遺品整理は、必ず業者へ依頼しなければできない作業ではありません。
物の量がそれほど多くなく、実家へ通える距離にあり、作業期限にも余裕があるなら、家族だけで進めることもできます。
むしろ、写真、手紙、形見、重要書類などを自分たちで一つずつ確認したい場合は、家族で仕分けることに意味があります。
ただし、遺品整理は単に「いらない物を捨てる作業」ではありません。
相続放棄を検討している段階で価値のある財産を売却・処分したり、重要書類を誤って捨てたりすると、後から取り戻せないことがあります。
また、大量の家庭ごみを処分する場合は、実家所在地の自治体ルールに従う必要があります。
この記事では、遺品整理を自分で進める7つの手順、自力で向いているケース、途中から業者へ任せた方がよいケースまで整理します。
遺品整理そのものの全体像から確認したい場合は、実家・家財整理の案内もあわせて確認してください。
遺品整理は自分でできる?
条件が合えば、自分で進めることができます。
特別な資格がなければ家族の遺品を整理できない、というものではありません。
ただし、「自分で仕分けること」と「家庭ごみを好きな方法で処分できること」は別です。
家庭から出るごみは、実家所在地の市区町村が定める分別・排出方法に従います。
大量の家具やごみを業者へ収集運搬してもらう場合には、一般廃棄物の許可・委託等を受けた適法なルートを確認します。
自分で遺品整理しやすいケース
次の条件が多く当てはまるほど、自力で進めやすくなります。
- 家財の量が少ない、または中程度
- 実家へ定期的に通える
- 作業期限に余裕がある
- 複数人で作業できる
- 大型家具の搬出が少ない
- 自治体のごみ回収を利用できる
- 車や搬出手段を確保できる
- 家族間で形見分けについて大きな争いがない
- 精神的に遺品を一つずつ確認できる状態にある
すべて当てはまる必要はありません。
重要なのは、「全部自分たちでやる」ことを最初から目標にしないことです。
自分だけで進めにくいケース
次のような場合は、途中から業者を利用する、または最初から一部を任せる方が現実的です。
- 一軒家いっぱいに物がある
- 大型家具・大型家電が多い
- 実家が遠方
- 売却・退去等の期限が迫っている
- 階段しかなく搬出が難しい
- 車両を確保できない
- 家族が高齢で重い物を運べない
- 腐敗物や強い汚れがある
- 何度通っても作業がほとんど進まない
- 遺品を見る精神的な負担が大きい
業者を使うことは、「自分で遺品整理できなかった」という失敗ではありません。
家族が重要な物だけ確認し、重い家具の搬出や大量ごみの処分だけを任せる方法もあります。
遺品整理を始める前に相続放棄の可能性を確認する
親や家族に借金がある可能性があり、相続放棄を検討している場合は、価値のある遺品を売却・処分する前に確認が必要です。
相続放棄は原則として、自分のために相続が始まったことを知った時から3か月以内に家庭裁判所へ申述します。
民法には、相続人が相続財産の全部または一部を処分した場合について、法定単純承認となる規定があります。
ただし、保存行為などの例外もあり、個別の行為が相続放棄へ影響するかは事情によって異なります。
そのため、
「遺品を一つ動かしたら相続放棄できない」
とも、
「何でも捨てて問題ない」
とも一律には言えません。
相続放棄を検討する可能性がある場合は、高価な物の売却・処分を急がず、財産と借金を確認してから進めてください。
遺品整理を自分でする7つの手順
1.最初に家全体を写真・動画で残す
物を動かす前に、各部屋を撮影します。
写真を残しておくと、
- 何がどこにあったか確認できる
- 遠方の兄弟姉妹へ共有できる
- 形見分けについて相談できる
- 作業の進み具合を確認できる
- 後から「その物を見なかったか」と聞かれた場合に確認できる
