空き家となった実家を解体する方針が決まったら、次に行うのが解体工事の見積もりです。
ただ、解体工事の見積書は会社ごとに書き方が違い、
- 建物解体一式
- 木造解体○㎡
- 廃材処分費
- 付帯工事
- 諸経費
など、項目の分け方も統一されていません。
そのため、単純に「A社120万円、B社145万円だからA社」と総額だけで選ぶと、あとから、
- 基礎撤去は別だった
- 庭木が入っていなかった
- アスベスト調査費が別だった
- 家財処分が別料金だった
- 地中埋設物が見つかり追加になった
ということがあります。
空き家解体の見積もりでは、同じ条件で複数社へ依頼し、総額ではなく「何が含まれているか」を揃えて比較することが重要です。
解体見積もりを取る前に、本当に解体するか確認する
売却予定の実家なら、解体会社へ見積もりを依頼するのと並行して、不動産会社へ建物付きの状態でも査定を相談できます。
古い建物でも、
- 中古住宅として購入したい人がいる
- リフォーム前提で購入される
- 古家付き土地として売れる
- 不動産会社が現況のまま買い取る
可能性があります。
解体見積もりを取ることと、解体を契約することは別です。
売却が目的なら、先に、
建物付きで売った場合
と、
解体費を払って更地にした場合
の両方を比較してから発注します。
解体見積もりは何社に頼む?
国土交通省は、住宅の解体工事を依頼するときに、複数の事業者から見積もりを取ることを勧めています。
実務では、まず2〜3社程度へ同じ条件で現地見積もりを依頼すると比較しやすくなります。
1社だけでは、
- その金額が高いのか安いのか
- 一般的な工事項目が抜けていないか
- 付帯工事の考え方が他社と違うか
を判断しにくくなります。
一方、10社など非常に多くの会社へ現地調査を依頼すると、日程調整や電話対応の負担も増えます。
最初に候補をある程度絞り、その中から複数社を比較する方法が現実的です。
すべての会社へ同じ条件を伝える
相見積もりで重要なのは「同じ家を見てもらう」だけではありません。
解体する範囲も同じにします。
例えば、
- 母屋は全部解体
- 基礎も撤去
- 物置は撤去
- カーポートは撤去
- 道路側の塀は残す
- 庭木3本は撤去
- 庭石は残す
- 家具・家電は所有者側で処分
- 工事後は整地まで
という条件を各社へ伝えます。
A社は塀を撤去、B社は塀を残すという条件では、総額を比較しても意味がありません。
見積もり依頼前に準備しておく情報
分かる範囲で、次の情報を用意します。
- 実家の住所
- 木造・鉄骨造・RC造などの構造
- 延べ床面積
- 築年
- 建物図面
- 登記事項証明書
- 固定資産税の資料
- 現地写真
- 家財の残存状況
- 塀・物置・庭木等の状況
- 残したい物
すべて揃っていなくても見積もりは相談できます。
ただし、建物面積や構造が分かれば、業者側も現地調査前に状況を把握しやすくなります。
電話や写真だけの概算と、現地見積もりは分けて考える
最近は、住所・写真・建物面積を送るだけで概算を出す会社もあります。
概算見積もりは、
- 候補会社を絞る
- おおまかな予算を知る
目的には利用できます。
ただし、実際の費用は、
- 道路幅
- 重機が入れるか
- 隣家との距離
- 敷地の高低差
- 塀・庭木
- 残置物
- 基礎
などで変わります。
正式に契約する前には、現地調査を受けた見積書で確認した方が判断しやすくなります。
現地調査では何を見てもらう?
現地調査では、建物だけでなく敷地全体を確認してもらいます。
建物
- 構造
- 延べ床面積
- 階数
- 屋根
- 基礎
- 増築部分
道路・搬出経路
- 前面道路幅
- 大型車両が入れるか
- 重機を搬入できるか
- 交通量
- 道路から建物までの距離
周囲
- 隣家との距離
- 電線
- 塀
- 擁壁
- 境界付近
付帯物
- カーポート
- 物置
- 庭木
- 庭石
- ブロック塀
- フェンス
- 井戸
- 浄化槽
「家だけ見積もってください」ではなく、最終的に何を撤去して何を残すのかを確認してもらいます。
解体見積書で確認したい主な内訳
| 項目 | 確認する内容 |
|---|---|
| 仮設・養生 | 足場、養生シート、仮囲い等 |
| 建物本体 | 屋根、壁、柱、床等の解体 |
| 基礎 | 基礎撤去が含まれているか |
| 廃材処理 | 分別、積込み、運搬、処分 |
| 重機 | 重機使用・回送等 |
| 外構 | 塀、門、カーポート、フェンス等 |
| 庭 | 庭木、庭石、植栽等 |
| 残置物 | 家具・家電等の扱い |
| アスベスト | 事前調査、分析、除去等 |
| 整地 | 解体後をどの状態まで整えるか |
| 諸経費 | 届出、管理、事務費等の内容 |
| 消費税 | 総額が税込か |
「一式」と書かれていたらどうする?
