実家じまいと遺品整理は、同じ意味ではありません。
遺品整理は、亡くなった人が残した衣類、家具、写真、書類などの家財を整理することが中心です。
一方、実家じまいは家財の片付けだけでなく、実家という不動産を今後どうするかまで考える、より広い範囲の整理を指す言葉として一般的に使われています。
親が亡くなった後の実家じまいでは遺品整理が必要になることが多いため、両者は重なります。
ただし、遺品整理が終わっただけでは、相続登記、空き家管理、不動産売却、解体、各種契約の整理などが残ることがあります。
この記事では、実家じまいと遺品整理の違いを、対象、時期、主体、ゴール、依頼先まで比較し、親が亡くなった後にどの順番で進めればよいかを整理します。
実家じまい全体の流れを確認したい場合は、実家・家財整理の案内もあわせて確認してください。
実家じまいと遺品整理の違い
両者の違いを大きく整理すると、次のようになります。
| 比較項目 | 実家じまい | 遺品整理 |
|---|---|---|
| 主な対象 | 家財+建物+土地+各種手続き | 亡くなった人の家財・遺品 |
| 行う時期 | 親の生前・死後のどちらもあり得る | 原則として死亡後 |
| 主な目的 | 実家の管理・所有・利用を整理する | 遺された物を整理する |
| 主な作業 | 家財整理、相続、管理、売却、解体など | 仕分け、形見分け、買取、処分など |
| 不動産 | 売る・残す・貸す・解体する等を決める | 通常は家財整理が中心 |
| ゴール | 家の今後まで整理する | 遺品・家財を整理する |
分かりやすく言えば、親が亡くなった後のケースでは、遺品整理は実家じまいの中に含まれる一つの工程と考えると整理しやすくなります。
遺品整理とは何をすること?
遺品整理は、亡くなった人が残した持ち物を確認し、必要な物と不要な物に整理する作業です。
主に次のような作業があります。
- 現金・通帳・印鑑等の確認
- 重要書類の確認
- 写真・手紙・思い出の品の整理
- 形見分け
- 貴金属・骨董品等の確認
- 売却できる物の査定・買取
- 不要品の処分
- 家具・家電の搬出
遺族にとっては、単なる不要品処分とは異なります。
どの物を残したかったのか本人へ確認できないため、家族で相談しながら判断する必要があります。
実家じまいとは何をすること?
実家じまいという言葉には法令上の一律の作業範囲が定められているわけではありませんが、一般には親の家を整理し、今後の管理や所有まで整理する一連の作業を指して使われます。
たとえば次のような内容です。
- 親本人・兄弟姉妹との話し合い
- 家財の整理
- 遺品整理
- 不動産名義の確認
- 相続手続き
- 空き家管理
- 不動産売却
- 賃貸・活用の検討
- 建物解体
- ライフライン等の契約整理
つまり、遺品整理が「家の中の物」を中心に扱うのに対し、実家じまいでは「その家をこれからどうするか」まで考えます。
実家じまいは親が生きているうちにも始められる
遺品整理は、文字どおり亡くなった人の遺品を整理する作業です。
一方、実家じまいは親が存命でも始められます。
たとえば、
- 親が高齢者施設へ入居する
- 親が子どもの家へ同居する
- 高齢になり大きな家を維持できなくなった
- 実家を売却して住み替える
といった場合です。
親が存命であれば、本人が残したい物、家を今後どうしたいか、不動産を売る意思があるかなどを直接確認できます。
この段階の家財整理は、遺品整理ではなく、生前整理や実家の片付けとして考える方が分かりやすいでしょう。
親が亡くなったら遺品整理から始めればよい?
