遺品整理と特殊清掃の違いは?必要なケース・作業内容・依頼する順番

家族が亡くなった後の部屋について調べると、「遺品整理」と「特殊清掃」という2つのサービスが出てくることがあります。

両方をまとめて提供している会社もあるため、同じ作業のように見えますが、目的は異なります。

遺品整理は、故人が残した物を確認し、残す物・形見・貴重品・売却する物・処分する物などへ仕分ける作業です。

特殊清掃は、体液や血液等による汚染、強い臭気、害虫など、通常の掃除では対応しにくい状態になった室内へ専門的な処置を行う作業です。

そのため、

「人が亡くなった部屋だから必ず特殊清掃」

というわけではありません。

一方で、汚染や強い臭いが残った室内で、家族がいきなり遺品整理を始めるのも適切ではない場合があります。

この記事では、遺品整理と特殊清掃の違い、どのような状態なら特殊清掃を検討するのか、両方必要な場合の進め方、見積もりで確認する内容まで整理します。

実家・家財全体の整理については、実家・家財整理の案内もあわせて確認してください。

目次

遺品整理と特殊清掃の違い

項目 遺品整理 特殊清掃
主な目的 故人の物を確認・整理する 通常清掃では対応しにくい汚染・臭気等へ対応する
主な対象 家具、衣類、書類、貴重品、写真、家電など 体液等による汚染、強い臭気、害虫、汚染した床・壁等
主な作業 探索、仕分け、買取、搬出、処分手配 汚染除去、除菌・消臭、害虫対応、必要に応じた汚染建材への処置
必要になる場面 故人の家財を整理するとき 通常の清掃では対応しにくい汚染等があるとき
死亡後に必ず必要か 家財整理が必要なら行う 現場状態による

最も大きな違いは、「物を整理する作業」なのか、「室内の汚染へ対応する作業」なのかです。

遺品整理では何をする?

遺品整理では、故人が残した物を一つずつ確認します。

主な作業は、

  • 現金・通帳・印鑑等の探索
  • 重要書類の確保
  • 写真・形見の仕分け
  • 貴金属・時計等の買取候補の選別
  • 家具・家電の整理
  • 不要品の搬出
  • 家庭ごみ等の適切な処分手配

です。

部屋そのものに特殊な汚染がなければ、特殊清掃を伴わず遺品整理だけで終わるケースもあります。

特殊清掃では何をする?

特殊清掃は、一般的なハウスクリーニングでは対応しにくい状態を対象にします。

現場によって作業内容は異なりますが、たとえば、

  • 体液・血液等による汚染への対応
  • 腐敗物等の除去
  • 害虫への対応
  • 強い臭気の原因確認
  • 消臭・除菌
  • 汚染した畳・床材等の撤去
  • 床・壁・巾木・下地等の確認

などがあります。

表面をきれいにするだけではなく、臭いや汚染の原因が床材・壁際・下地等へ達していないか確認しながら処置する点が、通常清掃との大きな違いです。

人が亡くなった部屋なら特殊清掃は必ず必要?

いいえ。

室内で人が亡くなったという事実だけで、特殊清掃が必ず必要になるわけではありません。

たとえば、発見が早く、

  • 体液等による室内汚染がない
  • 強い臭いが残っていない
  • 害虫が発生していない
  • 通常清掃で対応できる状態

であれば、遺品整理と通常清掃だけで対応できることがあります。

反対に、発見まで時間がかかり、汚染・臭気・害虫等がある場合には特殊清掃を検討します。

特殊清掃を検討する主なケース

体液・血液等による汚染がある

床、布団、畳、カーペット等に通常の掃除では対応しにくい汚染がある場合です。

見た目では表面だけの汚れに見えても、床材等へ影響が及んでいることがあります。

強い臭いが残っている

換気や一般的な消臭剤だけでは改善しない強い臭気がある場合です。

臭いを香料等で一時的に隠すのではなく、原因箇所を確認する必要があります。

害虫が発生している

室内にハエ等の害虫が多数発生している場合には、単なる家財整理より先に衛生状態を確認します。

床や壁など建材へ影響している

汚染・臭気が床材、巾木、壁際、下地等へ及んでいる場合、表面清掃だけでは対応できないことがあります。

孤独死でも特殊清掃が不要な場合はある

「孤独死」と聞くと、必ず室内が深刻に汚染されているイメージを持つかもしれません。

しかし、実際には発見までの時間や室温、亡くなった場所、室内状況などによって状態は異なります。

早期に発見され、特殊な汚染や臭気が残っていないなら、特殊清掃を行わず通常の遺品整理へ進めるケースもあります。

したがって、

「孤独死だから特殊清掃一式」

と最初から決めるのではなく、現場を確認して必要な作業だけ見積もってもらうことが重要です。

ゴミ屋敷なら特殊清掃が必要?

