墓じまいを考えたとき、多くの人が最初に気になるのが「全部でいくらかかるのか」です。
2026年に公表された改葬・墓じまいの実態調査では、実施費用は31万円〜70万円が最も多く、約半数が70万円以下でした。
ただし、この数字だけを見て「墓じまいは50万円前後あればできる」と考えるのは適切ではありません。
墓じまいの総額は、現在ある墓石を撤去する費用だけでなく、寺院との手続き、遺骨の取り出し、行政手続き、そして新しい供養先まで含めて決まるからです。
墓じまい費用は、「現在のお墓を閉じる費用」と「遺骨を今後どこへ納めるかの費用」を分けて考えると把握しやすくなります。
墓じまい費用は4つに分けて考える
| 費用 | 主な内容 |
|---|---|
| 現在のお墓を閉じる費用 | 墓石解体・搬出・処分・基礎撤去・整地・遺骨取り出し等 |
| 寺院・宗教関係 | 閉眼供養等のお布施、寺院墓地の場合の離檀に関する費用等 |
| 行政・書類関係 | 改葬許可、証明書、戸籍、郵送等 |
| 新しい供養先 | 永代供養墓、納骨堂、樹木葬、新しい一般墓等 |
このうち、家庭によって特に差が大きくなりやすいのが、墓石撤去工事と新しい供養先です。
2026年調査では31万〜70万円が最多
2026年1月に実施された改葬・墓じまいに関する調査では、実施費用として「31万円〜70万円」が最も多く、約半数が70万円以下でした。
ただし、この調査は特定のお墓情報サービスを利用した人を対象としています。
また、墓じまいの条件は、
- 墓所の広さ
- 墓石の大きさ
- 墓地の場所
- 寺院墓地か霊園か
- 納められている遺骨の数
- 新しい供養先
によって大きく違います。
そのため31万〜70万円は「この金額で必ず終わる」という料金表ではなく、2026年調査で最も多かった実施価格帯として見るのが適切です。
墓石撤去の費用は墓所の広さだけでは決まらない
墓じまい費用の中で、大きな割合を占めやすいのが墓石撤去工事です。
2026年に公開されている石材店等の料金を見ると、墓石の解体・撤去について1㎡あたり8万円〜15万円程度を目安としている例があります。
ただし、これは公的な全国平均ではありません。
同じ2㎡のお墓でも工事条件によって金額は変わります。
墓石撤去費が高くなりやすい条件
- 墓所が広い
- 墓石・外柵が大きい
- 基礎が大きい・深い
- 階段が多い
- 山の中など搬出距離が長い
- 重機が墓所まで入れない
- トラックを近くへ停められない
- クレーン等が必要
- 墓地側から原状回復範囲を指定されている
反対に、平坦な場所で重機や車両が入りやすく、墓所が小さい場合は作業負担を抑えられることがあります。
見積書では「1㎡いくら」だけを見ない
墓石撤去の見積もりでは、㎡単価だけで会社を比較しないようにします。
確認したいのは、
- 墓石解体
- 石材搬出
- 石材処分
- 外柵撤去
- 基礎撤去
- カロート・納骨室の撤去
- 整地
- 重機
- 運搬
- 遺骨取り出し
のどこまで含まれているかです。
例えばA社が20万円、B社が25万円でも、A社では基礎撤去・整地が別料金なら、最終的にはB社の方が安くなることがあります。
墓地に指定石材店があると相見積もりできない場合がある
寺院墓地や民営霊園では、墓石工事を行える石材店が指定されている場合があります。
指定石材店制度がある墓地では、「インターネットで安い業者を見つけたから依頼する」ということができない場合があります。
そのため、見積もりを探す前に墓地管理者へ、
- 指定石材店があるか
- 複数の指定店から選べるか
- 撤去後の整地条件
を確認します。
遺骨の取り出し費用が別になることもある
墓石撤去費用に遺骨の取り出しまで含む業者もあれば、別料金の業者もあります。
また、新しい供養先によっては、
- 骨壺の入れ替え
- 遺骨の乾燥
- 洗骨
- 粉骨
などを求められる場合があります。
墓石撤去会社だけではなく、新しく遺骨を受け入れる施設側にも、納骨できる状態を確認しておきます。
閉眼供養のお布施はいくら?
