家族が亡くなった後、遺品整理をいつ始めればよいのか迷う人は少なくありません。
葬儀が終わったらすぐ片付けるべきなのか。
四十九日までは触らない方がよいのか。
あるいは、気持ちが落ち着くまで数か月待ってもよいのか。
遺品整理そのものには、「亡くなってから何日以内に始めなければならない」という一律の期限はありません。
実際には、故人の住居が持ち家か賃貸か、相続放棄を検討しているか、家族が集まれる時期はいつかなどによって適したタイミングが変わります。
また、遺品整理を始める時期と、家の中の物をすべて処分する時期は同じでなくても構いません。
亡くなった直後には重要書類や貴重品だけを確認し、思い出の品や大量の家財は四十九日以降にゆっくり整理する方法もあります。
遺品整理を始める日に決まりはない
「遺品整理は四十九日が終わってから」という話を聞くことがあります。
四十九日は家族や親族が集まりやすく、故人の物について相談する区切りにもなるため、実際に整理を始める時期として選ばれやすいタイミングです。
ただし、四十九日まで遺品に触れてはいけないという法律上の決まりがあるわけではありません。
反対に、四十九日までにすべての遺品整理を終えなければならないという決まりもありません。
家庭によっては葬儀後すぐに一部を整理しますし、数か月後や一周忌前後にゆっくり進めることもあります。
時期を決めるときは、次の事情を確認します。
- 住居が持ち家か賃貸か
- 退去などの期限があるか
- 相続放棄を検討しているか
- 家族・相続人が集まれる時期
- 相続や税務上必要な書類が残っていないか
- 遠方で何度も通えるか
- 遺族の気持ちが整理できているか
遺品整理全体の流れから確認したい場合は、遺品整理とは?何から始めるか・自分で行う範囲と業者依頼の判断もあわせて確認してください。
亡くなった直後でも確認した方がよいもの
本格的な遺品整理をすぐ始める必要がなくても、早めに確認した方がよい物があります。
特に、捨てたり紛失したりすると後の手続きに影響する物は先に確保します。
- 遺言書やエンディングノート
- 通帳
- 印鑑
- 現金
- 保険関係書類
- 不動産関係書類
- 税金・年金関係の書類
- 各種契約書
- スマートフォンやパソコン
- 貴金属・有価証券等に関する資料
また、冷蔵庫内の食品、生ごみなど時間がたつと傷む物については、衛生上の問題が起きないよう必要な範囲で対応します。
この時期は「遺品整理を終わらせる」のではなく、後から困る物をなくさないことを優先します。
葬儀が終わってから始めるケース
葬儀直後は、死亡届、葬儀、関係者への連絡などが重なり、家族の負担が非常に大きい時期です。
住居を急いで明け渡す必要がないのであれば、葬儀が一段落してから整理を始めても問題ありません。
この段階では、家全体を片付けるよりも、
- 重要書類を一か所へまとめる
- 貴重品を確保する
- 相続財産になりそうな物を確認する
- 借入れや未払い金に関する書類がないか確認する
- 家族が残したい物を仮に分ける
といった作業から始めると進めやすくなります。
特に借金などの有無が分からず、相続放棄の可能性もある場合は、価値のある物を売却・処分する前に相続財産の状況を確認します。
四十九日前後に始める人が多い理由
四十九日前後は、遺品整理を考え始める一つの区切りになります。
理由の一つは、親族が集まりやすいことです。
写真、時計、アクセサリー、家具など、誰が残すかを一人で決めにくい物について、家族で話し合いやすくなります。
また、葬儀直後より少し時間がたっているため、物を見ることへの精神的な負担が多少和らいでいる家庭もあります。
ただし、四十九日になったら必ず始めなければならないわけではありません。
反対に、賃貸住宅の退去などの事情があれば、四十九日を待たずに進める必要があることもあります。
四十九日前でも整理して問題ないケース
宗教や家族の考え方として四十九日まで物を残したい場合は、その意向を尊重します。
一方、一般的な法律上のルールとして「四十九日前は遺品を整理してはいけない」という決まりがあるわけではありません。
