実家じまいと相続は何から?片付け・相続放棄・登記・売却の順番

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親が亡くなり、誰も住まなくなった実家を片付けようとすると、「まず家の中を空にしよう」と考えがちです。

しかし、相続後の実家じまいでは、家財の片付けだけを先に進めない方がよいケースがあります。

遺言書があるか、相続人は誰か、預貯金や不動産だけでなく借金がないか、相続放棄を検討する必要がないかなどを確認する前に、価値のある家財を売ったり大量に処分したりすると、その後の相続手続きに影響する可能性があるためです。

一方で、相続手続きが全部終わるまで実家へ何もしてはいけないわけでもありません。

重要書類や貴重品の確認、漏水・防犯などの安全管理、家の現状確認、不動産会社への査定相談など、相続手続きと並行できることもあります。

この記事では、親が亡くなった後の実家じまいについて、相続放棄、遺産分割、相続登記、片付け、査定、売却をどの順番で考えればよいか整理します。

実家じまい全体の進め方から確認したい場合は、実家・家財整理の案内もあわせて確認してください。

目次

相続後の実家じまいは「片付け」から始めない

親が亡くなった後の実家では、最初に確認したいのは物の量ではありません。

まず次の4点を確認します。

  1. 遺言書があるか
  2. 相続人は誰か
  3. どのような財産・借金があるか
  4. 相続放棄を検討する必要があるか

そのうえで、重要書類や貴重品を確保し、相続を受ける方向であれば遺産分割・相続登記と実家の片付けを並行して進めます。

実家を売る予定なら、相続登記の準備と不動産査定も並行できます。

実家じまいと相続を進める基本の順番

親が亡くなった後の実家では、次の順番で確認すると整理しやすくなります。

  1. 遺言書を確認する
  2. 相続人を確認する
  3. 財産と借金を確認する
  4. 相続放棄する可能性を判断する
  5. 重要書類・貴重品を確保する
  6. 兄弟姉妹で実家と家財の扱いを話し合う
  7. 家財・遺品を整理する
  8. 誰が不動産を取得するか決める
  9. 相続登記を進める
  10. 売却・保有・賃貸・解体など実家の出口へ進む

すべてを一つずつ完全に終えてから次へ進む必要はありません。

相続放棄の可能性がなくなり、重要物を確認できた段階から、家財整理、不動産査定、登記準備などを並行して進められます。

最初に遺言書を確認する

親が遺言書を残している場合、不動産やその他の財産を誰が取得するかについて指定されていることがあります。

そのため、兄弟姉妹だけで「実家は長男が相続する」「売却して均等に分ける」と決める前に、遺言書の有無を確認します。

実家では、

  • 金庫
  • 机の引き出し
  • 重要書類ファイル
  • 仏壇周辺
  • 銀行関係書類

なども確認します。

自筆証書遺言を見つけた場合には、そのまま開封・使用してよいとは限らず、保管方法等によって家庭裁判所での検認が必要になる場合があります。

相続人を確認する

実家を誰が相続するか決めるためには、まず法律上の相続人を確認します。

「兄弟は自分たちだけだから大丈夫」と思っていても、前婚の子、養子、既に亡くなった子の子などが関係することがあります。

不動産売却を予定している場合でも、先に相続人の範囲を確認しておく必要があります。

財産だけでなく借金も確認する

実家じまいを始めると、不動産や家財ばかりに目が向きます。

しかし、相続ではプラスの財産だけでなく、原則として債務も対象になります。

確認したいものには、

  • 預貯金
  • 不動産
  • 株式・投資信託等
  • 生命保険
  • 自動車
  • 貴金属・高価な家財
  • 住宅ローン等
  • カードローン
  • 事業上の債務
  • 保証債務に関する書類

