実家を売ることが決まり、複数の不動産会社へ査定を頼むと、次に迷うのが「結局どの会社へ任せればよいのか」です。
大手だから安心、地元だから実家に強い、一番高い査定額を出したから高く売れる、と単純に決めることはできません。
実家売却で確認したいのは、その実家と近い条件の物件を売った経験があるか、査定額の根拠を説明できるか、誰にどう売る予定なのか、そして実際に担当する人が売却をきちんと進められるかです。
相続した実家や長期間の空き家では、通常の中古住宅売却だけでなく、残置物、老朽化、古家付き土地、相続登記、境界、遠方対応などが関係することもあります。
会社名や査定額だけではなく、実家そのものに対して各社がどのような販売方法を提案するかを比較してください。
実家売却の不動産会社は7項目で比較する
- 実家周辺で似た物件を売却した実績
- 査定額の根拠
- 想定している買主と販売方法
- 中古戸建・古家付き土地・買取を比較できるか
- 相続・空き家・残置物などへの対応
- 担当者の説明と連絡
- 媒介契約後の販売活動を確認できるか
複数社へ査定を頼んだ場合は、この7項目について同じ質問をすると比較しやすくなります。
1.実家と近い条件の売却実績を見る
「不動産売却に強い会社」といっても、得意な物件は会社・店舗によって違います。
実家が郊外の築40年木造戸建てなら、都心マンションを多数扱っている実績だけでは判断できません。
確認したいのは、次のような実家に近い条件の取引経験です。
- 同じ市区町村や近隣エリア
- 戸建て
- 近い築年数
- 近い土地面積
- 古家付き土地
- 相続不動産
- 空き家
- 再建築条件など個別事情がある土地
「この地域に詳しいです」という説明だけでなく、「最近この周辺でどのような物件を売ったか」「どんな買主が多いか」まで聞くと、具体的な販売経験が見えやすくなります。
大手と地元の不動産会社、どちらがいい?
実家売却では、大手と地域密着型のどちらが常に有利というものではありません。
| 比較 | 大手不動産会社 | 地域密着型 |
|---|---|---|
| 営業エリア | 広域・複数拠点を持つ会社が多い | 特定地域に集中する会社が多い |
| 販売網 | 自社顧客・ウェブ集客などを広く持つ場合がある | 地域内の購入需要や地元業者との関係に詳しい場合がある |
| 地方・郊外 | 店舗・営業エリア外の場合もある | 地域によっては強みになる |
| 担当者 | 支店・担当者によって経験が異なる | 会社・担当者によって経験が異なる |
「大手なら高く売れる」「地元会社なら地域に詳しい」と会社の種類だけで決めないことが重要です。
実際にその実家を担当する店舗・担当者の販売実績と提案内容を比較してください。
2.査定額ではなく「なぜその価格なのか」を聞く
複数の不動産会社へ査定を頼むと、査定額が数百万円単位で違うことがあります。
このとき、一番高い数字を出した会社を自動的に選ばないようにします。
宅地建物取引業法では、宅地建物取引業者が媒介する物件の価額について意見を述べるときは、その根拠を明らかにしなければならないとされています。
査定額を比較するときは、各社へ次の内容を聞きます。
- どの成約事例を参考にしたか
- 土地をいくらと評価したか
- 建物をいくらと評価したか
- 実家のプラス要因・マイナス要因
- 査定額と売出価格は同じか
- どの程度の期間で売れる想定か
- 値下げする場合の判断基準
「この価格なら売れます」と言うだけで、根拠となる成約事例や販売方法を説明できない場合は、さらに理由を確認してください。
査定額と売出価格と成約価格は同じではない
不動産会社から提示される査定額は、買主がその金額で購入すると保証した価格ではありません。
実際の売却では、査定結果を参考に売主と不動産会社が売出価格を決め、購入希望者との交渉を経て成約価格が決まります。
| 価格 | 意味 |
|---|---|
| 査定価格 | 不動産会社が根拠を基に示す売却価格の見込み |
| 売出価格 | 実際に市場へ公開する価格 |
| 成約価格 | 買主との売買契約で最終的に決まった価格 |
高い査定額を提示して媒介契約を取り、その後に値下げを繰り返すような進め方にならないかを見るためにも、最初に「その価格でどう売るのか」を確認します。
3.「誰に売るつもりか」を聞く
