親が亡くなった後、銀行口座や不動産だけでなく、スマートフォンの中にも確認すべきものが残っています。
AppleやGoogleのアカウント、メール、SNS、動画配信サービス、クラウドストレージ、ネット銀行、コード決済などです。
こうしたものは「デジタル遺品」と呼ばれることがあります。
しかし、すべてを同じように削除すればよいわけではありません。
ネット銀行や証券口座には相続財産が残っている可能性があり、クラウドには家族写真があり、サブスクリプションは解約しない限り料金が発生し続ける場合があります。
死亡後のデジタルアカウントは、「財産」「継続課金」「残したいデータ」「SNS・その他アカウント」に分け、必要なものを保存・相続してから解約・削除へ進むことが大切です。
死亡後のデジタルアカウントは最初に4種類へ分ける
| 種類 | 主な例 | 最初にすること |
|---|---|---|
| 財産 | ネット銀行・証券・コード決済・暗号資産など | 残高・相続手続きを確認 |
| 継続課金 | 動画・音楽・アプリ・クラウド等のサブスク | 契約先と支払方法を確認 |
| データ | 写真・メール・ファイル・クラウド | 必要なデータを保存できるか確認 |
| SNS等 | Facebook・Instagram等 | 追悼・削除・維持を判断 |
この分類をせずにアカウントを削除すると、後から必要な資産や写真を取り戻せない可能性があります。
スマホをすぐ解約・初期化しない
死亡後の手続きでは、故人のスマートフォンが重要な手掛かりになることがあります。
端末の中には、
- 契約中のアプリ
- 銀行・証券アプリ
- コード決済
- メール
- 写真
- 連絡先
- 各サービスからの請求通知
などが残っています。
そのため、何が入っているか分からない段階で初期化・売却・廃棄するのは避けます。
携帯番号もすぐ消さない方がよい場合がある
故人の電話番号が、銀行、クレジットカード、SNSなどの連絡先やSMS認証先になっている場合があります。
携帯回線を解約すると、その番号でSMSを受け取れなくなります。
電話番号を今後使う必要がないか確認してから解約してください。
死亡後の携帯電話については、死亡後の携帯電話はどう解約する?承継・必要書類・端末代で詳しく解説しています。
ただし故人のID・パスワードで自由にログインしない
故人のパスワードが分かっていたとしても、すべてのオンラインサービスへ本人になり代わって自由にログインしてよいとは限りません。
サービスごとに利用規約や死亡時の手続きがあります。
Apple、Google、SNSなど、故人向けの正式な申請制度があるサービスは、その制度を利用します。
デジタルアカウントを洗い出す方法
家族が故人の契約をすべて把握しているとは限りません。
次の場所から利用サービスを探します。
- スマートフォンのアプリ一覧
- パソコン
- クレジットカード利用明細
- 銀行口座の引き落とし
- 紙の請求書
- サービスから届いた郵便物
- メールアドレス
- 携帯電話料金との合算請求
クレジットカード明細はサブスク発見に役立つ
毎月または毎年、同じ会社から請求されている項目を確認します。
たとえば、
- 動画配信
- 音楽配信
- オンラインストレージ
- セキュリティソフト
- 新聞・雑誌
- オンラインサロン
- 各種アプリ
などがあります。
カード会社名しか分からない請求がある場合は、カード会社へ請求元について確認できるか相談します。
サブスクは死亡しただけでは自動解約されない
サブスクリプションは、利用者が亡くなったことを事業者が自動的に把握できるとは限りません。
そのため、解約手続きをしないまま月額・年額料金が請求され続ける場合があります。
家族が不要と判断したサービスは、各事業者へ死亡を伝え、正式に解約します。
クレジットカードを止めればサブスクも解約になる?
カードを停止しただけでは、サービスの契約そのものが終了したとは限りません。
決済不能となった後も請求・契約が残ったり、別の支払方法へ請求されたりする可能性があります。
「支払いを止める」と「サービスを解約する」は別の手続きとして考えます。
ID・パスワードが分からないサブスクはどうする?