ゴミ屋敷状態と特殊清掃が必要な状態も同じではありません。

大量の衣類、新聞、生活用品などが積み上がっていても、特殊な汚染がなければ、中心となる作業は大量家財の仕分け・搬出です。

一方で、

  • 腐敗物が大量にある
  • 強い悪臭がある
  • 害虫が大量発生している
  • 床・壁等に深刻な汚染がある

場合には、清掃・消臭等の追加対応が必要になることがあります。

つまり、

ゴミ屋敷=特殊清掃

ではなく、物量と汚染状態を別々に判断します。

特殊清掃とハウスクリーニングの違い

ハウスクリーニングは、日常生活で発生する、

  • 水回りの汚れ
  • 油汚れ
  • ほこり
  • 一般的なカビ
  • 室内清掃

などをきれいにするサービスです。

一方、特殊清掃は、体液等による汚染や強い臭気、害虫、建材への影響など、通常清掃では対応しにくい状態が対象になります。

そのため、「掃除会社ならどこでも同じ」ではありません。

遺品整理と特殊清掃はどちらを先にする?

ここは「特殊清掃が必ず先」「遺品整理が必ず先」と一律には決めません。

現場状態によって作業を分けます。

特殊な汚染がない場合

通常の遺品整理を行い、その後に必要な清掃へ進めます。

  1. 重要書類・貴重品を確認
  2. 遺品を仕分ける
  3. 不要品を搬出する
  4. 通常清掃を行う

汚染・強い臭気・害虫等がある場合

室内で安全に遺品整理を行いにくい状態なら、先に必要な範囲の処置を行います。

一般的には、

  1. 現場へ立ち入って作業を開始してよい状態か確認する
  2. 必要な初期の汚染・害虫・臭気対策を行う
  3. 遺品を探索・仕分けする
  4. 家財を搬出する
  5. 家財の下に隠れていた床・壁等を再確認する
  6. 必要なら追加の特殊清掃・建材撤去等を行う
  7. 必要な原状回復へ進む

という段階的な進め方があります。

一度の「特殊清掃」で全部完了するとは限りません。

警察等による現場確認がある場合は、その前に片付けない

死亡状況によって警察等による確認が行われている場合には、遺族や清掃会社の判断だけで先に室内を片付けないようにします。

入室・清掃・遺品搬出を始めてよい状態かを確認してから進めてください。

すでに必要な確認が終了しているケースでは、その後の室内状態を見て清掃と遺品整理の順番を決めます。

汚染がある場合は家族が無理に遺品を探さない

通帳や印鑑を早く探したい場合でも、室内に強い臭気・汚染・害虫等があるなら、家族が長時間立ち入って仕分けることを優先する必要はありません。

まず作業可能な状態か確認します。

専門業者へ頼む場合は、

  • 通帳
  • 印鑑
  • 現金
  • 遺言書
  • 保険書類
  • 不動産書類
  • 写真
  • 貴金属

など、探してほしい物を具体的に指定します。

特殊清掃と遺品整理を同じ会社に頼むべき?

同じ会社へまとめて依頼できる場合があります。

一社で対応すると、

  • 初期清掃
  • 遺品整理
  • 搬出
  • 再清掃
  • 消臭

を連続して進めやすいという利点があります。

一方、会社によって得意分野は異なります。

「遺品整理も特殊清掃も対応」と書いてあることだけではなく、今回必要な作業を具体的に確認してください。

一社へまとめて頼む場合も見積もりを分けてもらう

見積書では、できるだけ、

  • 特殊清掃
  • 害虫対応
  • 消臭
  • 遺品仕分け
  • 家財搬出
  • 廃棄物処理
  • 買取
  • 内装撤去
  • 原状回復

を分けて確認します。

「全部込み○万円」だけでは、どこまで施工する契約なのか判断しにくくなります。

特殊清掃の費用が変わる主な要因

特殊清掃は、間取りだけで料金を判断しにくいサービスです。

同じ1Kでも現場状態によって必要な作業が異なります。

汚染範囲

一部分だけなのか、床・壁等へ広がっているのかで変わります。

臭気の程度

臭気原因が表面だけなのか、建材内部へ及んでいるのかでも作業が変わります。

害虫

害虫対応が必要かどうかでも追加工程が発生します。

建材の撤去

畳・床材・巾木・壁材等の撤去が必要になれば費用が変わります。

遺品・家財量

特殊清掃に加えて大量の家財整理が必要なら、遺品整理側の費用も増えます。

原状回復

清掃だけで終了するのか、床・壁等の復旧工事まで依頼するのかでも変わります。

「特殊清掃○万円~」だけで業者を比較しない

特殊清掃会社の料金表には、

  • 消臭
  • 除菌
  • 害虫対応
  • 汚染物撤去

など個別作業の最低料金が掲載されていることがあります。

しかし、実際の現場で必要になる作業の組み合わせは異なります。

そのため、最低料金だけで最終費用を判断せず、現地状況に基づく見積もりを確認します。

見積もりで確認する10項目

  • □ 特殊清掃の具体的な施工箇所
  • □ 汚染物の撤去範囲
  • □ 消臭・除菌の内容
  • □ 害虫対応の有無
  • □ 床・壁等を撤去するか
  • □ 遺品整理料金
  • □ 家財搬出料金
  • □ 廃棄物処理料金
  • □ 原状回復工事を含むか
  • □ 追加料金が発生する条件

