親が亡くなった後、電気・ガス・水道などの公共料金も整理する必要があります。
ただし、「亡くなったらすぐ全部解約」と考えるのは早すぎる場合があります。
実家の遺品整理、清掃、売却査定、内見、リフォームなどで、しばらく電気や水道が必要になることがあるためです。
一方、誰も使わないガスなどを長期間契約したままにすると、不要な基本料金が発生する可能性があります。
死亡後の公共料金は、電気・ガス・水道を一括で考えず、「今後その家をどう使うのか」を決めたうえで、停止・継続・名義変更を個別に判断することが大切です。
親が亡くなった後の公共料金は何から始める?
最初に、実家を今後どうする予定なのかを大きく3つに分けます。
| 実家の予定 | 公共料金の考え方 |
|---|---|
| すぐ退去・売却する | 必要な作業が終わり次第、停止を進める |
| 遺品整理・売却準備でしばらく使う | 電気・水道など必要な契約を一時継続する |
| 家族が住み続ける | 解約ではなく名義・支払方法変更を中心に進める |
この判断をしてから、電気、ガス、水道を一つずつ確認します。
死亡後の公共料金は自動的に解約されない
契約者が亡くなったからといって、電気・ガス・水道の契約がすべて自動的に終了するとは限りません。
各事業者へ、
- 契約者が亡くなったこと
- 今後も使用するのか
- 停止するのか
- 誰の名義へ変更するのか
を連絡して手続きを進めます。
役所への死亡届と、公共料金会社への手続きは別です。
公共料金は「解約」と「名義変更」のどちらを選ぶ?
判断基準はシンプルです。
もう使わないなら使用停止・解約
家を明け渡す、解体する、売却前の作業もすべて終わったなど、今後使用する予定がなければ契約を停止します。
使い続けるなら名義変更
配偶者や子どもがその家に住み続ける場合や、当面公共料金を利用する場合は、名義変更を検討します。
ただし、名義変更では未払い料金などの債権債務を引き継ぐ仕組みになっている事業者もあります。
「名前だけ変更する」と考えず、現在の未払額や契約条件も確認してください。
電気はすぐ止めるべき?
空き家になる場合でも、電気はしばらく残した方がよいケースがあります。
たとえば、
- 遺品整理をする
- 掃除機を使う
- 照明を使う
- エアコンを使う
- 不動産会社が内見する
- 修繕・リフォームをする
- 電動工具を使用する
予定がある場合です。
売却や片付けが終わる前に電気を止めると、作業のたびに不便になることがあります。
家族が住み続けるなら電気は名義変更
亡くなった人と同居していた配偶者・子どもなどが引き続き住む場合は、電気を止める必要はありません。
契約先へ連絡し、契約者名義と支払方法を変更します。
東京電力エナジーパートナーでは、契約者の死亡による継承を含む名義変更を受け付けています。
ただし、名義変更によって現在請求されている料金なども新契約者へ引き継がれる扱いがあります。
未払い料金を引き継がない場合は、一度契約を終了し、新しい名義で契約し直す方法が案内されています。
電気を停止するときの立会い
電気の使用停止は、一般に立会い不要としている事業者があります。
ただし、メーターの設置場所や設備状況によっては立会いを求められる場合があります。
申し込み時に事業者へ確認してください。
ガスは使わないなら早めに停止を検討する
誰も住まない家でガスを使う予定がない場合は、停止を検討できます。
電気や水道と比べると、遺品整理や内見だけでガスが必要になる場面は限られます。
ただし、
- 給湯を使う
- 家族がしばらく滞在する
- 売却前に設備を使用する
予定があるなら、その作業が終わるまで残す選択肢もあります。
東京ガスでは死亡後に停止か名義変更を選ぶ
東京ガスでは、ガス・電気の契約者が亡くなった場合、
- 今後使用しない → 使用停止
- 今後も使用する → 契約者名義変更
という手続きを案内しています。
死亡しただけでは自動的に停止するわけではないため、不要な契約は手続きを行います。
ガスの停止には立会いが必要?