見積書に「一式」という表記があるだけで、その会社が不適切とは言えません。
小さな項目をまとめて一式表示することもあります。
ただし、
「木造家屋解体工事 一式 150万円」
だけでは、
- 基礎
- 廃材処分
- 養生
- 整地
- 重機
などが含まれるのか分かりません。
大きな金額の「一式」がある場合は、何を含んでいるか質問します。
建物本体の単価だけで判断しない
A社の木造解体単価が1坪4万円、B社が1坪4万5,000円だったとしても、それだけでA社が安いとは判断できません。
例えばA社では、
- 基礎撤去
- 重機回送
- 廃材運搬
が別料金で、B社では含まれていることがあります。
比較するのは坪単価ではなく、必要な工事をすべて含めた見積総額です。
アスベスト事前調査費が見積もりに入っているか確認する
解体工事で特に確認したいのが石綿(アスベスト)です。
建築物等の解体・改修工事では、工事規模にかかわらず事前調査が必要です。
厚生労働省は、解体工事の発注者向けに、仮見積もりの段階で石綿事前調査費用が計上されているか確認するよう案内しています。
見積書では、
- 書面調査
- 現地調査
- 必要な分析調査
- 調査報告書
などの費用がどう扱われているか確認します。
「アスベストなし」が確定する前の見積もり
現地調査前や分析前には、アスベスト除去費を確定できない場合があります。
その場合は、
- 事前調査費だけ先に入っている
- 分析が必要なら別料金
- 石綿含有が確認された場合は再見積もり
といった形になります。
石綿が見つかる可能性を完全に無視した見積書ではなく、見つかった場合にどう金額を決めるのか確認しておきます。
80㎡未満でもアスベスト調査は必要
「80㎡以下ならアスベスト調査はいらない」という説明は正確ではありません。
解体・改修工事では規模にかかわらず事前調査が必要です。
建築物の解体部分が80㎡以上の場合は、事前調査結果の行政への報告対象となります。
80㎡は調査そのものの要否を分ける基準ではありません。
家財処分が見積もりに含まれているか確認する
実家の解体では、家の中に、
- 家具
- 家電
- 衣類
- 食器
- 本
- 布団
- 生活用品
などが残っていることがあります。
これらは建物を壊して発生する建設廃棄物とは扱いが異なります。
家庭から出る家具・家電等について、解体業者が処分を手配するという場合でも、実際に誰がどのルートで収集・処理するか確認します。
家財を自分で処分するか、依頼するかを揃える
A社では家財処分込み、B社では建物だけなら、総額は比較できません。
相見積もりの前に、
- 所有者側ですべて片付ける
- 一部だけ残す
- 処分も含めて見積もる
のどれにするか決めます。
見積もり後に追加費用が出る主なケース
解体工事では、現地調査を丁寧に行っても、工事開始後でなければ確認できないものがあります。
代表例は次のとおりです。
地中埋設物
- 古い建物の基礎
- コンクリート塊
- 浄化槽
- 井戸
- 廃材
アスベスト
調査・分析により含有建材が確認され、適切な除去作業が必要になった場合です。
想定以上の残置物
見積もり時より家具やごみが増えていた場合などです。
想定していなかった外構
地下基礎の大きな塀や、現地調査時に確認できなかった設備等がある場合です。
「追加費用ゼロ」の会社を探すより、追加時のルールを決める
地中は掘るまで完全には確認できません。
そのため、すべての追加費用が絶対に発生しないことを条件に業者を選ぶより、
- 追加対象が見つかったら写真を送る
- 追加作業の必要性を説明する
- 追加見積もりを提示する
- 所有者の承認を得る
- その後に作業する
という手順を確認する方が現実的です。
契約前に「何が追加費用になる可能性がありますか」と聞いておきます。
追加費用の条件は書面に残す
電話で、
「地中の物はそのとき相談します」
と言われただけでは、後から双方の認識が違う可能性があります。
少なくとも、
- 地中埋設物
- 石綿
- 追加の残置物
- 想定外の外構
などについて、どのような場合に追加となるのか、見積書・契約書・メール等で確認できる状態にします。
見積書の有効期限も確認する
見積書には有効期限が設定されている場合があります。
解体工事では、
- 処分費
- 燃料費
- 人件費
などが変動する可能性があります。
半年後・1年後に同じ金額で工事できるとは限りません。
比較する場合は、見積取得時期が大きくずれていないかも確認します。
解体見積もりは無料?
