親が施設に入った後の実家じまい|すぐ売らずに確認する順番と家の扱い

親の施設入居が決まると、入居手続き、持ち物の準備、介護の調整などに追われます。

少し落ち着いたところで残るのが、「誰も住まなくなる実家をどうするか」という問題です。

家財を全部片付けるのか。空き家のまま残すのか。売却するのか。

施設へ入ったからといって、実家をすぐ手放す必要はありません。

ただし、誰も住まない家を何年も何となく残しておくのも適切とは限りません。

最初に確認したいのは、親が自宅へ戻る可能性、本人が家をどうしたいか、誰が所有しているか、そして空き家になる間を誰が管理するかです。

目次

親が施設に入ったからといって実家をすぐ手放す必要はない

「施設へ入った=もう自宅には戻らない」とは限りません。

施設の種類や入居理由によっては、状態が落ち着いた後に自宅へ戻る可能性があります。

反対に、長期的な入居が見込まれ、親自身も自宅へ戻る予定がないと考えているケースもあります。

そのため、実家じまいを始める前に、まず次の状態を分けます。

  • 一時的な入居で、自宅へ戻る可能性が高い
  • 戻る可能性はあるが、時期は分からない
  • 長期入居になる可能性が高い
  • 本人も家へ戻らない意向を示している

一時入居なら、生活に必要な家財を大きく処分する理由はあまりありません。

一方、長期入居が見込まれ、実家を管理する人もいないのであれば、家の今後を具体的に考える時期になります。

実家じまい全体の流れを確認したい場合は、実家じまいの進め方もあわせて確認してください。

施設入居後に最初に確認したい4つのこと

1.自宅へ戻る可能性があるか

片付けや売却を決める前に、親の今後の生活について確認します。

施設への入居が長期になるのか、一時的なものなのかで、実家の扱いは大きく変わります。

判断できない段階なら、「売るか残すか」を急いで決めなくても構いません。

ただし、誰も住まなくなる期間があるなら、その間の管理だけは決めておきます。

2.親本人は実家をどうしたいか

親が自分で意思を伝えられる状態なら、本人の希望を確認します。

  • できれば自宅へ戻りたい
  • 戻らなくても家は残してほしい
  • 子どもの誰かに使ってほしい
  • 維持が大変なら売却してよい
  • 家財の一部だけ残してほしい

子ども側から見れば使わない家でも、親にとっては長年暮らした自宅です。

施設への入居直後は、生活環境が大きく変わったばかりの時期でもあります。

急いで結論を迫らず、本人がどう考えているかを確認するところから始めます。

3.家と土地は誰の名義か

売却、賃貸、解体などを考える前に、不動産の所有者を確認します。

「親の実家だから親名義」と思っていても、土地の一部が配偶者名義だったり、過去の相続が未整理だったりするケースがあります。

手元の固定資産税関係書類などを確認し、必要であれば登記事項証明書で正式な名義を確認します。

名義が分からないまま片付けや解体を先行させるより、不動産として誰が決定できるのかを先に整理した方が、その後の判断がしやすくなります。

4.親本人が契約内容を判断できる状態か

親名義の不動産を売却する場合、親本人の意思と判断能力が重要になります。

子どもであるというだけで、親名義の不動産について当然に売却契約を結べるわけではありません。

本人が内容を理解して意思決定できるのであれば、本人の意思を前提として売却やその他の手続きを検討します。

一方、認知症などによって判断能力が不十分な場合には、成年後見制度などが関係することがあります。

判断能力の程度や財産状況によって対応は異なるため、具体的な不動産処分が必要な場合は司法書士、弁護士などへ確認します。

家財は「施設へ持っていく物」と「重要な物」から整理する

施設入居をきっかけに実家を整理するとき、最初から大量の物を捨てる必要はありません。

優先するのは、施設で必要になる物と、処分すると困る物です。

先に確認したいものには、例えば次のようなものがあります。

  • 施設で使う衣類
  • 本人が持っていきたい写真や小物
  • 眼鏡や補聴器など日常生活に必要な物
  • 通帳などの重要書類
  • 保険関係の書類
  • 不動産関係の書類
  • 印鑑
  • 貴金属や価値の分からない物
  • 本人が残してほしいと考えている物