事業者や建物によって異なります。
東京ガスでは、ガスメーターのある場所まで作業員が入れる場合、使用停止時の立会いは原則不要です。
一方、オートロック式のマンションなど、作業員だけではガスメーターへ到達できない場合は立会いが必要です。
代理人による立会いが認められる場合もあります。
ガスの再開には立会いが必要になることがある
一度ガスを止め、後になって再び使う場合は、開栓時に安全確認等のため立会いが必要になる事業者があります。
そのため、「数日後また使うかもしれない」という状況なら、停止・再開の手間まで考えて判断します。
水道は空き家でも残した方がよいことがある
実家じまいでは、水道は電気と同様に最後まで必要になりやすい設備です。
たとえば、
- 遺品整理後の掃除
- トイレ
- 床・窓の清掃
- 庭の手入れ
- 不動産売却前の清掃
- 内装工事
などで水を使います。
売却・退去日が確定していない段階で水道を止めると、必要になったときに再度開始手続きが必要です。
東京都水道局は使わなくても基本料金がかかると案内
東京都水道局では、水道を使用しなくなった場合、使用中止の届け出をしなければ、実際に水を使っていなくても基本料金がかかると案内しています。
そのため、遺品整理や清掃が完了して今後使わないことが決まったら、中止手続きを行います。
清掃や工事だけで水を使う場合も契約が必要
東京都水道局では、清掃・内装工事などで一時的に水道を使用する場合にも、使用開始・使用中止の手続きを行うよう案内しています。
「誰も住んでいないから契約はいらない」とは限りません。
実家整理の日程を確認してから水道停止日を決めるとよいでしょう。
水道を家族名義に変更する場合
家族がそのまま使用する場合は、水道の名義変更を行います。
東京都水道局では、債権債務を引き継ぐ場合は名義変更を受け付けています。
一方、以前の契約者の債権債務を引き継がない場合は、いったん使用中止して料金を清算し、新しい契約として使用開始する方法になります。
水道停止の立会いは必要?
東京都水道局では、水道の使用中止は原則として立会い不要です。
ただし、現場で料金を清算する場合や、オートロック等によって検針員がメーターへ立ち入れない場合などは、立会いが必要になることがあります。
地域・水道事業者によって条件が異なるため、実際の契約先へ確認してください。
空き家になるなら電気・ガス・水道をどうする?
実家が空き家になる場合の一般的な考え方を整理すると、次のようになります。
| ライフライン | 当面残す意味があるケース | 停止しやすいケース |
|---|---|---|
| 電気 | 遺品整理・照明・清掃・内見・工事 | 家への出入りが終わった |
| ガス | 家族滞在・給湯等を使う | 誰も生活せずガスを使わない |
| 水道 | 掃除・トイレ・庭・工事 | 清掃・工事まで完了した |
これは全国一律の決まりではなく、実家の使い方を判断するための目安です。
実家売却予定なら電気・水道は内見後まで残すことも検討する
不動産会社による査定・写真撮影・内見などで、電気や水道がある方が作業しやすい場合があります。
また、売却前にハウスクリーニングや補修を行うなら、ライフラインを使用する可能性があります。
売却を依頼する不動産会社へ、いつまで残しておくべきか確認してから停止日を決める方法もあります。
解体予定なら業者へ停止時期を確認する
実家を解体する場合も、工事開始前まで電気・水道等を使用する場合があります。
一方、ガスについては、建物解体に伴いガスメーター撤去やガス管の処理が必要になることがあります。
解体日だけを見て家族が独断で止めるのではなく、解体業者と各ライフライン事業者へ確認してください。
銀行口座が凍結されたら公共料金の引き落としはどうなる?
