空き家となった実家を解体しようとすると、100万円を超える見積もりが出ることもあります。
そこで確認しておきたいのが、自治体などが実施している解体・除却の補助制度です。
ただし、「空き家を解体すれば国から一律○万円もらえる」という仕組みではありません。
実際の制度は、
- 空き家の所在地
- 建物の老朽度・耐震性
- 危険空き家に該当するか
- 所有者の状況
- 税の滞納がないか
- 利用する解体業者
- 解体後の土地利用
などによって異なります。
さらに重要なのが申請の順番です。
見積もりは先に取れても、解体会社との契約や着工を交付決定前に行うと対象外になる制度が多くあります。
この記事では、2026年時点の公的制度をもとに、空き家解体の補助金がどのような仕組みになっているのか、いくら補助される例があるのか、対象条件と申請の順番まで整理します。
空き家解体に全国一律の補助金があるわけではない
国土交通省は、空き家を解体する場合、市区町村の補助金を受けられることがあるため、空き家所在地の市区町村のウェブサイトや窓口で確認するよう案内しています。
つまり、実際に所有者が利用するときは、まず実家がある自治体の制度を確認するのが基本です。
「自分が住んでいる市区町村」ではなく、原則として「解体する建物がある自治体」で探します。
国にも空き家解体を支援する制度はある
国には、自治体による空き家の除却・活用等を支援する「空き家対策総合支援事業」があります。
令和8年度の制度では、市区町村が空家等対策計画等に基づいて行う、
- 特定空家等の除却
- 一定の空き家の除却
- 空き家活用
- 除却後の土地整備
- 所有者特定
などが支援対象となっています。
対象事業で空き家所有者が除却を行う場合、制度上の主な補助率は、
- 国:2/5
- 地方公共団体:2/5
- 所有者:1/5
という構成です。
ただし、これは全国の空き家所有者が国へ直接申し込めば解体費の4/5を必ず補助してもらえるという意味ではありません。
自治体側が対象となる事業を実施していること、その自治体の制度要件を満たすこと、予算の範囲内であることなどが前提です。
空き家解体の補助金はいくら?
全国共通の金額はありません。
2026年度に確認できる公的制度だけでも、次のように差があります。
| 自治体・制度 | 2026年度の補助例 | 主な特徴 |
|---|---|---|
| 東京都 | 税抜解体費の1/2・上限10万円 | 東京都空き家ワンストップ相談窓口の相談者等が対象 |
| 札幌市 | 通常型は上限50万円 | 危険空家等の判定を事前に受ける |
| 横浜市 | 旧耐震建築物は上限50万円 | 耐震性が低い一定の木造住宅等が対象 |
| 豊田市 | 解体費の1/2・上限52万円 | 対象となる空き家について事前判定あり |
同じ「解体補助金」という名前でも、対象や金額はまったく同じではありません。
東京都|解体費の2分の1・上限10万円
東京都では「東京都空き家家財整理・解体促進事業」を実施しています。
2026年9月時点の制度では、都内に所在する空き家の解体について、
税抜の解体費用の2分の1、上限10万円
が補助対象です。
利用には東京都空き家ワンストップ相談窓口へ相談することなどの条件があります。
また、1軒の空き家について、解体と家財整理の両方を同時に補助してもらう制度ではなく、対象の選択等があります。
東京都内の実家だから自動的に10万円受け取れるわけではないため、先に相談窓口で対象条件を確認します。
札幌市|危険な空き家は通常型で上限50万円
札幌市の2026年度「危険空家等除却補助制度」では、倒壊や建築部材の飛散のおそれがある危険な空き家等の解体費の一部を補助しています。
通常型の上限は、次の3つのうち最も低い金額です。
- 対象となる除却工事費の3分の1
- 国が定める標準除却費×延べ面積×8/10
- 50万円
誰でも使えるわけではなく、札幌市による事前確認で危険空家等と判定されることなどが必要です。
2026年度は申請期間が設定され、予算に達した場合には受付終了となります。
残置物処分等が補助対象外の例もある
札幌市の場合、補助対象となる除却工事費には、
- 残置物処分費
- 跡地舗装費
- 手数料等
を含めることができないと案内されています。
「解体の見積総額×補助率」がそのまま支給額になるとは限りません。
横浜市|古さだけではなく耐震性も条件になる
横浜市の2026年度住宅除却補助制度は、耐震性が不足する一定の木造住宅等を対象としています。
