実家じまいを始めようとしても、「そもそも誰に相談すればよいのか分からない」ということがあります。
市区町村、不動産会社、司法書士、弁護士、税理士、遺品整理業者、解体業者など、実家じまいに関係する相談先は複数あります。
ただし、一つの窓口ですべての問題を解決できるとは限りません。
相続登記について知りたい人と、家財を片付けたい人、実家を売りたい人では、最初に相談する相手が違います。
そのため、実家じまいでは「実家じまい専門の相談先を探す」より、まず今、何を決めたいのかを整理すると相談先を選びやすくなります。
この記事では、実家じまいの相談先を悩み別に整理します。
実家じまい全体の流れから確認したい場合は、実家・家財整理の案内もあわせて確認してください。
実家じまいの相談先早見表
| 困っていること | 主な相談先 |
|---|---|
| 何から始めればよいか分からない | 実家所在地の市区町村・空き家相談窓口 |
| 相続登記・不動産名義 | 法務局・司法書士 |
| 相続人同士でもめている | 弁護士 |
| 相続放棄など法律上の判断に迷う | 弁護士・法テラス等 |
| 相続税・実家売却後の税金 | 税務署・税理士 |
| 実家がいくらで売れるか知りたい | 不動産会社 |
| 家財・遺品を片付けたい | 遺品整理・片付け業者 |
| 家庭ごみの捨て方を知りたい | 実家所在地の市区町村 |
| 建物を解体したい | 解体業者・市区町村 |
| 土地の境界・測量 | 土地家屋調査士 |
| 親の生活・認知機能・権利擁護が心配 | 地域包括支援センター |
| 契約・料金トラブル | 消費生活センター等 |
何から相談すればよいか分からない場合
まだ、売る、残す、片付けるなどの方針自体が決まっていない場合は、実家所在地の市区町村に空き家や住宅に関する相談窓口がないか確認します。
自治体では地域によって、
- 空き家相談
- 空き家バンク
- 空き家管理
- 解体補助制度
- 耐震関連制度
- ごみの処分方法
などの情報を提供していることがあります。
全国で制度が同じではないため、実家がある市区町村の情報を確認することが重要です。
相続登記や実家の名義は法務局・司法書士
親が亡くなり、不動産名義が親のままの場合は相続登記を確認します。
自分で登記手続きを行う場合には、不動産を管轄する法務局の登記手続案内を利用できます。
戸籍収集、遺産分割協議書、登記申請書の作成などを自分で行うのが難しい場合には、司法書士へ依頼する方法があります。
法務局と司法書士の違い
法務局は登記制度や申請手続について案内する行政機関です。
一方、司法書士は依頼を受けて登記申請等を行う専門家です。
法務局へ行けば特定の司法書士を紹介してもらえる、という仕組みではありません。
相続でもめている場合は弁護士
兄弟姉妹で、
- 誰が実家を相続するか
- 売却するか残すか
- 遺産分割の割合
- 一人だけが実家を使用している
- 相続人の一人が話し合いに応じない
などで争いになっている場合は、単なる登記手続ではなく法律上の紛争になっている可能性があります。
この場合は弁護士への相談を検討します。
相続放棄などについて、自分の行為が法的にどのような影響を持つか判断が必要な場合も同様です。
法律問題かどうかも分からない場合は法テラス
「弁護士へ行くほどなのか分からない」「司法書士なのか弁護士なのか分からない」といった場合には、法テラスを入口として利用する方法があります。
法テラスでは、相談内容に応じて法制度や利用できる相談機関・団体等の案内を行っています。
一定の収入・資産要件を満たす場合には、弁護士・司法書士による無料法律相談等の制度を利用できる場合もあります。
相続税・売却時の税金は税務署または税理士
実家じまいでは、
- 相続税がかかるか
- 相続した実家を売った場合の譲渡所得
- 取得費をどう計算するか
- 相続空き家の特別控除を利用できるか
など、税金の問題が出てくることがあります。
一般的な税制度について確認したい場合は国税庁の電話相談や税務署があります。
具体的な財産評価、申告書作成、複雑な売却税務などを依頼したい場合は税理士へ相談します。
不動産会社が税制について一般的な説明をしてくれることはありますが、個別の税務判断まで不動産会社だけで完結させない方がよいでしょう。