ID・パスワードが不明でも、サービス事業者へ死亡を伝えることで遺族からの解約相談に応じる例があります。
必要となる情報はサービスによって異なりますが、
- 故人の氏名
- 登録メールアドレス
- 登録電話番号
- 支払情報
- 死亡を確認できる書類
- 申請者との関係を確認できる書類
などを求められる場合があります。
Netflixは遺族が代理でキャンセルできる
Netflixでは、利用者が亡くなった場合、友人や家族が本人に代わってアカウントをキャンセルできると公式に案内しています。
アカウントへアクセスできない場合でも、登録されているメールアドレスまたは電話番号と、現在利用中の支払情報を用意して問い合わせる方法があります。
このように、ログインできないからといって解約方法がないとは限りません。
Apple Accountはどうする?
故人がiPhoneやiCloudを利用していた場合、Apple Accountには、
- 写真
- メッセージ
- メモ
- ファイル
- iCloudバックアップ
などが保存されている可能性があります。
Appleには故人のアカウントについて、データへのアクセスまたはアカウント削除を申請する仕組みがあります。
故人アカウント管理連絡先が設定されている場合
本人が生前に「故人アカウント管理連絡先」を設定していた場合、その人は所定の手続きによってApple Account内の一部データへのアクセスを申請できます。
申請には、故人から共有されたアクセスキーと死亡を確認できる書類等が必要です。
日本では、故人の死亡が記載された戸籍謄本が必要になる場合があります。
故人アカウント管理連絡先でもすべて見られるわけではない
アクセスできるデータには範囲があります。
Appleの案内では、故人アカウント管理連絡先であっても、
- 故人が購入した映画
- 音楽
- ブック
- サブスクリプション
- iCloudキーチェーンに保存した支払情報
- パスワード
- パスキー
などにはアクセスできません。
「故人アカウント管理連絡先になればApple内のすべてが見られる」という制度ではありません。
管理連絡先が設定されていなくてもAppleへ申請できる場合がある
故人アカウント管理連絡先が設定されていなくても、Appleでは故人のアカウントへのアクセスまたは削除について申請できる制度を用意しています。
法的書類の提出と審査が必要になる場合があります。
家族がパスワードを推測してログインするのではなく、Appleの正式な故人アカウント手続きを利用します。
故人のiPhoneのパスコードをAppleに解除してもらえる?
Appleは、パスコードでロックされたiPhone等について、端末内のデータを保持したままパスコードを解除することはできないと案内しています。
故人の端末を家族が再利用する場合も、必要な手続きを済ませた後に端末を消去・復元することになります。
そのため、端末内だけに重要なデータがある可能性がある場合は、安易に初期化しないよう注意してください。
Googleアカウントはどうする?
Googleアカウントには、
- Gmail
- Googleフォト
- Googleドライブ
- YouTube
- その他Googleサービス
のデータが残っている場合があります。
Googleは故人のアカウントについて、専用のリクエスト手続きを用意しています。
Googleで遺族が申請できること
Googleの公式手続きでは、主に、
- 故人のGoogleアカウントを閉鎖する
- 故人のアカウントに関連する資金について申請する
- 故人のアカウントからデータを取得する申請を行う
という選択肢があります。
申請内容はGoogleによって審査されます。
Googleは故人のパスワードを家族へ教えない
Googleは、故人のアカウントについて家族や代理人と対応する場合でも、パスワードやその他のログイン情報は提供しないと明示しています。
データが必要な場合も、故人として通常ログインするのではなく、専用の手続きから申請します。
Googleのアカウント無効化管理ツール
故人が生前に「アカウント無効化管理ツール」を設定している場合があります。
この機能では、一定期間Googleアカウントが利用されなかった場合に、あらかじめ指定した人へ通知したり、一部のアカウントデータを共有したりできます。
共有先は最大10人まで指定できます。
本人がどのデータを共有するか事前に設定します。
Facebookは削除するか追悼アカウントにするか選べる
Facebookには、故人のプロフィールを「追悼アカウント」として残す仕組みがあります。
追悼アカウントでは、故人の名前の横に追悼を示す表示が付き、本人が生前に共有した投稿・写真などは、それまで設定されていた公開範囲で残ります。
