誰も住まなくなった実家について、「しばらく使う予定もないので、そのままでもよいのでは」と考えることがあります。
空き家として保有すること自体が問題なのではありません。
問題になるのは、誰も状態を確認せず、必要な管理も行わないまま家の劣化や周辺への影響が進んでいくことです。
適切に管理されていない空き家では、建物の傷みだけでなく、庭木の越境、害虫、不法侵入、外壁の落下など、敷地の外へ影響が広がることがあります。
さらに状態が悪化すると、市区町村から管理不全空家や特定空家として指導・勧告等の対象になる可能性もあります。
空き家を今すぐ売却・解体すると決めていなくても、方針を決めるまで適切な管理を続けることが重要です。
空き家を放置すると起こり得る7つの問題
空き家の放置による問題は、単に「家が古くなる」だけではありません。
大きく分けると、次の7つがあります。
- 建物の劣化が進む
- 倒壊・外壁や屋根材の落下につながる
- 庭木・雑草が周囲へ影響する
- ねずみ・害虫・悪臭などが発生する
- 不法侵入・不法投棄などにつながる
- 近隣や通行人へ損害を与える可能性がある
- 行政上の指導・勧告や税負担への影響が生じる可能性がある
1.換気・点検をしないと建物の劣化に気づきにくい
人が暮らしている家では、窓を開けたり水を使ったり、雨漏りや設備の異常に気づいたりします。
空き家では、こうした日常的な確認がなくなります。
そのため、
- 雨漏り
- カビ
- 湿気
- 床や柱の腐朽
- 外壁のひび割れ
- 雨どいの破損
- 窓ガラスの破損
などが起きても、そのまま何か月も気づかないことがあります。
小さな傷みの段階で修繕できたものが、長期間放置したことで修理範囲が大きくなる場合もあります。
売却や再利用を考えたときに、建物状態が以前より悪くなっていることもあります。
2.屋根・外壁・塀などが落下・倒壊する可能性がある
建物の劣化が進むと、敷地内だけの問題ではなくなることがあります。
例えば、
- 屋根材が強風で飛ぶ
- 外壁材が落下する
- 塀が道路側へ倒れる
- 老朽化した建物の一部が崩れる
といった状態です。
特に台風、地震、大雨、大雪などをきっかけに、それまで何とか形を保っていた部分が破損することがあります。
そのため、通常の巡回だけでなく、大きな災害の後には状態を確認する意味があります。
3.庭木・雑草が隣地や道路へ影響する
一軒家の空き家で早く目立ちやすいのが庭です。
管理せずにいると、
- 雑草が敷地全体に広がる
- 木の枝が隣地へ越境する
- 枝が道路標識や電線付近まで伸びる
- 枯れ枝が落下する
- 落ち葉が近隣へ流れる
といった問題につながることがあります。
建物本体がまだ比較的きれいでも、庭木の状態から空き家であることが分かりやすくなる場合があります。
庭の管理は景観だけでなく、近隣への影響や防犯の面でも確認しておきたい部分です。
4.ねずみ・害虫・悪臭など衛生面の問題が起こる
空き家では、人の出入りがなくなることで動物や虫が入り込んでも気づきにくくなります。
国土交通省も、管理されていない空き家で起こり得る問題として、ねずみ・害虫、汚水、悪臭などを挙げています。
例えば、
- ねずみ等が住み着く
- 害虫が増える
- 動物が屋根裏などへ侵入する
- 残されたごみが腐敗する
- 排水設備等から臭いが発生する
といった状態です。
敷地内だけで収まらず、周囲へ影響する場合もあります。
5.不法侵入・不法投棄につながる場合がある
郵便物がたまり、庭が荒れ、長期間人が出入りしていない状態になると、外からも空き家だと分かりやすくなります。
その結果、
- 不審者の侵入
- 無断使用
- ごみの不法投棄
- いたずら
などにつながる可能性があります。
一度ごみを捨てられると、さらに追加の不法投棄が起きる場合もあります。
定期的な郵便物の回収、草木の管理、人が確認していることが分かる状態を保つことは、こうした問題を早く見つける意味でも重要です。
6.近隣や通行人に損害を与えると責任を問われる可能性がある