といったメリットがあります。
部屋ごとに入口から全体が分かる写真を撮り、収納内部も必要に応じて残します。
2.重要書類・現金・貴重品を先に探す
いきなりごみ袋を広げて捨て始めず、先に重要物を探します。
特に確認したいのは、
- 遺言書
- 現金
- 預貯金通帳
- 印鑑
- キャッシュカード
- 有価証券関係書類
- 保険証券
- 権利証・登記識別情報
- 固定資産税関係書類
- 実家購入時の売買契約書
- 住宅ローン・借金に関する書類
- 貴金属
- 骨董品
- 写真・手紙
です。
特に、不動産や税金に関係する古い書類は、意味が分からなくてもすぐに捨てない方が安全です。
3.家族へ「残したい物」を確認する
重要物を確保したら、兄弟姉妹や他の家族へ確認します。
一人にとって不要な物でも、別の家族にとっては残しておきたい物かもしれません。
すべてを現地で確認してもらう必要はありません。
写真を撮って家族のグループメッセージ等へ送り、一定期間内に希望を出してもらう方法もあります。
特に、
- アルバム
- 写真
- 手紙
- 時計
- アクセサリー
- 趣味用品
- 記念品
- 家族の昔の持ち物
は、処分前に共有した方がよいでしょう。
4.遺品を5種類に分ける
最初から「残す・捨てる」の2種類にすると判断が止まりやすくなります。
次の5種類に分けると進めやすくなります。
- 残す
- 家族へ渡す
- 売る
- 処分する
- 保留する
判断できない物は「保留」にします。
すべてをその場で決める必要はありません。
5.売れる物と処分する物を分ける
家具、家電、貴金属、ブランド品、骨董品、趣味用品などは、状態によって売却できる可能性があります。
ただし、相続放棄を検討している段階では、相続財産の売却を先行しないよう注意してください。
相続することが決まっている場合でも、高価な物については他の相続人へ確認してから進めた方がよいでしょう。
6.自治体ルールに従ってごみを処分する
処分する物は、実家所在地の自治体ルールで分別します。
代表的には、
- 可燃ごみ
- 不燃ごみ
- 資源ごみ
- 粗大ごみ
- 家電リサイクル法対象品
- 自治体で処理できない物
などに分かれます。
分別方法、粗大ごみの大きさ、予約方法、処理手数料は自治体によって異なります。
7.すべて搬出した後に清掃・最終確認する
家財の搬出後は、床、押し入れ、収納、天袋などを確認します。
家具の後ろから、
- 書類
- 現金
- 写真
- 印鑑
- 鍵
などが見つかることもあります。
最後に一度、家全体を確認してから清掃します。
遺品整理で用意すると便利なもの
- 丈夫なごみ袋
- 段ボール箱
- 油性ペン
- 養生テープ
- 軍手
- マスク
- 掃除道具
- スマートフォン
- 書類保管用ファイル
- 貴重品を入れるケース
- 台車
段ボールには、
- 残す
- 兄へ
- 姉へ
- 売る
- 保留
など、行き先を大きく書いておくと混ざりにくくなります。
部屋ごとに作業する
一軒家の場合、一度に家全体へ手を付けると進捗が見えにくくなります。
たとえば、
- 玄関
- リビング
- 寝室
- 台所
- 押し入れ
- 物置
のように、一区画ずつ終わらせます。
「今日は寝室を終える」のように範囲を決めた方が作業を続けやすくなります。
大量のごみを一度に集積所へ出さない
自治体によっては、遺品整理や引っ越しで一度に大量に出るごみを、通常の家庭ごみ集積所では回収しない場合があります。
その場合は、
- 少量ずつ通常収集へ出す
- 自治体の処理施設へ自分で持ち込む
- 一般廃棄物処理業の許可業者等へ依頼する
など、自治体が案内する方法を確認します。
「家庭ごみだから何袋でも同じ日に出してよい」とは限りません。
遺品整理業者なら誰でも家庭ごみを運べるわけではない