対象建物は、平成12年5月末以前に新築工事へ着手した住宅で、所定の耐震性チェックによって耐震性が低いと判断されたものなどです。
補助上限は、例えば、
- 旧耐震建築物:上限50万円
- 一定の新耐震建築物:一般世帯20万円
- 一定の新耐震建築物:非課税世帯40万円
です。
さらに、利用できる解体会社にも条件があります。
2026年度制度では市内事業者であることなどが求められ、見積額が100万円以上の場合は2者以上の見積書提出も必要です。
このように、自治体によっては「どの解体会社でもよい」とは限りません。
補助対象になりやすい空き家の条件
各自治体で違いはありますが、解体補助制度では次のような条件が設定されることがあります。
老朽化・危険性が高い
例えば、
- 倒壊のおそれ
- 屋根・外壁等の落下のおそれ
- 著しい老朽化
- 耐震性不足
などです。
自治体の職員等による現地確認や、耐震診断・判定が必要な制度もあります。
一定期間使用されていない
空き家としての期間を要件にする自治体があります。
例えば札幌市では、制度上の空き家を原則として1年以上使用されていない建物等としています。
一方、すべての自治体が「1年以上」を条件にしているわけではありません。
所有者または相続人である
多くの制度では、建物所有者や相続人等が申請者となります。
共有の実家では、他の共有者の同意が必要になる場合があります。
市税等を滞納していない
市民税、固定資産税等の滞納がないことを条件とする自治体があります。
対象となる業者を利用する
制度によって、
- 必要な建設業許可・解体工事業登録
- 市内事業者
- 自治体が定める事業者
などが条件になる場合があります。
補助制度を確認せず先に解体会社を決めると、その会社では補助対象にならない可能性があります。
危険な空き家だけが補助対象とは限らない
解体補助制度というと、倒壊寸前の空き家だけが対象と思われがちです。
しかし実際には自治体ごとに目的が異なります。
例えば、
- 危険空き家の除却
- 耐震性の低い住宅の除却
- 密集市街地の防災性向上
- 空き家流通の促進
- 再建築可能な土地の流通促進
などがあります。
東京都のように、空き家状態を早期に解消する目的の制度もあります。
そのため「うちの家は特定空家ではないから対象外」と自分で決めず、所在地自治体の制度を確認してください。
解体補助金で最も注意したいのは「契約するタイミング」
補助制度を利用したい場合、非常に重要なのが解体会社との契約時期です。
多くの自治体では、
交付決定前に契約・着工した工事は補助対象外
としています。
例えば2026年度の、
- 札幌市
- 横浜市
- 町田市
- 一宮市
- 神戸市
などの制度でも、契約・着工前の申請または交付決定が重要な条件になっています。
見積もりを取ることと契約することは別
補助金申請では見積書が必要になることがあります。
そのため、
「契約前でなければ申請できないのに、どうやって見積書を出すの?」
と迷うことがあります。
見積もりを依頼することと、工事を正式に発注する契約は別です。
一般的には、
- 解体会社から見積書を取得
- 自治体へ補助申請
- 交付決定を受ける
- その後に正式契約
という流れになります。
ただし自治体によって手続きが異なるため、見積もり依頼前または遅くとも契約前に公式要綱を確認します。
補助金を使うときの基本的な申請順序
制度ごとに違いはありますが、おおむね次の流れで確認すると失敗しにくくなります。
- 実家所在地の自治体で補助制度を探す
- 対象となりそうか自治体へ事前相談する
- 必要なら危険度・耐震性等の事前判定を受ける
- 補助対象となる解体業者の条件を確認する
- 解体見積もりを取得する
- 必要書類を揃えて補助金を申請する
- 交付決定を待つ
- 交付決定後に解体会社と契約する
- 解体工事を実施する
- 完了報告・領収書等を提出する
- 補助金額が確定する
- 補助金を受け取る
特に7と8の順番を逆にしないようにします。
自治体によっては事前判定が必要
補助金申請書をいきなり提出するのではなく、まず自治体が建物を確認する制度があります。
例えば札幌市では事前確認によって危険空家等に該当するか判定します。
豊田市でも、補助申請前に市職員による対象空き家の現地確認を行っています。
このタイプの制度では、業者選びや契約を急ぐより、まず自治体へ問い合わせます。
解体補助金を探す方法
検索するときは、
「実家所在地の市区町村名+空き家 解体 補助金」
または、
「市区町村名+除却 補助」