空き家の問題が敷地内だけで完結しているうちは、所有者自身の財産の問題が中心です。
しかし、
- 屋根材が飛んで隣家を傷つけた
- 外壁材が落下した
- 塀が倒れた
- 庭木が隣家を傷つけた
など、周囲へ損害が発生した場合には、損害賠償責任を問われる可能性があります。
「自分は遠方に住んでいて状態を知らなかった」というだけで、管理の問題がなくなるとは限りません。
遠方で自分では確認できない場合は、家族・親族や管理サービス等を使い、状態を把握できる仕組みを作ります。
7.管理不全空家・特定空家として行政措置の対象になる可能性がある
空き家を放置したからといって、すぐに行政処分を受けるわけではありません。
ただし、適切に管理されない状態が進むと、空家法に基づく措置の対象になることがあります。
管理不全空家とは
管理不全空家は、適切な管理が行われていないため、そのまま放置すれば特定空家になるおそれがある状態の空き家です。
市区町村は管理不全空家の所有者等に対して、管理指針に沿った措置を行うよう指導できます。
指導を受けても改善されない場合には、勧告が行われる可能性があります。
特定空家とは
特定空家は、例えば次のような状態にある空き家です。
- 放置すれば倒壊等、著しく保安上危険となるおそれがある
- 放置すれば著しく衛生上有害となるおそれがある
- 適切な管理が行われず、著しく景観を損なっている
- その他、周辺の生活環境を守るため放置することが不適切
特定空家については、市区町村による助言・指導、勧告、命令、さらに条件を満たした場合には行政代執行等へ進む仕組みがあります。
管理不全空家・特定空家になっただけで、すぐ固定資産税が上がるわけではない
空き家の記事では、
「特定空家になると固定資産税が6倍になる」
と説明されることがあります。
しかし、この表現だけでは正確ではありません。
住宅の敷地には「住宅用地特例」があり、固定資産税の課税標準について、
- 200㎡以下の小規模住宅用地:1/6
- 200㎡を超える部分の一般住宅用地:1/3
に軽減する仕組みがあります。
管理不全空家または特定空家について市区町村から勧告を受けると、その敷地は住宅用地特例の対象外になります。
つまり、単に空き家になっただけ、あるいは管理不全空家と判断された瞬間に、必ず税額が6倍になるという仕組みではありません。
また、住宅用地特例が外れた後の実際の固定資産税額も、土地の評価額、面積、その他の条件で変わります。
管理不全空家と特定空家では行政措置の段階が違う
| 状態 | 主な行政上の流れ |
|---|---|
| 通常の空き家 | 所有者等による適切な管理 |
| 管理不全空家 | 指導 → 勧告 |
| 特定空家 | 助言・指導 → 勧告 → 命令 → 行政代執行等 |
管理不全空家も特定空家も、勧告を受けると住宅用地特例の対象外になる可能性があります。
特定空家で命令に従わない場合には、50万円以下の過料の対象になる可能性があります。
行政代執行になれば、費用を払わなくてよいわけではない
危険な特定空家について必要な措置が行われず、一定の手続を経た場合には、市区町村が所有者等に代わって除却等を行う行政代執行が行われることがあります。
「行政が壊してくれるなら、自分で解体費を払わなくてよい」という制度ではありません。
行政代執行にかかった費用は、所有者等から徴収される可能性があります。
また、災害など非常の場合には、一定の条件のもと緊急代執行が行われる制度もあります。
空き家を何年放置したら管理不全空家や特定空家になる?
全国共通で、
「1年放置すると管理不全空家」
「3年放置すると特定空家」
と決められているわけではありません。
判断では、
- 建物の状態
- 庭木や敷地の状態
- 衛生上の問題
- 周囲へ与える影響
- これまでの行政からの指導
などが考慮されます。
同じ1年間でも、定期管理されている家と、窓が割れ、屋根材が落下し、庭木が道路へ伸びている家では状態が違います。
期間だけで「まだ大丈夫」と判断することはできません。
放置していた空き家は、何から対応すればよい?
