父方と母方のお墓が別々にある、先祖代々の墓とは別に親のお墓があるなど、複数のお墓を管理している家庭があります。
管理する人が減ったことをきっかけに、「複数のお墓をまとめて墓じまいしたい」と考えるケースもあるでしょう。
複数のお墓でも墓じまいはできます。
ただし、墓が増えるほど、現在の墓地管理者、改葬許可の申請先、墓石撤去、新しい納骨先などの手続きが複雑になります。
最初にすることは業者探しではなく、「どこに、誰の遺骨が、いくつあるのか」を墓ごとに整理することです。
複数のお墓をまとめて墓じまいすることはできる?
複数のお墓を同じ時期に墓じまいすることは可能です。
ただし、「複数の墓を一括で1件として処理する」というより、それぞれの墓について必要な手続きを確認し、最終的な納骨先をまとめると考えると分かりやすくなります。
たとえば、
- 父方の墓
- 母方の墓
- 祖父母の墓
- 遠方に残っている古い墓
を整理し、取り出した遺骨を一つの永代供養墓や納骨堂などへ移す方法があります。
最初に「墓じまい一覧」を作る
複数のお墓を同時に進めると、どの墓について何の手続きが終わったのか分からなくなりやすくなります。
まず墓ごとに次の項目を整理してください。
| 確認項目 | 確認する内容 |
|---|---|
| 墓地名 | 寺院・霊園・共同墓地など |
| 所在地 | 市区町村まで確認 |
| 墓地管理者 | 寺院・霊園管理事務所など |
| 使用者 | 現在の墓地使用名義 |
| 埋蔵者 | 誰の遺骨が納められているか |
| 新しい納骨先 | どこへ移す予定か |
| 指定石材店 | 撤去業者の指定があるか |
| 返還条件 | どこまで原状回復するか |
墓が3か所あるなら、この一覧も3件分作ります。
別々の自治体にある墓は手続きも分けて考える
現在のお墓から遺骨を別の墓地や納骨堂などへ移す場合は、改葬許可が必要になります。
改葬許可は、現在遺骨が埋蔵・収蔵されている場所を管轄する市区町村へ申請します。
そのため、たとえば、
- 墓A:東京都内
- 墓B:神奈川県内
- 墓C:長野県内
のように別々の自治体に墓がある場合は、それぞれの自治体へ必要書類と申請方法を確認します。
新しい納骨先が1か所だからといって、すべての改葬手続きを新しい納骨先の自治体だけで行うわけではありません。
同じ墓地に複数のお墓がある場合は?
同じ墓地・霊園内に複数の墓所がある場合も、それぞれの墓所について管理者へ確認します。
ただし、管理者や石材店が同じであれば、現地確認や墓石撤去工事の日程をまとめられる可能性があります。
「2区画を同時に返還したい」と伝え、
- 必要な返還手続き
- 墓石撤去工事
- 遺骨の取り出し
- 工事日程
- 見積もり
をまとめられるか確認してください。
複数の遺骨は改葬許可申請1枚でいい?
これは申請する自治体の様式を確認する必要があります。
自治体によって、遺骨ごとに申請書を作成する方式や、複数人を記載できる様式などがあります。
そのため、「遺骨1体につき必ず1枚」「何人でも申請書1枚でよい」と全国一律には判断できません。
現在のお墓がある市区町村へ、
- 何人分の遺骨があるか
- 同じ墓から取り出すのか
- 同じ改葬先へ移すのか
を伝え、必要な申請書の枚数を確認してください。
誰の遺骨が入っているか分からない場合は?
古いお墓では、何人分の遺骨が納められているのか家族が正確に把握していないことがあります。
まず、
- 墓石・墓誌に刻まれた名前
- 寺院の記録
- 墓地管理者の記録
- 家族・親族が保管している資料
などを確認します。
それでも不明な遺骨がある場合は、自己判断で名前を作って申請せず、墓地管理者と改葬許可を担当する自治体へ相談してください。
複数のお墓の遺骨を一つにまとめられる?
新しい納骨先が受け入れ可能であれば、複数のお墓から取り出した遺骨を一つの納骨先へ移すことは考えられます。
たとえば、
- 新しい一般墓
- 納骨堂
- 永代供養墓
- 合祀墓
などが候補になります。
ただし、施設ごとに受け入れ条件が異なります。
新しい納骨先で確認すること
複数の遺骨をまとめる場合は、料金だけでなく次の点を確認してください。
- 何人分まで納骨できるか
- 骨壺のまま納骨できるか
- 遺骨を小さな骨壺へ移す必要があるか
- 粉骨が必要か
- 個別安置期間があるか
- 最終的に合祀されるか
- 合祀後に遺骨を取り出せるか
- 追加の納骨料がかかるか
特に合祀墓では、他の人の遺骨と一緒に納めた後は個別に取り出せなくなる施設があります。
家族・親族にも説明したうえで決めます。
複数のお墓を墓じまいすると費用は安くなる?
