親が長年住んでいた実家を売ろうとしたとき、「築40年だから建物にはもう価値がない」「古い家は先に壊した方が売れる」と言われることがあります。
しかし、築年数だけで売り方を決める必要はありません。
築年数が古くても、建物の状態、修繕履歴、立地、土地の条件、買主の需要によっては中古戸建として売れる場合があります。
反対に、建物を住宅として利用するのが難しくても、古家付き土地として建物を残したまま売る、解体して更地にする、不動産会社へ直接買い取ってもらうといった方法があります。
築古の実家では、「古いから何かする」のではなく、まず現在の状態で査定し、中古戸建・古家付き土地・更地・買取の条件を比較してから必要な作業を決めることが重要です。
築古の実家を売る4つの主な方法
| 売り方 | 向いている可能性がある実家 | 特徴 |
|---|---|---|
| 中古戸建として売る | 建物をまだ利用できる | 土地だけでなく建物の状態・維持管理も評価材料になる |
| 古家付き土地として売る | 建物価値を大きく見込みにくい | 建物を残したまま主に土地として販売する |
| 解体して更地で売る | 建物利用の可能性が低く、更地需要がある | 売主が先に解体費を負担する |
| 不動産会社等へ直接買取 | 早く売りたい、築古・残置物等の負担が大きい | 一般の買主を探さず直接売却する |
どれが適しているかは、築年数だけでは判断できません。
同じ築45年でも、定期的に修繕されて現在も居住可能な住宅と、長期間空き家で雨漏りや腐食が進んだ住宅では売り方が変わります。
「築古だから建物価値ゼロ」とは限らない
古い木造住宅について、「築20年を超えたから建物価格はゼロ」と説明されることがあります。
築年数が進むほど一般に建物評価が下がりやすいこと自体はありますが、一定の築年数を超えた瞬間に、すべての住宅の市場価値が一律ゼロになるわけではありません。
国土交通省も、既存戸建住宅が築後20〜25年程度で一律に価値ゼロとされる取引慣行を課題として挙げ、建物の性能やリフォーム状況などを価格評価へ反映する環境整備を進めています。
実際の査定では、築年数だけでなく次のような要素も確認されます。
- 建物の構造
- 現在の劣化状態
- 屋根・外壁などの維持管理
- 水回りの更新
- 耐震改修
- 増改築・リフォーム履歴
- 雨漏り・シロアリ等の有無
- 建築当時の仕様
「築年数が古い=土地だけの価格」と決める前に、建物を含めた査定を受けてください。
築30年・40年・50年でも売却できる?
築30年、40年、50年以上というだけで、不動産を売却できなくなるわけではありません。
ただし、築年数が進むほど建物の状態や耐震性、設備、修繕履歴が買主の判断材料になりやすくなります。
築古住宅では、「建物付きで買いたい人」と「建物は不要で土地を買いたい人」の両方を検討することがポイントです。
そのため、不動産会社へ査定を依頼するときも、単に「いくらですか」と聞くのではなく、次のように確認します。
- 中古戸建として販売できるか
- 建物をどの程度評価しているか
- 古家付き土地ならいくらか
- 更地にした場合はいくらを想定するか
- 直接買取ならいくらか
方法1.現在の建物を中古戸建として売る
築古でも、建物を利用できる状態なら中古戸建として販売できます。
売主が先に解体費や大規模リフォーム費を負担する必要がなく、既存の建物を活用したい買主も対象になります。
特に次のような住宅では、まず中古戸建としての評価を確認する価値があります。
- 現在まで人が居住していた
- 屋根・外壁等を定期的に修繕している
- 水回り等を更新している
- 耐震改修を行っている
- 構造・間取りに特徴がある
- リノベーション需要がある地域
建物を利用できる可能性があるのに、査定前から「古いので土地としてしか売れない」と決めないことが重要です。
方法2.古家付き土地として売る
建物の利用価値を大きく見込みにくい場合は、建物を残したまま古家付き土地として販売する方法があります。
この方法では、売主が売却前に解体費を支払わずに済みます。
買主は購入後に、建物を残して利用する、リノベーションする、解体するという選択ができます。
一方、買主が解体を予定している場合には、解体費を考慮して価格交渉される可能性があります。
古家付き土地で売る場合も、「建物は0円、土地だけ」と機械的に考えるのではなく、不動産会社に販売方法と査定根拠を確認します。
方法3.建物を解体して更地で売る
建物の劣化が激しく、住宅として利用する買主を見込みにくい場合は、更地にして販売する方法があります。
更地になれば、新築住宅を建てたい買主にとって建物解体の手間がなくなります。
しかし、築古だからといって査定前に解体する必要はありません。
- 売却前に解体費を支払う必要がある
- 解体費以上に売却価格が上がるとは限らない
- 既存建物を利用したい買主を失う
- 住宅を取り壊すことで土地の固定資産税の住宅用地特例へ影響する場合がある
- 接道等の条件によっては建替えに制約がある
解体を考えるなら、先に次の3つをそろえます。
- 古家付きの現況査定
- 更地にした場合の想定査定
- 実際の解体見積もり
この3つを比較してから、解体に費用を使う価値があるか判断します。
方法4.不動産会社等へ直接買い取ってもらう
一般の買主を探すのではなく、不動産会社や買取事業者へ直接売却する方法もあります。
購入後にリフォーム・解体・再販売することを前提に、築古住宅を扱う会社があります。
次のような実家では買取も比較対象になります。
- 売却時期を決めたい
- 建物の老朽化が進んでいる
- 大量の家財が残っている
- 遠方で内覧対応が難しい
- 仲介で一定期間売れなかった
- 一般市場では売りにくい条件がある
ただし、買取価格について「市場価格の○割」と全国一律に考えることはできません。
地域、土地、建物状態、解体・修繕、再販売費用などによって変わるため、実際の買取査定を複数確認します。
旧耐震の実家でも売れる?
