親や家族が亡くなった後、実家へ入ってみると、床が見えないほど物が積み重なっていたり、何年分もの生活用品やごみが残っていたりすることがあります。
この状態では、通常の遺品整理と同じように、部屋ごとに「残す・捨てる」と仕分けるだけでは進まない場合があります。
大量の物の中には、
- 現金
- 通帳
- 印鑑
- 遺言書
- 保険・不動産関係書類
- 貴金属
- 時計
- 写真・形見
などが埋もれていることがあります。
一方で、腐敗した食品、悪臭、害虫、カビ、倒れそうな荷物などがあり、安全面・衛生面への対応を先に考えた方がよい現場もあります。
ゴミ屋敷状態の遺品整理では、最初から「全部捨てる」のではなく、
- 安全を確認する
- 重要書類・貴重品を救出する
- 物量と衛生状態を把握する
- 自分で行う範囲を決める
- 必要なら業者へ現地見積もりを依頼する
- 仕分け・搬出・処分・清掃を進める
という順番で考えると整理しやすくなります。
実家・家財全体の整理については、実家・家財整理の案内もあわせて確認してください。
ゴミ屋敷状態の遺品整理は通常の遺品整理と何が違う?
一般的な遺品整理でも、残す物と処分する物を分け、大型家具や家電を搬出します。
ゴミ屋敷状態では、これに加えて、
- 大量の生活用品・廃棄物
- 袋・箱の中身が分からない
- 床や通路が見えない
- 収納の奥まで大量に物がある
- 食品・生ごみが残っている
- 害虫・悪臭がある
- 家財とごみが混在している
- 貴重品を探しながら作業する必要がある
といった問題が加わります。
そのため、間取りだけを見て「3LDKだから○万円」と単純に判断しにくいのが特徴です。
最初に家へ入れる状態か確認する
大量の荷物がある家では、まず安全を確認します。
たとえば、
- 玄関から中へ安全に入れるか
- 荷物が崩れそうになっていないか
- 床が腐食・破損していないか
- 割れたガラス・刃物がないか
- 害虫が大量発生していないか
- 強い悪臭がないか
- 腐敗物が大量にないか
を確認します。
環境省の調査でも、いわゆる「ごみ屋敷」では悪臭や害虫だけでなく、堆積物の崩落や火災等の危険が問題になることが示されています。
危険な状態なら、家族だけで荷物の山へ入っていくことを優先せず、専門業者等への相談を検討します。
ゴミを捨てる前に重要書類と貴重品を探す
ゴミ屋敷状態でも、故人の家にある物がすべて不要品とは限りません。
大量処分を始める前に、少なくとも次の物を探します。
重要書類
- 遺言書
- 通帳
- 証券会社の書類
- 生命保険
- 不動産関係書類
- 借入・ローン関係書類
- 税務書類
- 年金関係書類
貴重品
- 現金
- 印鑑
- キャッシュカード
- 貴金属
- 腕時計
- ブランド品
- 骨董品
- 鍵
家族確認品
- 写真
- アルバム
- 手紙
- 形見候補
- スマートフォン・パソコン
大量の新聞・封筒・衣類の中に紛れていることもあります。
「ごみ袋に入っているから全部ごみ」と決めつけないことが重要です。
重要品を探す箱と処分する袋を分ける
自分たちで仕分ける場合は、最低でも、
- 重要書類
- 現金・貴重品
- 家族確認
- 買取候補
- 処分
- 保留
に分けます。
重要品を見つけたら、その場で別室や車などの安全な場所へ移し、処分品へ再び混ざらないようにします。
全部を1日で片付けようとしない
ゴミ屋敷状態では、一見すると「ごみ袋に入れて運び出せば終わる」と思うことがあります。
実際には、
- 中身の確認
- 分別
- 重要品の捜索
- 大型家具の解体
- 家電処理
- 搬出
- 清掃
が必要になります。
家一軒分であれば、家族だけで短時間に終わらせるのが難しい場合があります。
期限がある場合は、最初に退去・売却・引渡し日から逆算してください。
自分で片付けやすいケース
次のような状態であれば、家族で一部を進めやすい場合があります。
- 床や通路が確保できる
- 腐敗物が少ない
- 害虫が深刻ではない
- 悪臭が強くない
- 大型家具が少ない
- 作業期限に余裕がある
- 家族が複数人集まれる
この場合でも、重要書類・貴重品の救出を先に行います。
業者へ切り替えた方がよいケース
次のような状況なら、家族だけで無理に進めない方がよい場合があります。
- 玄関から入れないほど物がある
- 床がほとんど見えない
- 物が肩・頭の高さまで積み重なっている
- 大型家具・家電が大量にある
- 腐敗した食品が多い
- ゴキブリ・ハエ等が大量発生している
- 強い悪臭がある
- 作業期限が迫っている
- 実家が遠方
- 家族が作業できない
業者を使うことは、「家族が何も確認せず全部捨ててもらう」ことではありません。
重要品の捜索ルールを決めたうえで、大量物の仕分け・搬出など負担の大きい部分を任せる方法があります。
ゴミ屋敷なら必ず特殊清掃が必要?
