遺品整理を業者へ頼むとき、「悪徳業者に当たったらどうしよう」と不安になる人は少なくありません。
実際、遺品整理サービスについては、見積もりを超える請求、高額なキャンセル料、残しておくはずだった遺品の処分など、契約や作業内容に関する相談が公的機関へ寄せられています。
ただし、会社の規模が小さい、料金が安い、口コミが少ないという理由だけで、その業者を悪質だと判断することはできません。
反対に、有名な会社や口コミ評価の高い会社だから、契約内容を確認しなくてよいわけでもありません。
遺品整理でトラブルを避けるには、業者の印象より、見積書・追加料金・キャンセル条件・不要品の処理方法・残す遺品の管理方法を確認することが重要です。
遺品整理ではどんなトラブルが実際に起きている?
悪質業者の手口を想像だけで並べるより、実際に消費生活相談へ寄せられている内容を確認する方が、注意すべき場所が分かります。
国民生活センターは、遺品整理サービスについて複数の契約トラブルを公表しています。
契約を急かされる
見積もりに来た業者から契約を急かされ、その場で十分に比較できないまま契約したという相談事例があります。
見積もりを受けたからといって、その場で必ず契約する必要はありません。
作業日まで時間があるなら、見積書を持ち帰り、家族と相談したり、ほかの業者と比較したりできます。
高額なキャンセル料を請求される
契約後に解約を申し出たところ、高額なキャンセル料を請求されたという相談も公表されています。
キャンセル料が設定されていること自体だけで不適切とは判断できません。
重要なのは、契約前に、
- いつからキャンセル料が発生するか
- 金額はいくらか
- 何日前なら無料か
- 日程変更の場合はどうなるか
を確認できているかです。
見積もりを超える追加料金
国民生活センターには、作業時に予定外の料金を求められ、最終的に見積金額のおよそ2倍を請求された事例もあります。
家財量や作業内容が契約後に変われば料金が変わることはあります。
一方で、何が起きた場合にいくら追加されるのかが分からないまま作業へ進むと、後から金額を巡って争いになりやすくなります。
見積もり時に、
「この金額から変わるのはどんな場合ですか?」
と確認し、可能であれば書面に残してもらいます。
残す予定だった遺品の誤処分
処分しないよう依頼した物まで処分されたという相談もあります。
遺品には、金銭的価値だけでは判断できない物があります。
写真、手紙、アルバム、故人の愛用品などは、一度処分されると同じ物を取り戻せない場合があります。
「残してください」と口頭で伝えるだけでなく、作業前に処分品と物理的に分けることが大切です。
「悪徳業者」と断定するより契約条件を見る
インターネットでは、「この特徴があれば悪徳業者」といった一覧も見られます。
しかし、一つの条件だけで業者を悪質だと断定するのは適切ではありません。
例えば、現地見積もりを行わず写真だけで料金を出す会社でも、写真見積もりを正式な料金として運用しているケースがあります。
逆に、現地へ来た会社でも、契約内容が曖昧なら安心とは限りません。
見るべきなのは、業者の形式より、
- 作業内容
- 料金
- 追加料金
- キャンセル条件
- 廃棄物の処理方法
- 買取条件
- 残す物の管理
を具体的に説明できるかです。
契約前に再確認したい7つのサイン
次の項目に当てはまったからといって、その業者が悪徳業者だと決まるわけではありません。
ただし、契約前に説明を求めた方がよい状態です。
1.見積書の内容が分からない
見積書が、
「遺品整理一式 300,000円」
だけでは、何が含まれているのか分かりません。
少なくとも、
- 対象になる部屋や場所
- 仕分け
- 搬出
- 作業人数
- 車両
- 不要品処理に関する費用
- 清掃
など、何を含む金額なのか確認します。
2.追加料金が発生する条件を説明しない
「場合によって追加になります」とだけ言われても判断できません。
家財が増えた場合、車両が追加になった場合、階段搬出が必要になった場合など、想定される追加条件を具体的に確認します。
追加料金があること自体ではなく、条件が契約前に分かるかどうかを見ます。
3.キャンセル料を確認できない
契約時には、作業料金だけでなく解約条件も確認します。
見積書や契約書にキャンセル料の記載があるなら、その内容を読みます。
説明がなく、質問しても回答が曖昧な場合は、その場で契約を急がない方がよいでしょう。
4.不要品を誰が収集・運搬するのか説明できない
家庭から出る不要品を廃棄物として収集・運搬する場合は、一般廃棄物処理のルールが関係します。
確認したいのは、遺品整理会社自身がどんな肩書きを掲げているかではなく、