故人の銀行口座が死亡後の相続手続きで利用停止になると、公共料金等の口座振替も原則としてできなくなります。
そのため、電気・ガス・水道を引き続き利用する場合は、支払方法を変更する必要があります。
名義変更だけして支払口座を故人名義のままにしないよう注意してください。
銀行へ死亡を連絡する前に公共料金を確認する
銀行口座の相続手続きを始める前に、通帳や利用明細から、
- 電気
- ガス
- 水道
- 携帯電話
- インターネット
- クレジットカード
などの口座振替を確認しておくと、その後の変更漏れを減らせます。
銀行口座については、死亡後の銀行口座はどうなる?凍結・払戻し・相続手続きも確認してください。
クレジットカード払いの場合も支払方法を変更する
電気・ガス等を故人名義のクレジットカードで支払っている場合があります。
クレジットカードの死亡退会をすると、その後の継続課金が正常に決済できなくなる可能性があります。
公共料金を継続するなら、先に新しい支払方法を登録します。
死亡後のクレジットカード整理については、死亡後のクレジットカードはどうする?で詳しく解説しています。
支払方法変更には時間がかかることがある
口座振替・クレジットカード変更は、申し込んだ当日に反映されるとは限りません。
事業者によっては、変更完了まで数週間から一定期間かかることがあります。
その間の料金が払込票等で請求されることもあるため、郵便物を確認してください。
故人宅への郵便物を確認できるようにする
公共料金の手続きでは、最終請求書や払込票が故人宅へ届くことがあります。
家を空ける場合は、請求書の送付先変更ができないか事業者へ確認します。
郵便物を長期間放置すると、未払いに気付けない可能性があります。
停止後の最終料金を確認する
電気・ガス・水道を停止しても、停止日までに使用した分の料金は残ります。
停止手続きの際に、
- 最終利用日
- 最終料金
- 支払方法
- 請求書の送付先
- 口座振替・カード払いが使えるか
を確認します。
口座・カードをすぐ解約しないよう案内する事業者もある
公共料金の最終精算を口座振替・クレジットカードで行う場合、精算が終わるまでその支払手段を維持するよう案内されることがあります。
一方、死亡した本人名義の銀行口座・クレジットカードには相続手続きが必要です。
支払手段をいつまで利用できるか分からない場合は、公共料金会社と金融機関・カード会社の双方へ確認してください。
未払い料金がある場合は名義変更条件を確認する
電気・ガス・水道では、名義変更とともに旧契約者の債権債務を引き継ぐ仕組みを設けている事業者があります。
たとえば東京ガス、東京電力エナジーパートナー、東京都水道局では、債権債務を引き継ぐ形の名義変更について案内があります。
一方、未払い料金等を引き継がない場合は、旧契約を終了・清算し、新規契約とする対応があります。
事業者ごとの条件を確認してください。
相続放棄を考えている場合の公共料金
亡くなった人に未払いの公共料金がある場合、それも債務確認の対象になります。
相続放棄を検討しているなら、故人の財産・債務を調べる前に、相続財産から安易に未払債務を支払ったり処分したりすることは避け、必要に応じて専門家へ確認してください。
一方で、これから家族自身が使用する電気・ガス・水道については、故人の未払い分と新しい契約をどのように分けられるか事業者へ確認します。
契約先が東京電力・東京ガスとは限らない
近年は電力・ガス自由化によって、多くの小売事業者があります。
実家が東京にあっても、契約先が東京電力や東京ガスとは限りません。
まず、
- 検針票
- 請求書
- 口座振替名
- クレジットカード明細
- メール
などから実際の契約会社を確認してください。
セット契約にも注意する
電気とガス、携帯電話と電気、インターネットと電気などをセット契約している場合があります。
一つだけ解約すると、
- セット割が終了する
- 料金プランが変わる
- 別サービスの支払方法変更が必要になる
ことがあります。
契約会社へ「契約者が死亡したため整理したい」と伝え、関連契約も確認します。
公共料金を一覧にして管理する
契約数が多い場合は、次のような一覧を作ると漏れを減らせます。
| 項目 | 確認内容 |
|---|---|
| 電気 | 契約会社・名義・支払方法・停止予定 |
| ガス | 契約会社・名義・停止日・立会い |
| 水道 | 水道局・名義・停止日・清掃予定 |
| 携帯・通信 | 解約・承継・関連回線 |
| 支払口座 | 死亡後も利用可能か確認 |
| 最終料金 | 金額・支払方法・請求先 |
実家が賃貸住宅の場合
亡くなった人が賃貸住宅に住んでいた場合は、賃貸借契約の退去日との関係も確認します。