しばらく見に行っていなかった空き家でも、最初から売却や解体を決める必要はありません。
次の順番で状態を確認します。
1.現地の状態を確認する
- 屋根・外壁
- 窓
- 門・塀
- 庭木・雑草
- 郵便物
- 不法投棄
- 室内の雨漏り・カビ
- 害虫・動物の痕跡
を確認します。
建物へ入ること自体が危険な状態なら、無理に室内へ入らず専門家へ相談します。
2.周囲へ危険がある場所を優先する
すべてを一度に直す必要はありません。
まず、
- 落下しそうな外壁
- 倒れそうな塀
- 道路へ伸びた枝
- 割れた窓
など、周囲への影響が大きい部分から確認します。
3.最低限の管理を再開する
すぐ処分しない場合は、
- 戸締り
- 郵便物の回収
- 換気
- 通水
- 草木の管理
- 建物内外の定期点検
を再開します。
遠方で継続できない場合は、管理を委託する方法があります。
4.保有・売却・活用・解体を比較する
管理を再開したら、その状態を何年も続けるのかも考えます。
家族が使う予定がないなら、
- そのまま保有
- 売却
- 賃貸・活用
- 解体
を比較します。
管理費、固定資産税、修繕、売却価格、解体費などを確認して判断します。
自治体から指導・勧告の通知が来ている場合は放置しない
すでに市区町村から空き家について連絡、指導、勧告等を受けている場合は、その通知自体を放置しないでください。
書類に記載された担当部署へ連絡し、
- どの部分が問題とされているか
- どのような改善を求められているか
- 期限はいつか
- 修繕・除却・管理のどの方法で改善できるか
を確認します。
建物の状態が悪い場合は、建築・解体等の専門業者への相談も検討します。
よくある質問
空き家を放置するとどうなりますか?
建物劣化、雨漏り、外壁や屋根材の落下、庭木の越境、ねずみ・害虫、悪臭、不法侵入、不法投棄などにつながる可能性があります。周辺へ影響する状態になると、行政上の指導等の対象となる場合もあります。
空き家を放置すると固定資産税は6倍になりますか?
単純に「空き家を放置したら必ず6倍」ではありません。管理不全空家または特定空家について市区町村から勧告を受けると、住宅用地特例の対象外になります。実際の税額は土地の評価額や面積等によって異なります。
管理不全空家と特定空家は何が違いますか?
管理不全空家は、適切な管理が行われず、そのまま放置すれば特定空家になるおそれのある状態です。特定空家は、倒壊など著しく保安上危険となるおそれ、著しい衛生上の問題など、周辺への影響がより深刻な状態です。
管理不全空家に認定されたらすぐ固定資産税の特例が外れますか?
認定・判断だけで直ちに外れるという単純な仕組みではありません。市区町村から指導を受けても改善せず、勧告を受けた場合に住宅用地特例の対象外となります。
何年空き家にすると特定空家になりますか?
全国共通の年数はありません。放置期間だけでなく、建物・敷地の状態、衛生面、周辺への影響などを踏まえて判断されます。
行政代執行になったら解体費を払わなくてよいですか?
そうではありません。行政代執行にかかった費用は、所有者等から徴収される可能性があります。
空き家が原因で隣の家を壊した場合はどうなりますか?
屋根材や外壁の落下、倒木などで他人や近隣住宅へ損害を与えた場合、損害賠償責任を問われる可能性があります。
売るか解体するか決まっていません。それでも管理は必要ですか?
必要です。今後の方針を保留することと、家を管理しないことは別です。売却・解体・活用を検討している期間も、必要な管理を続けます。
空き家は「持っていること」より「管理しないこと」が問題になる
空き家を保有すること自体が、直ちに問題になるわけではありません。
将来家族が使うために残すこともできます。
売却や解体を考えるまで時間が必要なこともあります。
ただし、その間に誰も状態を確認せず、建物や敷地の問題を放置すると、自分の財産の劣化だけでは済まなくなることがあります。
外壁が落ちる。
庭木が越境する。
害虫や悪臭が発生する。
不法侵入が起きる。
近隣へ損害を与える。
そして状態によっては行政上の措置へ進む可能性があります。
今後の方針が決まっていない場合でも、まず現在の状態を確認し、必要な管理を再開したうえで、保有・売却・活用・解体のどこへ進むかを考えます。
実家・空き家全体の整理については実家・家財整理のガイドから確認してください。