実家を売る・貸す・価格を知りたいなら不動産会社
実家を今後使う予定がなく、
- 売却できるか知りたい
- いくらくらいになるか知りたい
- 古家付きと更地のどちらがよいか比較したい
- 貸すことができるか知りたい
- 買取と仲介を比較したい
場合は不動産会社へ相談します。
実家じまいでは、全部片付ける前でも現況の査定を受けられることがあります。
大量の家財処分や解体に費用を使う前に、現状の不動産価値を確認しておくと判断しやすくなります。
不動産会社は複数社比較する
査定額だけでなく、
- なぜその査定額なのか
- 仲介と買取のどちらを提案しているか
- 家財が残った状態で売れるか
- 解体が本当に必要か
- 想定される売却期間
- 仲介手数料以外の費用
を比較します。
一社だけの意見で、先に高額な解体や片付けを決めない方が選択肢を残せます。
家財・遺品の片付けは片付け業者・遺品整理業者
大量の家具・衣類・生活用品があり、自分たちだけでは整理できない場合は、片付け・遺品整理を行う事業者へ相談できます。
依頼できる内容は会社によって異なり、
- 家財の仕分け
- 家具搬出
- 買取
- 簡易清掃
- 遺品整理
などがあります。
ただし、「片付け会社へ依頼すれば家庭ごみを何でも自由に回収できる」という意味ではありません。
家庭ごみの処分方法は自治体ルールを確認する
家庭から出る廃棄物を収集運搬するには、実家所在地の市区町村から一般廃棄物処理業の許可を受けた事業者や、市区町村から委託された事業者など、適法な処理経路が必要です。
産業廃棄物処理業の許可や古物商許可だけで、家庭ごみを自由に回収できるわけではありません。
一方、片付け会社自身が許可を持っていなくても、地域の許可業者と適法に連携している場合があります。
業者へ相談するときは、
- 廃棄物を実際に誰が運ぶのか
- その事業者が必要な許可等を持っているか
- 買取品と廃棄物をどう分けるか
を確認します。
実家を解体したい場合は解体業者だけに相談しない
古い実家を見ると、最初に解体業者へ見積もりを依頼したくなることがあります。
しかし、売却予定があるなら、解体を契約する前に不動産査定も受けた方がよいでしょう。
実家には、
- 古家付きのまま売る
- 売買契約後に更地渡しにする
- 先に解体して更地として売る
という選択肢があります。
また自治体によっては、老朽空き家等の解体について補助制度がある場合もあります。
そのため、解体を考えている場合は、
- 自治体制度を確認する
- 不動産査定を受ける
- 解体見積もりを取る
- 売却方法と比較する
という順番が考えやすくなります。
土地の境界や測量は土地家屋調査士
実家を売却しようとして、
- 境界標が見つからない
- 隣地との境界が分からない
- 登記面積と現況が違う
- 建物を解体した後の滅失登記をしたい
といった問題が出た場合には、土地家屋調査士が関係します。
境界トラブルについては、各地の土地家屋調査士会が相談窓口を設けている場合もあります。
親が認知症かもしれない・生活自体が心配なら地域包括支援センター
実家じまいの問題が、単なる片付けではなく、
- 親の生活が維持できていない
- 認知機能の低下が心配
- 介護サービスが必要
- 財産管理や権利擁護が心配
- 家の中が危険な状態になっている
といった高齢者の生活問題と重なっている場合があります。
この場合は、地域包括支援センターを初期相談先にする方法があります。
地域包括支援センターは高齢者に関する総合相談や権利擁護などを行う地域の窓口です。
ただし、不動産売却や相続の法律判断を地域包括支援センターが代行するわけではありません。
必要に応じて医療・介護・法律等の専門先へつなぐ入口として考えます。
業者との料金・契約トラブルは消費生活センター
実家じまいでは、片付け、遺品整理、不用品回収、解体などで事業者と契約する機会が増えます。
たとえば、
- 見積もりより大幅に高い金額を請求された
- 強く契約を迫られた
- キャンセル料が高額だった
- 依頼していない物まで処分された
などの問題が起きた場合は、消費生活センター等へ相談できます。
ワンストップの実家じまい相談サービスは便利?