次のような事情がある場合は、それより前に整理することがあります。
- 賃貸住宅を明け渡す必要がある
- 遠方から家族が集まれる日が限られている
- 食品等の処分が必要
- 重要書類を探す必要がある
- 相続財産・債務の確認が必要
- 住宅の防犯上、貴重品を残せない
ただし、「整理する」と「財産を処分する」は分けて考えます。
特に相続放棄を検討している場合は注意が必要です。
相続放棄を考えているなら、遺品の処分を急がない
故人に借金がある可能性があるなど、相続放棄を検討している場合は、遺品整理の進め方が変わります。
裁判所によると、相続放棄は原則として、自分のために相続が始まったことを知った時から3か月以内に家庭裁判所へ申述する必要があります。
さらに民法では、相続人が相続財産の全部または一部を処分した場合などに、単純承認をしたものとみなされる規定があります。
ただし、何をした場合に具体的に「相続財産の処分」に当たるかは、対象物や行為の内容などによって判断が異なります。
そのため、相続放棄をする可能性がある場合は、経済的価値がある遺品の売却・譲渡・廃棄などを自己判断で進めず、家庭裁判所の案内や弁護士・司法書士等へ確認してから進める方が安全です。
明らかな生ごみや衛生上問題のある物への対応と、価値のある相続財産の処分を同じものとして考えないことも重要です。
賃貸住宅は四十九日より退去条件を優先する
故人が賃貸住宅で暮らしていた場合は、持ち家とは事情が異なります。
家財を残している間も契約や費用の問題が続く可能性があるため、まず大家や管理会社へ連絡し、
- 契約状況
- 退去までの手続き
- 部屋を明け渡す時期
- 残置物の扱い
- 鍵の返却
などを確認します。
退去時期は契約内容や個別の調整によって異なるため、「四十九日まで待つ」と先に決めない方がよいでしょう。
家族だけで期限内に片付けるのが難しい場合には、重要品や残す物だけを自分たちで確認し、その後の搬出を遺品整理事業者へ依頼する方法もあります。
持ち家なら一度に全部終わらせる必要はない
故人が持ち家に住んでおり、すぐに売却や解体をする予定もないのであれば、遺品整理を何日かで完了させる必要はありません。
例えば、
- 最初の週は重要書類だけ
- 四十九日に形見を家族で確認
- その後、衣類や家具を少しずつ整理
- 家の売却方針が決まってから大型家財を処分
という進め方もできます。
特に実家一軒分の家財がある場合、短期間で一気に整理しようとすると判断疲れが起きやすくなります。
期限がないのであれば、部屋や種類ごとに分けて進める方法があります。
一方、誰も住まない家を残す場合は、遺品整理を後回しにしても家の管理まで放置してよいわけではありません。
郵便物、防犯、換気、庭木、建物の状態などは定期的に確認します。
3か月・4か月・10か月の期限と遺品整理の関係
死亡後には、遺品整理とは別に期限のある手続きがあります。
これらの日までに家財を全部捨てなければならないわけではありません。
ただし、必要な書類や相続財産を探すため、遺品整理のスケジュールを考える材料になります。
相続放棄は原則3か月
相続放棄は、原則として自己のために相続が始まったことを知った時から3か月以内です。
相続財産や債務の状況が分からない場合には、この期間中に財産調査を行う必要があります。
3か月以内に調査しても判断材料が得られない場合は、家庭裁判所へ相続の承認・放棄の期間伸長を申し立てられる制度もあります。
準確定申告は該当する場合4か月
亡くなった人について所得税の確定申告が必要なケースでは、相続人等が準確定申告を行うことがあります。
国税庁によると、期限は原則として、相続開始があったことを知った日の翌日から4か月以内です。
すべての人に準確定申告が必要というわけではありません。
ただ、申告の要否を確認する際に、確定申告書の控えや収入に関する書類が必要になることがあります。
相続税申告は必要な場合10か月
相続財産の額が一定の範囲を超えるなど、相続税の申告が必要な場合があります。
国税庁によると、相続税の申告・納税期限は原則として、相続開始があったことを知った日の翌日から10か月以内です。
