相続は何から始める?遺言・相続人・財産確認から進める順番

親が亡くなり、葬儀や役所の手続きが少し落ち着くと、「相続は何から始めればよいのか」という問題が出てきます。

相続では、いきなり銀行口座を解約したり、不動産を売ったり、兄弟で財産を分けたりするのではありません。

最初に確認したいのは、

  • 遺言書があるか
  • 誰が相続人なのか
  • どのような財産と借金があるか

の3点です。

この3つを確認しないまま遺産を動かすと、後から別の相続人や借金が見つかったり、相続放棄を検討したくなったときに問題になる可能性があります。

相続は「遺言・人・財産と借金」を先に確認し、その後に相続するかどうかを判断すると考えると進めやすくなります。

目次

相続はこの順番で進める

  1. 遺言書がないか確認する
  2. 戸籍から相続人を確認する
  3. 財産と借金を調べる
  4. 相続放棄・限定承認をするか判断する
  5. 相続する財産を評価する
  6. 必要なら遺産分割協議をする
  7. 相続税が必要か確認する
  8. 不動産・預金・証券等の名義変更をする
  9. 実家や遺品を本格的に整理する

すべてを完全に一つずつ終えてから次へ進む必要はありません。

遺言・相続人・財産と借金の確認は、並行して進めることもできます。

1.最初に遺言書がないか確認する

相続人同士で財産の分け方を決める前に、亡くなった人が遺言書を残していないか確認します。

遺言がある場合は、その内容を踏まえて相続手続きを進める必要があるためです。

確認する場所としては、

  • 実家の金庫
  • 机・書類棚
  • 重要書類を入れていた場所
  • 貸金庫
  • 公正証書遺言の有無
  • 法務局の自筆証書遺言書保管制度

などがあります。

自宅で遺言書を見つけても、すぐ開封しない

自宅などで自筆証書遺言を見つけた場合、原則として家庭裁判所の検認(けんにん)が必要です。

封印されている遺言書は、家庭裁判所で相続人等の立会いのもと開封します。

一方、

  • 公正証書遺言
  • 法務局に保管されている自筆証書遺言

は、検認が不要です。

遺言書を見つけた場合は、種類を確認してから手続きを進めます。

2.誰が相続人なのか戸籍で確認する

次に確認するのが相続人です。

家族が「相続人は母と子ども2人だけ」と思っていても、それだけで確定とは限りません。

相続人を正式に確認するためには、被相続人(ひそうぞくにん)の戸籍を確認します。

被相続人とは、今回亡くなり、財産を相続される人のことです。

亡くなった人の出生から死亡までの戸籍を確認する

相続手続きでは、亡くなった人の出生から死亡までの連続した戸籍・除籍等を集めることがあります。

これによって、

  • 配偶者
  • 子
  • 認知した子
  • 養子
  • 以前の婚姻関係

などを確認できます。

子がいない場合は、親・祖父母、さらに一定の場合は兄弟姉妹などが相続人になるため、家族構成によって確認範囲が広がります。

相続人の順位を簡単に確認する

配偶者は、法律上の相続人になる場合があります。

配偶者以外については、大きく次の順位で考えます。

  1. 子など
  2. 親・祖父母など
  3. 兄弟姉妹など

上の順位の相続人がいる場合は、通常、その下の順位の人は相続人になりません。

子がすでに亡くなっている場合などには、その子である孫が相続人になる場合もあります。

実際の相続関係は戸籍で確認します。

3.財産だけでなく借金も調べる

相続では、「いくら財産があるか」だけを調べてはいけません。

借金などのマイナスの財産も引き継ぐ可能性があるためです。

まず、財産と債務を一覧にします。

主なプラスの財産

  • 預貯金
  • 株式・投資信託等
  • 土地・建物
  • 自動車
  • 貸付金
  • 貴金属・高価な動産
  • 一部のデジタル資産

主なマイナスの財産

  • 住宅ローン以外の借入金
  • カードローン
  • クレジットカード残高
  • 事業上の債務
  • 未払金
  • 未納税金
  • 保証関係の資料

生命保険金などは、契約内容によって相続財産そのものとは異なる扱いになるものもあるため、個別に確認します。

財産調査では実家の郵便物も重要

亡くなった人の財産状況が分からない場合、実家に届いている郵便物は重要な手掛かりになります。

  • 銀行
  • 証券会社
  • 保険会社
  • 貸金業者
  • クレジットカード会社
  • 固定資産税
  • 税務署

などからの郵便を確認します。

スマートフォン、メール、通帳、確定申告書なども手掛かりになります。

相続財産の一覧を作る

簡単な表で構いません。

種類 内容 概算額 確認状況
預金 ○○銀行 確認中 通帳あり
不動産 実家土地・建物 確認中 固定資産税資料あり
証券 ○○証券 確認中 郵便あり
借入 ○○ローン 確認中 契約書あり

最初から正確な相続税評価額まで出す必要はありません。

まず、「何があるか」「借金がありそうか」を把握します。

4.3か月以内に相続するかどうかを判断する

相続で特に先に意識したい期限が3か月です。

相続人は原則として、自分のために相続が始まったことを知った時から3か月以内に、相続を承認するか放棄するかを判断します。

主な選択肢は3つです。

単純承認

財産も借金等の義務も原則として引き継ぎます。

相続放棄

財産も借金等も相続しない手続きです。

家庭裁判所へ申述します。

限定承認

限定承認(げんていしょうにん)は、相続で得た財産の範囲内で亡くなった人の債務を負担する制度です。

限定承認をする場合は、相続人全員で家庭裁判所へ申述する必要があります。

3か月で財産・借金を調べきれない場合は?