追悼アカウントには誰もログインできない
Facebookでは、追悼アカウントになった後は誰も故人としてログインできません。
生前にレガシーコンタクトを指定していた場合、その人が一部管理を行えます。
レガシーコンタクトにもできないことがある
Facebookのレガシーコンタクトは、
- 固定投稿
- 新しい友達リクエストへの対応
- プロフィール写真・カバー写真の変更
などを行える場合があります。
一方、
- 故人としてログインする
- 過去の投稿を編集する
- メッセージを読む
ことなどはできません。
Facebookアカウントを完全に削除する選択肢もある
遺族は所定の手続きから、故人のFacebookアカウントの削除を申請できます。
写真・投稿などを残したい家族がいる場合もあるため、削除前に家族の意向を確認してください。
Instagramなど他のSNSもサービスごとに確認する
SNSごとに死亡時のアカウント手続きは異なります。
「SNSは全部同じ会社へまとめて申請できる」という仕組みではありません。
使用していたSNSを洗い出し、それぞれの公式ヘルプで、
- 追悼
- 削除
- データ取得
などの制度を確認します。
ネット銀行・証券口座はアカウントを削除しない
デジタル遺品整理の中で最も注意したいのが、財産が入っているアカウントです。
ネット銀行、証券会社、コード決済、暗号資産などは、単なるWebサービスではありません。
残高が相続財産になる可能性があります。
契約を見つけたからといって、相続手続きをせずアカウントを削除しないでください。
ネット銀行がどこか分からない場合
通帳が存在しないネット銀行では、家族が口座の存在に気付きにくいことがあります。
国民生活センターにも、故人のスマートフォンを開けず、利用していたネット銀行が分からないという相談例があります。
次のようなものから手掛かりを探します。
- スマホの銀行アプリ
- メール
- 郵便物
- 他行からの振込履歴
- クレジットカード等の引落口座
銀行が分かったら、通常ログインを試すのではなく、各金融機関の相続窓口へ連絡します。
銀行については死亡後の銀行口座はどうなる?凍結・払戻し・相続手続きも確認してください。
コード決済や電子マネーにも残高がないか確認する
スマートフォンにはコード決済・電子マネーの残高が残っている場合があります。
死亡時の返金・相続手続きはサービスごとに異なります。
アプリを削除しただけで手続きが完了するわけではありません。
残高を確認し、運営事業者の死亡時手続きを調べます。
暗号資産も「アプリを削除」で終わらせない
暗号資産交換業者の口座やウォレットなどに資産が残っている場合があります。
アプリを削除しても資産そのものがなくなるとは限りません。
利用していた交換業者等が分かった場合は、相続手続きを確認してください。
パスワードや秘密鍵の取扱いが分からない場合は、不用意な操作を避けます。
メールアカウントは最後まで重要な手掛かりになる
メールには、
- サービス登録通知
- 月額料金の請求
- 購入履歴
- 金融機関からの通知
- 保険や契約関係の通知
などが残っていることがあります。
メールアカウントの削除を先に行うと、他の契約を探す手掛かりまで失う可能性があります。
必要な契約確認が終わるまで、メールアカウントの削除を急がない方がよいでしょう。
通販アカウントも注文・残高を確認する
Amazonなどの通販サイトには、
- 未発送の注文
- 定期購入
- ギフト残高
- ポイント
- 有料会員契約
などが残っている場合があります。
削除前に各サービスの死亡時・相続時対応を確認します。
仕事用アカウントやドメインにも注意
個人事業や会社経営をしていた場合は、
- 会社メール
- Webサイト
- ドメイン
- サーバー
- 広告アカウント
- SNSページ
- クラウド会計
などが事業継続に必要な場合があります。
私的なアカウントと同じ感覚で削除せず、会社・事業関係者へ確認してください。
デジタルアカウントを整理する順番
実務上は次の順で進めると整理しやすくなります。
- スマホ・パソコンを保全する
- 携帯番号をすぐ解約しない
- 契約・アカウントを一覧化する
- 財産性のあるサービスを分ける
- 残したい写真・データを確認する
- 継続課金サービスを特定する
- 各サービスの死亡時手続きを確認する
- サブスクを解約する
- SNSの追悼・削除を判断する
- 必要な手続き完了後に不要アカウントを削除する
- 最後にスマホ・パソコンの初期化・処分を検討する
アカウント管理表を作る
| 項目 | 記録内容 |
|---|---|
| サービス名 | Apple、Google、Netflix等 |