「残す」「施設へ持っていく」「家族へ渡す」「処分する」「保留」に分けると整理しやすくなります。

本人が判断できるものについては、できる限り本人に確認します。

特に写真、手紙、趣味の道具、仏壇関係などは、子ども側から見た価値だけで処分しない方がよいでしょう。

誰も住まなくなるなら家の管理方法を決める

施設入居後、実家に誰も住まなくなるのであれば、売却するかどうかより先に「誰が管理するか」を決めます。

空き家として残す場合には、例えば次のような管理が必要になります。

  • 郵便物の確認
  • 室内の換気
  • 水回りの確認
  • 雨漏りや外壁・屋根の異常確認
  • 庭木や雑草の管理
  • 施錠・防犯状態の確認
  • 冷蔵庫内の食品など傷む物の処分
  • 近隣へ影響する異常がないかの確認

電気や水道を止めるかどうかも、管理方法によって変わります。

定期的な換気や清掃に使用するのであれば、すぐにすべての契約を止める方がよいとは限りません。

火災保険などについても、居住者がいなくなることで契約条件に影響する場合があるため、保険会社へ確認しておくと安心です。

家族が遠方に住んでいて定期的な管理が難しければ、空き家管理サービスを利用する選択肢もあります。

実家を残す・貸す・売るをどう比較するか

長期入居が見込まれる場合、実家には大きく分けていくつかの選択肢があります。

当面残して管理する

自宅へ戻る可能性がある、本人がまだ手放したくない、家族内で方針が決まっていない場合は、しばらく維持する方法があります。

ただし、残しておく場合は、管理担当と維持費を決めます。

「売らない」と決めることと「何もしない」ことは別です。

家族が使う

子どもや親族が住む、あるいは定期的に利用する方法もあります。

ただし、所有者との関係や将来の相続まで含め、家族間の認識を合わせておく必要があります。

貸す

建物の状態や立地によっては賃貸を検討できる場合もあります。

一方、修繕費、入居者対応、管理会社への委託、将来自分たちが使いたくなったときの扱いなども考える必要があります。

「空いているから貸した方が得」と単純には決めず、必要な修繕や管理負担を含めて比較します。

売却する

親が自宅へ戻る可能性が低く、本人も売却を希望し、家を管理する負担が大きい場合には売却が現実的な選択肢になります。

売却すれば、固定資産税や管理を将来にわたって負担し続ける必要はなくなります。

一方で、一度売れば戻すことはできません。

親本人の意思、不動産の名義、今後の住居、売却代金の使い方などを確認したうえで判断します。

売却前に家財を全部捨てたり解体したりしなくてよい

実家を売る可能性があるからといって、査定前に家財をすべて処分しなければならないわけではありません。

家財が残った状態でも、不動産会社へ相談や査定ができるケースがあります。

同様に、古い家だからといって先に解体する必要があるとも限りません。

建物付きで売却する方がよい場合もあれば、解体して土地として売却した方がよい場合もあります。

家財処分や解体はまとまった費用が必要になることがあるため、先に不動産としての選択肢を確認し、その後で必要な作業だけを決める方が無駄を避けやすくなります。

親名義の家を子どもだけで売却できるとは限らない

実家が親名義なら、基本的には親本人が不動産の処分について意思決定する立場にあります。

親が施設に入ったからといって、不動産の所有権が子どもへ移るわけではありません。

本人が十分な判断能力を持っている場合には、本人と相談しながら売却等を検討します。

一方、認知症などによって判断能力が不十分になり、自分で財産管理や契約を行うことが難しい場合には、成年後見制度が関係することがあります。

「認知症になったら必ず成年後見を使う」という意味ではありません。

必要性や具体的な手続きは、本人の状態、財産、予定している法律行為によって変わります。

施設入居後に売却するなら税制上の期限も確認する

親本人が所有する自宅を施設入居後に売却する場合、居住用財産を売ったときの税制上の特例を利用できる場合があります。

代表的なものが、一定の要件を満たしたマイホームの売却について、譲渡所得から最高3,000万円を控除できる特例です。

以前住んでいた家についてこの特例を利用する場合、要件の一つとして、原則として住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却する必要があります。

そのため、施設へ入居した後の実家を長期間保有する予定なら、「いつ売っても税制は同じ」と考えず、将来売却する可能性がある段階で適用条件を確認しておく方がよいでしょう。