「この家から出る処分品を実際にどの事業者が収集・運搬するのか」
です。
遺品整理会社自身が一般廃棄物収集運搬業の許可を持たず、自治体の許可業者等と連携する運用もあります。
そのため、自社許可がないという一点だけで判断せず、実際の処理体制を確認します。
5.「産業廃棄物の許可」や「古物商許可」だけで処分できると説明する
家庭から出る生活用品等の廃棄物と、事業活動から出る産業廃棄物は同じではありません。
また、古物商許可は中古品の買取等に関係する制度であり、家庭ごみの収集・運搬許可ではありません。
サイトに許可番号が多く並んでいても、何の作業に対応する許可なのかを確認します。
6.残す遺品をどう管理するか決められない
大量の家財を短時間で整理する現場では、残す物と処分する物を明確に分けておかないと、誤処分が起きる可能性があります。
業者へ依頼する前に、
- 別室へ移す
- 箱へまとめる
- 「処分禁止」と表示する
- 写真を撮る
- リストを共有する
などの方法で残す物を明確にします。
業者側がどのように確認するのかも聞いておきます。
7.比較する時間を与えず契約を急かす
退去期限が迫っているなど、本当に急ぐ事情がある場合は別です。
しかし、時間的余裕があるのに「今日契約しなければこの料金にできない」などと強く決断を迫られた場合は、一度契約内容を確認する時間を取ります。
複数社から見積もりを取って比較することは、国民生活センターも推奨しています。
不法投棄を避けるため、処分品の流れを確認する
国民生活センターは、遺品や住宅の不要品を廃棄物として収集・運搬する事業者について、市町村から委託を受けているか、市町村長から一般廃棄物処理業の許可を受けている必要があると注意喚起しています。
無許可事業者による処分は、不法投棄などにつながるおそれがあります。
契約前には、
- 処分品を誰が運ぶのか
- 遺品整理会社自身が運ぶのか
- 別の許可業者が回収するのか
を確認します。
必要であれば実家所在地の市区町村へ、一般廃棄物収集運搬業の許可業者について確認する方法もあります。
買取を同時に頼む場合の注意
遺品整理と一緒に、時計、貴金属、家電、家具などを買い取る事業者もあります。
事業として古物を買い取る場合には古物商許可が関係します。
買取を依頼する場合は、
- 遺品整理の作業料金
- 買取査定額
を分けて確認する方が比較しやすくなります。
「整理料金30万円から買取10万円を引いて20万円」という形なら、それぞれの金額を確認します。
価値が分からない物を、その場で急いで売却する必要もありません。
口コミだけで悪徳・優良を決めない
口コミは事業者選びの参考になります。
特に、
- 見積もりから料金が大きく変わらなかったか
- 説明が分かりやすかったか
- 遺品を丁寧に扱ったか
- 追加作業の説明があったか
といった具体的な内容は参考になります。
ただし、口コミ評価が高いから契約書を確認しなくてよいわけではありません。
逆に、低評価が一件あるという理由だけで、その会社全体を悪質と判断することもできません。
口コミは補助材料とし、自分の依頼内容で見積もりと契約条件を確認します。
すでに高額請求・追加請求された場合
すでに作業が始まり、想定していなかった高額な追加料金を求められた場合は、まず何の追加作業について料金が増えたのか確認します。
可能であれば、
- 当初の見積書
- 契約書
- 追加料金の説明
- メールやメッセージ
- 作業前後の写真
- 請求書
を保存します。
見積もりに含まれていた作業なのか、契約後に依頼した追加作業なのかを分けて確認します。
説明に納得できず、事業者との話し合いだけでは解決できない場合は、消費生活センター等へ相談できます。
高額なキャンセル料を請求された場合
キャンセル料についても、金額だけを見て「絶対に払う必要がない」「契約書に書いてあるから必ず全額払う」と一律に判断しない方が安全です。
契約内容、契約した場所や方法、解約時期、実際に事業者側へ発生している費用など、個別事情が関係する可能性があります。
まず契約書に書かれているキャンセル条件を確認します。
高額で納得できない場合や、契約時に十分な説明がなかった場合は、支払う前に消費生活センターへ相談する方法があります。
残してほしい遺品を処分された場合
処分された物が残っている可能性があるなら、できるだけ早く事業者へ連絡します。
その際、
- どの物を残すよう依頼していたか
- 写真があるか
- 見積書や作業指示書に記載があるか
- メッセージ等で伝えていたか
を確認します。
処分済みの場合、同じ物を戻せないケースもあります。
補償等について意見が合わない場合は、契約書や記録を残したうえで消費生活センター等へ相談します。