| 分類 | 財産・課金・データ・SNS等 |
| 登録メール | 分かる範囲で記録 |
| 登録電話番号 | SMS認証確認用 |
| 支払方法 | 銀行・カード・携帯料金等 |
| 対応 | 相続・保存・解約・削除・追悼 |
| 進捗 | 未確認・申請中・完了 |
パスワードそのものを家族共有の一般的なオンライン表へ書く必要はありません。
セキュリティにも配慮して管理します。
サブスクを探すチェックリスト
- □ クレジットカード明細を確認した
- □ 銀行口座の定期引落しを確認した
- □ 携帯電話のまとめ払いを確認した
- □ Apple関連の課金を確認した
- □ Google関連の課金を確認した
- □ 動画配信を確認した
- □ 音楽配信を確認した
- □ クラウドストレージを確認した
- □ セキュリティソフトを確認した
- □ 定期購入・通販を確認した
- □ 新聞・雑誌等を確認した
デジタル遺品整理のチェックリスト
- □ スマホを初期化していない
- □ パソコンを処分していない
- □ 携帯番号を解約する前に必要性を確認した
- □ ネット銀行・証券等を確認した
- □ コード決済・電子マネーを確認した
- □ 暗号資産を確認した
- □ Apple Accountを確認した
- □ Googleアカウントを確認した
- □ メールを確認した
- □ SNSを確認した
- □ サブスクを確認した
- □ 通販・定期購入を確認した
- □ 必要な写真・データの保存方法を確認した
- □ 各社の死亡時専用手続きを利用した
- □ 相続財産がないことを確認してから不要アカウントを削除した
よくある質問
亡くなった人のデジタルアカウントは全部削除した方がいいですか?
先に削除しない方がよいものがあります。ネット銀行、証券、コード決済などには相続財産が残っている可能性があります。また、クラウドには必要な写真やファイルが残っている場合があります。
故人のスマホはすぐ解約してもいいですか?
電話番号がSMS認証や各種契約の連絡先になっている可能性があります。番号を残す必要性と端末内の情報を確認してから解約してください。
AppleのiCloud写真を遺族が取り出せますか?
故人アカウント管理連絡先が設定されていた場合など、Appleの正式な手続きによって一部データへのアクセスを申請できる場合があります。アクセスキーや死亡を確認する書類等が必要です。
Appleの故人アカウント管理連絡先ならパスワードも見られますか?
すべて見られるわけではありません。iCloudキーチェーン内のパスワード、パスキー、支払情報などはアクセス対象外です。
Googleは故人のGmailパスワードを家族へ教えてくれますか?
Googleは故人のアカウントについて、パスワードやその他のログイン情報を提供しないと案内しています。専用フォームからデータ取得やアカウント閉鎖等を申請します。
Facebookは死亡後も残せますか?
追悼アカウントとして残すことができます。完全削除を申請する選択肢もあります。
故人のFacebookに家族がログインできますか?
追悼アカウントになった後は誰も故人としてログインできません。レガシーコンタクトにも権限の制限があります。
サブスクはクレジットカードを解約すれば止まりますか?
カードを止めることとサブスク契約の解約は別です。サービス事業者へ正式な解約手続きを行ってください。
ID・パスワードが分からなくてもNetflixを解約できますか?
Netflixでは、故人の登録メールアドレスまたは電話番号と支払情報等を用意し、家族等が問い合わせてキャンセルする方法を案内しています。
ネット銀行のアプリを削除してもいいですか?
相続手続きが終わる前に削除を急がない方がよいでしょう。アプリを消しても預金がなくなるわけではなく、口座は相続財産として銀行の相続手続きが必要です。
死亡後のデジタルアカウントは「削除」より先に「分類」する
デジタル遺品整理というと、故人のアカウントを削除していく作業をイメージしやすいかもしれません。
しかし、実際には削除が最初ではありません。
まず、
- 相続する財産なのか
- 料金が発生している契約なのか
- 家族に残したいデータなのか
- 追悼または削除するSNSなのか
を分けます。
その後、各サービスが用意している死亡時の正式な手続きを使い、財産の相続、データ保存、サブスク解約、SNSの追悼・削除を進めます。
スマホやメールには他の財産・契約を見つける手掛かりが残っているため、必要な確認が終わる前に端末や主要アカウントを消さないことが特に重要です。
死亡後に行う手続き全体については、親が亡くなった後の手続きもあわせて確認してください。