寺院や宗派によって、墓石を撤去する前に閉眼供養、魂抜きなどと呼ばれる儀礼を行うことがあります。
このお布施に全国共通の公定料金はありません。
地域、宗派、寺院との関係によって異なるため、墓じまいを相談するときに寺院へ確認します。
また、閉眼供養は墓埋法上の改葬許可手数料とは別の、宗教上の儀礼です。
離檀料には全国共通の相場がない
寺院墓地を使用している場合、墓じまいに伴って「離檀料」という言葉が出ることがあります。
離檀料について、全国一律に「○万円」と決めた料金表や法律上の定額はありません。
寺院から金額を提示された場合は、
- 何に対する費用なのか
- 墓地使用規則に定めがあるか
- 閉眼供養のお布施とは別なのか
- 墓所返還に必要な費用が含まれているのか
を確認します。
墓じまいでは、高額な離檀料を請求されてトラブルになる相談もあります。
金額に納得できない場合は、すぐに支払いや契約を決めず、寺院と話し合い、必要なら消費生活センターや法律専門家へ相談します。
改葬許可の手数料は自治体によって違う
遺骨を別のお墓や納骨堂へ移す場合には、現在遺骨がある市区町村から改葬許可を受けます。
改葬許可自体を無料としている自治体があります。
一方で、有料の自治体もあります。
そのため、「改葬許可は全国どこでも無料」「全国一律○円」とは考えず、現在のお墓がある自治体へ確認します。
また、改葬許可以外にも、
- 戸籍等の取得
- 郵送料
- 現在の墓地管理者による埋蔵・収蔵証明
などで費用がかかる場合があります。
新しい供養先が墓じまい総額を大きく左右する
墓じまい費用で特に見落としやすいのが、墓を撤去した後の費用です。
墓石撤去だけ終わっても、遺骨の行き先が決まっていなければ墓じまい全体は完了しません。
新しい供養先には、
- 合祀・合葬墓
- 永代供養墓
- 樹木葬
- 納骨堂
- 新しい一般墓
などがあります。
新しいお墓の費用には大きな差がある
2026年のお墓購入者調査では、平均購入金額は、
| 種類 | 2026年調査の平均購入金額 |
|---|---|
| 一般墓 | 152.0万円 |
| 納骨堂 | 81.5万円 |
| 樹木葬 | 71.7万円 |
でした。
ただし、これは墓じまいをした人の改葬先だけを調べたデータではなく、お墓を購入した人全体の平均です。
そのまま「墓じまいをしたらこの金額が必要」と考えるものではありません。
重要なのは、新しい供養方法によって墓じまい全体の予算が大きく変わることです。
合祀・合葬墓は金額だけで決めない
2026年のお墓購入者調査では、合祀墓・合葬墓を選んだ人の割合が一般墓や納骨堂を上回っています。
管理負担を抑えられる供養方法として選ばれていますが、施設ごとに条件は大きく違います。
特に確認したいのは、
- 最初から他の遺骨と一緒になるのか
- 一定期間個別に納骨した後に合祀するのか
- 合祀後に遺骨を取り出せるか
- 年間管理料が必要か
- 納骨できる遺骨の数
です。
一度合祀した後は、特定の遺骨だけを取り出せない施設もあります。
安さだけで選ぶのではなく、将来の取り扱いまで確認します。
墓じまい総額の計算方法
自分の墓じまい予算は、次の形で考えると整理しやすくなります。
墓石撤去・墓所返還費 + 遺骨関係費 + 寺院関係費 + 行政・書類費 + 新しい供養先
例えば、撤去工事だけを見て「25万円で墓じまいできる」と判断しても、新しい納骨堂へ80万円かかれば総額は100万円を超えます。
反対に、新しい供養先の費用を抑えられれば、全体の金額も下げやすくなります。
墓じまい費用が高くなりやすいケース
墓所が広い
撤去する石材・基礎・外柵が増えるため、工事量が増えます。
重機が入れない
階段や狭い参道、山間部などで人力搬出が増えると費用が上がりやすくなります。
大型の墓石・外柵がある
クレーンや大きな運搬車両が必要になる場合があります。
遺骨の数が多い
新しい供養先が1柱・1霊ごとに料金を設定している場合、遺骨数によって総額が増えることがあります。
新しい一般墓を購入する
墓地使用料、新しい墓石、施工費等が必要になるため、他の供養方法より高額になる場合があります。
手続きをすべて代行する
行政書類、石材店手配、寺院対応、納骨先探しなどを一括代行するサービスでは、実作業費以外の代行料金が含まれることがあります。
何を自分で行い、何を依頼するかを確認します。
見積もりで確認したい項目
墓じまいの見積書が「一式○万円」だけになっている場合は、内訳を確認します。
| 確認項目 | チェックする内容 |
|---|---|
| 墓石撤去 | 墓石・外柵・基礎の範囲 |
| 運搬・処分 | 石材処分費を含むか |