などがあります。

借金の有無が分からない段階で、「実家には価値があるから相続する」と決めない方がよい場合があります。

相続放棄を考えるなら3か月を意識する

相続放棄の申述は、原則として、自分のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内です。

この期間内に、財産と債務を確認し、相続するか放棄するか判断します。

3か月以内に調査しても判断できない場合には、家庭裁判所へ期間伸長を申し立てる制度があります。

相続放棄を考えている段階では家財処分に注意する

民法では、相続人が相続財産の全部または一部を処分した場合を、法定単純承認となる類型の一つとして定めています。

ただし、保存行為などの例外もあり、どの行為が該当するかは個別の事情によります。

そのため、

「家の物を一つ捨てたら必ず相続放棄できない」

と考えるのも正確ではありません。

一方で、相続放棄を検討している段階で、高価な家財を売却したり、財産を自分のものとして処分したりすることは先に行わない方が安全です。

判断が難しい場合は、個別に法律の専門家へ確認してください。

相続確認前でもやってよいことはある?

相続放棄等を確認するまで、家へ一切立ち入ってはいけないわけではありません。

実家が空き家になっている場合には、最低限の管理が必要です。

たとえば、

  • 戸締まりを確認する
  • 漏水を確認する
  • 腐敗する食品等を確認する
  • 郵便物を確認する
  • 雨漏りや建物破損を確認する
  • 重要書類や貴重品の所在を確認する
  • 室内・家財の状態を写真に残す

などです。

「保存・安全管理」と「相続財産を売却・処分する行為」は分けて考えます。

重要書類は家財処分より先に確保する

大量の家財整理を始める前に、相続・売却で必要になる可能性がある書類を探します。

  • 不動産の売買契約書
  • 登記関係書類
  • 固定資産税の納税通知書
  • 測量図・境界関係書類
  • 建築確認関係書類
  • 通帳
  • 印鑑
  • 保険関係書類
  • 借入関係書類
  • 確定申告関係書類

特に不動産の取得時の資料は、将来実家を売却した際の税務確認に使う可能性があります。

「古い書類だから不要」と捨てる前に、何の書類か確認してください。

兄弟姉妹がいる場合は一人だけで実家を処分しない

相続人が複数いる場合、相続財産は遺産分割前には共同相続人に関係する財産となります。

そのため、一人だけで、

  • 高価な家財を売る
  • 形見をすべて処分する
  • 不動産を誰が取得するか決める
  • 高額な解体工事を契約する

といった不可逆な判断を進めない方がよいでしょう。

現地作業の担当者と、財産の処分を決定する人は分けて考えます。

相続と実家の片付けは完全に順番を分けなくてよい

相続人や相続放棄の可能性を確認した後であれば、相続手続きと実家の片付けを並行できます。

たとえば、

相続側 実家じまい側
戸籍を集める 重要書類を探す
財産・債務を確認する 家財を撮影・一覧化する
遺産分割を話し合う 残す物・処分候補を分ける
相続登記を準備する 不動産査定を取る
相続登記を行う 売却準備を進める