最近は、相続、片付け、不動産売却、解体などを一つの窓口で相談できるサービスもあります。
複数の事業者へ自分で連絡する必要を減らせるため、特に遠方の実家では便利な場合があります。
ただし、「ワンストップ」と書かれているから、その一社がすべての専門業務を自社で行っているとは限りません。
実際には、
- 司法書士と提携
- 税理士を紹介
- 不動産会社を紹介
- 解体会社を手配
- 一般廃棄物許可業者と連携
という形の場合もあります。
ワンストップサービスで確認すること
- 実際の契約相手は誰か
- 各業務を誰が担当するか
- 紹介料・手数料があるか
- 専門資格や許可が必要な業務を誰が行うか
- 複数社の比較が可能か
- 途中で一部だけ別会社へ依頼できるか
窓口が一つであることと、価格や業者選びまで比較不要ということは別です。
相談前に準備すると話が早いもの
最初の相談で完璧な資料を揃える必要はありません。
次の情報が分かる範囲であれば、相談内容を整理しやすくなります。
- 実家の所在地
- 現在の所有者
- 親が存命か、死亡しているか
- 親が現在住んでいるか
- 空き家になった時期
- 分かっている相続人
- 固定資産税納税通知書
- 登記名義
- 家財の量
- 家の外観・室内写真
- 売る・残すなど現在考えている方向
- いつまでに対応したいか
何も決まっていないときの相談順序
複数の問題が混ざっている場合は、次の順番で整理すると進めやすくなります。
1.親の状況と所有者を確認する
親が存命なら本人の意思を確認します。
死亡後なら、遺言・相続人・不動産名義を確認します。
2.期限のある法律・税務を確認する
相続放棄、税務、相続登記など期限があるものを先に確認します。
3.現在の不動産価値を確認する
売却の可能性があるなら、家財を全部捨てたり建物を解体したりする前に現況査定を検討します。
4.必要な範囲だけ片付ける
売却方法や家の今後が分かった後で、必要な家財整理・搬出を進めます。
5.解体は最後に判断する
古家付き売却や更地渡しも比較してから解体を決めます。
「実家じまいだからこの人」と一人に全部相談しなくてよい
実家じまいには、家族関係、相続、不動産、税金、家財、廃棄物、建物など複数の分野があります。
そのため、最適な相談先も一つではありません。
たとえば、
- 登記は司法書士
- 紛争は弁護士
- 税金は税務署・税理士
- 不動産は不動産会社
- 家財整理は片付け業者
というように、必要なところだけ専門家を使う方法があります。
一社へ全部まとめる方が楽な場合もあれば、自分で各専門家を選んだ方が費用や選択肢を比較しやすい場合もあります。
よくある質問
実家じまいはまず市役所へ相談すればよいですか?
空き家制度、補助金、ごみ、地域の相談窓口などを知りたい場合には有力な入口です。
一方、相続トラブルや税務、不動産査定などは、それぞれ専門の相談先へ進む必要があります。
相続登記は法務局と司法書士のどちらへ相談しますか?
自分で申請したい場合は法務局の登記手続案内を利用できます。
書類作成や登記申請そのものを依頼したい場合は司法書士へ相談します。
実家を売るかまだ決めていなくても不動産会社へ相談できますか?
できます。
現状の査定額を知ることで、保有・売却・解体を比較する材料になります。
家の中が大量の物でいっぱいでも不動産会社へ相談できますか?
相談・査定段階では家財が残っていても対応できる場合があります。
先に高額な片付け費を支払う前に、売却方法を確認する方法もあります。
遺品整理業者なら不要品を全部持っていってくれますか?
会社によります。
家庭から出る廃棄物については自治体のルールと適法な収集運搬方法を確認してください。
親が片付けに反対しています。業者へ相談すれば進められますか?
親が所有者で、自分で判断できる状態なら、子どもの都合だけで家財処分や不動産売却を進めるものではありません。
生活や認知機能への不安がある場合は、地域包括支援センター等への相談も検討してください。
実家じまいを全部一社へ任せてもよいですか?
ワンストップサービスを利用する方法はあります。
ただし、相続登記、税務、不動産売買、廃棄物処理などはそれぞれ専門性や資格・許可が関係します。
実際に誰が担当するか、契約相手、紹介料等を確認してください。
業者とトラブルになったらどこへ相談しますか?
商品・サービスの契約や料金トラブルであれば、消費生活センター等へ相談できます。
実家じまいの相談先は「何を解決したいか」で選ぶ
実家じまいでは、一人の専門家ですべてを解決しようとする必要はありません。
まず、自分の困りごとを、
- 相続・登記
- 法律トラブル
- 税金
- 不動産
- 片付け
- 解体
- 親の生活・介護
に分けます。
そのうえで、それぞれ適した相談先へつなぐ方が、不要な依頼や二度手間を減らしやすくなります。
まだ何をするか決まっていない場合は、実家所在地の自治体の空き家相談窓口などで地域制度を確認し、相続や法律上の問題があれば法務局・法テラス等で相談先を整理する方法があります。
そして、売却を考えるなら不動産会社、家財整理が必要なら片付け業者というように、実際に必要なサービスへ進みます。
実家じまい全体の現在地を整理したい場合は、実家・家財整理の案内から確認してください。
親が亡くなった後の相続・手続きが関係している場合は、親が亡くなった後の手続きもあわせて確認してください。