特に、「臭いが残った場合の追加施工」が最初の見積もりに含まれるのか、別料金になるのかを確認してください。

現地見積もりを取る

特殊清掃は、電話で間取りだけを伝えて正確な施工範囲を決めることが難しい場合があります。

可能であれば現地を確認してもらい、

  • 汚染範囲
  • 臭気
  • 害虫
  • 家財量
  • 床・壁等への影響

を見てもらいます。

複数社を比較する場合は、各社へ同じ条件を伝えてください。

特殊清掃後の臭いについて確認する

特殊清掃では「消臭済み」という言葉だけでなく、どの範囲まで処置する契約なのかを確認します。

臭気の原因が床材等に残っている場合、表面清掃だけでは改善しないことがあります。

見積もり時に、

  • どこを臭気原因と見ているか
  • 床材等の撤去が必要か
  • 一度の施工で終わらない場合の対応
  • 追加施工の料金

を聞いておくと比較しやすくなります。

賃貸住宅では管理会社・貸主にも確認する

故人が賃貸住宅に住んでいた場合、床・壁などは遺族の所有物ではありません。

そのため、特殊清掃会社が、

  • 床材を剥がす
  • 壁材を撤去する
  • 設備を外す

など建物へ手を加える前に、管理会社・貸主との調整が必要になる場合があります。

相続人側の判断だけで大きな工事を進めず、施工範囲を確認します。

持ち家でも必要以上の原状回復を急がない

持ち家の場合も、特殊清掃後にどこまでリフォームするかは、家の今後によって変わります。

たとえば、

  • 家族が住む
  • 売却する
  • 建物を解体する
  • 空き家として保有する

では、必要な工事範囲が同じとは限りません。

売却や解体を予定しているなら、清掃会社だけで原状回復工事を決めず、不動産会社・解体会社等へも今後の方針を確認してから施工範囲を決める方法があります。

相続放棄を考えている場合は家財処分を急がない

特殊清掃が必要でも、遺品の所有関係は別の問題です。

相続放棄を検討している場合、価値のある遺品を売却・処分することが相続放棄との関係で問題になる場合があります。

そのため、

  • 衛生上必要な清掃
  • 相続財産の売却・処分

を同じ作業として一括処理しないよう注意します。

業者へも相続放棄を検討していることを伝え、依頼者の確認なく価値ある遺品を買取・処分しないよう指定します。

家庭ごみの処分体制も確認する

特殊清掃会社や遺品整理会社が、室内から出た家庭ごみを自社で自由に収集運搬できるとは限りません。

家庭から出る一般廃棄物を収集運搬する場合、市区町村の一般廃棄物処理業許可や、市区町村からの委託等の適法な体制が必要です。

遺品整理会社自身が許可を持っていない場合でも、地域の許可業者と連携して処理する方法があります。

見積もり時には、

「撤去した家財・廃棄物は誰が運びますか?」

と確認してください。

買取を行う場合は清掃費と分ける

特殊清掃・遺品整理と同時に、時計、貴金属、家電等の買取を行う会社もあります。

この場合は、

  • 特殊清掃費
  • 遺品整理費
  • 処分費
  • 買取査定額

を別々に確認します。

差引後の支払額だけでは、清掃が高いのか、査定が低いのか分かりにくいためです。

保険に加入していないか確認する

賃貸住宅などでは、加入している家財保険・少額短期保険等に、死亡後の遺品整理費用や原状回復費用に関する補償が付いている場合があります。

すべての保険で補償されるわけではありません。

契約内容によって対象・上限・必要書類が異なるため、加入していた保険会社・代理店へ確認します。

工事前の写真、見積書、請求書等が必要になる可能性もあるため、大きな施工を始める前に確認しておく方法があります。

遺品整理・特殊清掃業者を比較するときのポイント

必要な作業を説明できる

「特殊清掃一式」ではなく、現場のどこに何の処置が必要なのか説明してもらいます。

見積書に作業範囲が書かれている

特殊清掃、遺品整理、搬出、廃棄、原状回復を区別します。

追加料金条件を確認できる

床材撤去や追加消臭等が後から必要になった場合の料金を確認します。

処分禁止品を指定できる

通帳・印鑑・写真・貴金属等を残すルールを共有します。

家庭ごみの処理ルートを説明できる

大量の家財を誰がどのルートで収集・運搬するのか確認します。

遺品整理と特殊清掃を依頼する流れ

STEP1|現場へ入ってよい状態か確認する