家庭から出る廃棄物を業として収集運搬するには、市区町村の一般廃棄物処理業の許可や、市区町村からの委託などが必要です。
産業廃棄物処理業の許可や古物商許可だけで、家庭ごみを自由に収集運搬できるわけではありません。
ただし、遺品整理会社自身が一般廃棄物の許可を持っていなくても、地域の許可業者と適法に連携している場合があります。
業者を利用する場合は、
- 家庭ごみを実際に誰が運ぶのか
- 実家所在地で必要な許可・委託を受けているか
を確認します。
テレビ・エアコン・冷蔵庫・洗濯機等は通常の粗大ごみと分ける
テレビ、エアコン、冷蔵庫・冷凍庫、洗濯機・衣類乾燥機は、家電リサイクル法の対象となる家電です。
一般的な粗大ごみと同じ処分方法ではないため、実家所在地の自治体や販売店等の案内を確認します。
特に古い実家では、複数台残っていることがあります。
仕分け段階で通常の粗大ごみと分けておくと進めやすくなります。
遺品整理を自分でする場合にかかる費用
自分で行えば業者の作業費は抑えられますが、完全に無料になるわけではありません。
主に、
- 粗大ごみ処理手数料
- 家電リサイクル料金
- 収集運搬費
- 処理施設への持ち込み費用
- レンタカー
- ガソリン代
- 高速道路料金
- 段ボール・ごみ袋等
- 遠方の場合の交通費
- 宿泊費
などがかかります。
自治体、家財量、距離によって差が大きいため、「自分でやれば全国どこでも数万円以内」といった一律の相場では考えない方がよいでしょう。
自分でやる場合の「見えにくいコスト」も考える
業者費用と比較するときは、処分手数料だけでなく家族の負担も考えます。
たとえば遠方の実家へ、
- 往復4時間
- 月2回
- 半年間
通うのであれば、交通費だけでなく相当な時間が必要です。
自分で行うことが必ず経済的とは限りません。
遺品整理に何日かかる?
一律の日数はありません。
同じ3LDKでも、
- 最低限の家具しかない家
- 数十年分の物が詰まった家
では必要な時間が大きく違います。
さらに、家族の人数、実家までの距離、粗大ごみの予約日、車両の有無などでも変わります。
間取りだけで「○日あれば終わる」と決めず、まず一部屋を作業し、そのペースから全体を判断する方法が現実的です。
途中で業者へ切り替える判断基準
次の状態になったら、一部または全部を業者へ任せることを検討します。
何度通っても進まない
毎週作業しているのに数か月たっても一部屋も終わらない場合は、物量が家族の処理能力を超えている可能性があります。
大型家具を安全に運べない
タンス、ベッド、冷蔵庫等を階段から無理に運ぶと、けがや建物破損につながることがあります。
売却・退去期限が近い
不動産売却、賃貸住宅の明け渡し等で期限が決まっている場合、家族だけで終わるか早めに判断します。
遠方への往復費用が大きい
業者費用を避けるために何度も帰省し、最終的に交通・宿泊費の方が大きくなることがあります。
精神的につらくて作業できない
遺品を見ること自体が大きな負担になる場合もあります。
無理に全部自分で確認せず、重要物を家族で確認した後、その他の仕分けや搬出を任せる方法もあります。
全部を業者へ頼む必要はない
自分で行うか、業者へ全部任せるかの二択ではありません。
たとえば、
家族が仕分け、業者が搬出
写真・書類・形見は家族で確認し、不要と決まった家具や大量ごみだけ搬出してもらいます。
大型家具だけ依頼
小物は自治体の通常収集を利用し、大型家具だけ適法な業者等へ依頼します。
一部屋だけ依頼
物置、納戸など物量が多い場所だけ依頼する方法もあります。
最後の残置物だけ依頼
ほとんどを家族で整理し、売却・退去期限前に残った物だけまとめて依頼します。
部分委託なら、家族が確認したい物を自分で見ながら、身体的負担を減らせます。
業者へ切り替える場合は複数社を比較する