必ずではありません。
「物やごみが大量にある」という状態と、「特殊清掃が必要な状態」は同じではありません。
大量の衣類・紙・生活用品があるだけなら、通常の遺品整理・ゴミ屋敷片付け・清掃で対応できる場合があります。
一方、
- 体液等による汚染
- 強い腐敗臭
- 汚染物の撤去
- 深刻な害虫発生
- 専門的な消臭・除菌
が必要な状態では、通常の片付けとは別に特殊清掃を検討する場合があります。
「ゴミ屋敷」という言葉だけで特殊清掃が必要と決めず、現場の汚損・臭気・衛生状態を確認します。
害虫・悪臭がある場合
食品、生ごみ、ペット用品などが長期間放置されていると、害虫や悪臭が発生することがあります。
軽度であれば通常清掃で対応できる場合がありますが、深刻なら、
- 害虫駆除
- 除菌
- 消臭
- 汚染物撤去
が必要になることがあります。
見積もり時に、
- 害虫がいること
- 腐敗物があること
- 臭いの程度
- 汚損場所
を隠さず伝えます。
ゴミ屋敷の遺品整理費用はいくら?
ゴミ屋敷状態では、間取りだけでは費用を決めにくくなります。
現在の比較サービスでも間取り別の参考料金は掲載されていますが、実際の料金は家財量や部屋の状況によって変動するとされています。
そのため、本記事では「ゴミ屋敷3LDKなら全国一律○万円」という相場は示しません。
費用を左右する主な8項目
1.物の量
同じ1Kでも、床が見える状態と天井近くまで物がある状態では作業量が大きく違います。
2.仕分けの難しさ
重要書類・現金・形見等を探しながら一品ずつ確認する必要があれば時間が増えます。
3.作業人数
大量の家財を短期間で処理するには人員が必要になる場合があります。
4.車両台数
搬出量が多ければ、必要な車両・運搬回数も増えます。
5.階段・エレベーター・搬出距離
玄関から車両までの距離、階数、エレベーターの有無などが作業負担へ影響します。
6.腐敗物・害虫・悪臭
衛生対応や防護、清掃等が必要な場合があります。
7.清掃の範囲
簡易清掃で終わるか、ハウスクリーニング・消臭・特殊清掃まで必要かで変わります。
8.屋外部分
一軒家では、
- 物置
- 庭
- 車庫
- 倉庫
にも大量の物が残っている場合があります。
見積もりは現地を見てもらう方がよい
ゴミ屋敷状態では、写真だけでは収納の奥や物の積み重なりまで分からないことがあります。
可能なら現地で、
- 全室
- 収納
- 押し入れ
- 物置
- 庭
- ベランダ
- 搬出経路
まで確認してもらいます。
遠方で立ち会えない場合は、写真・動画等で概算を取り、正式料金がいつ確定するのか確認してください。
見積もりでは「一式」だけでなく作業内容を見る
ゴミ屋敷片付けでは、総額だけでなく何が含まれているかを確認します。
| 項目 | 確認内容 |
|---|---|
| 仕分け | 重要品捜索まで含むか |
| 人員 | 何人で作業するか |
| 車両 | 何台・何往復を想定するか |
| 搬出 | 階段・長距離等の追加条件 |
| 廃棄物 | 誰がどう収集運搬するか |
| 買取 | 査定額を別表示するか |
| 清掃 | 簡易清掃か本格清掃か |
| 害虫・消臭 | 料金に含むか |
| 特殊清掃 | 必要時の別料金 |
| 追加料金 | どんな場合に発生するか |
「トラック積み放題」の広告だけで決めない