のように進められます。

「相続手続きが全部終わらないと実家へ何もできない」と考える必要はありません。

必要な場合は準確定申告が4か月以内

亡くなった親について確定申告が必要だった場合、相続人等が準確定申告を行うことがあります。

必要な場合の期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内です。

すべての人に準確定申告が必要という意味ではありません。

親に事業所得、不動産所得等があった場合など、必要か分からなければ早めに確認します。

相続税が必要な場合は10か月以内

相続税の申告・納税が必要な場合、原則として、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内です。

相続税の基礎控除額は、

3,000万円+600万円×法定相続人の数

です。

ただし、相続税がかかるかどうかは、不動産・預貯金等の財産だけでなく、債務や各種加算等も含めて判定します。

「実家の査定額だけが基礎控除を下回るから相続税は絶対にかからない」とは判断しないようにします。

遺産分割が終わっていなくても10か月は進む

兄弟姉妹の話し合いが終わっていないからといって、相続税の申告期限が自動的に延びるわけではありません。

相続税申告が必要な可能性がある場合は、実家の片付けとは別に期限を管理してください。

相続した実家には相続登記が必要

相続によって不動産を取得したことを知った場合は、原則として、そのことを知った日から3年以内に相続登記を申請する必要があります。

相続登記の義務化は2024年4月1日に始まりました。

それ以前に発生した相続でも、まだ相続登記をしていない不動産は対象となる場合があります。

2024年4月1日より前から相続による不動産取得を知っていたケースでは、原則として2027年3月31日までに相続登記を行う必要があります。

相続税がかからなくても相続登記は必要

相続税と相続登記は別の制度です。

相続財産が基礎控除以下で相続税申告が不要でも、不動産を相続した場合の相続登記義務がなくなるわけではありません。

「税金がかからないから何もしなくてよい」と考えず、不動産名義は別に確認します。

遺産分割がまとまらず3年が近づいたら?

遺産分割に時間がかかり、期限内に通常の相続登記を行うことが難しい場合には、相続人申告登記という制度があります。

自分が登記名義人の相続人であることなどを期限内に申し出ることで、相続登記の基本的な申請義務を簡易に履行できます。

ただし、相続人申告登記は不動産の権利関係を確定して公示する通常の相続登記とは異なります。

相続人申告登記だけでは実家を売却できない

相続人申告登記をしていても、それだけで相続した実家を売却できるわけではありません。

法務省も、相続人申告登記は不動産についての権利関係を公示するものではないため、相続不動産を売却する場合には別途相続登記が必要と案内しています。

売却を考えているなら、遺産分割と相続登記を進めます。

相続登記前でも実家の査定はできる?

不動産会社への相談や価格査定は、相続登記の準備と並行して行える場合があります。

そのため、

「登記が全部終わるまで査定すらしてはいけない」

と考える必要はありません。

むしろ実家の市場価値を早めに確認することで、

  • 一人が実家を取得する
  • 売却して代金を分ける
  • しばらく保有する
  • 解体を検討する

といった遺産分割の話し合いもしやすくなることがあります。

ただし、相続した不動産を実際に売却し、買主へ所有権を移転するには相続登記が必要です。

親名義のまま実家を売却できる?

