実家の片付けを家族だけで進めるのが難しくなると、業者への依頼を考えることがあります。
ところが検索すると、「不用品回収」「遺品整理」「生前整理」「片付け代行」「便利屋」など、似たようなサービスがいくつも出てきます。
どの名称の業者を選べばよいか迷いますが、実際には業者の呼び方より、何をどこまで頼みたいのかを先に決める方が重要です。
すでに捨てる家具が決まっているのか。
残す物と処分する物の仕分けから頼みたいのか。
親が亡くなった後で、重要書類や貴重品も探してほしいのか。
実家を売却するため、一軒家をほぼ空にしたいのか。
この違いによって適したサービスが変わります。
実家の片付けは「業者名」より頼みたい作業で選ぶ
実家の片付け業者を探すときは、最初に必要な作業を分けます。
- 残す物と処分する物の仕分け
- 重要書類・貴重品の確認
- 家具・家電の搬出
- 家庭から出る廃棄物の収集・運搬
- まだ使える物の買取
- 室内の清掃
- 物置・庭・倉庫の片付け
一社がこれらをすべて自社で行うとは限りません。
例えば、片付け会社が室内の仕分けを担当し、家庭から出た廃棄物の収集・運搬については、その地域で対応できる一般廃棄物処理業者が担当する場合があります。
したがって、「全部お任せできます」という表示を見るだけでなく、各工程を誰が担当するのか確認します。
不用品回収・遺品整理・片付け代行は何が違う?
| サービス | 主に頼みやすい内容 | 向いている状況 |
|---|---|---|
| 不用品回収・家財処分 | 処分品の搬出・収集運搬 | 捨てる物がすでに決まっている |
| 遺品整理 | 仕分け、貴重品確認、搬出、清掃等 | 親が亡くなった後で、何を残すかも含めて整理したい |
| 生前整理・片付け代行 | 本人と相談しながら仕分け、整理 | 親が存命で、一緒に物を減らしたい |
| ハウスクリーニング | 家財整理後の清掃 | 売却・賃貸・退去前に室内を清掃したい |
実際には一社が複数のサービスを扱うこともあります。
そのため、「遺品整理会社か不用品回収会社か」という名前だけで決めるより、見積もり時に作業範囲を確認します。
実家の片付け業者を選ぶ7つの確認項目
1.仕分けから頼むのか、搬出だけか
最初に決めたいのが、家族側でどこまで整理するかです。
例えば、
- 重要書類と貴重品だけ家族で探す
- 残す物まで家族で完全に仕分ける
- 何を残すか業者と一緒に確認する
- 処分品だけが残った状態で搬出を頼む
では、必要な作業時間が違います。
「実家を片付けてください」とだけ伝えるより、どこから業者へ任せたいかを伝えた方が、見積もりの条件をそろえやすくなります。
2.家庭ごみを実際に誰が収集・運搬するか
実家から出る家具や生活用品を、不要な廃棄物として運び出す場合には、一般廃棄物の処理ルールが関係します。
環境省は、家庭から出る廃棄物を収集・運搬するには、市区町村の一般廃棄物処理業の許可、または市区町村からの委託が必要と案内しています。
環境省|廃棄物の処分に「無許可」の回収業者を利用しないでください
確認するときは、
「この実家から出る処分品を、実際にどの会社が収集・運搬しますか?」
と聞きます。
片付けを受注する会社自身が運ぶ場合もあれば、地域の許可業者等が担当する場合もあります。
重要なのは、広告を出している会社名だけではなく、実際の収集・運搬主体です。
3.見積もりの対象範囲が明確か
実家は、居室だけ確認しても作業量が分からないことがあります。
見積もり時には、
- 居室
- 押し入れ
- 納戸
- 物置
- 倉庫
- 車庫
- 庭
- ベランダ
のうち、どこまで対象にするか決めます。
見積書でも、
- 仕分け
- 梱包
- 搬出
- 作業人数
- 車両
- 清掃
- 処理関係の費用
- 階段作業
- 養生
など、何が料金に含まれるのか確認します。
「実家片付け一式」とだけ記載されている場合は、その一式の範囲を聞きます。
4.追加料金とキャンセル条件を確認する
Webサイトの「○万円〜」は、最終的な支払額とは限りません。
契約前に、
- 荷物が想定より多かった場合
- 車両が追加になった場合
- 階段搬出が必要になった場合
- 予定外の家具解体が必要になった場合
- 作業時間が延びた場合
など、どの条件で金額が変わるか確認します。
キャンセル料についても、何日前からいくら発生するのか確認しておきます。
5.買取は作業料金と分けて確認する