見積もりが無料かどうかは会社によって異なります。
問い合わせ時に、
- 現地調査は無料か
- 正式見積もりは無料か
- 遠方の場合に交通費がかかるか
- アスベスト調査は別料金か
を確認します。
「見積無料」と表示されていても、法令上必要な石綿事前調査まで無料という意味とは限りません。
見積書を横並びで比較する方法
各社の見積書を、そのまま眺めても比較しにくい場合があります。
次のような表を自分で作ります。
| 比較項目 | A社 | B社 | C社 |
|---|---|---|---|
| 税込総額 | |||
| 建物解体 | |||
| 基礎撤去 | |||
| 養生 | |||
| 廃材処分 | |||
| 重機・回送 | |||
| 塀・外構 | |||
| 庭木 | |||
| 残置物 | |||
| 石綿事前調査 | |||
| 整地 | |||
| 追加費用条件 | |||
| 工期 |
金額が空欄になっている項目については、
「無料なのか」
ではなく、
「別項目に含まれているのか、見積対象外なのか」
を確認します。
見積総額が安い会社ほど良いとは限らない
最も安い会社を選ぶこと自体が間違いではありません。
自社で重機を保有している、処分場が近い、現場との相性がよいなど、合理的に安くできる理由もあります。
一方で、1社だけ大幅に安ければ、
- 基礎撤去
- 養生
- 廃材処分
- 整地
- 石綿調査
- 外構
などの扱いを再確認します。
最安値を避けるのでも、最高値を選ぶのでもなく、同条件で最終的にいくらになるかを比べます。
高い見積もりにも理由があるか確認する
A社よりB社が30万円高い場合、すぐに候補から外すのではなく差額の理由を聞きます。
例えばB社だけが、
- 庭木撤去を含む
- 基礎まで含む
- 残置物を含む
- 養生範囲が広い
かもしれません。
見積もり比較で重要なのは、金額差の理由を説明できることです。
解体補助金を使うなら契約前に確認する
自治体によっては、危険な空き家等の解体費を補助する制度があります。
ただし、対象建物、所有者条件、補助率、上限額、対象業者などは自治体ごとに異なります。
特に注意したいのが契約時期です。
例えば札幌市の2026年度危険空家等除却補助制度では、交付決定前に行った契約による工事は補助対象になりません。
すべての自治体が同じルールという意味ではありませんが、補助制度を利用する可能性がある場合は、
- 現地見積もりを取る
- 自治体へ制度を確認する
- 必要な申請をする
- 交付決定等を確認する
- その後に契約する
という順序が必要か確認します。
見積書と契約書は別
見積もりに納得したら、そのまま口頭だけで工事を開始するのではなく、契約内容を書面で確認します。
国土交通省も住宅解体について、書面による契約書の取り交わしを勧めています。
見積書には金額が書かれていても、契約書ではさらに、
- 工事場所
- 工事内容
- 工期
- 請負金額
- 支払条件
- 追加・変更工事
- 事故・損害への対応
などを確認します。
建設リサイクル法の対象工事では契約書の記載事項も確認する
建設リサイクル法の対象となる工事では、契約書に通常の建設工事契約事項に加え、
- 分別解体等の方法
- 解体工事に要する費用
- 再資源化等を行う施設の名称・所在地
- 再資源化等に要する費用
などを記載する仕組みがあります。
解体工事費だけでなく、廃材を適切に分別・再資源化することまで契約の一部になります。
見積もり時に確認したい質問一覧
| 項目 | 質問 |
|---|---|
| 見積 | 「この見積金額に含まれない工事は何ですか?」 |
| 基礎 | 「基礎撤去まで入っていますか?」 |
| 外構 | 「塀・庭木・物置はどこまで含まれますか?」 |
| 石綿 | 「事前調査費・分析費は含まれていますか?」 |
| 残置物 | 「家具・家電は見積対象ですか?」 |
| 追加料金 | 「追加になる可能性がある項目を教えてください」 |
| 地中埋設物 | 「見つかった場合は追加見積後に作業しますか?」 |
| 工期 | 「着工から完了までどの程度ですか?」 |
| 近隣 | 「近隣挨拶は誰が行いますか?」 |
| 補助金 | 「自治体提出用の見積書に対応できますか?」 |
| 完了後 | 「工事後にどの書類を受け取れますか?」 |
見積もりを比較した後に業者選定で確認すること
見積内容がある程度揃ったら、次は工事を任せる会社そのものを確認します。