クーリングオフできる場合もあるが、一律ではない
「遺品整理の契約は8日以内なら必ずクーリングオフできる」と考えるのは正確ではありません。
取引方法が特定商取引法上の訪問販売などに該当する場合には、原則として法定書面を受け取った日から8日以内のクーリングオフが認められる場合があります。
一方、消費者側があらかじめ契約を締結する明確な意思を持ち、自宅で契約することを求めて事業者を呼んだ場合など、訪問販売規制の適用除外になるケースもあります。
また、単に見積もりを依頼したことだけで、必ず適用除外になるとも限りません。
契約の経緯によって判断が変わるため、クーリングオフできるか分からない場合は、自分だけで判断せず消費生活センターへ相談する方が安全です。
困ったときの相談先
消費者ホットライン「188」
料金、追加請求、キャンセル、契約方法などの消費者トラブルは、消費者ホットライン「188」から地域の消費生活センター等を案内してもらえます。
すでに支払いを求められている場合でも、契約書や見積書を用意して相談します。
市区町村の廃棄物担当窓口
処分品を運ぶ業者の一般廃棄物処理業の許可・委託状況を確認したい場合は、実家所在地の市区町村へ確認できます。
遺品整理会社から説明された処理業者について確認したい場合にも利用できます。
警察への相談が適する場合
単なる料金トラブルではなく、盗難など犯罪の可能性を疑う具体的な事情がある場合は、警察への相談も検討します。
契約上のトラブルと犯罪被害は分けて考えます。
契約前に確認しておきたいチェックリスト
- 見積書を受け取った
- 対象となる部屋・物置・庭などが書かれている
- 作業内容が分かる
- 追加料金になる条件を確認した
- キャンセル料を確認した
- 処分品を誰が収集・運搬するか確認した
- 買取を頼む場合は古物商許可を確認した
- 残す物を処分品と分けた
- 複数社を同じ条件で比較した
- 疑問点が残ったまま契約していない
すべての業者に同じサービス内容を求める必要はありません。
自分が依頼する作業について、料金と責任範囲が分かっている状態を作ることが目的です。
よくある質問
遺品整理の悪徳業者にはどんな特徴がありますか?
一つの特徴だけで悪質と断定することはできません。ただし、見積内容が不明確、追加料金やキャンセル料を説明しない、不要品を誰が処理するのか説明できない、残す遺品の管理方法が決まらない状態なら、契約前に再確認する方がよいでしょう。
見積もりより高い料金を請求されました。どうすればよいですか?
何の作業について料金が追加されたのか確認し、当初の見積書、契約書、請求書、メッセージ等を保存します。事業者との話し合いで解決しない場合は、消費者ホットライン188から消費生活センター等へ相談できます。
遺品整理で高額なキャンセル料を請求されたら払わなければなりませんか?
個別の契約内容や解約時期等によって異なるため、一律には判断できません。契約書のキャンセル条件を確認し、納得できない高額請求や説明不足がある場合は、支払う前に消費生活センター等へ相談してください。
遺品整理業者との契約はクーリングオフできますか?
取引方法が訪問販売等に該当する場合にはクーリングオフできる可能性がありますが、契約の経緯によって適用除外になる場合もあります。「必ず8日以内なら解除できる」とは限らないため、判断が難しい場合は消費生活センターへ相談してください。
一般廃棄物の許可がない遺品整理会社は悪徳業者ですか?
それだけでは判断できません。遺品整理会社が仕分け等を担当し、不要品の収集・運搬を自治体の許可業者等へ任せる運用もあります。大切なのは、処分品を実際に誰が収集・運搬するのかを確認することです。
遺品整理士がいれば悪徳業者ではありませんか?
遺品整理士は業者選びの参考になる民間資格ですが、それだけで契約内容や廃棄物の処理体制が保証されるわけではありません。見積もり、処理体制、追加料金、キャンセル条件も別に確認します。
「悪徳かどうか」を見抜くより、曖昧な契約を残さない
遺品整理業者を見ただけで、悪徳か優良かを完全に判断することはできません。
それでも、トラブルが起きやすい部分を契約前に確認することはできます。
見積もりに何が含まれるのか。
追加料金はいつ発生するのか。
キャンセル料はいくらか。
不要品を誰が運ぶのか。
残す遺品をどう管理するのか。
これらを確認し、曖昧な部分を減らしてから契約する方が、広告や口コミだけで業者を判断するより現実的です。
まだ依頼先を決めていない場合は遺品整理業者の選び方、候補を比較する場合は遺品整理のおすすめ比較、実際に見積もりを取る場合は遺品整理の見積もりへ進んでください。