1981年6月の耐震基準改正より前の住宅では、耐震性が売却時の論点になることがあります。
国の制度では、1981年5月31日以前に新築工事へ着手した住宅を、旧耐震基準で建築された住宅として扱う場面があります。
ただし、「1981年以前の家だから売れない」という意味ではありません。
耐震診断で安全性を確認している住宅や、耐震改修を実施している住宅もあります。
築年だけで判断せず、確認済証・検査済証、登記事項、耐震診断、改修履歴等を確認します。
旧耐震の住宅を中古戸建として販売する場合は、買主が耐震性を重視する可能性があるため、不動産会社と販売方法を相談してください。
インスペクションをしてから売るべき?
築古住宅では、建物状況調査(インスペクション)を利用する方法があります。
国の制度上の建物状況調査は、所定の講習を修了した建築士が、国の基準に従って既存住宅の状態を調査するものです。
売主が必ず調査を実施しなければならない制度ではありません。
一方、宅地建物取引業者には、中古住宅の媒介契約時に建物状況調査を実施する者のあっせんに関する事項を説明・書面化するなどの義務があります。
築古住宅では、建物状態を把握することで買主へ説明しやすくなる場合があります。
ただし、インスペクションを実施すればすべての不具合が判明する、売却価格が必ず上がる、というものではありません。
中古戸建として販売するのか、土地として販売するのかを確認し、必要性を不動産会社と検討します。
査定前にリフォームする必要はない
古い実家を少しでも高く売ろうとして、査定前にキッチン・浴室・外壁などを大規模にリフォームする必要はありません。
リフォームへ300万円かけても、売却価格が300万円以上上がるとは限らないためです。
まず現状の査定を受け、次の条件を比較します。
- 現状のまま中古戸建として売る場合
- 最低限の修繕だけ行う場合
- 古家付き土地として売る場合
- 直接買取の場合
修繕費をかける価値があるかを、査定後に判断してください。
査定前に集めたい築古住宅の資料
古い実家では、建物について分かる資料が残っていると査定や買主への説明に役立つ場合があります。
- 購入時の売買契約書
- 建築請負契約書
- 確認済証・検査済証
- 建築図面
- 測量図・境界資料
- リフォーム・増改築の契約書や領収書
- 耐震診断結果
- 耐震改修の資料
- 屋根・外壁等の修繕記録
- シロアリ防除等の記録
資料が見つからないから売却できないという意味ではありません。
分かる範囲で集め、残っていないものはその旨を不動産会社へ伝えます。
雨漏り・シロアリなどを隠さない
築古住宅では、雨漏り、シロアリ、傾き、設備故障などの不具合があることがあります。
売却価格を下げたくないからといって、売主が知っている不具合を隠して売却することは避けてください。
不具合がある場合でも、現況を前提とした価格で販売する、修繕する、土地として売る、買取へ回すなど複数の方法があります。
知っている情報を不動産会社へ伝えたうえで、契約条件を整理します。
相続した築古実家なら相続登記も確認する
親が亡くなって相続した実家なら、築年数だけでなく所有権の整理も必要です。
亡くなった親の名義のままでは、最終的に買主へ所有権を移転するために必要な相続登記を進める必要があります。
兄弟姉妹などで共有している場合、不動産全体を売るには原則として共有者全員の協力が必要です。
査定自体は相続手続きと並行して進められる場合がありますが、売却直前に権利関係で止まらないよう早めに確認しておきます。
相続した古い実家は3,000万円特別控除も確認する
相続した一定の空き家を売却する場合、被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の3,000万円特別控除を利用できる可能性があります。
2026年時点では、一定の条件を満たし2027年12月31日までに売却した場合が対象です。
対象となる家屋には、原則として1981年5月31日以前に建築されたことなどの要件があります。
2024年1月1日以後の一定の譲渡では、売却後、翌年2月15日までに耐震改修または建物の取壊しが行われる類型も特例対象となる可能性があります。
そのため、「税制のために売却前に必ず解体しなければならない」と判断しないようにしてください。
適用要件は多いため、対象になりそうな場合は売買条件を決める前に税務署や税理士等へ確認します。
築古の実家は何社に査定を頼む?