これも「10か月以内に遺品を全部処分する」という意味ではありません。
むしろ、価値のある物を処分する前に、何が相続財産なのかを把握しておくことが重要です。
気持ちの整理がつかないときは、どこまで待ってよいか
遺品整理は、物理的な片付けであると同時に、亡くなった人の持ち物に一つずつ向き合う作業でもあります。
写真や衣類を見ること自体がつらい時期に、無理に整理を進める必要はありません。
持ち家で期限がなく、相続上の問題もないのであれば、思い出の品については時間を置く方法があります。
ただし、すべてをそのままにする必要もありません。
例えば、
- 重要書類だけ探す
- 食品だけ処分する
- 貴重品を安全な場所へ移す
- 写真や衣類は触らず残す
というように、作業を分けることができます。
「全部整理するか、何もしないか」の二択にしない方が進めやすくなります。
自分で片付けるか業者へ頼むかは、期限と物量で考える
遺品整理を始める時期が決まった後は、自分たちだけで進められるかを考えます。
時間に余裕があり、家が近く、家財も少ないのであれば、自治体のごみ収集を利用しながら少しずつ整理できます。
一方、次のような場合は事業者への依頼を検討する意味があります。
- 賃貸の退去期限が近い
- 遠方のため何度も通えない
- 一軒家に大量の家財がある
- 大型家具を家族だけでは搬出できない
- 仕事や介護で作業時間を確保できない
すべてを任せる必要はありません。
重要品や形見は家族が先に整理し、大型家具や不要品の搬出だけを依頼する方法もあります。
遺品整理業者を利用する場合の確認事項については、今後公開する業者選びの記事で詳しく整理します。
よくある質問
遺品整理は四十九日が終わってからでないといけませんか?
一律の決まりはありません。四十九日は親族が集まりやすく、形見分けなどを相談しやすい時期ですが、賃貸の退去や重要書類の確認などの事情があれば、それより前に整理を始めることもあります。
四十九日前に遺品を捨ててもよいですか?
四十九日前の整理を法律で禁止する一般的なルールはありません。ただし、家族の意向や宗教上の考え方には配慮します。また、相続放棄を検討している場合は、相続財産の処分が法的な判断に影響する可能性があるため、価値のある物を自己判断で処分しない方が安全です。
相続放棄をするか迷っています。遺品整理してもよいですか?
重要書類を探したり、相続財産や債務の状況を確認したりすることは必要ですが、財産の売却や処分は別の問題です。相続財産を処分すると単純承認との関係が問題になる場合があるため、相続放棄の可能性がある段階では弁護士・司法書士等へ確認してから進めてください。
賃貸住宅なら四十九日を待った方がよいですか?
必ずしもそうではありません。賃貸では退去や明渡しについて個別の期限や調整が必要になるため、まず大家・管理会社へ連絡して契約状況を確認します。
一周忌まで遺品整理を待ってもよいですか?
持ち家で急ぐ事情がなく、必要な相続・税務手続きや家の管理に問題がなければ、思い出の品を一周忌まで残すこともできます。ただし、重要書類や財産の確認まで先延ばしにしないよう注意します。
遺品整理はいつまでに終わらせればよいですか?
遺品整理そのものに一律の完了期限はありません。賃貸の退去、相続手続き、空き家管理など、自分のケースで期限がある事項から逆算して進めます。
「いつ全部捨てるか」ではなく、「今何を確認するか」で考える
遺品整理には、全員に共通する開始日はありません。
亡くなった直後は、重要書類や貴重品を確保する。
葬儀後に、財産や債務の状況を確認する。
四十九日前後に家族が集まるなら、形見分けを相談する。
相続放棄を検討しているなら、財産の処分を急がない。
賃貸なら、退去予定から逆算する。
このように分ければ、「四十九日まで待つべきか」という一つの基準だけで決める必要はありません。
その時点で必要な作業だけを進め、気持ちの整理が必要な物は後に残すこともできます。
遺品整理全体の進め方は、遺品整理の総合ガイドを、死亡後の手続きについては親が亡くなった後の手続きから確認してください。