で検索します。
自治体では「解体」ではなく、行政用語として「除却」という名称を使っていることが多いためです。
例えば、
- 空家等除却補助金
- 危険空家等除却補助制度
- 老朽住宅除却補助
- 住宅除却補助
などの名称があります。
自治体サイトで見つからないときの問い合わせ先
ホームページ内で制度が見つからない場合は、
- 空き家対策担当
- 住宅政策課
- 建築指導課
- 建築安全担当
- 耐震担当
- 都市整備担当
などへ問い合わせます。
「空き家解体の補助制度はありますか」だけでなく、実家の住所、築年、構造、現在の状態を伝えると案内を受けやすくなります。
2026年度の制度か必ず確認する
補助制度は毎年同じとは限りません。
前年に、
- 上限50万円だった
- 募集されていた
- 対象地域だった
からといって、2026年度も同じとは限りません。
検索結果に古い年度のページが残っていることもあります。
必ず、
- 令和8年度
- 2026年度
- 更新日
- 現在の受付状況
を確認してください。
予算がなくなると年度途中でも終了することがある
自治体の補助金は、年度の予算に上限があります。
受付期間が12月まで書かれていても、予算に達した時点で受付を終了する場合があります。
札幌市、横浜市などの2026年度制度でも、予算状況による早期終了の可能性が案内されています。
解体時期が決まっているなら、年度後半まで待たずに制度の有無を確認します。
解体補助金の対象費用はどこまで?
ここも自治体によって異なります。
対象になり得るものとしては、
- 建物本体の解体
- 基礎撤去
- 解体廃材の運搬・処分
- 工事上必要な安全対策
などがあります。
一方、制度によっては、
- 家具・家電等の残置物
- 庭の舗装
- 解体後の土地利用工事
- 申請手数料
- 消費税
などが補助対象外になることがあります。
解体見積書の総額ではなく、自治体が「補助対象工事費」と認めた部分に補助率を掛ける制度があることを理解しておきます。
家財整理も補助金の対象になる?
制度によります。
例えば東京都には、空き家の家財整理または解体に対する補助があります。
2026年時点では家財整理について税抜費用の2分の1、上限5万円、解体について2分の1、上限10万円と案内されています。
ただし、同一の空き家についてどちらも無条件に利用できるわけではありません。
一方、札幌市の危険空家等除却補助では、残置物処分費は除却工事費に含められません。
このように、同じ家財処分でも自治体によって扱いが異なります。
補助対象の解体業者に条件がある場合もある
補助金を利用する場合、普段の解体工事以上に業者条件を確認します。
例えば、
- 建設業許可
- 解体工事業登録
- 市内に本社があること
- 自治体が定める事業者であること
などです。
「一番安かった会社へ先に発注してから補助金を調べる」と、その会社が対象業者の要件を満たさない可能性があります。
相見積もりを求められる制度もある
補助金申請では、複数の見積書を求める自治体もあります。
例えば横浜市の2026年度制度では、見積額が100万円以上となる場合、2者以上の見積書提出が必要です。
補助金を使わない場合でも複数社の比較には意味がありますが、制度によっては相見積もり自体が申請要件になります。
補助金を受けても一度は工事費を支払う制度がある
多くの制度では、
- 工事完了
- 所有者が解体会社へ支払い
- 完了報告
- 補助金確定
- 自治体から補助金支給
という流れです。
つまり補助金が出るとしても、工事代金全体を一度用意する必要がある場合があります。
一方、自治体によっては補助金の代理受領制度を設けている場合もあります。
資金面が問題になる場合は、支払時期も自治体へ確認します。
補助金が使えるから解体した方が得とは限らない
例えば200万円の解体工事に50万円の補助金が出ても、所有者負担は残ります。
さらに解体後は建物がなくなります。
売却予定なら、補助金だけを理由に解体せず、
- 古家付きのまま売却
- 現況買取
- 買主決定後に解体
- 補助金を使って先に更地化
を比較します。
一度建物を壊すと元には戻せません。
解体後は固定資産税等が変わる可能性がある
住宅が建つ土地には、一定の要件で固定資産税・都市計画税の住宅用地特例があります。
住宅を取り壊し、翌年1月1日時点で住宅がなくなると、原則として土地に対する住宅用地特例が適用されなくなるため、土地部分の固定資産税等が上がる場合があります。
