「実家じまいをしなければ」と考え始めても、実際には何から手を付ければよいのか分かりにくいものです。
家の中には家具や衣類だけでなく、通帳、契約書、不動産関係の書類、写真、仏壇などが残っています。親が亡くなった後であれば、相続や不動産の名義も関係します。家を今後使わないのであれば、売却、賃貸、解体、維持管理の判断も必要です。
そのため、実家じまいは単なる「家の片付け」ではありません。
家族の希望や権利関係を確認し、残す物と手放す物を分け、家そのものの今後まで整理していく一連の作業として考えると、何をすればよいかが見えやすくなります。
実家じまいとは
「実家じまい」は法律で定義された手続きの名称ではありません。
一般には、親が住んでいた家について、家財を整理し、必要な手続きを行い、最終的に家を売る・貸す・解体する・引き継ぐなど、今後の扱いを決めていく一連の作業を指して使われています。
家庭によって始まるきっかけも異なります。
- 高齢の親が一人暮らしをしている
- 親が施設へ入居した
- 親が子どもの家へ移った
- 親が亡くなった
- 誰も住まない実家が残っている
同じ「実家じまい」でも、親が現在の所有者として元気に暮らしている場合と、親が亡くなって相続が始まっている場合では、できることも確認すべきことも違います。
実家じまいで最初に確認したいこと
家の中に物が多いと、まず片付けたくなるかもしれません。
ただし、実際には物を捨て始める前に確認しておいた方がよいことがあります。
- 現在の家の所有者は誰か
- 親本人は家を今後どうしたいと考えているか
- 親が亡くなっている場合、相続人は誰か
- 遺言書の有無
- 残す必要がある書類や物は何か
- 今後その家に住む人がいるか
- 売却、賃貸、維持、解体など、どの選択肢がありそうか
これらを確認せずに先に処分を進めると、後から必要な書類が見つからなかったり、家族間で「残してほしかった」と問題になったりすることがあります。
親が元気なら親の意思から確認する
親が存命で判断能力にも問題がない場合、実家や家財は基本的に親自身の財産です。
子ども側が「将来困るから」と考えていても、本人の意思を無視して家財を処分したり、家の処分方針を決めたりするのは避けるべきです。
話を始めるときは、「実家を処分しよう」と結論から迫るよりも、今後どこで暮らしたいか、家の管理で困っていることはないか、残しておきたい物は何か、といった確認から始めた方が話しやすくなります。
親が亡くなっているなら相続関係を先に確認する
親が亡くなった後は、家財や不動産について相続が関係します。
特に、不動産を相続した場合の相続登記は2024年4月1日から義務化されています。原則として、不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内に申請が必要です。
2024年4月1日より前に始まった相続についても未登記であれば義務化の対象となり、一定の場合は2027年3月31日までが期限になります。
詳しくは法務省の案内を確認してください。
また、相続放棄を検討している場合は特に注意が必要です。
相続放棄は、原則として自分のために相続が始まったことを知った時から3か月以内に家庭裁判所へ申述します。財産の処分を先に進める前に、相続するかどうかも含めて確認しておく必要があります。
捨てる前に重要書類と残す物を分ける
実家の整理では、最初から「残す」「捨てる」の二択にしない方が進めやすくなります。
先に、処分しない物を避難させます。
- 預貯金や証券に関する書類
- 不動産関係の書類
- 保険関係書類
- 年金・税金関係書類
- 契約書
- 印鑑
- 遺言書やエンディングノート
- 貴金属や価値の判断が必要な物
- 家族に確認してから処分したい写真や形見
内容が分からない書類は、整理が進むまで「保留」に分けておく方法もあります。
実家じまいの進め方
家庭ごとに順番は前後しますが、大きく分けると次の流れで整理できます。
1.家族で現状と希望を共有する
最初に決めるのは、処分業者ではありません。
現在誰が住んでいるのか、親は今後どこで暮らすのか、兄弟姉妹は実家についてどう考えているのかを共有します。
この段階ですべてを決める必要はありません。
「誰が確認するか」「次に何を調べるか」まで決まれば、作業は動き始めます。
2.所有者・名義・相続の状況を確認する
家を売る、貸す、解体するといった判断には、誰がその不動産について決定できるのかという問題が関係します。
登記事項証明書などから名義を確認し、親が亡くなっている場合は相続関係も確認します。
兄弟姉妹が複数いるケースや、以前の相続登記が終わっていないケースでは、家財整理より先に専門家へ確認した方がよいこともあります。
3.残す物と重要書類を確保する
家財整理を始める前に、重要書類や貴重品、家族が残したい物を分けます。
写真を撮りながら整理しておくと、遠方の家族とも確認しやすくなります。
4.家財を整理する
家財は、おおまかに次のように分けられます。
- 残す
- 家族へ渡す
- 売却・買取を検討する
- 寄付・譲渡する
- 処分する
- 判断を保留する
物量が少なく時間を確保できる場合は、家族だけで進める方法もあります。
一方、大型家具が多い、遠方で何度も通えない、短期間で退去する必要がある、といった場合は、遺品整理や家財整理を扱う事業者への依頼を検討する余地があります。
5.家を今後どうするか比較する
家財整理と並行して、建物や土地を今後どうするかも考えます。
- 家族の誰かが住む
- 当面維持する
- 賃貸する
- 建物付きで売却する
- 不動産会社による買取を検討する
- 解体して土地を売却・利用する
必ずしも「全部片付けて解体してから売る」必要はありません。