遺品整理業者へ依頼する場合は、一社だけで決めず、可能なら複数社から見積もりを取ります。
比較するのは、
- 作業範囲
- 料金
- 追加料金の条件
- 家庭ごみの処理方法
- 買取
- 残す物の扱い
- 作業日
- 支払方法
- キャンセル料
です。
「一式○万円」という総額だけではなく、どこまで含まれているか確認してください。
遺品整理を自分でするときのチェックリスト
作業前
- □ 相続放棄の可能性を確認した
- □ 遺言書を確認した
- □ 家全体を撮影した
- □ 他の家族へ作業開始を共有した
- □ 自治体のごみルールを確認した
重要物
- □ 現金
- □ 通帳
- □ 印鑑
- □ 保険関係書類
- □ 不動産関係書類
- □ 借金・ローン関係書類
- □ 貴金属・高価品
- □ 写真・手紙
仕分け
- □ 残す
- □ 家族へ渡す
- □ 売る
- □ 処分する
- □ 保留
処分
- □ 可燃・不燃・資源を分けた
- □ 粗大ごみを確認した
- □ 家電リサイクル対象品を分けた
- □ 大量ごみの出し方を自治体へ確認した
- □ 業者利用時は実際の収集運搬主体を確認した
よくある質問
遺品整理は一人でもできますか?
小規模であれば可能な場合があります。
ただし、大型家具や重量物の搬出を一人で無理に行うのは危険です。
必要な部分だけ家族や業者の力を借りてください。
相続放棄を考えています。部屋へ入ってはいけませんか?
一律に「入室も禁止」ということではありません。
一方、相続財産の売却・処分が相続放棄へ影響する場合があります。
価値ある財産の売却や大量処分を先行せず、個別に確認してください。
家庭ごみは遺品整理業者なら誰でも持っていけますか?
いいえ。
家庭から出る一般廃棄物を業として収集運搬するには、市区町村の一般廃棄物処理業許可や委託等が必要です。
遺品整理会社が許可業者と適法に連携している場合もあるため、実際の収集運搬主体を確認してください。
粗大ごみは全部自分で自治体へ出せますか?
自治体の制度によります。
一度に大量に出す場合は通常収集で対応できず、自己搬入や許可業者への依頼が必要な自治体もあります。
業者へ仕分けだけ、搬出だけ頼めますか?
対応範囲は会社によりますが、一部作業だけ依頼できる事業者もあります。
見積もり時に家族で行う範囲と業者へ任せる範囲を明確にしてください。
自分でやる方が必ず安いですか?
必ずしもそうとは限りません。
処分料金、レンタカー、交通費、宿泊費、作業日数などを含めて比較する必要があります。
写真やアルバムが多く、作業が止まってしまいます
その場で全部確認せず、「保留箱」を作る方法があります。
片付け作業と、写真・手紙をゆっくり確認する時間を分けると進めやすくなります。
遺品整理は「全部自分でやる」ことを目標にしなくてよい
遺品整理は、条件が合えば自分で進められます。
進める順番は、
- 相続関係を確認する
- 家全体を撮影する
- 重要書類・貴重品を確保する
- 家族へ形見の希望を確認する
- 5種類に仕分ける
- 自治体ルールに沿って売却・処分する
- 清掃・最終確認をする
です。
ただし、一軒家いっぱいの荷物、大型家具、遠方の実家、期限のある片付けなどでは、すべてを家族だけで行う必要はありません。
家族にしか判断できない重要書類や形見は自分たちで確認し、重い家具の搬出や大量ごみだけを業者へ任せる方法もあります。
遺品整理で大切なのは、「自分で全部片付けたか」ではなく、残すべき物を確認しながら、安全かつ適切な方法で整理を終えることです。
親が亡くなった後の相続・手続きも同時に進めている場合は、親が亡くなった後の手続きもあわせて確認してください。
実家全体の整理について確認したい場合は、実家・家財整理の案内から現在の状況に合う項目を確認してください。