不用品回収では、広告で表示された定額・積み放題プランと、実際の料金やサービス内容が大きく異なるトラブルが国民生活センターへ寄せられています。
ゴミ屋敷状態では物量が多いため、特に、
- 積載量の定義
- 追加車両
- 人件費
- 階段料金
- 分別料金
- 廃棄費用
の条件を確認します。
広告上の最低価格だけで契約先を決めないようにしてください。
家庭ごみを誰が収集運搬するか確認する
ゴミ屋敷の遺品整理では、大量の家庭系廃棄物が出る可能性があります。
一般家庭から出る廃棄物を業として収集・運搬する場合、市区町村の一般廃棄物処理業の許可や、市区町村からの委託など適法な処理体制が必要です。
遺品整理会社自身がその地域の許可を持っていない場合でも、地域の許可業者と連携して処理する方法があります。
確認するのは、
- 家庭ごみを実際に運搬する事業者
- 実家所在地で必要な許可・委託等
- 処理料金が見積もりに含まれているか
です。
「産業廃棄物の許可がある」「古物商許可がある」というだけで、家庭ごみを自由に回収できるという意味ではありません。
無許可回収業者へ大量のごみを渡さない
環境省は、家庭から出る廃棄物について、市区町村の一般廃棄物処理業許可や委託を受けていない回収業者を利用しないよう案内しています。
無許可業者では、回収後に適正処理されたか確認できず、不法投棄等につながるおそれがあります。
大量の家財を早く処分したい場合ほど、料金だけでなく処理ルートを確認してください。
買取できる物はゴミに混ぜない
大量の物の中にも、
- 貴金属
- 時計
- ブランド品
- カメラ
- オーディオ
- 楽器
- 比較的新しい家電
- 工具
- コレクション
など、査定できる物が残っている場合があります。
ただし、相続放棄を検討中の場合などは、売却を先行させないでください。
売ってよいことが確認できてから査定・売却へ進みます。
重要品を探しながら業者に片付けてもらえる?
貴重品・重要書類の捜索を含めて対応する遺品整理業者があります。
ただし、
「大事な物があったら残してください」
だけでは曖昧です。
具体的に、
- 通帳
- 印鑑
- 現金
- 遺言書
- 不動産書類
- 写真・アルバム
- 時計・アクセサリー
- スマートフォン・PC
を見つけたら処分せず保管するよう指定します。
処分禁止リストは書面・写真で共有する
大量作業になるほど、口頭だけではスタッフ間で情報が抜ける可能性があります。
可能であれば、
- 処分禁止リスト
- 写真
- メール
- 作業指示書
等で共有します。
国民生活センターにも、遺品整理業者へ残すよう依頼していたアルバムや書類まで処分され、取り戻せなくなった相談事例があります。
一軒家では室内以外も確認する
ゴミ屋敷状態の一軒家では、室内だけを見積もって終わらないようにします。
確認する場所は、
- 押し入れ
- 納戸
- 屋根裏
- 床下収納
- 物置
- 倉庫
- 庭
- 車庫
- ベランダ
です。
見積もり時に確認していない場所から大量の物が見つかると、作業内容や料金が変わる原因になります。
マンションでは管理ルールも確認する
マンションの場合は、物量に加えて、
- エレベーター利用
- 共用部養生
- 搬出時間
- 駐車場所
- 管理会社への連絡
などが必要になる場合があります。
大量搬出になるほど、通常の少量処分より建物側との調整が重要になります。
遠方の実家でも依頼できる?
