だけで決めない
追加費用がないと強調する会社もあります。
しかし、地中に何があるか完全に確認できない土地もあります。
重要なのは「追加なし」という言葉より、
- 何が契約金額に含まれるか
- 何は含まれないか
- どんな場合に追加になるか
- 追加時に誰が承認するか
が書面で明確かどうかです。
見積もり段階で確認したい追加費用チェックリスト
- □ 地中埋設物はどう扱うか
- □ 古い基礎・杭の扱い
- □ 井戸・浄化槽の扱い
- □ 石綿事前調査費が含まれるか
- □ 分析が必要な場合の料金
- □ 石綿除去が必要な場合の再見積もり方法
- □ 残置物を誰が処理するか
- □ 塀・門・カーポートの範囲
- □ 物置の扱い
- □ 庭木・庭石の扱い
- □ 狭い道路による手作業費が見積もり済みか
- □ 交通誘導員等が必要か
- □ 整地範囲
- □ 追加工事は事前承認後に行うか
- □ 追加時の単価・算定方法
追加請求を受けたときのチェックリスト
- □ 追加になった原因を聞いた
- □ 当初の見積書を確認した
- □ 「別途」「協議」等の記載を確認した
- □ 写真・動画を確認した
- □ 数量を確認した
- □ 単価を確認した
- □ 追加見積もりを受け取った
- □ 作業前に承認した
- □ 工期への影響を確認した
- □ メール等で記録を残した
よくある質問
解体工事では追加費用が必ず発生しますか?
必ず発生するわけではありません。現地調査や石綿事前調査を行い、工事範囲を明確にすれば、契約時点で多くの費用を見積もれる場合があります。一方、地中埋設物など工事後でなければ確認できないものもあります。
解体の追加費用はいくらくらいですか?
全国共通の公的相場はありません。地中埋設物、アスベスト、残置物などの種類・数量・処理方法によって変わります。追加になる場合の数量・単価・算定方法を確認してください。
地中埋設物は追加料金になりますか?
当初の工事範囲に含まれておらず、掘削後に初めて発見された場合は追加費用になることがあります。契約前に、発見時の写真確認、追加見積もり、承認方法を決めておくと確認しやすくなります。
アスベストは追加費用になりますか?
事前調査費は解体工事前から必要な費用です。調査・分析で石綿含有が判明した場合は、適切な除去・処理費が別途必要になる可能性があります。厚生労働省も発注者に事前調査費の計上確認を求めています。
80㎡未満ならアスベストの追加費用はありませんか?
いいえ。80㎡未満でも事前調査は必要です。80㎡は建築物の解体について事前調査結果を報告する基準の一つです。
家具を残しておくと追加費用になりますか?
見積もりに含まれていなければ追加費用になる場合があります。また家庭の残置物は建物の解体廃材とは扱いが異なり、市町村のルールに沿った適正処理が必要です。
塀や庭木は建物解体費に含まれますか?
会社・見積内容によって異なります。建物本体とは別の付帯工事として計上されることがあるため、契約前に撤去対象を確認してください。
追加料金を工事後に初めて請求されました。払わなければなりませんか?
一律には判断できません。当初契約の範囲、追加作業の必要性、所有者の依頼・承認の有無、金額の根拠などを確認する必要があります。金額が大きく納得できない場合は、契約書等を整理したうえで消費生活センターや専門家への相談も検討してください。
地中埋設物が見つかったら業者に任せて撤去してよいですか?
必要な撤去であっても、可能なら先に写真、数量、追加金額を確認してください。追加見積もりを承認してから作業するルールを契約前に決めておくと安心です。
一番安い見積もりなら追加費用が多くなりますか?
必ずしもそうではありません。ただし他社より極端に安い場合は、地中埋設物、石綿、外構、整地、残置物などが「別途」になっていないか確認してください。
追加費用を完全になくすことはできますか?
地中埋設物のように工事開始後でなければ分からないものがあるため、完全にゼロと断定することは難しい場合があります。契約前に分かる項目を見積もりへ入れ、未知の項目は追加時の確認・承認ルールを決めることが重要です。
追加費用で重要なのは「ゼロにすること」より「勝手に増えない仕組み」
空き家解体では、すべてを契約前に確定できるとは限りません。
特に地中埋設物は、建物や基礎を撤去して初めて確認できる場合があります。
一方で、
- 残置物
- 塀
- 庭木
- 物置
- 道路条件
など、現地調査で確認できる項目は事前に見積もりへ入れられます。
契約前には「何が追加になり得るか」を聞き、見積書の「別途」「協議」「実費」を確認します。
工事中に想定外の物が見つかったら、
発見 → 写真・数量確認 → 追加見積もり → 承認 → 施工
という順番で進めます。
追加費用の金額そのものより、この手順を決めておくことが、想定外の請求を防ぐうえで重要です。
まだ解体するか、売却するか、管理を続けるか決め切れていない場合は、実家じまいの全体像から家の出口を整理してください。