必ず安くなるとは限りません。
墓石撤去費は、
- 墓所面積
- 墓石の量
- 基礎
- 重機搬入
- 階段・斜面
- 搬出距離
- 原状回復範囲
などで変わります。
別々の地域に墓があれば、それぞれ別の石材店・施工業者になる可能性もあります。
一方、同じ墓地に複数区画があり、同じ石材店が同時施工できる場合には、重機や人員の手配をまとめられる可能性があります。
実際に割安になるかは見積もりで確認してください。
複数墓なら見積書も墓ごとに分けてもらう
複数のお墓をまとめて依頼する場合でも、可能であれば墓所ごとの金額が分かる見積もりを取ります。
たとえば、
| 墓所 | 確認する費用 |
|---|---|
| 墓A | 撤去・基礎・運搬・整地 |
| 墓B | 撤去・基礎・運搬・整地 |
| 墓C | 撤去・基礎・運搬・整地 |
| 共通費 | 重機・交通・その他共通作業 |
のように分けておくと、どの墓にいくらかかっているのか把握しやすくなります。
指定石材店も墓ごとに確認する
寺院墓地・民営霊園では、墓石撤去を行える石材店が指定されている場合があります。
墓Aでは自由に業者を選べても、墓Bでは指定石材店しか工事できないということもあり得ます。
複数墓だからといって一つの墓じまい業者へ先に一括発注せず、それぞれの墓地の工事条件を確認してください。
遠方に複数のお墓がある場合
墓が全国に分散している場合、現地へ何度も行くことが負担になります。
まず電話・郵送などで、
- 墓地返還手続き
- 改葬許可の申請方法
- 石材店への現地調査依頼
- 工事立会いの要否
を確認します。
自治体によっては改葬許可申請を郵送で受け付けるところもありますが、全国すべての自治体で同じではありません。
墓地管理者・自治体・施工業者それぞれへ、現地訪問が必要な工程を確認すると移動回数を減らしやすくなります。
複数のお墓は一度に全部やらなくてもいい
墓が多い場合、すべてを同時に進める必要はありません。
たとえば、
- 管理負担が大きい遠方の墓
- 承継者がいない墓
- 墓地返還の条件が明確な墓
- 近隣で管理を続けやすい墓
というように優先順位を付けることもできます。
特に親族との話し合いが終わっていない墓まで急いで撤去すると、後からトラブルになる可能性があります。
家族・親族には「最終的な遺骨の行き先」まで伝える
複数墓を一つにまとめる場合、家族・親族に「墓を撤去する」という話だけをすると、反対されることがあります。
説明するときは、
- なぜ複数墓の維持が難しいのか
- どの墓を整理するのか
- 誰の遺骨が対象か
- 最終的にどこへ納骨するのか
- 将来お参りできるのか
- 合祀になるのか
まで伝えると、墓じまい後の状態をイメージしてもらいやすくなります。
複数のお墓を墓じまいする手順
- 現在管理している墓をすべて一覧にする
- 各墓の所在地・管理者・使用者を確認する
- 埋蔵されている遺骨を確認する
- 家族・親族と相談する
- 新しい納骨先を決める
- 各墓地へ返還条件を確認する
- 各自治体へ改葬許可の申請方法を確認する
- 指定石材店の有無を確認する
- 墓石撤去の見積もりを取る
- 改葬許可を整える
- 遺骨を取り出す
- 墓石を撤去して墓所を返還する
- 新しい納骨先へ遺骨を移す
墓ごとにこの進捗を管理すると、手続き漏れを防ぎやすくなります。
複数のお墓の墓じまいでよくある質問
複数のお墓を同時に墓じまいできますか?
できます。ただし墓地管理者、自治体、撤去条件などは墓ごとに確認します。
別の県にある2つの墓を一つにまとめられますか?
新しい納骨先が複数の遺骨を受け入れられるのであれば可能です。
ただし、改葬許可については現在それぞれの遺骨がある自治体へ確認します。
複数の遺骨は改葬許可申請書1枚で申請できますか?
自治体によって申請様式が異なります。
複数人を記載できる様式もあれば、遺骨ごとの書類が必要になる場合もあるため、申請先自治体へ確認してください。
複数の墓を一度に撤去すると安くなりますか?
必ず安くなるわけではありません。
同じ墓地で同一業者が同時施工できる場合は工事をまとめられる可能性がありますが、実際の費用は現地条件と見積もりによります。
父方と母方の遺骨を同じ永代供養墓へ入れられますか?
受け入れ可能かどうかは施設の規定によります。
親族関係、人数、納骨方法などの条件を新しい納骨先へ確認してください。
複数墓のうち一つだけ先に墓じまいしてもいいですか?
可能です。
管理負担、親族との合意、新しい納骨先、墓地の返還条件などを考え、優先順位を付けて進める方法もあります。
複数墓の墓じまいは「一括処理」ではなく墓ごとの整理から始める
複数のお墓を墓じまいする場合でも、基本的な手続きは通常の墓じまいと大きく変わりません。
難しくなるのは、墓地管理者、自治体、石材店、遺骨、新しい納骨先が複数になることです。
最初に墓ごとの所在地、管理者、使用者、埋蔵者、返還条件を一覧にしておけば、必要な手続きが見えやすくなります。
そのうえで、最終的に複数の遺骨を一つの納骨先へまとめるのか、それぞれ別の供養先へ移すのかを決めます。
「墓をいくつ撤去するか」だけではなく、「誰の遺骨を、どこから、どこへ移すのか」を一件ずつ整理することが、複数墓の墓じまいを進める基本です。
参考にした情報
- 墓地、埋葬等に関する法律
- 墓地、埋葬等に関する法律施行規則
- 各自治体の改葬許可申請案内
- 各墓地・霊園の墓地使用規則