立ち会いなしで対応する遺品整理業者もあります。
遠方の場合は、
- 鍵の受け渡し
- 見積もり方法
- 重要品発見時の連絡方法
- 作業中の写真報告
- 完了確認
を事前に決めます。
ゴミ屋敷では判断対象が多いため、「何を見つけたら必ず連絡するか」を通常の遺品整理以上に具体化してください。
作業後は「家をどうするか」まで決める
ゴミ屋敷の家財をすべて搬出しても、それで実家の問題が終わるとは限りません。
次に、
- 住み続ける
- 空き家として管理する
- 売却する
- 賃貸に出す
- 解体する
など、家自体の方針を決めます。
長期間のゴミ屋敷状態では、家財撤去後に、
- 床
- 壁
- 水回り
- 害虫被害
- 臭気
など建物側の状態が初めて分かる場合もあります。
売却を検討する場合は、片付け・清掃へ過度に費用をかける前に、不動産会社等へ現在の状態で売れるか確認する方法もあります。
ゴミ屋敷の遺品整理を依頼するときのチェックリスト
現場
- □ 全部屋の状態を確認した
- □ 物置・庭・車庫を確認した
- □ 腐敗物の有無を確認した
- □ 害虫・悪臭を確認した
- □ 特殊清掃が必要そうか確認した
残す物
- □ 重要書類を指定した
- □ 現金・印鑑を指定した
- □ 写真・形見を指定した
- □ 貴金属等を指定した
- □ デジタル機器を指定した
見積もり
- □ 現地を見てもらった
- □ 人数を確認した
- □ 車両台数を確認した
- □ 作業範囲を確認した
- □ 清掃範囲を確認した
- □ 害虫・消臭費を確認した
- □ 追加料金条件を確認した
- □ 買取額を別表示してもらった
廃棄物
- □ 家庭ごみを誰が運搬するか確認した
- □ 一般廃棄物の許可・委託等を確認した
- □ 処理費用が見積もりに含まれるか確認した
よくある質問
ゴミ屋敷でも遺品整理業者へ頼めますか?
ゴミ屋敷片付けにも対応する遺品整理業者があります。
物量や衛生状態によって必要な作業が変わるため、問い合わせ時に現場の状況を伝えてください。
ゴミが天井近くまで積まれていても頼めますか?
対応できる業者はありますが、通常の遺品整理より人員・日数・車両等が増える可能性があります。
現地調査を依頼してください。
ゴミ屋敷なら特殊清掃も必要ですか?
必ずではありません。
大量の物があるだけなら通常の片付け・清掃で済む場合があります。
体液汚染・強い腐敗臭・深刻な衛生問題などがある場合は特殊清掃を検討します。
貴重品を探しながら片付けてもらえますか?
対応する遺品整理業者があります。
通帳・現金・印鑑・写真等、残してほしい物を具体的に指定してください。
ゴミ屋敷の遺品整理はいくらかかりますか?
間取りだけでは決まりません。
物量、人員、車両、搬出条件、腐敗物・害虫・悪臭、清掃範囲等で大きく変わるため、現地見積もりで確認してください。
見積もりは何社取ればよいですか?
少なくとも複数社を比較してください。
国民生活センターも、遺品整理や不用品回収について複数事業者から見積もりを取り、作業内容・料金・追加料金等を確認するよう案内しています。
家庭ごみは遺品整理業者なら何でも運べますか?
いいえ。
家庭から出る一般廃棄物の収集運搬には、市区町村の許可や委託等の適法な体制が必要です。
実際に誰が運ぶのかを確認してください。
売れる物を買取してもらえますか?
買取にも対応する業者があります。
古物商許可等を確認し、整理作業料金と買取額を別々に表示してもらうと比較しやすくなります。
遠方なので立ち会えません
立ち会いなしで対応する業者があります。
鍵、重要品、写真報告、処分判断、完了確認の方法を事前に決めてください。
ゴミ屋敷の遺品整理は「大量に捨てる作業」ではない
ゴミ屋敷状態を見ると、まず全部を捨てて家を空にしたくなります。
しかし、実際には大量の家財の中に、相続や家族にとって重要な物が混在している可能性があります。
進める順番は、
- 安全を確認する
- 重要書類・現金・貴重品を探す
- 処分禁止品を分ける
- 物量・害虫・悪臭等を確認する
- 自分でできる範囲を判断する
- 必要なら複数の業者から現地見積もりを取る
- 適法な処理ルートを確認して仕分け・搬出する
- 必要な清掃を行う
- 最後に実家の管理・売却等へ進む
です。
通常の遺品整理より物量が多いからこそ、「大事な物は残してください」という曖昧な依頼ではなく、具体的な処分禁止リストを作ることが重要です。
また、ゴミ屋敷だからといって特殊清掃が必須とは限りません。
大量物の撤去、通常清掃、害虫・消臭、特殊清掃を現場状態に応じて分けて見積もります。
親が亡くなった後の相続・各種手続きについては、親が亡くなった後の手続きを確認してください。
実家全体の整理については、実家・家財整理の案内から現在の状況に合う項目を確認してください。