相続放棄をするか判断するために調査しても、3か月以内に財産状況を把握できないことがあります。

その場合、家庭裁判所へ相続の承認・放棄の期間を延長する申立てができる制度があります。

この3か月を熟慮期間(じゅくりょきかん)といいます。

期限が近づいてから慌てて調査を始めるのではなく、借金の可能性がある場合は早めに確認します。

相続放棄を考えているなら財産を安易に処分しない

相続放棄の可能性がある場合は、亡くなった人の財産を売ったり、相続人同士で分配したりする前に注意が必要です。

民法には、相続人が相続財産の全部または一部を処分した場合、一定の例外を除き、単純承認したものとみなす「法定単純承認(ほうていたんじゅんしょうにん)」の規定があります。

ただし、何をすると法定単純承認に当たるかは、行為の内容や事情によって判断されます。

「遺品を1個動かしたら相続放棄できない」といった単純な話ではありません。

一方で、

  • 高価な財産を売却する
  • 預金を相続人へ分配する
  • 相続財産を自分のものとして処分する

といった行為をする前には、相続放棄をする可能性がないか確認した方が安全です。

実家の遺品整理も相続方針を確認してから

親の家を片づける必要があっても、相続放棄を検討している段階なら、大規模な処分や売却を急がない方がよい場合があります。

特に、

  • 高価な家具
  • 貴金属
  • 美術品
  • 車
  • 売却できる家財

などを処分する前に確認します。

腐敗する食品を捨てるなどの保存・管理上必要な行為と、財産を自分の判断で売却・分配する行為は同じではありません。

判断に迷う場合は、処分前に弁護士などへ相談します。

5.相続するなら財産の価値を確認する

相続する方向が決まったら、遺産分割や税金のために財産の価値を確認していきます。

不動産の場合、

  • 固定資産税評価額
  • 相続税評価
  • 実際に売却した場合の価格

は同じ金額とは限りません。

何のために評価するのかによって、必要な数字が違います。

6.必要なら遺産分割協議をする

遺言で財産の行き先がすべて決まっているとは限りません。

遺言がない場合や、遺言で指定されていない財産がある場合などには、相続人同士で遺産の分け方を話し合います。

これを遺産分割協議(いさんぶんかつきょうぎ)といいます。

遺産分割協議を行う場合は、相続人を漏れなく確認してから進めます。

後から新しい相続人が判明すると、手続きをやり直すことになる可能性があります。

「とりあえず長男名義」は避ける

実家、不動産、預貯金などについて、家族の中だけで「とりあえず長男の名義にしておく」と決めるのは避けます。

誰が何を相続するかは、遺言や法定相続人、遺産分割の内容を確認して決めます。

特に不動産は、一度共有にした後で売却・処分が難しくなるケースもあります。

7.相続税が必要か確認する

相続税は、相続した人全員に必ずかかる税金ではありません。

基本となる基礎控除は、

3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数

です。

正味の遺産額が基礎控除額を超える場合などには、相続税の申告・納税が必要になります。

申告期限は、原則として亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内です。

遺産分割が終わらなくても相続税の期限は延びない

相続人同士の話し合いが終わっていない場合でも、相続税の10か月という期限は原則としてそのままです。

遺産分割に時間がかかりそうな場合は、税務について別に確認します。

8.不動産があるなら相続登記をする

土地・建物を相続した場合は、相続登記が必要です。

2024年4月から相続登記は義務化されています。

相続で不動産を取得したことを知った日から、原則3年以内に申請します。

遺産分割で後から不動産の取得者が決まった場合も、その成立から3年以内に登記する追加の義務があります。

相続登記をしないまま実家を売ることはできない

亡くなった親名義の不動産をそのまま第三者へ売却するのではなく、通常は相続による名義変更を行ったうえで売却手続きを進めます。

実家を売る予定がある場合も、まず相続人・取得者を確定し、相続登記を進めます。

9.銀行・証券等の相続手続きを進める

相続する人が決まったら、各金融機関の手続きを進めます。

一般的には、

  • 戸籍関係書類
  • 遺言書
  • 遺産分割協議書
  • 印鑑証明書
  • 金融機関所定の書類

などが必要になりますが、必要書類は金融機関・手続内容によって違います。

法定相続情報一覧図を使う方法もある

複数の銀行、不動産、証券などで相続手続きを行う場合、毎回大量の戸籍を提出するのが負担になることがあります。

その場合、法務局の「法定相続情報証明制度」を利用できることがあります。

戸籍等と相続関係をまとめた法定相続情報一覧図を法務局へ提出すると、登記官の認証が付いた一覧図の写しを無料で必要な通数受け取れます。