売却実績だけでなく、今回の実家についてどのような買主を想定しているか聞いてみてください。
- そのまま住みたい中古住宅購入者
- リフォーム前提の購入者
- 土地として新築したい人
- 不動産会社・買取再販会社
- 投資・賃貸利用を検討する事業者
同じ実家でも、想定する買主によって販売方法が変わります。
築年数が古いという理由だけで「建物に価値がないので解体しましょう」と決めるのではなく、中古住宅、古家付き土地、そのまま買取など複数案を比較できるか確認します。
4.仲介と自社買取を分けて説明してもらう
不動産会社によっては、仲介だけでなく自社買取も扱っています。
ただし、「査定」という言葉でも、仲介査定と買取価格では意味が違います。
| 比較 | 仲介 | 買取 |
|---|---|---|
| 買主 | 一般の個人・法人等を探す | 不動産会社等が直接購入 |
| 価格 | 市場での成約を目指す | 再販売費用等も踏まえた買取価格 |
| 期間 | 買主が見つかるまで変動 | 条件が合えば比較的短く進めやすい |
| 家財・修繕 | 契約条件に応じて売主対応が必要 | 会社によって残置物等へ対応する場合がある |
自社買取を勧められたら、「なぜ仲介ではなく買取が適しているのか」を聞きます。
早期売却、大量の家財、建物の劣化など具体的な理由があるのか、仲介で売った場合との価格・期間・費用差まで比較してください。
5.相続・空き家・家財への対応範囲を見る
実家の売却では、通常の自宅売却より確認事項が増えることがあります。
- 相続登記がまだ終わっていない
- 兄弟姉妹で共有している
- 親名義のままになっている
- 家財・遺品が大量にある
- 長期間空き家になっている
- 建物がかなり古い
- 境界が分からない
- 隣地へ庭木等が越境している
- 遠方で頻繁に現地へ行けない
不動産会社がすべてを直接解決できる必要はありません。
重要なのは、「これは司法書士へ確認する」「これは税理士の判断が必要」「家財は一般廃棄物として適切な方法で処理する」といったように、自社で対応できる範囲と専門家へつなぐ範囲を正しく分けて説明できることです。
「相続専門」「空き家専門」という名称だけではなく、実際に何を支援できるかを聞いてください。
6.会社だけでなく担当者を見る
同じ不動産会社でも、実際の売却は担当者によって進め方が変わります。
査定時には、次のような点を確認します。
- 質問への回答が具体的か
- 分からないことを無理に断定しないか
- デメリットも説明するか
- 査定額の根拠を説明できるか
- 売却スケジュールが具体的か
- 値下げの判断基準を説明できるか
- 連絡手段・頻度が自分に合うか
- 遠方所有者への対応方法が明確か
「担当者の感じがよい」だけでなく、売却戦略について質問したときに具体的な説明が返ってくるかを見ることが重要です。
遠方の実家なら現地対応をどこまで任せられるか聞く
実家が遠方にある場合は、価格だけでなく、売却するまで何回現地へ行く必要があるかも比較します。
- 訪問査定で本人の立会いが必要か
- 鍵を預けられるか
- 購入希望者の内覧対応を任せられるか
- オンラインで打ち合わせできるか
- 郵送・電子手続きに対応できるか
- 家財処分・測量・解体などの立会いをどうするか
- 売却活動をどのように報告するか
数十万円高く売れる可能性があっても、毎回遠方から往復しなければならない会社では負担が大きくなる場合があります。
売却価格だけでなく、現地へ行く時間・交通費も含めて比較してください。
7.不動産会社の免許情報を確認する
売却を任せようとしている会社については、国土交通省の「宅地建物取引業者検索」で免許情報を確認できます。
国土交通大臣免許と都道府県知事免許の宅地建物取引業者が掲載されています。
会社名が似ている場合などにも、公的な登録情報と照合できます。
行政処分情報も公的サイトで確認できる
国土交通省の「ネガティブ情報等検索サイト」では、宅地建物取引業者について最近5年分の行政処分等を検索できます。
公開対象には、免許取消、業務停止、指示があります。
ただし、過去の行政処分があるという一点だけで、現在の会社・担当者のサービス品質を機械的に断定するものではありません。
処分の時期や内容を確認し、会社選びの判断材料の一つとして利用します。