親が亡くなった後でも、最初から大量の家財処分を始める必要はありません。
先に確認したいことがあります。
- 遺言書がないか確認する
- 相続人を確認する
- 財産と借金を確認する
- 相続放棄を検討する必要がないか確認する
- 重要書類・貴重品を確保する
- 兄弟姉妹で残したい物を共有する
これらを確認した後で、遺品整理を本格的に進めます。
相続放棄を考えている場合は遺品整理を急がない
相続放棄を検討している場合には、遺品を自由に売却・処分する前に確認が必要です。
民法では、相続人が相続財産の全部または一部を処分した場合を、法定単純承認(ほうていたんじゅんしょうにん)となる類型の一つとして定めています。
一方、保存行為など例外もあるため、「家の物を一つ捨てたら必ず相続放棄できない」という意味ではありません。
相続放棄をする可能性があるなら、価値のある家財を売却したり大量の財産を処分したりする前に、財産・債務を確認し、必要に応じて専門家へ相談してください。
相続放棄の申述は、原則として自分のために相続開始があったことを知った時から3か月以内です。
兄弟が複数いる場合、一人だけで遺品整理してよい?
相続人が複数いる場合、親の死亡後の財産について一人だけで判断しない方が安全です。
民法では、相続人が複数いる場合、相続財産は共同相続人の共有に属するとされています。
そのため、少なくとも、
- 現金
- 貴金属
- 骨董品
- 価値のある家具
- 形見として希望者がいる物
- 不動産
などについては、他の相続人と共有してから進めます。
処分候補を写真で送る、一定期間返答を待つ、重要品一覧を共有するなどの方法があります。
遺品整理が終わっても実家じまいは終わらないことがある
家の中を空にできると、「これで実家じまいも終わった」と感じやすくなります。
しかし、不動産自体が残っていれば、次の問題があります。
- 誰が実家を相続するか
- 相続登記
- 固定資産税等
- 空き家の管理
- 火災保険等
- 庭や建物の維持管理
- 実家を売るか残すか
- 解体するか
遺品整理は完了していても、家を誰も使わず放置すれば空き家管理は続きます。
実家じまいでは、家財整理の後に「家そのものの出口」を決める必要があります。
相続した実家では相続登記も別に必要
亡くなった親が所有していた不動産を相続した場合、遺品整理とは別に相続登記を確認します。
相続によって不動産を取得したことを知った場合は、原則としてそのことを知った日から3年以内に相続登記を申請する必要があります。
2024年4月1日より前の相続についても、未登記であれば義務化の対象になる場合があります。
家財の整理に時間がかかっていても、登記の期限は別に進みます。
遺品整理と実家売却は同時に進められる
遺品整理を完全に終えてからでなければ、不動産会社へ相談できないわけではありません。
重要書類や残したい物を確認できたら、家財整理と並行して、
- 不動産名義の確認
- 相続登記の準備
- 空き家管理
- 不動産査定
- 売却方法の比較
などを進めることができます。
家財が大量に残っている場合には、売却方法によって必要な片付け範囲が変わることもあります。
「遺品整理を100%終えるまで次の工程を始めない」と決める必要はありません。
遺品整理業者に頼めば実家じまい全部を任せられる?
遺品整理業者のサービス範囲は会社によって異なります。
一般には、
- 家財の仕分け
- 搬出
- 買取
- 簡易清掃
- 供養の手配
などを行う会社があります。
一方、実家じまいには、
- 不動産売買
- 相続登記
- 税務申告
- 相続人間の法律問題
- 建物解体
など、家財整理とは別の専門分野もあります。
「実家じまい一括対応」と表示している会社でも、すべてをその会社自身が法的に行っているとは限りません。
不動産会社、司法書士、税理士、解体会社などとの提携によって対応している場合もあります。
実際に誰がどの業務を担当するのかを確認します。
遺品整理業者へ依頼するときは廃棄物の処分方法を確認する
遺品整理では、売れる物だけでなく大量の家庭ごみが出ることがあります。
家庭から出る廃棄物を収集運搬するには、市区町村の一般廃棄物処理業の許可や市区町村からの委託など、適法な回収ルートが必要です。
産業廃棄物処理業の許可や古物商許可だけでは、家庭ごみを自由に収集運搬できません。
ただし、遺品整理会社自身が一般廃棄物処理業の許可を持っていなくても、実家所在地の許可業者と適法に連携している場合があります。