物が残ったまま相談できる不動産会社や、現況のままの売却を検討できるケースもあります。
そのため、高額な片付けや解体工事を契約する前に、不動産としてどのような選択肢があるのかを確認しておく方が合理的です。
6.必要な業者だけ選ぶ
実家じまいでは、一つの会社にすべて頼まなければならないわけではありません。
状況によって必要になる事業者は異なります。
- 遺品整理・家財整理
- 不用品・家財処分
- 買取
- 不動産会社
- 解体業者
- 司法書士などの専門家
業者を比較するときは、総額だけでなく、何が料金に含まれているかを確認します。
搬出費、車両費、階段作業、家電処分、追加人員、解体後の処分、キャンセル条件など、追加料金が発生する条件を見積書で確認しておくことが重要です。
状況によって実家じまいの進め方は変わる
親が元気な場合
親本人と相談できることが大きな利点です。
残したい物、家を今後どうしたいか、重要書類の場所などを本人に確認できます。
急いで家を空にする必要がなければ、一度に終わらせるより、帰省のたびに一部屋ずつ整理する方法もあります。
親が施設へ入居した場合
施設入居後は、実家をすぐに処分するのか、将来戻る可能性を残すのかによって対応が変わります。
本人の意向、施設での生活状況、家の維持費、管理をする人がいるかなどを確認したうえで判断します。
「施設に入ったから実家は不要」と自動的に決まるわけではありません。
親が亡くなった後
親が亡くなった後は、片付けだけでなく相続手続きと並行して考える必要があります。
特に相続放棄を検討している場合や、相続人間で話がまとまっていない場合は、家財の処分や不動産の売却を先に進めず、必要に応じて家庭裁判所や資格者へ確認してください。
片付けと売却はどちらを先にするか
「家を空っぽにしてからでないと不動産会社に相談できない」と考える必要はありません。
実家を売却する予定なら、家財をすべて処分する前に査定や相談を行う方法もあります。
例えば、建物をそのまま売却できるのであれば、売却のためだけに先に解体する必要はありません。
反対に、家財が多く室内を確認できない状態では、片付けが査定や内覧を進めやすくすることもあります。
「片付けを全部終えてから売却」あるいは「売却を決めてから片付け」と一律に決めず、家の状態と売却方法を確認してから必要な作業を決める方が無駄を減らしやすくなります。
実家じまいにはどんな費用がかかるか
実家じまい全体の費用を一つの相場で示すのは適切ではありません。
何を行うかによって、必要な費用がまったく違うためです。
- 家財の処分費
- 遺品整理・仕分け費
- 清掃費
- 大型家具・家電等の処分費
- 不動産に関する手続費用
- 建物の修繕費
- 解体費
- 売却時の諸費用
- 登記や専門家への依頼費用
家財整理だけで終わる家庭もあれば、建物の解体まで必要になる家庭もあります。
費用を比較するときは「実家じまい総額」だけを見るのではなく、どの工程にいくら必要なのかを分けて考えた方が判断しやすくなります。
実家じまいで急いで処分しない方がよいもの
後から取り戻せない物は、判断を急がない方が安全です。
- 不動産・相続関係の書類
- 通帳・保険・証券関係書類
- 印鑑
- 契約書
- 価値が分からない骨董品や貴金属
- 家族間で分け方が決まっていない形見
- 仏壇・位牌など扱いを家族で確認したい物
価値が分からない物は、廃棄する前に査定だけ受ける方法もあります。
専門家や業者へ相談した方がよい場面
すべてを専門業者へ頼む必要はありません。
ただし、次のような場合は、自分たちだけで進めるより専門家や事業者へ確認した方が早いことがあります。
- 相続人が複数いて話がまとまらない
- 不動産の名義が亡くなった親や祖父母のままになっている
- 相続放棄を検討している
- 家財が非常に多い
- 実家が遠方にある
- 大型家具を家族だけでは搬出できない
- 売却と解体のどちらが適するか判断できない
- 短期間で家を空にする必要がある
相談先を探すときは、「実家じまい」という名称だけで選ばず、自分が今必要としている作業を明確にしてから選ぶと比較しやすくなります。
実家じまいに関する記事は、実家・家財整理のガイドから状況別に確認できます。
よくある質問
実家じまいは何から始めればよいですか?
親が存命なら本人の希望、親が亡くなっているなら相続関係を確認し、そのうえで所有者、重要書類、家を今後どうするかを整理します。いきなり家財を大量に処分する必要はありません。
実家じまいには期限がありますか?
「実家じまい」という作業全体に一律の期限があるわけではありません。ただし、相続放棄や相続登記など、実家じまいに関連する個別の手続きには期限があります。
実家じまいと遺品整理は同じですか?
同じではありません。遺品整理は主に亡くなった人の持ち物を整理する作業です。実家じまいでは、家財整理に加えて、不動産の名義、空き家管理、売却、解体など家そのものの今後まで扱うことがあります。
家を売るなら全部片付けてから査定した方がよいですか?
必ずしもそうではありません。家財が残った状態でも相談や査定が可能な場合があります。片付けや解体に大きな費用をかける前に、不動産としてどのような売却方法があるかを確認してから決める方法もあります。
実家じまいは「捨てる作業」から始めなくてよい
実家じまいで最初に必要なのは、家を空っぽにすることではありません。
親や家族の希望、家の所有関係、重要書類、残したい物、家そのものの今後を順番に確認することです。
そこまで整理できれば、自分たちで片付ける部分、業者へ頼む部分、不動産会社や専門家へ相談する部分を分けられるようになります。
一度に全部終わらせようとせず、現在の状況から必要な工程だけを進めていく方が、不要な処分や契約を避けやすくなります。