媒介契約は3種類ある
仲介を依頼する会社が決まったら、不動産会社と媒介契約を結びます。
売買の媒介契約には主に3種類があります。
| 媒介契約 | 複数社への依頼 | 自分で見つけた買主 | REINS | 業務報告 |
|---|---|---|---|---|
| 一般媒介 | 可能 | 可能 | 法律上の登録義務なし | 法律上の定期報告義務なし |
| 専任媒介 | 原則1社 | 可能 | 登録義務あり | 2週間に1回以上 |
| 専属専任媒介 | 1社 | 原則として媒介業者を通す | 登録義務あり | 1週間に1回以上 |
どの契約が常に有利というものではありません。
複数社に競って販売してもらいたいのか、一社へ販売戦略を集中して任せたいのか、物件の需要や自分の管理負担も含めて選びます。
一般媒介でも契約内容によりREINSへ登録することはできます。契約時に登録の有無を確認してください。
専任媒介・専属専任媒介ではREINS登録を確認する
REINS(レインズ)は、不動産会社間で売却物件等の情報を共有する指定流通機構のシステムです。
専任媒介・専属専任媒介にはREINSへの登録義務があります。
東日本不動産流通機構の案内では、休業日・システム休止日などを除き、専属専任媒介は媒介契約締結日の翌日から5日以内、専任媒介は翌日から7日以内に登録することになっています。
登録後は、不動産会社から売主へ登録証明書が交付されます。
証明書を受け取ったら保管しておきましょう。
2025年から売主がREINSの取引状況を確認しやすくなった
2025年1月から、宅地建物取引業者にはREINSへの物件の取引状況の登録が義務付けられています。
売主は、登録証明書に記載された情報を使い、売主専用画面から自分の物件の状況を確認できます。
確認できる取引状況は、主に次の3区分です。
- 公開中
- 書面による購入申込みあり
- 売主都合で一時停止中
2025年1月以降は、登録証明書に売主専用画面へアクセスしやすい二次元コードも掲載されています。
専任系の媒介契約を結んだら、「不動産会社に任せたから終わり」ではなく、自分でも登録状況・取引状況を確認するとよいでしょう。
「囲い込み」が心配なら何を確認する?
不動産売却では、売主から媒介を受けた会社が他社からの購入希望者の紹介を適切に受け入れず、自社側の取引を優先するいわゆる「囲い込み」が問題として語られることがあります。
ただし、「専任媒介だから囲い込みされる」「大手だから囲い込みする」と会社種別だけで決めつけることはできません。
売主側でできる確認としては、次の方法があります。
- REINS登録証明書を受け取る
- 売主専用画面で公開状況を確認する
- 販売開始後の問い合わせ件数を聞く
- 内覧件数・購入申込みを報告してもらう
- 他社から問い合わせがあった場合の対応を契約前に聞く
- 反響がない場合に販売方法をどう変更するか確認する
2025年から取引状況の登録が義務化されたことも、売主自身が販売状況を確認するための仕組みの一つです。
不動産会社に聞いておきたい10の質問
- この地域で似た戸建てを最近売った実績はありますか?
- この査定額の根拠となった成約事例は何ですか?
- 最初の売出価格はいくらを考えていますか?
- どのような買主を想定していますか?
- 何か月程度での売却を想定していますか?
- 売れない場合、いつどのように価格を見直しますか?
- 中古戸建・古家付き土地・買取のどれを提案しますか?
- 家財が残っている場合はどう進めますか?
- 遠方に住んでいても売却できますか?
- 媒介契約後、どのように販売状況を報告してくれますか?
同じ質問を複数社へすると、会社・担当者ごとの違いが見えやすくなります。
こんな説明は追加確認した方がいい
- 他社より高いが査定根拠の説明がない
- 「絶対にこの価格で売れる」と断定する
- 古いからという理由だけで解体を急がせる
- 仲介との比較なしに自社買取だけを勧める
- 媒介契約の違いを説明しない
- REINS登録について質問しても説明が曖昧
- 売却活動・問い合わせ状況を報告しない
- 相続や税務について専門外なのに断定する
一つ該当しただけで不適切な会社と決まるわけではありませんが、重要な条件を曖昧にしたまま媒介契約を結ばないようにします。
不動産会社は何社比較する?