その写しを対応する相続手続で利用することで、戸籍の束を何度も提出する負担を減らせます。

相続で最初にやらない方がよいこと

いきなり遺産を分ける

相続人や遺言を確認してから進めます。

借金確認前に相続すると決める

プラスの財産だけでなく負債も確認します。

相続放棄を考えながら財産を売る

法定単純承認の問題があるため、重要な財産を処分する前に確認します。

実家の物を全部捨てる

相続財産、財産調査の資料、遺言、重要書類が混ざっている可能性があります。

不動産をとりあえず共有名義にする

将来の売却・管理まで考えて取得者を決めます。

専門家へ相談した方がよいケース

借金がある・金額が分からない

相続放棄の3か月期限があるため、早めの確認が必要です。

相続人同士でもめている

法律上の争い・交渉がある場合は、弁護士への相談を検討します。

相続放棄するか判断できない

財産処分との関係もあるため、期限前に相談します。

不動産の相続登記を依頼したい

登記手続きについては司法書士へ依頼する方法があります。

相続税がかかりそう

相続税の申告・税務判断については税理士へ相談します。

状況によって必要な専門家が違うため、「相続は全部同じ専門家に頼む」と考えず、問題の内容に応じて選びます。

相続開始後のチェックリスト

  • 遺言書がないか確認した
  • 遺言書を勝手に開封していない
  • 出生から死亡までの戸籍を確認し始めた
  • 法定相続人を確認した
  • 預貯金を確認した
  • 証券を確認した
  • 不動産を確認した
  • 借金・未払金を確認した
  • 保証関係の資料を確認した
  • 相続放棄の3か月期限を確認した
  • 重要な相続財産を勝手に売却していない
  • 相続税の要否を確認した
  • 不動産があれば相続登記を確認した
  • 実家の売却・遺品整理を相続方針決定後に進めている

よくある質問

相続は最初に何から始めればよいですか?

遺言書の有無、誰が相続人か、どのような財産・借金があるかを確認するところから始めます。相続放棄には原則3か月の期限があるため、借金の有無は早めに調べてください。

遺言書と相続人調査はどちらを先にしますか?

どちらも早めに確認します。遺言書の有無は財産の分け方に影響し、相続人の確認は遺産分割や各種名義変更に必要です。並行して進めても構いません。

相続人はどうやって確認しますか?

被相続人の出生から死亡までの戸籍等を集めて確認します。家族が認識していなかった相続人が判明する場合もあるため、記憶だけで判断しません。

借金も相続しますか?

単純承認すれば、原則として亡くなった人の財産だけでなく債務等の義務も承継します。借金の可能性がある場合は相続放棄等を含めて確認します。

相続放棄はいつまでですか?

原則、自分のために相続が始まったことを知った時から3か月以内です。財産調査が終わらない場合は、家庭裁判所へ期間伸長を申し立てられる制度があります。

遺品整理をすると相続放棄できなくなりますか?

遺品整理をしただけで一律に相続放棄できなくなるとは言えません。ただし相続財産を売却・分配するなどの処分行為は法定単純承認に当たる可能性があります。放棄を検討している場合は重要な財産を処分する前に確認してください。

限定承認とは何ですか?

相続によって得た財産の限度で債務を負担する制度です。利用する場合は原則3か月以内に相続人全員で家庭裁判所へ申述します。

相続税はいくらからかかりますか?

基本となる基礎控除は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」です。正味の遺産額がこれを超える場合などには相続税の申告を確認します。

相続登記はいつまでですか?

不動産を相続で取得したことを知った日から原則3年以内です。遺産分割で取得した場合にも、分割成立から3年以内の登記義務があります。

法定相続情報一覧図は作った方がよいですか?

銀行・証券・不動産など複数の相続手続きを行う場合は、戸籍の束を何度も提出する負担を減らせるため便利なことがあります。必ず利用しなければならない制度ではありません。

相続は「分ける」より先に「調べる」

相続が始まると、「誰が実家をもらうか」「預金をどう分けるか」という話を先にしたくなります。

しかし、その前に確認することがあります。

遺言はあるか。

本当の相続人は誰か。

財産はいくらあるか。

借金はないか。

そして相続するのか、放棄するのか。

この順番を飛ばして先に財産を分けたり売却したりすると、後から手続きを戻すのが難しくなることがあります。

相続は「遺言・相続人・財産と債務を調べる → 3か月以内に相続方針を決める → その後に分ける・名義を変える」と考えると整理しやすくなります。

死亡後の手続き全体については死後手続きのガイド、実家の整理については実家じまいのガイドも参照してください。

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