実家には、まだ使用できる家電、家具、時計、貴金属、ブランド品、骨董品などが残っていることがあります。
片付けと同時に買取を行う事業者もあります。
中古品を事業として買い取る場合には古物商許可が関係します。
ただし、古物商許可は家庭ごみを回収するための許可ではありません。
また、
「買取で10万円値引きして総額20万円」
だけでは比較しにくいため、
- 片付け作業料金
- 買取査定額
を分けて提示してもらうと判断しやすくなります。
6.残す物をどう管理するか確認する
実家の片付けでは、料金以上に注意したいのが誤処分です。
特に、
- 通帳
- 印鑑
- 契約書
- 写真
- アルバム
- 手紙
- 形見
などは、一度処分すると元に戻せない場合があります。
残す物は、
- 別室へ移す
- 箱へまとめる
- 「処分禁止」と表示する
- 写真を撮る
- 一覧を業者へ渡す
といった方法で明確にします。
家族へ確認が必要な物が出てきたときに、作業を止めて連絡してもらえるかも確認します。
7.遠方なら鍵・写真・連絡方法を確認する
実家が遠方にあり、見積もりや作業のたびに立ち会えない場合があります。
立ち会いなしに対応する事業者へ頼む場合は、
- 鍵の受け渡し方法
- 作業前の室内写真
- 作業後の写真
- 残す物の一覧
- 判断が必要な物が出た場合の連絡方法
- 追加料金が発生する場合の事前承認
- 鍵の返却方法
を決めておきます。
特に「作業中に判断が必要になったとき、勝手に処分せず連絡する」というルールを決めておくと安心です。
「一般廃棄物」「産廃」「古物商」はそれぞれ別
業者のサイトには複数の許可名が表示されていることがあります。
名称が多いほど安心というわけではありません。
| 表示 | 主に関係する内容 |
|---|---|
| 一般廃棄物処理業 | 家庭から出る廃棄物の収集・運搬等 |
| 産業廃棄物処理業 | 事業活動から出る一定の産業廃棄物 |
| 古物商 | 中古品の買取・販売 |
環境省は、家庭の廃棄物について、産業廃棄物処理業許可や古物商許可だけでは回収できないと明示しています。
したがって、「産廃許可あり」「古物商許可あり」という表示だけで、実家から出る家庭ごみの処理体制まで確認したことにはなりません。
見積もりは2〜3社を同じ条件で比較する
国民生活センターは、不用品回収サービスについて、市区町村以外へ依頼する場合には許可業者を確認し、複数の事業者から見積もりを取り、追加料金やキャンセル料などを確認するよう案内しています。
実家の片付けでも、相見積もりをするなら条件をそろえます。
例えば、
- 3LDK+物置
- 残す物は家族が仕分け済み
- 大型家具はすべて搬出
- 簡易清掃あり
- 買取査定あり
という条件なら、すべての事業者へ同じ内容を伝えます。
A社には物置まで伝え、B社には室内だけを伝えた状態では、総額だけ比較しても適切な判断ができません。
実務上は2〜3社程度でも、見積内容や対応の違いを確認しやすくなります。
トラック積み放題・定額パックだけで決めない
「軽トラック積み放題○万円」「定額パック○万円」といった広告は分かりやすく見えます。
しかし、国民生活センターには、積み放題広告を見て依頼したところ、当日に積載条件を説明され、断るとキャンセル料を求められた事例や、広告より高額な料金を請求された事例が寄せられています。
そのため、パック名ではなく、
- どこまで積めるのか
- 人件費を含むか
- 階段料金を含むか
- 処理費用を含むか
- 追加車両はいくらか
- 当日の追加料金条件
を確認します。
売却予定なら片付け契約前に不動産会社へ相談する
実家を売る予定だからといって、必ず先に何十万円もかけて家を完全に空にする必要があるとは限りません。
仲介で一般の買主へ売る場合は、家財が少なく整理された状態の方が、室内の広さや状態を見せやすくなる傾向があります。
一方、不動産会社による買取では、残置物の処分を含めた条件で買い取るケースもあります。
したがって、売却予定の場合は、
- 貴重品・重要書類を確保する
- 明らかに残さない物だけ整理する
- 不動産会社へ売却方法を相談する
- 残置物をどこまで片付ける必要があるか確認する
- 必要な範囲だけ片付け業者へ依頼する
という順番も検討できます。
片付け費用を支払った後で、「そのままでも買取できた」と分かるケースを避けるためです。
親が存命の場合は、本人の意思を優先する