法律で決められた社数はありません。
初めて実家を売る場合は、2〜3社程度を同じ条件で比較すると、査定額・販売戦略・担当者の違いを把握しやすくなります。
これは公的な必須社数ではなく、比較と連絡負担のバランスを取りやすい実務上の目安です。
地元会社と大手の両方が候補に出るなら、会社規模の異なる候補を含めて提案を比べる方法もあります。
一括査定を利用する場合も、表示された上限社数すべてへ依頼する必要はありません。
契約後も不動産会社を任せきりにしない
不動産会社選びは、媒介契約を結んだ時点で終わりではありません。
販売開始後は次の数字・情報を定期的に確認します。
- ポータルサイト等への掲載状況
- 不動産会社からの問い合わせ
- 一般購入者からの反響
- 内覧件数
- 購入申込み
- 購入者から指摘されている問題
- 値下げ提案の理由
「3か月売れなかったから自動的に値下げ」ではなく、反響が少ない原因が価格なのか、広告なのか、物件条件なのかを確認して販売方法を見直します。
実家売却の不動産会社選びチェックリスト
- 実家周辺の戸建て・土地売却実績を聞いた
- 査定額の根拠を説明してもらった
- 査定額と売出価格を分けて確認した
- 想定する買主を聞いた
- 売却期間の見込みを聞いた
- 中古戸建・古家付き土地を比較した
- 仲介と買取を分けて比較した
- 家財・空き家・相続への対応範囲を確認した
- 遠方所有者への対応を確認した
- 担当者へ同じ質問をして比較した
- 宅建業者の免許情報を確認した
- 必要に応じて行政処分情報も確認した
- 媒介契約3種類の違いを確認した
- REINS登録の有無を確認した
- 専任系なら登録証明書を受け取った
- 売却活動の報告方法を確認した
よくある質問
実家売却は大手と地元の不動産会社のどちらがいいですか?
一律には決まりません。会社規模より、実家周辺で似た戸建て・土地の売却経験があるか、今回の実家について具体的な販売方法を説明できるかを比較してください。
査定額が一番高い会社へ任せればいいですか?
査定額だけでは決められません。不動産会社が価格について意見を述べる場合には根拠を明らかにする義務があります。成約事例、売出価格、想定売却期間などを確認してください。
実家売却に強い会社はどう見分けますか?
「実家専門」「空き家専門」という名称より、同じ地域・同じような築年や土地条件の成約経験、残置物・相続・古家付き土地への具体的な対応内容を確認します。
仲介と買取の両方を扱う会社の方がいいですか?
両方比較できることは判断材料になりますが、自社買取があるだけで優れているとは限りません。仲介で売った場合の価格・期間と、買取価格・条件を分けて提示してもらいます。
一般媒介と専任媒介のどちらがいいですか?
物件と売却方針によります。一般媒介は複数社へ依頼でき、専任媒介は原則1社へ任せます。専任媒介ではREINS登録や定期的な業務報告の義務があります。会社数だけでなく販売戦略と管理負担で選びます。
REINSに登録されたか売主が確認できますか?
専任・専属専任媒介で登録された場合、不動産会社から登録証明書が交付されます。記載された情報を使って売主専用画面へアクセスし、物件の公開・申込み等の取引状況を確認できます。
不動産会社の免許はどこで確認できますか?
国土交通省の宅地建物取引業者検索で、国土交通大臣または都道府県知事が免許した宅地建物取引業者を確認できます。
過去の行政処分も調べられますか?
国土交通省のネガティブ情報等検索サイトでは、最近5年分の免許取消・業務停止・指示などを確認できます。一部の自治体は各自治体サイトで公開しています。
不動産会社選びは「最高査定額」ではなく「どう売るか」で決める
実家売却を任せる会社を選ぶとき、最も高い査定額や会社の知名度だけでは判断できません。
実家と近い物件の成約実績、査定額の根拠、想定する買主、販売方法、売却期間、空き家・残置物・相続への対応を複数社で比べます。
会社だけでなく担当者の説明内容も重要です。
媒介契約を結んだ後は、専任系であればREINSの登録証明書を受け取り、売主専用画面も利用しながら販売状況を確認します。
まだ実家を売る・残すという全体の方針から整理している場合は、実家じまいの進め方もあわせて確認してください。
参考にした公的情報
- 国土交通省「不動産取引に関するお知らせ」
- 国土交通省「レインズの機能強化について、物件の売主向けのリーフレットを作成しました」
- 国土交通省「宅地建物取引業者検索」
- 国土交通省「ネガティブ情報等検索サイト」
- 東日本不動産流通機構「よくあるご質問」
- e-Gov法令検索「宅地建物取引業法」