確認したいのは、
- 家庭ごみを実際に誰が運ぶのか
- その業者が実家所在地で必要な許可・委託を受けているか
- 買取品と廃棄物をどう分けるか
です。
「遺品整理士」などの資格と廃棄物の許可は別
遺品整理に関する民間資格を持つスタッフがいる会社もあります。
資格や研修歴は会社を比較する一つの情報にはなりますが、家庭ごみを収集運搬する法的な許可とは別です。
資格名だけで判断せず、実際の廃棄物処理方法も確認してください。
実家じまいと遺品整理を進める順番
親が亡くなった後であれば、次の順番で考えると整理しやすくなります。
1.相続関係を確認する
遺言、相続人、財産・債務、相続放棄の可能性を確認します。
2.重要書類・貴重品を確保する
大量の廃棄を始める前に、残すべき物を確認します。
3.遺品整理を進める
残す、形見分け、売る、処分する、保留する物に分けます。
4.同時に実家の今後を検討する
家財整理と並行して、売却、保有、賃貸、解体などの候補を比較します。
5.不動産・登記等を進める
相続登記や査定など、必要な手続きを進めます。
6.家の出口まで完了させる
売却、家族による利用、賃貸、解体等、決めた方法へ進みます。
自分が今どの段階か確認する
| 現在の状況 | 考えるべきこと |
|---|---|
| 親が元気で実家に住んでいる | 生前整理・将来の実家じまい |
| 親が施設等へ移った | 家財整理+実家の今後 |
| 親が亡くなった直後 | 相続確認+重要物確認 |
| 相続確認後、家財が大量に残っている | 遺品整理 |
| 家財整理が終わったが家が残っている | 売却・管理・解体等 |
| 実家を売る予定 | 登記・査定・売却準備 |
よくある質問
遺品整理は実家じまいの一部ですか?
親が亡くなった後の実家じまいでは、遺品整理が家財整理の工程として含まれると考えると分かりやすいでしょう。
ただし、実家じまいにはその後の相続登記、空き家管理、売却・解体なども含まれる場合があります。
親が生きている場合も遺品整理と呼びますか?
通常、遺品整理は亡くなった人が残した物を整理することを指します。
親が存命の場合は、生前整理や実家の片付けとして進めます。
親が亡くなったらすぐ遺品を処分してよいですか?
すぐ大量に処分するのではなく、遺言、相続人、財産・債務、相続放棄の可能性、重要書類を先に確認した方がよいでしょう。
遺品整理と相続手続きはどちらが先ですか?
完全に一方を終えてからもう一方へ進む必要はありません。
まず相続関係と重要物を確認し、その後は遺品整理と相続・不動産関係の準備を並行できます。
遺品整理が終われば実家じまいも完了ですか?
必ずしも完了ではありません。
家そのものが残っていれば、空き家管理、相続登記、売却、賃貸、解体等を検討する必要があります。
遺品整理業者へ依頼すれば不動産売却もできますか?
会社によっては不動産会社等と提携し、一括窓口として案内する場合があります。
ただし、不動産売買、登記、税務などはそれぞれ必要な資格・専門領域があります。
誰が実際の業務を担当するのか確認してください。
相続放棄を考えている場合も遺品整理してよいですか?
相続財産の処分が相続放棄に影響する可能性があります。
価値ある財産を売却・廃棄する前に、個別の状況を専門家へ確認する方が安全です。
遺品整理は実家じまいの「家の中」、実家じまいはその先まで考える
実家じまいと遺品整理の一番大きな違いは、扱う範囲です。
遺品整理では、亡くなった人が残した家財や思い出の品を整理します。
実家じまいでは、それに加えて、不動産の名義、相続、空き家管理、売却、解体など、家そのものを今後どうするかまで考えます。
そのため、親が亡くなった後の実家では、
- 相続・重要物を確認する
- 遺品整理を進める
- 並行して実家の出口を決める
- 登記・売却等を完了する
という流れで考えると整理しやすくなります。
「まず遺品整理を100%終えなければ実家じまいを始められない」というわけでもありません。
重要な物を確認した後は、家財整理と不動産・相続手続きを並行することで、実家全体の整理を進めやすくなります。
実家じまい全体の流れから整理したい場合は、実家・家財整理の案内から現在の状況に合う項目を確認してください。
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