札幌市も解体補助制度の案内で、住宅解体後は住宅用地の特例措置が適用されなくなり、土地の固定資産税等が上がることがあると注意喚起しています。
補助金で数十万円安くなることだけでなく、解体後の年間負担まで確認します。
補助金の申請前に解体見積もりを比較する
補助制度が利用できそうだと分かったら、制度の条件に合う解体会社から見積もりを取ります。
比較するときは、
- 建物本体
- 基礎
- 養生
- 廃材処分
- 塀・庭木
- 残置物
- アスベスト
- 整地
について、同じ範囲で見積もります。
補助金は「見積総額の○%」ではなく、自治体が認めた対象工事費に対して計算されることがあるためです。
補助金を使うときのチェックリスト
- □ 実家所在地の2026年度制度を確認した
- □ 「解体」だけでなく「除却」で検索した
- □ 自分の建物が対象か確認した
- □ 危険度・耐震性の事前判定が必要か確認した
- □ 所有者・相続人の条件を確認した
- □ 共有者の同意が必要か確認した
- □ 税の滞納要件を確認した
- □ 対象業者の条件を確認した
- □ 見積もりを取得した
- □ 複数見積もりが必要か確認した
- □ 補助対象工事費の範囲を確認した
- □ 残置物が対象か確認した
- □ 交付決定前に契約していない
- □ 交付決定前に工事を始めていない
- □ 完了期限を確認した
- □ 完了報告に必要な写真・領収書等を確認した
- □ 解体後の固定資産税等も確認した
よくある質問
家を解体すると国から補助金がもらえますか?
全国の所有者へ一律に支給される解体補助金ではありません。国には自治体等を支援する制度がありますが、所有者が実際に利用する際は空き家所在地の市区町村等の制度を確認するのが基本です。
空き家解体の補助金はいくらですか?
自治体によって異なります。2026年度の例では、東京都は税抜解体費の1/2・上限10万円、札幌市の通常型は上限50万円、横浜市では旧耐震建築物について上限50万円などの制度があります。
誰でも解体補助金を使えますか?
いいえ。建物の老朽度、耐震性、空き家期間、所有関係、税の滞納、所在地、解体業者等の条件が設定される場合があります。
特定空家でなければ補助金は使えませんか?
必ずしもそうではありません。危険空き家を対象とする制度だけでなく、耐震性の低い住宅、密集市街地の老朽住宅、一定の空き家全般を対象とする制度もあります。
解体会社と契約した後でも申請できますか?
制度によりますが、交付決定前の契約を対象外とする自治体が多くあります。契約前に自治体へ確認してください。
見積もりは補助金申請前に取っても大丈夫ですか?
補助申請書類として見積書を求められる制度があります。見積もり取得と工事契約は別なので、通常は見積もりを取得してから申請できます。ただし自治体の手順を確認してください。
家財処分も補助対象になりますか?
自治体によって異なります。東京都のように家財整理を別の補助対象とする制度もあれば、札幌市の危険空家等除却補助のように残置物処分費を除却工事費に含めない制度もあります。
申請期間内なら必ず補助金を受け取れますか?
いいえ。予算上限に達すると予定より早く受付終了する制度があります。また、申請しても審査の結果、対象外となる可能性があります。
補助金を受ければ解体費を先に払わなくてよいですか?
制度によります。所有者が工事費を支払い、完了報告後に補助金が支給される制度もあります。代理受領制度がある自治体もあるため確認してください。
解体後に固定資産税は上がりますか?
住宅を解体して翌年1月1日時点で住宅がなくなると、土地の住宅用地特例が原則適用されなくなるため、土地部分の固定資産税等が上がる場合があります。実際の税額は土地条件等によって異なります。
補助金を探すなら「解体会社との契約前」が最も重要
空き家の解体補助制度は、全国一律ではありません。
所在地によって、
- 制度の有無
- 対象建物
- 補助率
- 上限額
- 対象工事
- 業者条件
- 申請期間
が異なります。
そのため、解体を考えたら最初に、
「実家所在地+空き家+除却+補助金」
で2026年度の公式制度を確認してください。
制度が使えそうなら、対象業者の条件を確認して見積もりを取り、自治体へ申請します。
そして、交付決定を受けるまで契約・着工をしないことが重要です。
補助金を利用できても、解体後の固定資産税や売却条件まで含めると、必ず解体が有利とは限りません。
実家を売るか、管理するか、解体するか自体がまだ決まっていない場合は、実家じまいの全体像から先に整理してください。