特例にはほかにも要件があり、実際に利用できるかは個別に判断されます。売却時には税務署や税理士などへ最新の条件を確認してください。

実家を空き家のまま残す場合の注意点

親の希望などから、しばらく空き家として残すこと自体は選択肢の一つです。

ただし、管理をせずに放置するのは別です。

空き家は人が生活している住宅より異常に気づきにくく、雨漏り、湿気、建物の傷み、庭木の繁茂などが進んでも発見が遅れることがあります。

適切に管理されていない空き家については、状態によって市区町村から「管理不全空家」や「特定空家」として指導等の対象になる場合があります。

さらに、指導後も改善されず勧告を受けた場合、土地について住宅用地の固定資産税等の軽減措置が受けられなくなる場合があります。

空き家として持ち続けるなら、少なくとも次の三つは決めておきます。

  • 誰が管理するか
  • どのくらいの頻度で確認するか
  • いつ家の今後を再検討するか

「とりあえずそのまま」に期限を設けることで、何年も判断しないまま残ることを防ぎやすくなります。

施設入居直後・数か月後・長期入居でやることを分ける

施設入居と同時に、実家の問題をすべて終わらせる必要はありません。

入居直後は、

  • 施設へ持っていく物を準備する
  • 貴重品と重要書類を確認する
  • 冷蔵庫など傷む物を整理する
  • 郵便・鍵・防犯を確認する
  • 誰が実家を確認するか決める

程度から始めます。

生活が落ち着いた後は、

  • 自宅へ戻る可能性
  • 親本人の希望
  • 実家の維持費
  • 家財の量
  • 家族の考え

を確認します。

長期入居になることが見えてきた段階で、

  • 維持する
  • 家族が使う
  • 貸す
  • 売る

を具体的に比較していきます。

こうして時期を分ければ、施設入居直後の慌ただしい時期に、売却や大量処分まで一気に決める必要はありません。

よくある質問

親が施設に入ったら、実家はすぐ売った方がよいですか?

一律には決められません。自宅へ戻る可能性、親本人の希望、家の維持費、管理する人の有無などを確認して判断します。長期入居が見込まれ、本人も売却を希望し、管理負担が大きいのであれば売却を比較する意味があります。

親が施設に入ったら、家財は全部処分してよいですか?

親が存命であれば、本人が所有する家財については本人の意向を確認しながら進めます。特に重要書類、貴重品、写真、思い出の品などは先に分け、大量処分を急がない方が安全です。

施設への入居が一時的なら実家じまいは不要ですか?

すぐに家を処分する必要はないでしょう。ただし、誰も住まない期間があるなら、防犯、郵便物、換気、庭など最低限の管理方法は決めておきます。

親名義の実家を子どもが売却できますか?

子どもであるというだけで当然に親名義の不動産を売却できるわけではありません。本人の意思・判断能力や代理権の有無などによって対応が異なります。判断能力が不十分な場合には成年後見制度が関係することもあるため、具体的な売却では専門家へ確認してください。

実家を売るなら、先に全部片付けた方が高く売れますか?

必ずしもそうとは限りません。家財が残っていても査定できる場合があります。片付け費用や解体費用を先に負担する前に、不動産会社へ家の状態を見てもらい、どこまで整理する必要があるか確認する方法があります。

施設入居後、空き家のまま何年か残してもよいですか?

残すこと自体は可能ですが、適切な管理が必要です。また、将来売却する場合には税制上の期限が関係することもあります。「今は残す」と決める場合も、管理担当と再検討する時期を決めておくとよいでしょう。

施設入居後の実家は、片付けより先に「今後」を整理する

親が施設へ入ったからといって、その直後に実家を空にしたり、売却したりする必要はありません。

親は自宅へ戻る可能性があるのか。

本人は家をどうしたいのか。

誰が所有しているのか。

空き家の間は誰が管理するのか。

ここを確認すれば、今すぐ必要な作業と、後から決めればよいことを分けられます。

長期入居が見えてきたら、維持する、家族が使う、貸す、売るという選択肢を比較します。

実家じまいは、施設入居と同時に全部終わらせるものではありません。

現在の状況で必要なことから順番に進める方が、親の希望も残しながら、不要な処分や費用を避けやすくなります。

実家の状況別の記事は、実家・家財整理のガイドから確認できます。

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