墓じまいでは、現在のお墓から遺骨を移したあと、墓石を撤去して墓地区画を管理者へ返還します。
ただし、「墓石をどかせば終わり」という工事ではありません。
墓石だけでなく外柵や基礎、納骨室(カロート)などをどこまで撤去するか、墓地をどの状態まで戻すかは、墓地・霊園の返還条件によって異なります。
また、遺骨が納められている場合は、墓石撤去だけを先に進めるのではなく、新しい納骨先や改葬許可の手続きを整えてから工事日を決める必要があります。
墓石撤去を依頼する前に、「墓地の返還条件」「遺骨の移動」「工事範囲」の3点を確認することが重要です。
墓じまいの墓石撤去とは?
墓じまいにおける墓石撤去は、現在使用している墓所の石材などを解体・搬出し、墓地区画を管理者へ返還できる状態に戻す工事です。
一般的には、次のような作業が関係します。
- 遺骨の取り出し
- 石塔の解体・撤去
- 外柵の撤去
- 墓誌など付属石材の撤去
- カロート・基礎の撤去
- 石材の搬出・処分
- 残土処理
- 埋め戻し・整地
- 墓地区画の原状回復
ただし、どこまで撤去する必要があるかは墓地によって異なります。
墓石撤去だけ先に頼まない
墓じまいを決めたら、すぐ石材店へ「墓石を撤去してください」と依頼するのではなく、先に墓地管理者へ相談します。
確認するのは、
- 墓所返還の手続き
- 返還時の原状回復範囲
- 指定石材店の有無
- 工事届などの必要書類
- 工事可能な日時
- 遺骨の取り出し方法
です。
寺院墓地や民営霊園では、墓石工事を行える石材店が指定されている場合があります。
先に外部業者と契約すると、その業者が墓地内へ入れず工事できない可能性があるため注意してください。
遺骨がある場合は改葬手続きを先に進める
現在のお墓に遺骨があり、別の墓地や納骨堂などへ移す場合は「改葬」にあたります。
墓地、埋葬等に関する法律では、改葬には市区町村長の許可が必要とされています。
そのため、一般的には、
- 新しい納骨先を決める
- 必要書類をそろえる
- 現在のお墓がある自治体へ改葬許可を申請する
- 必要な手続きを終える
- 遺骨を取り出す
- 墓石を撤去する
- 新しい納骨先へ納骨する
という流れで進めます。
墓石撤去だけを先行させて、遺骨の行き先が決まっていない状態にならないようにします。
墓石撤去の費用はいくら?
墓石撤去費には全国一律の料金があるわけではありません。
2026年時点の民間事業者・石材店の公開情報を見ると、墓石の解体・撤去・処分について、1㎡あたり8万〜15万円程度、あるいは10万〜15万円程度を目安としている例があります。
ただし、これはあくまで参考値です。
実際の見積もりは、墓所の面積だけでは決まりません。
同じ1㎡でも撤去費用が違う理由
墓石撤去費用へ影響しやすいのは、次のような条件です。
- 墓所の広さ
- 墓石・外柵など石材の量
- 基礎の構造
- カロートの構造
- 重機が墓所まで入れるか
- 墓地内に階段・坂道があるか
- 通路が狭いか
- 石材を搬出する距離
- クレーンなどが必要か
- 周囲の墓石の養生が必要か
- 墓地管理者が求める原状回復範囲
特に、重機を墓所の近くまで入れられず、石材を人力で運ばなければならない場所では工事費が高くなりやすくなります。
「1㎡だから必ず○万円」と面積だけで判断しないようにしてください。
墓石撤去の見積もりで確認する項目
| 項目 | 確認すること |
|---|---|
| 石塔 | 解体・搬出・処分まで含むか |
| 外柵 | 撤去対象になっているか |
| 墓誌・付属石材 | 見積もりに含むか |
| カロート | 撤去範囲と追加費用 |
| 基礎 | どこまで掘削・撤去するか |
| 遺骨取り出し | 工事費に含むか |
| 石材処分 | 運搬・処分費を含むか |
| 残土 | 処分費を含むか |
| 整地 | 返還できる状態まで含むか |
| 重機 | クレーン・運搬機等の費用を含むか |
| 追加料金 | どの条件で発生するか |
総額だけでなく、何が含まれているのかを確認することが重要です。
墓石はどこまで撤去する?
墓じまいでは、墓地を管理者へ返還するため、墓石だけでなく外柵や基礎などの撤去を求められることがあります。
一方、基礎をどこまで撤去するかなど、具体的な返還条件は墓地によって異なります。
石材店の判断だけで工事範囲を決めず、墓地管理者へ「どの状態まで戻せば返還できるか」を確認してください。
墓石を撤去した後は更地にする?
墓所を返還するときは、石材を撤去したあと土を入れて整地するなど、管理者が定める状態へ戻すのが一般的です。
ただし、「全国すべての墓地で完全な更地にする」という一律の基準があるわけではありません。
墓地によって返還方法が異なるため、工事前に原状回復条件を確認します。
遺骨はいつ取り出す?
遺骨の取り出し時期は、改葬手続きや墓石撤去工事の日程と合わせて調整します。
墓石を解体する際に石材店がカロートを開け、遺骨を取り出すケースもあります。
取り出した遺骨については、
- 誰が受け取るか
- 新しい納骨先へいつ持っていくか
- 一時保管が必要か
- 骨壺の状態に問題がないか
を事前に決めておきます。
長期間納骨されていた骨壺では、水が入っているなど状態確認が必要になることもあります。
閉眼供養は墓石撤去前に行う?