退去立会いや荷物搬出、清掃が終わる前に電気・水道を止めると作業が難しくなることがあります。
管理会社へ、
- 退去日
- 鍵の返却日
- ライフラインをいつまで残すか
を確認してから停止日を設定します。
持ち家を売却する場合
売却の場合は、
- 遺品整理
- 査定
- 清掃
- 内見
- 契約
- 引渡し
と時間がかかることがあります。
途中で電気・水道を止めると再契約が必要になる場合もあるため、売却を担当する不動産会社へ停止時期を相談できます。
長期間空き家にする場合
すぐ売却せず、しばらく空き家として管理する場合は、必要なライフラインだけ残す方法があります。
ただし、使わなくても基本料金等が発生する契約があります。
月々の費用と、定期管理で必要になる設備を比較します。
また、冬季には地域によって水道管凍結等への対策も必要です。
公共料金手続きの順番
実務上は次の順序で整理すると分かりやすくなります。
- 実家を今後どうするか確認する
- 電気・ガス・水道の契約会社を調べる
- 引落口座・カードを確認する
- 今後使うライフラインを決める
- 継続分は名義・支払方法を変更する
- 不要分は停止日を決める
- 立会いの有無を確認する
- 最終料金と請求先を確認する
- 支払い完了を確認する
公共料金を停止する前のチェックリスト
- □ 遺品整理が終わっている
- □ 清掃で水・電気を使わない
- □ 不動産査定・内見予定を確認した
- □ 修繕・リフォーム予定を確認した
- □ 解体業者へ停止時期を確認した
- □ 電気の契約会社を確認した
- □ ガスの契約会社を確認した
- □ 水道事業者を確認した
- □ 支払方法を確認した
- □ 未払料金を確認した
- □ 最終料金の支払方法を確認した
- □ 請求書の送付先を確認した
- □ 立会いの要否を確認した
名義変更する場合のチェックリスト
- □ 誰が新しい契約者になるか決めた
- □ 未払い料金の有無を確認した
- □ 債権債務を引き継ぐ条件を確認した
- □ 新しい支払口座を用意した
- □ 新しいクレジットカードを用意した
- □ セット契約を確認した
- □ Web会員サービスの扱いを確認した
- □ 名義変更後の請求を確認した
よくある質問
親が亡くなったら電気・ガス・水道は自動的に解約されますか?
自動的にすべて解約されるとは限りません。契約事業者へ死亡を連絡し、停止または名義変更等の手続きを行います。
実家が空き家になるならすぐ全部止めていいですか?
遺品整理、清掃、内見、リフォーム等で電気や水道が必要になることがあります。今後の作業予定を確認してから停止日を決めてください。
誰も住まない場合、ガスは止めてもいいですか?
今後ガスを使う予定がなければ停止を検討できます。ただし、給湯等を使う予定がある場合や再開予定がある場合は、停止・再開条件も確認してください。
水道は使っていなくても料金がかかりますか?
水道事業者によりますが、東京都水道局では使用中止届を出さないと、水を使っていなくても基本料金がかかると案内しています。
口座が凍結したら公共料金の引き落としはどうなりますか?
故人名義の銀行口座が利用停止になると、公共料金の口座振替も原則停止します。契約を継続する場合は別の支払方法へ変更してください。
ガスを止めるときは立会いが必要ですか?
事業者・設備によって異なります。東京ガスでは、作業員がガスメーターへ入れないオートロック等の場合に立会いが必要です。
電気の停止に立会いは必要ですか?
原則立会い不要としている事業者がありますが、設備状況によって必要になる場合があります。契約会社へ確認してください。
水道停止に立会いは必要ですか?
東京都水道局では原則不要ですが、現場での料金清算やメーターへ立ち入れないケースなどでは必要になる場合があります。
親の未払い公共料金を家族名義へ変更すると引き継ぎますか?
事業者や手続方法によります。債権債務を引き継ぐ名義変更と、一度旧契約を終了して新規契約する方法を分けている事業者があります。手続前に未払い額と条件を確認してください。
死亡後の公共料金は「全部止める」より実家の予定から逆算する
親が亡くなった後の公共料金整理では、早く解約すること自体が目的ではありません。
まず、
- 家族が住み続けるのか
- 遺品整理に何日かかるのか
- 実家を売却するのか
- 解体するのか
- 空き家として管理するのか
を確認します。
そのうえで、電気・ガス・水道それぞれについて「残す・名義変更する・止める」を決めます。
特に電気と水道は、遺品整理・清掃・売却準備で必要になることがあるため、最後に使う日から逆算して停止することが実務上のポイントです。
死亡後の手続き全体については、親が亡くなった後の手続きもあわせて確認してください。
実家そのものを整理する流れについては、実家じまいから確認できます。