警察等による確認が必要な状況では、まずその確認を終えます。

STEP2|室内状態を確認する

汚染、臭気、害虫、家財量を確認します。

STEP3|残してほしい遺品を指定する

通帳・印鑑・書類・写真等の探索リストを作ります。

STEP4|現地見積もりを取る

可能なら複数社から同じ条件で見積もりを取ります。

STEP5|初期の特殊清掃が必要か決める

遺品整理を安全に進めるための処置が必要なら先に行います。

STEP6|遺品整理・家財搬出

家財の探索、仕分け、搬出を進めます。

STEP7|家財の下を再確認する

床・壁際等の汚染や残臭を確認します。

STEP8|必要な追加清掃・原状回復

特殊清掃の追加工程や修繕が必要か判断します。

STEP9|家の今後を決める

賃貸なら明渡し、持ち家なら居住・管理・売却・解体等へ進みます。

よくある質問

遺品整理と特殊清掃は同じですか?

同じではありません。

遺品整理は故人の物を探索・仕分け・搬出する作業、特殊清掃は通常清掃では対応しにくい汚染・臭気・害虫等へ対応する作業です。

孤独死の場合は必ず特殊清掃が必要ですか?

必ずではありません。

発見が早く、特殊な汚染・強い臭気・害虫等がなければ、通常の遺品整理と清掃で対応できる場合があります。

特殊清掃と遺品整理はどちらが先ですか?

現場状態によります。

汚染等がなく安全に作業できるなら遺品整理から進められます。

汚染・臭気等によって作業が難しい場合は、必要な初期処置を先に行い、その後に遺品整理、家財撤去後の追加清掃へ進む方法があります。

ゴミ屋敷なら特殊清掃になりますか?

大量の物があることだけで特殊清掃になるわけではありません。

大量家財の片付けと、特殊な汚染への対応を分けて判断します。

ハウスクリーニングでは対応できませんか?

通常の生活汚れならハウスクリーニングで対応できる場合があります。

体液等による汚染、強い臭気、害虫、建材内部への影響などがある場合は、特殊清掃を扱う事業者へ相談した方がよいでしょう。

同じ会社に遺品整理と特殊清掃を頼めますか?

両方に対応する会社があります。

ただし、見積書では特殊清掃と遺品整理それぞれの作業内容・料金を確認してください。

特殊清掃はいくらかかりますか?

現場ごとの差が大きいため、間取りだけで一律には判断できません。

汚染範囲、臭気、害虫、建材撤去、遺品量、原状回復等によって変わります。

特殊清掃をしたら臭いは必ず完全になくなりますか?

現場状態や施工範囲によって異なります。

臭気原因が建材内部等に残っていれば追加施工が必要になることもあるため、契約時に施工範囲と追加対応を確認してください。

賃貸住宅でも遺族が特殊清掃業者を決めてよいですか?

清掃について相談することはできますが、床・壁等の撤去や原状回復については貸主・管理会社との調整が必要になる場合があります。

大きな施工を行う前に確認してください。

相続放棄を考えている場合でも特殊清掃できますか?

衛生上必要な対応と、価値のある相続財産を売却・廃棄することは分けて考える必要があります。

相続放棄を検討中なら、その旨を業者へ伝え、遺品を自己判断で処分しないようにしてください。

遺品整理と特殊清掃は「部屋の状態」で分ける

遺品整理と特殊清掃の違いは、難しく考える必要はありません。

物を整理するのが遺品整理。

通常清掃では対応しにくい汚染や臭気等へ対応するのが特殊清掃。

というのが基本です。

そのうえで、

  1. 室内に入ってよい状態か確認する
  2. 汚染・臭気・害虫の有無を見る
  3. 特殊清掃が必要か判断する
  4. 重要品を指定して遺品整理する
  5. 家財搬出後に床・壁等を再確認する
  6. 必要な追加清掃・原状回復へ進む

という順番で考えます。

死亡したという事実だけで特殊清掃一式を依頼する必要はありません。

反対に、汚染がある部屋へ無理に入り、自分たちで遺品整理を始めることも避けた方がよい場合があります。

現地を確認したうえで、特殊清掃・遺品整理・家財処分・原状回復を分けて見積もり、必要な作業だけ依頼してください。

親が亡くなった後の手続き全体については、親が亡くなった後の手続きを確認してください。

実家・家財全体の整理については、実家・家財整理の案内から現在の状況に合う項目を確認してください。

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