寺院墓地などでは、墓石を撤去する前に閉眼供養などの法要を行うことがあります。
ただし、宗派によって儀礼の名称や考え方は異なります。
また、閉眼供養などの宗教儀礼は、市区町村による改葬許可そのものの法定要件とは別です。
菩提寺がある場合は、墓じまいを相談するときに墓石撤去前の法要についても確認してください。
墓石撤去はどこに頼む?
一般的には石材店や墓じまい対応業者へ依頼します。
ただし、最初に確認するのは墓地側の指定です。
寺院墓地・民営霊園では指定石材店制度が設けられている場合があります。
指定がなければ、複数の石材店・墓じまい業者から見積もりを取り、工事範囲をそろえて比較します。
現地調査をしてから正式見積もりを取る
墓石の写真や墓所面積だけでも概算見積もりを出せる場合があります。
しかし、最終的な工事費を判断するには現地条件の確認が重要です。
現地では、
- 墓石の量
- 基礎
- 通路幅
- 階段
- 傾斜
- 重機の搬入経路
- 周囲の墓石との距離
などを確認できます。
契約前には、可能な限り現地確認後の正式見積もりを取得してください。
相見積もりは同じ工事範囲で比較する
2社以上から見積もりを取っても、工事範囲が違えば金額を正確に比較できません。
たとえばA社は基礎撤去と整地まで含み、B社は墓石の解体だけなら、B社の方が安く見えるのは当然です。
比較するときは、
- 墓石
- 外柵
- 基礎
- カロート
- 運搬
- 処分
- 整地
- 遺骨取り出し
- 追加費用
の条件をそろえます。
墓石撤去を自分でやれば安くなる?
墓石撤去をDIYで行うことは、基本的には勧められません。
墓石は非常に重量があり、解体・搬出には転倒や挟まれなどの危険があります。
また、自分の墓石であっても墓地内は自由に工事できる私有地とは限らず、墓地管理者の工事ルールがあります。
撤去した石材や残土の処理、周囲の墓石への損傷防止、返還条件への適合も必要です。
費用を抑えたい場合は、自分で解体するより、墓地の指定条件を確認したうえで見積もりを比較する方が現実的です。
墓石を撤去すれば墓じまいは完了?
墓石撤去は墓じまいの重要な工程ですが、撤去だけで墓じまい全体が完了するとは限りません。
遺骨がある場合には、改葬許可、新しい供養先への納骨などがあります。
また、墓地区画についても、管理者が返還を確認して手続きが完了するまで確認しておくと安心です。
「墓石がなくなったから終わり」ではなく、遺骨と墓地使用関係の両方を確認してください。
墓石撤去費を抑えるには?
指定石材店がない墓地なら、同じ工事条件で複数の業者から見積もりを取る方法があります。
また、費用を抑えるために重要なのは、不要な作業を削ることより、追加料金が発生しにくい見積もりを取ることです。
契約前に、
- 現地調査済みか
- 工事範囲が明確か
- 追加料金条件が書かれているか
- 石材処分まで含むか
- 整地まで含むか
を確認します。
墓石撤去についてよくある質問
墓石撤去はいくらくらいかかりますか?
民間の公開情報では、1㎡あたり8万〜15万円程度、10万〜15万円程度などが目安として紹介されています。
ただし、墓石量、基礎、立地、重機搬入の可否などで変わるため、現地見積もりで確認してください。
墓石撤去前に改葬許可は必要ですか?
遺骨を別の墓地・納骨堂などへ移す場合は改葬許可が必要です。
遺骨の取り出しや墓石撤去の日程を決める前に、申請先自治体と墓地管理者へ必要な手順を確認してください。
墓石だけ撤去すればいいですか?
墓地によっては外柵、カロート、基礎なども撤去し、所定の状態まで原状回復する必要があります。
工事前に墓地管理者へ返還条件を確認してください。
墓石撤去は石材店以外にも頼めますか?
墓じまい専門業者などが対応する場合もありますが、実際の施工業者と墓地側の工事条件を確認する必要があります。
指定石材店制度がある墓地では、指定業者以外が工事できないことがあります。
墓石を自分で撤去できますか?
重量物の解体・搬出、墓地内の工事規則、石材処分、周囲の墓石への安全確保などが必要になるため、DIYでの撤去は安易に勧められません。
墓石撤去後の石はどうなりますか?
通常は施工業者が搬出し、契約内容に従って処理します。
見積書に石材の運搬・処分まで含まれているか確認してください。
墓石撤去は「撤去費」だけでなく返還できる状態まで確認する
墓じまいの墓石撤去では、1㎡あたりの価格だけを見て業者を決めないことが重要です。
墓石、外柵、基礎、カロート、運搬、処分、整地のどこまでが見積もりに含まれているのかを確認します。
また、墓地によって指定石材店や原状回復の条件が異なるため、石材店へ依頼する前に墓地管理者へ確認してください。
遺骨がある場合は、新しい納骨先と改葬手続きを先に整えます。
墓石を「撤去すること」ではなく、遺骨を適切に移し、墓地管理者へ区画を返還できるところまでを一つの工程として考えると、工事後のトラブルを防ぎやすくなります。
参考にした情報
- 墓地、埋葬等に関する法律
- 墓地、埋葬等に関する法律施行規則
- 各墓地・霊園の墓地使用規則・工事規程
- 石材店・墓じまい事業者が公開する墓石撤去料金