亡くなった親の登記名義のまま、買主へそのまま所有権を移すことはできません。

売却する実家について誰が相続するかを決め、相続登記によって名義を整えてから、買主への所有権移転へ進みます。

ただし、不動産会社への相談や売却条件の検討はその前から進められます。

実家を誰が相続するか決める主な方法

相続人が複数いる場合、実家について主に次のような方法が考えられます。

一人が実家を取得する

実家を利用する人や管理する人が単独で取得する方法です。

他の相続人との財産額のバランスをどう取るかも検討します。

実家を売却して代金を分ける

相続人の誰も住む予定がない場合に検討されやすい方法です。

売却代金から必要な費用等を精算した上で分ける方法があります。

複数人で共有する

共有で相続することもあります。

ただし、その後の売却、管理、修繕などで複数人の意思調整が必要になるため、将来の扱いまで考えて決めます。

実家を売るなら空き家の3,000万円特別控除も確認する

亡くなった人が住んでいた一定の家屋やその敷地を相続し、条件を満たして売却した場合には、譲渡所得から一定額を控除できる特例があります。

一般に「相続空き家の3,000万円特別控除」などと呼ばれる制度です。

ただし、すべての相続実家が対象になるわけではありません。

建築時期、相続前の利用状況、売却価格、売却時期、耐震・取壊し等について要件があります。

2026年9月時点の制度では、対象となる譲渡期間は2027年12月31日までとされています。

また、相続人が3人以上の場合など、控除上限が異なるケースもあります。

適用を想定する場合は、家を解体・売却する前に最新の制度を確認してください。

相続後の実家じまいでやってはいけない順番

いきなり家財を全部処分する

遺言書、重要書類、高価品、相続放棄の可能性を確認する前の大量処分は避けます。

兄弟の一人だけで高額な処分を決める

高価な遺品や不動産の処分は、相続人間で確認してから進めます。

相続登記を後回しにしたまま売却を進める

査定や売却相談は早めにできますが、実際の売却には相続登記が必要です。

古い家だからと先に解体する

古家付きで売る、更地渡しにする、先に解体するなど複数の方法があります。

現況査定と解体見積もりを取ってから比較します。

相続後の実家じまいチェックリスト

  • □ 遺言書を確認した
  • □ 相続人を確認した
  • □ 預貯金・不動産等の財産を確認した
  • □ 借金・保証債務等を確認した
  • □ 相続放棄の可能性を確認した
  • □ 重要書類・貴重品を確保した
  • □ 家全体を写真に残した
  • □ 兄弟姉妹で家財の扱いを共有した
  • □ 準確定申告が必要か確認した
  • □ 相続税申告が必要か確認した
  • □ 実家の登記名義を確認した
  • □ 誰が不動産を相続するか検討した
  • □ 相続登記の期限を確認した
  • □ 売却するなら現況査定を検討した
  • □ 利用できる可能性のある税制を確認した

よくある質問

相続手続きと実家の片付けはどちらが先ですか?

まず遺言、相続人、財産・債務、相続放棄の可能性を確認します。

その後は、家財整理と相続登記等の準備を並行して進めることができます。

相続放棄を考えている場合も片付けてよいですか?

安全管理や重要書類の確認と、財産の売却・処分は分けて考えます。

相続財産の処分が法定単純承認に該当するかは個別判断になるため、価値ある財産の売却・処分を先行せず、必要に応じて専門家へ確認してください。

相続登記が終わるまで家を査定してはいけませんか?

査定や不動産会社への相談は、相続登記の準備と並行して進められる場合があります。

ただし、相続不動産を実際に売却するには相続登記が必要です。

相続人申告登記をすれば実家を売れますか?

相続人申告登記だけでは売却できません。

相続した不動産を売却する場合は、別途、権利関係を反映した相続登記が必要です。

相続税がかからないなら相続登記もしなくてよいですか?

相続税と相続登記は別制度です。

相続税申告が不要でも、不動産を相続した場合には相続登記の義務が生じます。

遺産分割が10か月以内に終わらなければ相続税の期限も延びますか?

遺産分割が終わっていないことだけを理由に、相続税の申告期限が自動的に延びるわけではありません。

相続税申告が必要な可能性がある場合は、10か月の期限を別に管理してください。

親名義のまま実家を売却できますか?

亡くなった親の登記名義のまま買主へ所有権を移転することはできません。

誰が不動産を相続するか決め、相続登記をした上で売却を進めます。

実家を全部片付けてから相続登記すべきですか?

家財整理の完了を待つ必要はありません。

相続登記の準備と家財整理は並行して進められます。

実家じまいでは相続の期限を先に押さえ、片付けと登記を並行する

親が亡くなった後の実家じまいでは、「まず全部片付ける」のではなく、相続上の確認を先に行います。

最初に、

  1. 遺言書
  2. 相続人
  3. 財産と借金
  4. 相続放棄の可能性

を確認します。

その後、重要書類や貴重品を確保できたら、家財整理、遺産分割、相続登記、不動産査定などを並行して進めます。

特に覚えておきたいのは、相続放棄3か月、必要な準確定申告4か月、必要な相続税申告・納税10か月、相続登記原則3年という、それぞれ別の期限があることです。

実家じまいは家の中を空にする作業だけではありません。

相続関係と不動産名義を整理し、最終的に誰が住むのか、保有するのか、売るのか、貸すのか、解体するのかまで決めることで、実家の整理が完了します。

親が亡くなった後の手続き全体を確認したい場合は、親が亡くなった後の手続きもあわせて確認してください。

実家じまい全体の現在地を整理したい場合は、実家・家財整理の案内から確認してください。

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