| 整地 | 墓地が求める状態まで戻すか |
| 遺骨 | 取り出し・骨壺交換等を含むか |
| 重機 | クレーン・特殊搬出等が別料金か |
| 行政手続き | 自分で行うか代行か |
| 寺院対応 | 業者料金に含むのか別途寺院へ支払うのか |
| 追加料金 | どの条件で追加になるか |
| キャンセル | 工事前キャンセルの条件 |
墓じまい費用を抑える方法
1.先に新しい供養先を決める
墓石撤去だけ安くても、新しい供養先が高額なら全体予算は下がりません。
初期費用だけでなく、将来の管理料も含めて比較します。
2.指定石材店の有無を最初に確認する
外部業者へ見積もりを取った後で指定石材店しか利用できないと分かると、比較作業が無駄になります。
3.自由に業者を選べるなら同じ条件で比較する
複数社から見積もりを取る場合は、
- 墓石
- 外柵
- 基礎
- 整地
- 遺骨取り出し
など同じ作業範囲で比較します。
4.代行サービスを必要な部分だけ使う
改葬許可申請を自分で行える場合は、自分で申請する選択肢があります。
反対に遠方で何度も現地へ行く交通費・時間が大きい場合は、代行した方が合理的なケースもあります。
5.墓地や自治体独自の制度を確認する
墓地によっては墓所返還や合葬墓への移転に独自制度を設けている場合があります。
一方、墓じまい費用を全国共通で補助する制度があるわけではありません。
現在のお墓がある墓地・自治体に個別に確認します。
墓じまい費用は誰が払う?
墓じまい費用について、「長男が全額払う」「兄弟で均等に分ける」と全国一律に決めたルールがあるわけではありません。
実際には、
- 現在の墓地使用者
- 祭祀を承継した人
- 兄弟姉妹
- 今後の供養を担う家族
などで話し合って決めることになります。
墓じまいを進めてから費用分担を相談すると揉めやすいため、見積もりが出た段階で、誰がどの費用を負担するか確認しておく方が進めやすくなります。
安い見積もりだけで業者を決めない
墓じまい費用を抑えることは重要ですが、最安値だけで業者を選ぶと、後から追加料金が発生する場合があります。
例えば、
- 基礎撤去が別
- 整地が別
- 遺骨取り出しが別
- 重機費用が別
- 搬出距離による追加料金
などです。
見積もりの総額より、何が含まれているかを比較します。
よくある質問
墓じまいの費用はいくらですか?
2026年の改葬・墓じまい調査では、実施費用31万円〜70万円が最も多く、約半数が70万円以下でした。ただし墓石の大きさ、立地、寺院との関係、新しい供養先などで大きく変わります。
墓石撤去は1㎡いくらですか?
2026年時点の石材店等の公開料金では1㎡あたり8万円〜15万円程度を目安としている例があります。ただし公的な全国平均ではなく、重機搬入や基礎・外柵等の条件によって変わります。
離檀料はいくらですか?
全国共通の定額はありません。国民生活センターも明確な料金基準はないと案内しています。金額を提示された場合は、何に対する費用なのか確認してください。
改葬許可にお金はかかりますか?
無料の自治体がありますが、有料の自治体もあります。また墓地管理者の証明、戸籍、郵送などで別途費用が必要になる場合があります。
永代供養にすると墓じまい費用は安くなりますか?
新しい一般墓を購入する場合より費用を抑えられるケースがありますが、永代供養の中でも合祀、個別安置、樹木葬、納骨堂などで料金は大きく異なります。
墓じまい費用を安くするには?
墓石撤去だけを見るのではなく、新しい供養先まで含めて総額を比較します。指定石材店の有無を先に確認し、自由に業者を選べる場合は同じ工事範囲で見積もりを比較してください。
墓じまい費用に補助金はありますか?
全国共通の墓じまい補助金があるわけではありません。自治体や墓地独自の返還・改葬制度がある場合があるため、現在のお墓がある自治体や墓地管理者へ確認します。
見積もりより高くなることはありますか?
墓石の基礎、搬出条件、追加石材、重機などが現場で判明すると追加になる場合があります。どの条件で追加料金が発生するかを契約前に確認します。
墓じまい費用は「墓石撤去代」ではなく総額で比較する
墓じまい費用を考えるとき、最初に目につきやすいのは墓石撤去料金です。
しかし、本当に必要な予算はそれだけではありません。
墓石を撤去する。
遺骨を取り出す。
寺院・墓地との手続きをする。
改葬許可を取る。
そして新しい場所へ遺骨を納める。
ここまで含めて墓じまいです。
そのため、最初に「墓石撤去20万円」という数字だけで判断するのではなく、現在のお墓を閉じる費用と、新しい供養先まで含めた総額を出してから比較します。