具体的には、
- 建設業許可または解体工事業登録
- 契約条件
- アスベスト対応
- 廃棄物処理体制
- 近隣対応
- 事故時対応
などです。
見積額だけでは、この部分までは判断できません。
解体見積もりを取る流れ
- 解体する範囲を決める
- 売却予定なら建物付き査定も受ける
- 建物・敷地情報を整理する
- 候補業者を選ぶ
- 2〜3社へ同じ条件で現地見積もりを依頼する
- 現地調査を受ける
- 見積書の内訳を揃えて比較する
- 石綿調査費の扱いを確認する
- 残置物・外構の範囲を確認する
- 追加料金の条件を確認する
- 自治体の補助制度を契約前に確認する
- 許可・登録や契約条件を確認する
- 書面で契約する
見積書を受け取ったら確認するチェックリスト
- □ 建物の構造・面積が合っている
- □ 解体する建物が明確
- □ 基礎撤去が含まれている
- □ 仮設・養生費を確認した
- □ 廃材運搬・処分費を確認した
- □ 重機関連費を確認した
- □ 塀・物置・カーポートの扱いを確認した
- □ 庭木・庭石の扱いを確認した
- □ 残置物の扱いを確認した
- □ 石綿事前調査費を確認した
- □ 石綿分析・除去が必要な場合の条件を確認した
- □ 整地の範囲を確認した
- □ 追加費用になる条件を確認した
- □ 地中埋設物の扱いを確認した
- □ 税込総額を確認した
- □ 見積有効期限を確認した
- □ 補助制度を契約前に確認した
よくある質問
空き家の解体見積もりは何社に頼めばよいですか?
国土交通省は複数社から見積もりを取ることを勧めています。実務では2〜3社程度へ同じ条件で現地見積もりを依頼すると比較しやすくなります。
解体見積もりは無料ですか?
会社によって異なります。現地調査や見積書作成は無料でも、アスベスト事前調査・分析等は別料金の場合があります。問い合わせ時に確認してください。
写真だけで見積もりできますか?
概算を出せる会社はあります。ただし、道路幅、隣家、外構、庭木等で費用が変わるため、正式契約前には現地調査後の見積書で確認する方が判断しやすくなります。
見積書に「一式」と書いてあっても大丈夫ですか?
一式表記だけで問題とは言えません。ただし、大きな工事項目が一式だけで内訳不明なら、基礎、処分費、養生、整地等が含まれているか確認してください。
解体見積もり後に金額が上がることはありますか?
あります。地中埋設物、石綿、想定外の残置物等が工事開始後に判明する場合があります。契約前に追加費用が発生する条件と承認方法を確認してください。
アスベスト調査費は見積もりに含まれますか?
会社によって表示方法は異なります。厚生労働省は発注者に対し、仮見積もり段階でアスベスト事前調査費が計上されているか確認するよう案内しています。
80㎡未満ならアスベスト調査費は不要ですか?
いいえ。規模にかかわらず解体・改修工事では事前調査が必要です。80㎡は調査結果報告の対象基準の一つです。
家具や家電も解体見積もりに含めてもらえますか?
会社によって対応が異なります。家庭の家具・家電等は建設廃棄物とは別に扱われるため、実際に誰がどのルートで処理するのか確認してください。
一番安い見積もりを選べばよいですか?
安いこと自体は問題ではありません。ただし、同じ工事範囲か、別料金項目がないか、追加費用条件がどうなっているかまで比較して判断します。
解体補助金は見積もり後に申請すればよいですか?
自治体によって異なります。交付決定前の契約・着工を補助対象外とする制度もあるため、見積取得後、契約前に実家所在地の自治体へ確認してください。
解体見積もりは総額より「条件を揃えること」が重要
空き家解体では、会社ごとに見積書の書き方が違います。
そのため、
「A社120万円、B社140万円」
という総額だけを比べても、本当に20万円安いかは分かりません。
まず、
- 何を壊すか
- 何を残すか
- 家財を誰が処分するか
- 整地をどこまで行うか
を同じ条件にします。
そのうえで、
- 本体解体
- 基礎
- 養生
- 廃材
- 外構
- 石綿
- 残置物
- 追加費用
を横並びにします。
見積もりを比較した後は、料金だけでなく、許可・登録、廃棄物処理、契約条件なども確認して発注先を決めます。
また、補助制度を利用できる可能性がある場合は、契約する前に自治体へ確認してください。
実家全体の売却・解体・管理の順番から整理したい場合は、実家じまいの全体像も確認してください。