親が現在も実家で暮らしている場合、子どもだけで業者を呼び、大量に家財を処分するのは避けた方がよいでしょう。
本人から見れば、子どもには不要に見える物でも必要な場合があります。
業者を利用する場合も、
- 親本人が残す物を決める
- 子どもが作業を手伝う
- 重い家具等だけ業者へ頼む
という方法があります。
親が存命中の整理は、生前整理の総合ガイドも参考にしてください。
親が亡くなった後なら遺品整理業者が向く場合がある
親が亡くなった後の実家で、まだ何を残すか決まっていない場合は、単純な不用品回収より遺品整理を扱う事業者が向く場合があります。
遺品整理では、
- 重要書類・貴重品を探す
- 残す物と処分品を仕分ける
- 家族へ確認が必要な物を取り分ける
といった作業まで対応する会社があります。
一方、すでに家族が完全に仕分けを終え、処分する家具だけが残っているなら、必要な範囲はもっと小さくできます。
亡くなった後の業者選びについては、遺品整理業者の選び方でも詳しく整理しています。
業者へ依頼する前のチェックリスト
- 家族が残す物を決めた
- 重要書類・貴重品を確認した
- 対象になる部屋・物置・庭を決めた
- 仕分けから頼むか搬出だけか決めた
- 家庭ごみを実際に誰が収集・運搬するか確認した
- 買取を頼む場合は古物商許可を確認した
- 作業料金と買取査定額を分けた
- 追加料金の条件を確認した
- キャンセル料を確認した
- 同じ条件で複数社を比較した
- 売却予定なら不動産会社へ片付け範囲を確認した
よくある質問
実家の片付けはどんな業者へ頼めばよいですか?
処分する物がすでに決まっているのか、仕分けから必要なのかで変わります。残す物・重要書類を確認する必要があるなら遺品整理・生前整理等の仕分けに対応する事業者、処分品だけが決まっているなら適切な廃棄物処理体制を持つ事業者への依頼を検討します。
不用品回収と遺品整理はどう違いますか?
一般的には、不用品回収は処分する物が決まった後の搬出・回収が中心で、遺品整理は残す物・処分する物の仕分けや重要品の確認まで含むケースがあります。ただしサービス内容は会社ごとに違うため、名称だけでなく見積もりの作業範囲を確認してください。
一般廃棄物の許可がない片付け会社には依頼できませんか?
仕分けや清掃などの片付け作業まで一律に依頼できないという意味ではありません。ただし、家庭から出た廃棄物を実際に収集・運搬する部分については、市区町村の許可・委託等に基づく適切な処理体制が必要です。誰が実際に運搬するのかを確認してください。
産業廃棄物の許可があれば実家の不用品を回収できますか?
家庭から出る廃棄物については、産業廃棄物処理業の許可だけでは回収できません。環境省も家庭ごみの回収には一般廃棄物処理業の許可または市区町村の委託が必要だと案内しています。
買取も同じ業者へ頼めますか?
買取に対応する会社もあります。事業として中古品を買い取る場合には古物商許可が関係します。片付け料金と買取査定額を分けて提示してもらうと、他社との比較がしやすくなります。
見積もりは何社取ればよいですか?
複数社を比較できる状態にすることが重要です。実務上は2〜3社程度でも違いを確認しやすくなります。対象範囲や作業内容を同じにして比較してください。
遠方の実家でも立ち会いなしで頼めますか?
立ち会いなしに対応する事業者もあります。その場合は鍵の受け渡し、残す物の写真・一覧、作業前後の写真、判断が必要な物が出た場合の連絡方法、追加料金の承認方法を事前に決めておきます。
実家を売るなら先に全部片付けるべきですか?
必ずしも完全に空にしてから不動産会社へ相談する必要はありません。仲介では整理された状態が内覧に有利になることがありますが、不動産買取では残置物込みで対応する場合もあります。大きな片付け費用を支払う前に、売却方法と残置物の扱いを確認してください。
実家の片付け業者は「何を誰に頼むか」で選ぶ
実家の片付けでは、一番有名な会社や一番安い会社を探すことが目的ではありません。
残す物を誰が決めるのか。
仕分けを誰がするのか。
家具を誰が搬出するのか。
家庭から出る廃棄物を誰が収集・運搬するのか。
買取を誰が行うのか。
この流れを分けて確認すると、必要な業者が見えてきます。
そのうえで同じ条件の見積もりを比較し、料金だけでなく処理体制・追加条件・残す物の扱いまで確認してから依頼します。
実家の片付け全体の進め方は実家の片付けガイド、実家全体の今後については実家・家財整理のガイドも参照してください。