築古住宅では、不動産会社によって「中古戸建として売る」「土地として売る」「買取を提案する」と判断が分かれることがあります。
そのため、1社だけではなく複数社の提案を比較すると判断しやすくなります。
何社でなければならないという決まりはありませんが、初めてなら2〜3社程度から比較すると連絡負担を増やしすぎず、査定・販売方法の違いを確認しやすくなります。
これは公的に決められた社数ではなく実務上の目安です。
築古実家の査定で聞きたい質問
- 建物を中古住宅として販売できますか?
- 建物はいくら程度評価していますか?
- 古家付き土地にした場合の査定はいくらですか?
- 解体した場合、想定売却価格はいくらですか?
- この建物は旧耐震に該当しますか?
- 耐震診断やインスペクションは必要ですか?
- リフォームしてから売るメリットはありますか?
- 直接買取ならいくらですか?
- 想定している買主はどのような人ですか?
- この地域で築古戸建ての売却実績はありますか?
同じ質問を複数社へすると、査定価格だけでなく各社の販売戦略を比較できます。
築古実家を売却する流れ
- 土地・建物の所有者を確認する
- 相続・共有状態を整理する
- 建築時期・修繕・リフォーム履歴を確認する
- 重要書類・貴重品を確保する
- 家財を全部捨てず現状のまま査定する
- 中古戸建・古家付き土地・更地・買取を比較する
- 旧耐震等が問題になる場合は耐震性を確認する
- 必要に応じてインスペクションを検討する
- 必要な修繕・家財撤去・解体だけを行う
- 仲介または買取で売却する
- 売買契約・決済・引渡しを行う
- 確定申告の要否・税特例を確認する
築古実家で避けたい進め方
- 築年数だけで建物価値をゼロと決める
- 査定前に大規模リフォームをする
- 査定前に建物を解体する
- 旧耐震だから売却できないと決める
- インスペクションを必須だと思い込む
- 家財を全部捨ててから不動産会社へ相談する
- 1社だけの「土地としてしか売れない」という判断をそのまま受け入れる
- 知っている建物不具合を伝えない
よくある質問
築40年・50年の実家でも売れますか?
築年数だけで売却できなくなるわけではありません。建物を中古住宅として利用する、古家付き土地として売る、解体する、直接買取へ出すなど複数の方法があります。
古い家は築20年で建物価値がゼロになりますか?
一定の築年数を超えた住宅がすべて一律に市場価値ゼロになるわけではありません。建物状態、性能、維持管理、リフォーム等も評価材料になります。実際の査定根拠を不動産会社へ確認してください。
築古の実家は解体してから売った方がいいですか?
一律にはいえません。古家付きのままの査定、更地にした場合の想定査定、解体見積を比較してから判断します。先に解体すると元に戻せません。
旧耐震の家は売れませんか?
旧耐震に該当するだけで売却できなくなるわけではありません。耐震診断・改修履歴、建物状態、買主の利用方法などを確認し、中古戸建・土地・買取のどの方法が合うか検討します。
築古住宅はインスペクションが必須ですか?
売主が必ず実施するものではありません。中古住宅として販売するときに建物状態を把握する方法の一つです。物件状態と販売方法を踏まえて不動産会社と検討してください。
売る前にリフォームした方がいいですか?
査定前に大規模リフォームをする必要はありません。現況の査定を先に取り、修繕費をかけた場合に売却条件がどの程度変わるか確認してから判断します。
築古なら買取の方がいいですか?
必ずしもそうではありません。一般市場で中古住宅・古家付き土地として売れる物件もあります。仲介と買取を同じ物件状態で査定し、価格・期間・売主負担を比較してください。
築古の実家は「壊す前」に現在の価値を確認する
築年数の古い実家を売るとき、最初に行うことは解体やリフォームではありません。
所有者・建築時期・建物状態・修繕履歴を確認し、現在の状態で複数の不動産会社から査定を取ります。
そのうえで、中古戸建として残す、古家付き土地にする、更地にする、直接買い取ってもらうという選択肢を比較します。
築年数だけで建物価値を決めず、現在の建物と土地の両方を評価してもらったうえで、最終的な手取りと売却のしやすさから方法を選んでください。
実家を売る・残す・管理するところから整理したい場合は、実家じまいの進め方もあわせて確認してください。
参考にした公的情報
- 国土交通省「既存戸建住宅の評価に関する留意点」
- 不動産流通推進センター「既存住宅価格査定マニュアル」
- 国土交通省「建物状況調査(インスペクション)」
- 国土交通省「既存住宅状況調査技術者講習制度」
- 国税庁「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」